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2014年3月24日

便利だが三現主義に反する在宅セリ

 3月は異動の時期で、ご挨拶に来ていただく方も多い。そんな時、私の父を知る方から、「歳を取ってきてお父さんに似てきましたね」と言われることがある。そういう目で、同業者の役員を見ると、どこかしら皆先代社長のお父さんと似てきている。
 人は生まれて乳幼児の時から母親の真似をして経験をし、育っていく。幼児期からそれ以後も父親よりも母親と一緒にいることが多いと思うが、男は歳を取るとなぜか父親に似てくるのは不思議なことだ。きっと仕草も生き方も真似をしているのだろう。これは、社風にも表れる。私がこんなに市場の仕事が好きなのは、父親譲りなのではないかと思う。

 鮮度が失われやすい花のスピーディーでフェアな物流、商流、資金の流れ、情報の流れを考えると、卸売市場システムは、経済学的に最も有効な手法だと考えているが、何よりも花を通じて生産者や仲卸・小売店と接するのが私は好きなのだ。おそらく、今花の仕事をしている人は、華道家にしてもお花屋さんにしても生産者にしても、今自分のやっている仕事が天職のように思っているのではないかと思う。
 その中で、在宅セリを考えた。それは、普通の小売店なら百ケースも購入しない。数十ケースで十分だ。市場に来て始めからセリに参加すると、2時間半以上セリ場にいることになる。確かにセリ場では、自分では普段購入しないものも上場されているので、実物を見て勉強することが必要だ。
 
 
 しかし、忙しいときは配達などで仕入れの時間は勿体ない。だとすれば、在宅セリのシステムでは、セットしたパソコンが自分の必要としている花の5つ程前にチャイムやメールでそろそろ上場されることを教えてくれる。その時にパソコンの前に座れば良い。それ以外の時は、他の仕事が出来る。また、手の空いたときに荷物を取りに来れば良い。このようにすることがリストラでスリム化した小売店にとって欠かせない。これが導入したきっかけだ。来なくても購入できることは、私は困った時の在宅セリ頼みで良いと思う。

 しかし、利は元にあり。仕入れは小売店にとって、とても大切なことだ。そうなると、自分の買わない物も上場されるセリは勿論のこと、仲卸が何を扱っているのかどうか見ておくことは欠かせない。なので、市場に来なくてはならない。
有名なフラワーデザイナーはセリで購入しなくとも、一週間に一回は必ず市場に来ている。技術が売り物のデザイナーとしても市場に来ることが欠かせない。「仕入れは必要悪」と言わんばかりに市場に来なくなることは、時代に遅れることになる。

 花に接する。同業者に接する。市場の人間や生産者に接する。そうしてこそ、消費者に支持される繁盛店になれるし、生産者は市場に来て、ライバルの荷を見て、仲卸や小売店と接する。そうして初めて良き花作りになれるのである。市場というのは、そういった場で、花好きだけではなく、人好きが集まる場所でも現物、現場、現実の三現主義の場である。

投稿者 磯村信夫 : 11:31

2014年3月17日

『花き振興法』に合わせ振興するには

 20世紀の間、花き業界は成長過程にあったから、団塊ジュニアの世代を中心に順調に良い人材が集まっていた。21世紀に入ると、花き業界も地域間格差が出てきて、新入社員の定期採用をする企業の数は減った。
 安倍政権になってインフレターゲットを設定し、他の先進国と同様に経済成長を行おうとしているが、経済界においては、日本の企業として最後の再生の時だと言わんばかりに俄然と再構築を行い、この3月期には企業の生き方に方針が立って、政府に呼応して久しぶりのベースアップやら賃上げが行われている。
 花き業界が従来のままだとすると他の業界と賃金格差、人材格差が出てきてしまうことが有り得る。それでは花き業界は置いてきぼりを食ってしまう。各事業体は苦しいかもしれないが、労働分配率を上げて、働く人の不満を少なくしてもらいたい。
 
 日本は今後とも貿易赤字は続くが、国際収支は黒字になるという。工業・金融業では、明らかに海外投資型になっている。優秀な人たちが日本にいて、(必ずしも日本人とは限らないが)新しいモノや今迄の産業でも切り口を変えて、新しい角度から事業を行っていくことになる。
 安倍政権の第3、第4の経済成長分野は、いずれも政府が深く関わっている分野だけに、面映ゆい程結果が出ていない。それらの分野は環境エネルギーや医療介護、アンチエイジング、そして農業の分野等だが、これらはいずれも構造改革が必要な分野で、成功するにはストーリー性のある戦略が必要である。

