サプライチェーンの「取り分表」を見て


月中まで調子が良かった花の相場も、天候不順で昨年の水準に戻った。今年は母の日が早いので、それに焦点を当てた生産物が早期出荷されている。需給のミスマッチはやむを得ないところだ。

さて、1998年、切花の国内生産数量はピークであった。それ以降花き全体で目立って増えてきたのは苗物くらいで、その他は横這いか微減である。
99年から生産者物価(卸売価格)が下がり始め、経済の法則通り消費者物価が遅行して下がり、2002年には花の消費者物価もほぼ下げ止まった。この3年間に起こったことは、景気の低迷で他の産業と同様花き業界も成熟産業の様相を呈してきたことである。小売店の店頭を見てみよう。付加価値を余りつけずに販売している八百屋や果物屋とあまり変わらない店頭販売の商品は、15から20%、物によっては3割(98年対比)価格を下げて売っている。付加価値商品は技術代と数量を多く入れることによってボリュームを出して98年と同じ価格だ。
またこの3年間に人の多く集まる所に元気な花店が出店してきている。そうなのだ。販売が難しくなり、販売に対する投資(出店やリフォーム、宣伝、優秀な技術者の採用、器やラッピングペーパー、おしゃれな持ち帰り袋など)に経営資源を向けざるを得ない。これが2001年の農林水産省の調査で明らかになったサプライチェーンの取り分表によく表れている。小売店64%、中間流通業者9%、生産者27%の取り分だ。例えば消費者が1,000円支払うと、小売店が640円頂き、テナント代や花代、関連資材代、人件費などを賄う。中間流通は90円頂き、卸・仲卸・経済連・農協が手数料に応じて人件費などを賄う。生産者は270円を受け取り、種苗や油代、資材代、人件費を賄う。(参考資料:『2003フラワーデータブック』財団法人日本花普及センター発行)

社会が成熟化すると、販売が難しくなる。よって生産者は小売価格の3分の1から4分の1の取り分になる。こういう経済法則が働くが、花の場合は少量多品目なので、製造原価を落とすことが難しいし、良い花を作ること自体に喜びを感じている生産者も多いので、生産者手取りを30%以上にするには、売れ筋商品を作ることと、生産歩留まりを上げていき、納期を遵守することしかない。(これはどの業種のメーカーでも同じだ。)

今後とも油断できない状況が続くが、卸売会社は消費者価格の3分の1、少なくとも30%を生産者に渡せるよう努力していきたいと考えている。




2004/04/26 磯村信夫