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2015年8月 3日

時代の変化と卸売市場の役割

 先日、雑誌で興味深い記事を読んだ。イオン、イトーヨーカ堂など大手量販店に関するもので、これまで破竹の勢いで伸びてきた大手量販店ビジネスの先行きが、不透明になってきたというものである。大手量販店は、本部仕入などの集中購買で調達力をつけると共に、マニュアル化により店舗オペレーションの効率化を図り、どの店舗でも同等の商品、サービスを提供することで競争力を高めてきた。また、合従連衡によりチェーン網の拡大もはかってきた。コンビニなどの新しい業態を展開し業績も伸ばしてきた。しかし、近年、本来の中核事業であったスーパー事業の利益がほとんどでない状態になってきたという。一時は地方スーパーを駆逐し全国制覇をする勢いであったが、この事業が壁にぶつかっているという。大手量販店の店舗は、品揃え、サービス共画一的であり、地方顧客のニーズに合わせた品揃え、売り場づくりが問題になっているらしい。強力な中央集権体制は、顧客に合わせた品揃えや売り場づくりをする力を現場から削いでしまったとも言われている。逆に地域特産品などを取り入れた地方スーパーの品揃え、売り場づくりが見直されている。これまで強いと思われていたビジネスモデルに大きな変化が現れているのだ。規模が強さではなくなり、「物量」ではなく「知量」が重要になってきている。

 情報化、交通網の発達、高齢化など、時代の変化と共に消費者ニーズにも変化が現れている。高度成長期には、世の中全体が忙しく効率化が求められていた。質よりは量、又は低価格なものが求められていた。全国どこにいても同じ商品、同じサービスを提供できることが評価されていた。安定成長期に入り、大型店舗での画一的な商品提供から、質が重視され、特徴ある品揃えが求められるようになってきた。高齢者の話を聞くと、大型店は品揃えは豊富だが、商品が多すぎて買いづらいという話も聞く。専門知識を持ち、顧客の立場に立った提案のできる専門店が求められているように思える。特に「花き」の場合は単に商品を購入するというだけではなく、生活の中でそれを楽しむということも重要な要素になる。従来から、日本では生活の中に花が取り入れられてきた。命日には仏壇に花を飾り故人を偲ぶ習慣もあった。また、生け花は花嫁修業の一つでもあった。高齢化社会が進展しているが、高齢者は花を生活に取り入れてきた世代である。元気な高齢者に古き良き文化をもっと発信してもらう必要があるのかもしれない。

 先日、家族で福島へ旅行した。宿泊したホテルでは至るところに立派な花が生けてあった。ロビーを兼ねた喫茶コーナーでは、すべてのテーブルに小さな鉢物が置いてあった。各テーブルともすべて異なる種類のものであり、非常に気配りあるサービスだと思った。平日であったこともあり、宿泊客の多くは高齢者であったが、皆満足しているように見えた。チェックアウトの際に購入先を尋ねている人もいた。工夫次第でビジネスチャンスは大いにあるように感じた。

 卸売市場では多種多様な商品を取り扱っている。見方を変えれば新しい発見があるかもしれない。生産者、小売店との情報交換を密にし、花を楽しむ生活提案など新しい役割を果たしてゆく時代がきているように思う。

取締役 奥野 義博
(元 JFEアドバンストライト株式会社 代表取締役社長)

2015年8月 3日 13:28

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