 農業分野の一つ「花き」をとってみても、今後の活性化の為、どう花き振興法を生かせるか考えたシナリオ作りが必要だ。種苗から生産、小売等の各団体がそれぞれ再起を期して頑張るといっても、バラバラでは今までとあまり変わらず、せいぜい横ばいか、場合によっては縮小するかもしれない。となると、文化から商売までの花きに携わるものの、どのようにストーリー性を持って発展させるか、再度戦略を立てなければならない。

 大田花きでは"創って作って売る"で種苗、生産から仲卸、小売店までをパートナーとして、チームを組んでいるが、これだけでは少し足りないような気がする。
教育(すなわち花育)が重要なのはわかるが、もう一度今の戦略を練る為に都市緑化や公園緑化だけではなく、庭やオフィス内の緑化などを目指して既存の業界団体を網羅する一つの大きな持ち株会社、ホールディングスのような団体が必要で、そこの一段上の協会がストーリー性をもった戦略を立ててそれぞれの団体におろすことが大切ではないかと思われる。次に構想を練る時、少なくともこのようなスケール感でシナリオを考える必要がある。

 農業分野では政府の方針があるが、それは主に大規模化と輸出面に関することが多い。花の場合には、基本的には民間活力、我々が共に意見を出し合って、花と緑を沢山使って貰えるようにすべきである。それは花は心の生鮮品だからだ。その為には、全国花き振興協議会プラス、花き文化の伝承組織等が全て入るホールディングス的な組織が必要だと思うが、如何だろうか。

投稿者 磯村信夫 : 12:34

2014年3月10日

復興援助 沖縄に続けて

 昨日9日、朝のNHKラジオの時事問題の番組で、2回目の大雪で多くの農業用ハウスが倒壊し、野菜の生産が出来なくなっている。早急に対応策を行わなければ、農家の平均年齢は65歳なので、これを機に農業をやめてしまう人が出る。なので、政府や自治体は対策を急ぎ、もう一度農業をしてもらえるよう消費者からもお願いしたい旨の放送があった。

 野菜農家を中心に話が進んでいたが、花き農家も同様で後継者のいないところはやめざるを得ないとしている農家が、大田花きの取引先だけでも何人もいる。支援策は出揃った。
 気持ちの切り替えが出来た元気な生産者は、古いハウスが倒壊したので、これを機に新しく大きな強いハウスを作るという。是非とも生産者の皆さんに前向きに捉えてもらいたい。

 明日で3.11(東日本大震災)から3年の歳月が経ち、そしていよいよ卒業式やお彼岸など、色々な花の需要がピークを迎える。2011年の3.11を含め、過去3年間、花き生産者は1勝2敗、従来の3月相場であったのは2012年の3月だけであった。過去3年間のうち、2回も3月利益がなかったわけだから、暖房費がかかる3月に出荷するのは永年作型の産地か、消費者やお花屋さんのことを強く思っている産地か、一部の需要増をターゲットに絞った産地である。それでも3月は需要期の為、従来通りの産地の顔が出揃うが、いずれも2桁マイナスの出荷予定だ。

 しかし、沖縄県だけは「太陽の花」「JAおきなわ」の2大産地は安定した生産量である。それはなぜか。この2団体が今年の雪害と同じ大打撃を台風やら相場やらで受けた時、このままではいけないと農家が立ち上がれるように「ヒト・モノ・カネ」で支援したからだ。その後、行政も上乗せしてくれて、生産者は以前と変わらぬ生産力を保持するだけではなく、台風にも負けない防風ネット栽培をして、以前よりも一歩も二歩も前進した。こういった沖縄の花き生産業界が取り組んだ努力が安定供給に繋がっているわけだ。このお蔭により日本中の花き市場、仲卸、小売業者は消費者に仏花を安定供給できる。このことを幸せに感じてやって行かなければならない。

