2013年2月15日
vol.99 石井フラワーガーデン(埼玉県)
ボンジョールノ!
みなさま、ごきげんよう!(≧∇≦)
・・・と、すごいテンションで始めてしまいましたが、今回は記念すべき第99回!
特集は石井フラワーガーデンさんのフリフリパンズィ~です。
フリフリパンジーだなんて、想像しただけで気持ちがフリフリ・・・あ、いえ、ウキウキしてしまいます☆
やってきたのは、埼玉県川口市。
大田市場から道のりにしてちょうど50km。
すぐ上には、首都高川口線が走っています。その高架の存在は初めて見る取材班にとっては結構な存在感に思えます。
この周辺一帯の4,500坪(路地2,300坪・温室2,200坪)にて、ムーランやペチュニア(八重)などをメインに栽培しています。
こちらが石井フラワーガーデンの代表石井正義さん。
苗生産一筋25年!
んて、あら?石井さん、ぱっと見25歳くらいかと思いましたが・・・この若さの秘訣は最後まで読んでくださった方だけに教えちゃいます!
さて、早速石井さんのフリフリパンジーを見てまいりましょう。
このフリフリパンジーにはきちんとした名前があります。
それは「イタリア貴族のスミレ ムーラン」☆☆☆
ここでは、略してムーランと呼ばせていただきますので、ご了承ください。
"あれ?ムーラン・ルージュじゃないの?"と思われた方へ。
ここは語れば長ぁ~いストーリーがありますので、短めにご説明いたします。
石井さんは一度「ムーラン・ルージュ」で商標登録され、特許庁からも登録証をもらいました。
しかーし、イタリアの本家本元、あのキャバレーのムーラン・ルージュがダメーッ!と言ってきて、登録拒否権が発動され>>>早送り>>>早送り>>>早送り>>>ナンチャラカンチャラ・・・
(写真はフリー素材より)
早送り>>>最後には、特許庁から「特許庁も万能ではない」と言われ、一度登録されたにもかかわらず、登録取り消しを余儀なくされました。
そして新しく生まれた名前が「イタリア貴族のスミレ ムーラン」というわけです。登録商標でR。
但し、商標や特許に関する登録のしくみは面白いもので、日本の園芸界におけるムーラン・ルージュの排他権は石井さんが持っていることになります。
商標に関して申し上げれば、花の名前で「ムーラン」の権者は石井さんにありますので、石井さんちのパンジーにしか使ってはいけないことになっています。
他産地から「ムーラン」の名前でパンジー、もしくはほかの花きが出荷されていたら、それはいわゆる商標違反で「ニセモノ」ってやつですから、ご注意ください。
生産者のみなさまも、ムーランは商標登録されていることをココでひとつご留意くださいますようお願いいたします。
はい、本題に戻りまして、このムーラン、ただのパンジーではありません。
これがいかに普通のパンジーと違うか、ご説明させて頂きましょう。
まず、ムーランをどなたが育種したかというと、イタリアのファーメンという会社です。
経営者のファミリーネームファラオネ・メンネーラ、Faraone Mennellaの冒頭部分をとって「Far+Men」でファーメン。
ファーメン社は知る人ぞ知る世界最古の種苗会社!ご存知なかった方は、今ココで知ってください!
所在地はイタリアのナポリです。
ナポリは、直径50km以内になんと4つの世界遺産を擁する歴史と情緒に溢れるところです。
その4つとは、
◆ アマルフィー海岸(Oh―!織田裕二の映画を思い出す~)
◆ カゼルダ宮殿(圧巻!マリア・テレジアもマリー・アントワネットも親子でまっツぁお。映画「スター・ウォーズ」や「ミッション・インポシブル」の撮影にも使われました。)
◆ ナポリ歴史自治区
(王宮や複数のナンチャラ城、チョメチョメ修道院を含む一帯が世界遺産として登録されている)
◆ ポンペイ遺跡(西暦79年のベスビオ火山大噴火により、一夜にして時が止まってしまった繁栄の街ポンペイ。みなさんも一度は行ってください♪
↓向こうの山がベスビオ山です)
う~、なんて羨ましい(≧∇≦)
このような場所だからこそ、「ナポリを見てから死ね」なんていう名言も生まれるわけです。
「ナポリの歴史はローマより古いんだ。
紀元前はイタリアの玄関口だった。紀元前4000年から3000年の遺跡がごろごろ残っているからね。」
とイタリア通の石井さんが教えてくださいました。
ナポリの繁栄はローマ帝国のずっと前からだったわけですね。
Napoliの語源はNeapolice(ネア・ポリス)、つまり「新しい都市」という意味ですが、まったくもって歴史ある古い都市なのですね。
そのナポリで種苗会社を営むファーメン社。
こちらが社長レナート・ファラオネ・メンネーラさん、73歳。
ボンジョルノ!