 我々は、実質的に恵まれていたり、良いサービスを受けてもすぐ当たり前だと思ってしまう。このような傲慢さが現代人にあるように感じる。
 ドフトエフスキーの「人間が不幸なのは自分が本当に幸福であることを知らないからである。ただそれだけの理由によるのだ。」という言葉がある。
 今年のように寒く、燃料代が上がっていて、生産者は3年間の間に2回も痛い目にあっている。3月向けの作付けを減らしても当然なのに、荷物をコンスタントに出荷してくれている。それを取り扱わせてもらっているだけで幸せである。3月の全体量からしたら、今年は昨年よりもやはり5%以上は少ない。沖縄が頑張ってくれていても、全体数量を埋め合わせるというわけには行かないのだ。こう思うのが普通だ。

 ある物は欲しくなくて、ない物は欲しくなる。こういう癖を人は持っているのは分かるが、プロは努力に報いる。ある物を上手に使い、消費者に価値を認めてもらう。これがプロの仕事だ。4月以降、暖かくなってビニールハウスの中は一足早く初夏の陽気にもなる。その時、有り余るものを一生懸命売る努力をしよう。それを生産者のペイライン以上に持って行き、スムーズな流れを作るのがプロの流通業者の役目である。

投稿者 磯村信夫 : 16:04

2014年3月 3日

卸売市場に要望される仕事

 2月の最終日、築地市場からの移転が決まり、土壌汚染処置も済んだ豊洲新市場で、鍬入れ式が行われた。青果市場と水産市場が移転し、卸売市場に隣接して賑わいゾーンも建設される。
 水産においては、世界最大の卸売市場の移転とあって、今後の発展が期待されるところである。水産の卸売場の設計は分からないが、青果については鮮度保持が出来る密閉型の市場となっており、場内に仲卸や買参人が使う小分け作業所やカット野菜の調整所などがある。
 農政ジャーナリストの小暮先生の言葉を借りると、卸売市場の役割が量と質の調整、産地にとっての生産・販売コストの削減と流通加工、更に安定したサプライチェーン作りと販売事業の人材育成等のニーズを満たすことの出来る卸売市場になって来ているのが分かる。2月28日のこの日、「市場流通ビジョンを考える会」(東京農業大学 藤島教授主幹)の研究会が開催されたが、農政ジャーナリストの小暮先生と卸売市場政策研究所代表の細川先生から、生き残る卸売市場を教えていただいた。
 
 鮮度保持物流、ピッキングと付加価値加工、仲卸と仲良くし、産地・販売のお互いの得意分野で協業する必要性、新しい食味や花飾りに必要な野菜・果物・花の開発と物流、これらが社会から求められる卸売市場の役目である。これら以外に小生が考えるのは、産地の連作による忌地現象を少なくする為、青果市場と花き市場が共に組み、その産地の輪作体系の中に野菜と花を入れてもらうこと。
 また、産地フェアーを一緒に行い、そのスーパーマーケットで、その産地の特産物である青果と花と一緒にプロモーション販売すること。卸・仲卸とも青果市場と協業して行くことは、中央市場や公設総合市場の役目だと考えている。これらを仕事のネタとして行っていくことが欠かせないと思う。
 
 また、よく直売、直売と言うが、直接産地が販売することはそんなに簡単なことではない。営業マンも足りない。なので、卸売市場(卸・仲卸)が直売の代理人として産地の販売をする必要があるのだ。
 現在、花の取り分はこのようになっている。平均値にて小売価格に対し、小売りの取り分はロスやリベートもあるので、60パーセント。卸・仲卸で小売価格に対し5パーセントの取り分。35パーセントが生産者の取り分となっている。生産者にとって卸売市場に販売代理をさせるとコスト削減できる。そして、卸売市場は更に仕事を深め、小売店がロスやらリベートを必要としない売れる花を消費者に供給すれば、小売りの必要経費も少なくて済むので、結果として生産者の取り分は増えてくる。これは、大田花きが最もやりたいことだ。皆がハッピーになる儲かるやり方だと思う。マーケッターとしての卸売市場は新商品開発にしのぎを削って産地に提案していく必要がある。これも卸売市場の大切な役目だ。

投稿者 磯村信夫 : 16:26

2014年2月 3日

小口の花は運んで貰えなくなる?