この方なんと、自らを育種界のミケランジェロと称します。
イタリアで"あいつはミケランジェロ"といったら、奇人変人の代名詞。
つまり自分は変わったブリーダーなんだと自認していらっしゃるわけです。
その理由は後述させていただきます。
「そんな歴史ある街に、あんなとぼけたおじさん(←レナート社長のこと。石井さんの言です、あくまでも。信頼関係を構築した石井さんだからこその呼び方ですね)が生まれたのかってことなんだけど・・・そのようなところに貴族として生まれていれば、少しは違う感性を持ち合わせるっていうことなのかな。」
きッ、キッ、貴族??
石井さん、今「貴族」とおっしゃいました?つ、つまり、メディチ家とかハプスブルク家みたいな??
「そうだよ。ファラオネ・メンネーラ家は貴族なんだ。」
ガーン( ̄Д ̄;) ||| ||| |||
ここで日本の花と欧州系の貴族とが結び付くとは!!憧れの欧州貴族、ついにウン探にご登場!
「ウン探さん、宝飾品のカメオって知ってるでしょ。何を隠そう、そのカメオを世に排出したのがこのファラオネ・メンネーラ家なんだ。
イタリアも敗戦国のひとつだけど、戦後はカメオで食い繋いできたらしいよ。
だから、レナート社長の息子さんは、現在ジュエリーデザイナーとして世界を舞台に活躍されているんだ。プライベートジェットで全米中を飛び回っているらしい。映画の中で女優さんのジュエリープロデュースもしているのだとか」
デッ、出た。世界級のセレブ(゚ロ゚;)!!
石井さんに見せていただいた写真には、そのジュエリーデザイナーのご子息が、ハリウッドの女優やスーパーモデルたちと笑顔で肩を組んでいるではないか・・・!
中には、クリントン元米国大統領やオバマ大統領との一緒の写真まで!!
(右側がレナート社長のご子息)
ワオオオーw(*゚o゚*)w!
(貴族様邸にあるワインセラー。レナート社長)
ここで一句。
貴族様 ああ貴族様 貴族様 ---うんちく探検隊
ところで、そのカメオや宝飾品などのキラキラ系★貴族様が、なぜ花の育種をされているのですか?
「貴族だから、王宮とか--つまりカゼルダ宮殿とかだよね、そういうところに出入りして、王家の方の身の回りのお世話をするわけ。日々出入りしているうちに、宝飾品だけではなくて、家の周りのこととか、花壇を整えたり、植栽のお世話などを幅広くしているうちに、そこからビジネスになって種苗もやるようになったという流れなんだ」
なるほど、さすが貴族様。オールマイティにお世話をしているうちに、ビジネスに発展させてしまうわけですね。うまくいく人は何をやってもうまくいくんだなー。
「そう、貴族様は多才なんだ。
レナート社長もヨットの設計なんかもやっちゃうんだ。趣味は船舶と車。最近は気功にもハマっているらしいよ!」
(愛車の赤いFIATからムーランを掲げるレナート社長)
恐れ入りました、貴族様。コリャ本物だ。
レナート社長のムーラン作出のこだわりとは何でしょうか。
ムーランのこだわり◆その1 「全ての花の顔が違う」
ひとつの株から出ている花の顔が全て違う!同じ顔のものは二つない!
「人間だって同じ顔が二つとないんだから、花だってそれぞれの個性を生かして、全て違って当然じゃないかっていうレナート社長のポリシーなんだ」
↑本当に一つ一つの顔が全て違うんです!
はい、みなさん、ここがレナート社長がミケランジェロと自称する理由です。
ムーランが育種された頃は、園芸界では"いかに均一な花を作るか"ということに重点が置かれていました。効率主義、ムダ取りが加速し、"個性"なんて言葉はどこへやら。オンリーワンよりナンバーワンの時代で、そのナンバーワンをいかに均一化して量産するかということが重要だったわけです。
「ひとつの株から全部違う顔の花が咲くことをキメラ咲きっていうんだ。均一化重視の当時、世界的な潮流としてキメラ咲きは不良品として捨てられていたんだよ。」
ガーンΣ(゚口゚; ナント!
「でも、均一化された花には歴史や文化は反映されていないよね。
世の潮流に逆流するように、世界で唯一レナート社長がキメラ咲きが素晴らしいと言い続けて、ムーランを作出したんだよ」
と石井さん。
このナポリの歴史と文化がユニークな人を育てて、その家系と血統と個性が見事に反映されたのがこのムーランということですね。
「均一化でパンジーやスミレの変異の資源はどんどんなくなっていった。花業界だけではなくて、どの業界でも世界全体でそういう傾向にあったけど、効率主義でムダ取りが推進されたでしょ。その時にはみ出し系の要素はムダだと捨てられていったんだ。
キメラ咲きには変異が多いから、たまに黒い花が咲くんだ。その黒も青から生まれたり、赤生まれたり。またその黒から赤や青のパンジーが生まれる。
赤を作るためには赤以外の品種で作る。青も青以外から作る。黒も同様で、黒以外の品種から作るんだ。
これはレナート社長だけが持っている秘密の育種ノウハウだよ」
黒の中には苦労が多分に含まれているのですね!(クロにクローが・・・あー、またダジャレ言ってしまった!スミマセン)
(ムーランフリル・ネロ)
ムーランの個性を見るポイントは?
「花色、花姿、花脈、表と裏の色との違い、フリル加減などをよく見てごらん。香りもそれぞれだよ
どれひとつ同じではないことが分かるでしょ」
ほんと、この色のグラデーション、水彩画のような色の載り方、表裏の色の違い、心揺れるフリル・・・それぞれが全て違い、ムーランの魅力を増しています。
従来、花壇苗としてのパンジーはメインになる大きな植物の手前を飾る彩(いろどり)で、色彩としてのパンジーでした。小花を集め、色で面を作り、その全体を見るものでした。もちろん今でも多くの場合そのように使われています。
しかし、このムーランは"団体戦で面を作るパンジー"から、"個人戦で一輪一輪を見るパンジー"として進化&デビューした画期的な品種なのです。
だからこそ、パンジーの切り花化が実現したと言っていいでしょう。
背の低い花壇苗のパンジーがいつか切り花になる日なんて、みなさま想像していましたか??本当にすごい進化です。
ムーランのこだわり◆その2 「花と目が合う」
花と目が合うだなんて!
「人と人が話をするときに目を合わせるように、花とも目と目と合わせて話をしようっていうミケランジェロ、いや、レナート社長の思いが込められているんだ」
目というのは、ムーランのこの中心部分。
一般的にフリルが強いパンジーはフリルで目が隠れているものもありますが、ムーランは目が全て見えているというのがこだわり。
是非ムーランと見つめ合ってみてください。目が合わなければムーランではありません。
ムーランのこだわり◆その3 「花持ちが良い」
個人的な経験談になりますが、昨年の3月14日、フラワーバレンタインのお返しで社内の方にフリンジパンジーを差し上げたところ、その方は会社の机上に置いて楽しんでくれていました。
ところが、市場で買ったばかりなのに3日と持たずに(!)、私の目の前にみるみる枯れていってしまったのです。
これでは、初めて切りのパンジーを買う方には、「花持ちが短いもの」という印象を与えてしまうのではないかと心配していたのですが・・・
「ムーランはそんなことないよ。
それに、出荷するときにこのくらいのつぼみでも、
開花するときちんと色が載るんだ。
ほかのスミレにはない特性だよ。だから、遠方に出荷しても流通段階で商品の価値が落ちることもない。花弁も厚いし、良い花でしょ~」
なるほど、実際にムーランの花持ちを会社で試してみると、鑑賞期間は12日を超えました。この記事を書いている現在においても尚、観賞価値があります。
こちらは、石井さんの圃場から頂いてきて11日目のムーランちゃん。
オフィスで鑑賞していますので、終日暖房の中にもかかわらず元気です♪
さすが、息の長い歴史の上に立った貴族様に育種されたものは、息が長いですね。
そのようなムーランと石井さんとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。
そんなハイソなイタリアーノとお付き合いできるなんて、アタクシもアヤカリタイーノ!!