 先週の木曜日(1/30)は、ガーラ湯沢スキー場で滑っていた。"今日はリフトがよく止まるな"と思いながら、その原因を係員に聞くと、「アジアからのお客様が多いので、降りるのに慣れておらず、リフトをゆっくりしたり止める回数が多いのです」とのことだった。
 そういえば、下山コースを滑ってゴンドラで往復すると、数回に一回はアジアの方のグループと一緒になる。一家で来ている人が多いが、この間は香港かシンガポールの大学生だと思うが、アジアの英語かと思ったらイギリスのイントネーションでもなく、綺麗なアメリカ英語で会話をしていた。旧正月の休暇で、ガーラ湯沢スキー場もニセコや蔵王のように国際化している。
 
 国際化しているのは観光客だけではなく、日本の花もアジア圏の旧正月に向けて多数輸出された。20世紀末は、シンピジュームの鉢が中心だったが、今は切花が多くなりつつある。
 大田花きは、仲卸の仕事のバックアップとして、アジア圏の問屋との取引きを開拓しており、仲卸間の日本の花輸出ビジネスとして、今年の感触ではかなり期待出来るのではないかと思う。
 ちょうど2月というと、来期に向けての経営計画を策定している最中だが、昨年の4月より金融円滑法がなくなり、大田市場でも仲卸が1件廃業するということになったが、日本花き卸売市場協会首都圏支所の管内でも経営状況が思わしくない所が出てきた。
 イーコマースが益々盛んになってきて、箱の大きさが違ったり、逆さまは勿論のこと、横に倒してもいけない花は運んで貰えないという大手宅配業者があって、その動きが本格化してきた。どう運ぶかというのは来期の大切な課題だ。
 花は軽くて高価なものとして運送業者に優遇されていた時期があったので、箱の大きさもまちまちのままだ。こうなると、輸送効率だけでなく、産地集出荷場内の物流や共同荷受所、卸売市場の場内物流も今やコストが掛かり過ぎてしまうものになっている。
 我々花き取扱業者の考え方はすっかり時代遅れになってしまっていたのだ。大田市場では、仲卸業者のお客さんへの宅配便に困っている。特に水入りバケツ等は、水を抜いて再度荷づくりしなければならないのでコストがかかる。もう一度、荷姿の規格化、ダンボールや鮮度保持の仕方など、抜本的に考えなければならない時期となっているのだ。輸送効率に合わせた箱の規格、逆算して中身の規格を運送会社や物流機器メーカーの意見を取り入れながら、再統一する必要があるのだ。
 
 20世紀のまま仕事が出来るはずがない。我々はガラパゴス化しているのだ。問題点を発見した段階で具体的な施策を、しかもグローバルスタンダードの規格で考える必要がある。これは早急に取り組まなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 13:04

2014年1月 3日

いつも気になる売場作りのお手伝いを

 明けましておめでとうございます。
 本年は、首都圏の花売場を「いつも気になる花売場」でいて欲しいと思い、それに向けて魅力的な素材流通だけでなく、小売店への支援をしていきたいと考えております。
 
 首都圏の花き市場として大田花きではいくつかの取引方のうち、在宅セリでの成約の伸びが最も著しくなっています。
花の商売の難しさは、工業製品ではないので、品質の見立てをするにはプロの目が必要だという点であります。それゆえ、花束にした時のデザイン力だけではなく、素材そのものの見極め方が正しいと、例え夫婦二人で花屋さんをしても十二分に繁盛店になって行ける商売です。これは、花の仲卸や花束加工業者、アレンジャーにおいても同様で、目利きである必要があるのです。
 情報売りのセリ前取引や在宅セリで懸念されるのは、プロの目利きの人がそれらを利用するのなら良いのですが、成長過程の若い人にはセリ前取引や在宅セリは弱点となるのです。これら情報取引は分かっていることしか行わない保守性があるからです。
 目利きは、日本の花き業界で生きていく為の必須条件であるとすれば、情報売りや在宅セリを利用する人は、三現主義【現物、現場、現実】を週に一回は体験しておく必要があります。栽培上の気象条件は、近年振れ幅が大きくなっています。
 お客様の手元では常温で管理され、鑑賞されるわけですから、いくら鮮度保持をし、コールドチェーンが進んでるといっても、その植物体そのものの持つ生命力を見極めないとお客様を失望させることになるのです。