「1999年から2000年にかけて花壇苗の価格が半値以下に暴落したことがあったんだけど、ちょうどその時、知人が一緒にイタリアに行かないかって誘ってくれてね。
でも、実を言うとそれほどイタリアに行くことに興味もなくて、イタリアに何かあるのかなぁ・・・?なんて、なんだか気は進まなかった。いつも行くのはドイツだったからね。
とはいえ、イタリアには行ったことがなかったし、今のこの苗の価格では何かしなくちゃいけないし、それならいつもと違うイタリアに行ってみようかとなったのが最初のきっかけ」
そこで出会ってしまったわけですね!?
「行ってみたらファーメン社にはパンジーとプリムラのメラコイデスとポリアンサがたくさんあった。
その時はこのムーランは試作中だったんだけど、レナート社長が情熱的に"いい花だ、いい花だ"とムーランを説明するんだ。
(ファーメンの圃場を歩くレナート社長)
それ聞いても、まだピンとこなくてね。
当時はパンジーのフリル咲きといえば"12月中には咲かない花"の代名詞だったんだ。
パンジーはあくまでも年明けの商材。しかも、その9割は3月に流通するものだから、"なぁ~んだ、咲かない代表のパンジーかよ・・・"って思ったんだ。
だけど、レナート社長の情熱的な説明は加速していった。
① これは秋にも咲く
② 丈が長く、切り花用にも転用可能
③ 花によっては香りもする
ってね。
んじゃあ、まあとりあえず日本に持って帰ろうかとなったのがきっかけだよ」
それまでの"12月中にはパンジーは咲かない"という日本のマーケットでの常識を超えて、レナート社長の熱心な説得に心揺らいだわけですね。
持って帰ってきて、日本のマーケットでの反応はいかがでしたでしょうか。
「それはねー、お花屋さんとかランドスケーパーとかお偉方の先生とか市場関係の人とか、ご意見番20人くらいに聞いてみたんだけど、一人もいいと言った人がいなかったんだ!」
ガーン(@_@。ショック・・・
なぜなのでしょうか!?こんなにかわいらしいものを・・・と今だからこそ思ってしまいますが。
「みんな経験値が高い分、"この手のものは売れないんだよね"と答えは同じだし、早い。」
そこまで異口同音に同じ答えを出されて、くじけなかったのはなぜですか?
「20人聞いて20人とも駄目だったんだけど、そのほかに2人だけ"いいね!"って言ってくれた人がいたんだ」
どなたでしょうか?
「1人はうちのパートさん。切り花デザインの先生をやっている人なんだ」
なるほど。身内に応援してくれる方がいらっしゃるのは心強いですね。
もうひとりは?
「ワタシ。」
なるほど!
そこですよね、ソコ!
やはりご自身がいいと思わないといけませんし、信念を持って伝えれば、マーケットは響いてくれる!
実際に出荷されて、マーケットの反応はいかがでしたか?
「咲かせてはちょっと売ってなんてやっていたんだけど、思うように売れなかったんだよ、2年くらい。
ところが、折しもパンジーは徐々に春から秋の商材にシフトし始めてきて、さらにサカタのタネさんからリカちゃんスミレが発売になって、パンジーの高値のマーケットを創出してくれたんだ。
このときに"もしかしたらムーランもいけるかも"って思って、花をたくさん付けて出荷したんだ。すると店頭で少し動き始めてね、チョロチョロではなく、秋口からまとめて出荷するようにしたんだ。
まとめて出荷したら実際に買う人の意見を伺うことができて、そこからまた改善してはまとめて出荷して、歯車が回るようになったんだ」
なるほど、それがムーラン誕生秘話ですね!
ありがとうございました。
このままでは生産ウンチクが全くなくなってしまうので、ウン探の本質を見失わないためにも少しだけご紹介します。
土壌
切り花用のムーランは、パンジーといえども、このように8寸の大きな鉢に2株を植えて栽培します。
土は何を使うのですか?
「堆肥、赤土、鹿沼土、ピートと肥料をオリジナル比率でブレンドしている。同じムーランでも切り花用と鉢物用とで少しバランスを変えるんだ。」
そうすると、切り花用に少し丈が取れるようになるのだとか。
しかし、もともとムーランは普通のパンジーよりも背が高くなる性質があるそうです。
「立ち上がって枝が伸びていく性質が強いんだ。」
↑左側が切り花用に栽培しているムーラン。
だからこそ切り花にも向いているわけですね。
暖房
圃場をぱっと拝見したところ暖房装置は一切ないようですが、パンジーは寒くても大丈夫なのでしょうか。
「花の組織の中にアルコール成分が入っていて、一時的になら気温が氷点下になっても大丈夫なんだ。
でも氷点下続きで、ずっと凍りっぱなしはダメ。{{{{(+ω+)}}}}寒ぅ!
だから北欧とか1日中気温がプラスにならないところではNGなんだけど、日本のように1日の中で氷点下になったり、昼間にはプラスになったりするところであれば、花の組織は死なずにいられるんだよ。」
パンジーは日々の中で凍る⇔解凍があるのはOKなんだそうです。
そういう意味では寒さに強いって言っていいのですね。しかし、暑さは苦手なので管理の際は要注意です。
電照
蛍光灯は電照用ですか、それとも夜業用ですか?
「電照だよ。12月から夕方4時間くらい電照するんだ。」
むむ、パンジーにも電照が必要だったとは・・・その心は?
「花首が急に伸びないように。」
パンジーは相対的長日植物。つまり、日が長いほど花芽の形成が促進される植物です。
植物の生長は、体を大きくするための栄養生長と子孫を残すために花芽を付ける生殖生長とに分けられます。この二つの生長は切り替わりるもので、同時に二つをすることはありません。
パンジーは日照が少ないと花芽を付けないということは、日照が少ないと、栄養生長に走ってしまうわけです。
そこで、12月の最も日照量の少ないときに電照することによって、花芽の形成を促進し、同時に花首もやたらに伸びることなく締まった植物体ができて、一石二鳥というわけです(゚∇^*) b
「無理に早く出荷しようとせずに、自然にゆっくり育てた方が花持ちが良くなる。
それに、急いで育てると花期が終わり萎れたときに茶色になってしまうんだ」
つまり・・・もしかして、ひょっとして?ムーランは枯れても花色が残るってことですか?
「そう、ゆっくり育てると、萎れても花の色が残るんだ。こういう感じにね」
あ、ほんまや。ウン探で取材ご観察していたムーラン。萎れて花弁が落ちるところまでいった個体でさえも尚、花色が変わることはありませんでした。
ドライフラワーのように往年の彩色をそのまま残したかのよう。なるほど、美しいまま天寿を全うした感じですね。
黒い物体
ところで、石井さん、天井からぶら下がっているこの黒い物体は何ですか?
「あー、バレてしまったか・・・。これは隠し技なんだ」
ドキッ!(゚∇゚ ;)
"隠し技"とか"秘密の小道具"とか、そーゆー響き好きだな~ρ(´ε`*)
「二酸化塩素を揮発させるものなんだ」
ニサンカエンソ???・・・何のためにですか?