 私共が売場を活性化させる為には、お客様と接する小売店の意見を良く聞き、私共から産地の生産状況や新品種状況を伝え、共に勉強し合って、プロの目が品揃えしたものを陳列し、いつも新しく目が離せない売り場にしたいと思っております。
 これが地元、首都圏の花き市場として、大田花きが仲卸と一緒に行うべき本年一番大きな仕事です。
 本年も宜しくお願いいたします。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年12月 9日

「踏ん張りどころの専門店」

 8日の日曜日、首都圏に花を供給する東京の中央市場で松市が行われた。小さな首都圏と言われている皇居から50キロの千葉・埼玉・東京・神奈川には、日本の約4分の1の人たちが住んでいる。「東京は良いですね。一極集中で景気も良いし」とおっしゃる人がいるが、4人に一人が本当に景気が良ければ、日本の経済はもっと良くなるはずだ。
 例で、団塊の世代で言えば、長男は地元に残ったが、その弟たちは首都圏に出てきたわけで高齢化は倍して進んでいると言っても良い。しかし、人口が密集しているのは事実で、徒歩と自転車で、生鮮食料品・花きを買いに行く。花屋さんは、しっかりと商売になるエリアなのである。
 
 私は大森に住んでいるが、いつも利用しているCGCグループの食料品スーパーが花を販売するようになったのは今年からだ。徒歩で5分くらいのところに3つのスーパーがあるが、いずれも花を販売している。花屋さんも花の専門店として良い品揃えをしているので、しっかりと営業していると思う。
 このような商売の環境の中で、8日松市が行われたわけだが、私が見立てをしたところ、思っていた以上に量販店の集客力が強くなっているようだ。買参人である花の専門店の買う力が弱かったのだ。物日の店頭において、花が売れる数量は専門店では通常の2~3倍、量販店では7~10倍くらいである。花屋さんたちは頑張っているが、売れる時期になっても売り場面積をこれ以上増やすことは出来ないし、人手も沢山増やすというわけにはいかない。スーパーなどはセルフが多く、売れるときには面積を拡大することが出来るので商品を多く配置できる。なので、通常の10倍の売上げになっても不思議ではないのだ。
 
 花き市場の私たちは、お得意先であるスーパーへの納品業者である花束加工業者の優勝劣敗が今年決着したと見ている。素晴らしい花束加工をする業者がどんどんシェアを広げ、そういった勝ち組の業者は量販店からの申し出を断っているところもある。このことは分かっていた。市場での取引の内容を見ると、予約相対(注文品)やらセリ前取引も、以前に比べ多くなってきているのだ。こういう状況の中で、昨日松市のセリが行われた。消費者の気持ちは前向きだし、専門店の人たちは高級な花を扱う業者として、晴れやかな日であるお正月の花は今まで以上に頑張ってもらいたいし、彼らもやる気であろうと思う。なので、大田花きとしては、品質の素晴らしい松やブランド産地の松はしっかりセリで購入していただこうと準備をした。
 
 しかし、しかしである。セリの結果からして量が多かったということであった。素晴らしい品質のものも量が多いと食べ切れなかったのである。一年で一回の松市、良いものが安くては生産者に申し訳ない。大田花きとしては、今後とも専門店の花屋さんに期待をする。しかし、量販店の花売場は優秀な花束加工業者などの納品によって、ここまで消費者に当てにされるようになったのだ。"量販店の花売場はここまでシェアを伸ばしていたのか"と改めて思い知った松市であった。
 
 花の小売店は、新しい花との生活を提案する専門店。ワンストップショッピングで良いもの安くの量販店・スーパーマーケット。生活の場所ごとにそこに似合う花を販売するホームセンター。花の買い物時間削減のカタログ販売・インターネット販売。これらの4つが消費者にとって必要であるが、近年スーパーが激しい業態競争とともに着実に花売場を運営されているようである。
 人口密度は高いのだから、首都圏の花屋さんは絶えず新しい提案をし、消費を引っ張る花屋さんでいてほしい。昨日の松市を見ていて、スーパーと同じ若松だけでなく、もっと根引き松や他の松など、自分のデザインが活かせるものを予算内で消費者に提供していただきたいと思った次第である。
 販売額や利益は、景気と業界と各社の開発力の三重の要素に依存する。専門店と一緒になって、伝統文化に則った新しい花のあるお正月を提案しなければならないと強く感じた松市であった。