「ボト※が発生するのを防止するんだ。」
※ボト:加湿の状態で発生しやすい植物の病気。茎葉が溶けるように腐ったり、花弁に黒っぽい斑点などの症状が出て、観賞価値を失う。病原菌をボトリチスということからボトという。
「例えばこれと比べてごらん」と見せてくださったのは露地に置いたムーラン。
写真では分かりにくいのですが、露地に置いていたムーランは朝露などで湿度が上がり、ボトが発生していました。茶色くなって、溶けたり、腐ったように見えたりします。
「この装置を付けてから、ボトは殆ど発生しなくなったよ。
んでコッチが"秘密の小道具"」
と見せてくださったのは、長い柄のついたもの。先端がL字に折れて、なにか不織布か毛糸のようなもので巻いてある。
ん??なんじゃコレ!?「(゚ペ)
「水やりをするためのものだよ。
こうやって、花に水がかからないように水やりをするんだ。
先端にクッションが巻いてあれば、水圧も柔らかくなるし花を傷つけることなく水やりができる」
なるほど!石井さんの創意工夫の小道具だったのですね!
そして最後は、石井さんの手によって丁寧に摘み取られ、丸いミニブーケのように束ねられます。
出荷の際は、足元はこのようなカップに水とフラワーフード入れ、ムーランちゃまにとって完璧な状態が図られます。
とまあ、こうして貴族のレナート社長が生み出したムーランちゃまも、石井さんとの信頼関係を基に日本のマーケットに流通するようになりました。
信頼の証に、石井さんは生産ばかりではなく、ファラオネ・メンネーラ家の貴族の紋章まで利用を許可されました。まさに、日本で唯一、この紋章の利用を許可されたのは、石井正義さんだけ!
↓こちらがファラオネ・メンネーラ家の紋章です。
左上から時計回りに、ミツバチ、トラ、ハト、城、人が描かれています。
ムーランの苗に挿してあるラベルには、この紋章が描かれています。皆様も手にとってご覧になってみてください。
多くの世界文化遺産を擁したナポリのミケランジェロ様のご意思を川口市の石井様が一身に受けて生産された、その重みを感じることができるかもしれません。
あ、ところで石井さんはミケランジェロ様のようなニックネームあるのですか?
「ビンテンツォー・グラディアトーレ」
WOW!∑(゚□゚;) オオソレミーヨォ!
そのミケランジェロ様から頂いたニックネームなんだそうです!
いただいたのは、紋章の使用許可と種苗だけではなかったのです!
貴族様のもとに通い続けて4年目にしてもらったのだとか。これぞ信頼の証。
ッで、何か意味はあるのですか??
「ビンテンツォーは"勝、勝男"など勝利を意味する名前、グラディアトーレは"グラディエイター、剣闘士"って意味なんだよ。
つまり日本語風に言えば『剣闘士 勝男』。
戦って、花を売ってこいとの命令付きニックネームなんだよ」
あはは^_^;
剣闘士勝男様、これまた結構なプレッシャー付きのお名前ですが、それだけ信頼を得てのことだと思います。さすがです。
(2013年1月撮影)
石井さんにとってムーランとは何ですか?
「何か価値あるもの、つまりブランドを作りたいと思っていたんだけど、その扉を開いてくれた花といえる。
言葉を換えれば"希望"ともいえるかな。
子供のころに金賞とか一等賞とかとると嬉しかったでしょ。そういう経験に近いかも。
だってムーランを導入するときは、誰に聞いてもダメって言われたのに、今はこうやってみんなに受け入れてもらっているわけだから」
ムーランはとても良い花だと思うので、石井さんが日本の種苗代理店になって生産を拡大するってのはいかがでしょう・・・?愚案でしたらすみません。
「それも考えなかったわけではないよ。
でも、複数の生産者で作ると、その商品への思いも技術も複数あるから、結局うまくいかなくなってしまったという過去の例を結構見てきたんだ。」
なるほど、レナート社長の思いを120%理解して一身に受け継いだ石井さんとしては、決して日本での販売で失敗したくないし、良い花だからこそ無駄にしたくない。
そのような思いから、全てご自身の責任でやっていこうという選択なわけですね。
ここにも剣闘士勝男さんとしての意気込みと責任感を見て取ることができます。
「ドイツで開催される展示会のIPM(アイピーエム)※などに行っても、ひとつの種苗を扱っているのは、多くの場合一人(あるいはひとつの組織)なんだよ。