投稿者 磯村信夫 : 15:27

2013年10月21日

利益は酸素に同じ

 今週は週中、台風27号がやって来るので、被害を心配している。26号で亡くなられた伊豆大島の五味さんは、30年前から大島の特産の切花であったブバルディアの栽培農家で、他に枝切りのフリージアや千両も作っており、大島でも有数の花き生産者であった。
 五味さんの他にも被害が甚大な方も多く、天の恵みを受け行うのが農業なので、農業者の皆様方のやるせなさは如何なるものか。ただただお見舞い申し上げるしかない。
 伊豆大島と同様に、カラーで有名な千葉県の君津でも甚大な被害が出た。いずれの地域もしっかり利益を出し、それを再投資し、時代の要望に答えて進化してきた花き生産者が多くいる地域であるだけに無念でならない。今後の復興の為、花き市場として出来ることは何でもしたいと思う。

 ところで、話は変わるがもう一月で12月。暮れの需要を前にして、花き業界で一緒に仕事をして行く為、事業体の健全経営について再確認の意味で話をしておきたい。
「組織体にとって収支を合わせる。」そして、その「利益とは私たちにとっての"酸素"と一緒なのだ。利益が出なければ本来の事業活動の目的であるお取引先に喜んでもらい、お取引先の数を増やすことは出来ない。」
「組織である夫婦、家族、NPO法人、株式会社も全ての組織が帳尻を合わせる。投資の為の或いはメンテナンスの為の利益を出すということは最低限のことだ。」
「商売であれば、お客様から利益をいただく。NPO法人であればお客様から利益をいただかないが、寄付という形で活動資金をいただく。そして経営理念の実現と収支を合わせる。」ここが出来ていない花き生産者や流通業者、小売業者がまだ多くいると思われるので心配だ。

 2007年サブプライムローン問題、2008年リーマンショック、2011年3.11、そして2013年3月末の金融円滑化法打ち切り、来年4月からの消費税3%アップ。このような文脈で企業がふるいにかけられている。
 日本では青果がそうしたのか、魚がそうしたのか分からないが、スーパーマーケットの支払いが遅すぎる。スーパーの業態を作ったアメリカのクローガーは、生鮮品は鮮度の度合いから担保にならないから、10日締めの5日後で支払うのを基本としている。日本ではイトーヨーカ堂は設立当初からこのサイトだ。また、オランダの花市場では、農協系のラボバンクに預金残高がなければ買うことすら出来ない状況だ。
 もう一度言わせていただく。組織体にとり利益は目的ではなく、必要不可欠なものであることをしっかり認識していただきたい。
 この12月と来春の消費税値上げの時、消費減退の可能性がある。その波を乗り切っていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 11:41

2013年9月 2日

不満を少なくすれば満足するというわけではない

 先週の金曜日、バラの出荷グループ、九州大田会の会議が大田市場であり、いくつか話をした。その中で、これは役に立ったと会員からお褒めの言葉をいただいたので私が考えたのではないが、最新の"経営学"のセオリーの一つを紹介したい。
 
 それはフレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」というものだ。働いていて不満に思うことは、①給与 ②対人関係 ③作業条件などである。
 給与を上げていれば、不満は少なくなるのだが、働くことへの満足感が得られるというわけではない。対人関係がスムーズに行けば不満はなくなるのだが、遣り甲斐があったとは言えない。
 人が満足に感じるのは、①達成すること ②承認されること ③仕事そのものなどである。仕事というのは、どんな仕事にも社会的に価値があり、仕事だからこそ成果を上げなければならないものである。

 そういえば、昨日の日曜日、気仙沼に結婚式でうかがったが、ボランティアの方たちが仕事をしており「炎天下なのに大変だな」と思ったが、これは遣り甲斐のある良い仕事だ。しかしお金とは縁がない。
 景気と業界そして会社独自の戦略、この3つがその事業体の売上げ・利益水準を決めて行く。
 統計によると、日本国民は気持ちを不安にさせるホルモンが多く出る国民らしい。心配性な国民なのだ。その分、手を抜かず、誠実に仕事をするのだろうが、ハーズバーグの不満要因ばかりを経営者が気にして、社員に対して処遇を設定してはいけない。
 もっと大切なことは、ともに夢を語り、やらされているのではなく自らやっていく、やりたいからこの仕事をする。と社員に思ってもらうことだ。
 
 社長や上司・先輩がどんな夢を持っていてその時代を作って行こうとしているのか、同じ夢を見てもらうことが必要だ。もちろん技術も必要だろう。技術は事を成し遂げるスキルだが、スキルがないと事は成し得ない。
 しかし、スキルがあれば良いかというと、夢やら信念がないと分かり易い音楽や絵でさえも明らかに人を感動させる力が違うことが分かる。これは仕事も同じだ。その会社はどんな夢を実現して取引先や消費者に物やサービスを与えようとしているのか。
 そもそも人を雇うのは、やりたいことが自分一人では出来ないからで、社員やパートの人と一緒になって夢を実現しようとする。そこに事業の面白さがある。
 
 ハーズバーグの「二要因理論」を花き産業に属する事業体は良く考え、新しい価値を創造して行く上で欠かせない知識だと思うのである。

投稿者 磯村信夫 : 12:37

2013年7月 1日

株主総会で質問

 定点観測をしていると、ブルーの比率が花でも高まっているように見える。サッカーのサムライブルーから始まって、洋服の黒はすっかり定番になったものだから、ブルーの洋服やらアクセサリーなどが人目を引く。
 
 花は暑さを楽しむヒマワリの黄色やオレンジ、ジンジャーやヘリコニアなどの赤に代表されるものが人気だが、その他にも季節を表す白やブルー、そして葉物のグリーンがある。この中でもブルーの花は比率が上がっており、カーネーション、リンドウ、トルコギキョウ、スイレン等、時代の色として持てはやされて来ている。NFD(※)の"花ファッション"のトレンドの通りだ。

 さて、今日はもう一つ。先週の第26週は株主総会のピークの週だった。弊社大田花きはその前の週の土曜日だったが、株主の皆様から総会でいただいた質問の一部をご紹介したい。
 輸出についての質問をいただいた。農産物の輸出は日本の大きなテーマであり、可能性は十二分にある。
 
 大田市場 青果の仲卸で現在衆議院議員として活躍されている平議員は、産地がリンゴやみかんを輸出するのも良いが、卸売市場の仲卸が輸出業務をすることの方が先方のオーダーも受け易いし、日本農業の得意な傷み易いが生でいただく物(桃やびわ等切花含む)が継続的に輸出され、トータルの金額からすると、輸出金額が多くなると考えられ、この方向で政策決定され、植物検疫を市場ですることなどの実行対策も具体化されて来ている。
 
 今後、大田市場としては、韓国(ソウル圏)、中国(上海圏)、台湾(台北圏)、香港、シンガポールのそれぞれの市場か仲卸と商売したいと考えている。
 スポットの話では、パリやオランダの花市場に日本の花を輸出しているが、商売として成り立たせる必要がある。目処が付きつつあり、質にこだわる仲卸と良い物を作る生産者が一緒になって輸出業務に本格的に取り組んで行くことを簡単ではあるが説明させていただいた。

 また、為替の質問があった。円安に傾いたドル、ユーロの為替水準で日本の小売価格、或いは生産費または輸出において、どのような影響が出ているのかというものであった。1ドル95円~105円、1ユーロ125円~140円の間であれば、努力の範囲内で収益を落とすことなく生産・販売・輸出の3つが出来るであろう。
 
 しかし、今までのやり方では収益を落としてしまうので、生産者であれば製品化率を上げる。流通業者であれば、より価値のある物を扱う。ロスをなくす。輸出であれば、その地のマーケット調査をしっかりと行い、クールジャパンの一環として格好良い花のデザインを含めて素材を輸出して稼ぐということである。
 一定の円安なら、"やれば出来る"ということをお伝えした。どこの株式公開会社でも一般の株主がその会社の進むべき道を示唆してくれている。
  
 参院選挙前で、マスメディアは政局や経済活動について色々と言っているが、園芸分野の花き農業、卸売市場と仲卸、そして小売店を見ている限り、自分の花の仕事に社会的意義を見出してやる気になってやっている人は成長している。
 花き業界は泣き言を言わず、やる気を持って行えば、必ず成長していくと自信を持って言うことが出来る。

 ですから皆さん、チームを組んで一生懸命花き業界を前進させましょう。


※NFD・・・公益社団法人日本フラワーデザイナー協会

投稿者 磯村信夫 : 15:57

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