一人ではいくつも扱えないし、一人がひとつの種苗をマーケットの中で大切に育てていくイメージ。寡占化し尽くされているという印象を受ける人もいるかもしれないけど、それがマーケットの作り方なんだと思うよ」
その口調からは「独占」や「寡占」という言葉のイメージとは程遠く、むしろイタリアの貴族が愛し、こだわりを持って作出したムーランを、日本のお客様にもより良い形でお届けするために交通整理して、大切にブランド化しているという印象を受けます。
※IPM・・・Internationale Pflanzenmesse(=ドイツ語で「国際園芸見本市」)のこと。
ドュバイや上海など世界各地で定期的に開催されるが、会話の中でIPMというと1月のエッセン(ドイツ)の開催を指すことが多い。
イタリアやIPMなど、毎年ヨーロッパやそのほかの国などを見て、思うことは何ですか
「おしゃれでセンスの良いお店が多いよね。お花屋さんだけでなく、何のお店にしても街中に、また少し郊外に外れたとしても当たり前に存在する。
翻って日本は何にしても地域格差が大きいかな。
でもそういうことは、外国に行かなくても国内でも観察できる。
都心のデパートの売り場や見せ方は、20-30年前と大きく変わったよね。販売経路も小売り形態も変わった。生産する方も販売もそれに合わせて変えていかなくちゃいけないことがあるよね」
そうか、外国で何を見てくるかではなく、日々の生活の中に観察ポイントはたくさんあるということですね。
街を見ても、店を見ても、人を見ても、鋭い観察力で見識を広める。これが石井さん流のひとつの勉強法といえるようです。
そういえばレナート社長は貴族様らしく趣味が多彩でいらっしゃいましたが、石井さんのご趣味は何でしょうか
「そうだねぇー、・・・
一、 シゴト
一、 変わった人と会うこと
一、 食べ歩き
一、 料理 (料理教室の◎◎クッキングで最上級のライセンスを取得。その腕によりをかけて、イタリアに行けばシェフたちと料理をするし、日本でもときどきイタリア料理をふるまう!)
←カッチョええー!
一、 街に出て新しいものに触れること。刺激に満ち溢れた世界を楽しむこと
・・・かな」
なんでも石井さんは人に会ったり、新しいものを見たり出来事があったりすると幸福感を得て、それをご自身の活動燃料にしていらっしゃるのだとか。
「そういうことがあるとβエンドルフィンが噴水のように出てくるんだ」
ゥヲーーーーー!
このβエンドルフィンが、冒頭で石井さんが25歳に見えた若さの秘訣だったのかもしれません。
なるほど、石井さんのエネルギーは人との出会いと日々の刺激でしたか。ここに生産意欲の源もあったわけですね!
ココ川口で花生産ビジネスをするということはどういうことを意味しますか?
「あ、それはね、遠路はるばる東京にいらした方から呼び出しがかかっても、すぐに駆けつけて合流できることだよ。人と会うチャンスを逃すことも少なくなるし、川口で生産するメリットは大きい」
ここでも石井さんが人とのご縁をいかに大切にしているかが表れています。
最初はイタリアに行くことすらも気が進まなかった石井さんですが、レナート社長との出会いを大切にしたことにより、篤い人望を得て国内で唯一ファーメンの紋章を利用することを許されました。商機はやはり人との出会いの中にあるということですね。
石井さんが最も大切にしているのは、何より"人"であるような気がします。
みなさまもご存知の通り禅語に「一期一会」という言葉があります。
イタリア×禅ときて、まあなんと接点のなさそうな程遠い要素を掛け合わせたものだと思われるかもしれませんが、つまり真実は世界共通だということでしょうか。
ね?剣闘士勝男さん??
ムーランの取り扱い方法について・・・から学ぶ、剣闘士勝男さんこと石井正義さんの金言!
苗も切り花も暑さに弱いので気を付けて!
夏は亜熱帯化してきているこの日本列島では、苗も暑さで溶けかねません!
昨夏は異常な暑さから9月に一度苗がダメになってしまったのだとか。それでも、今まで考えもしなかった方法で、従来より劇的に良い花を付ける良い栽培方法を見つけたのだそうです。
「失敗から学ぶことも大切。失敗はやりたくてやっているわけではない。自分の意志ではないわけだから、ある意味それも運といえる。
そこから生まれる何かを掴めるかどうか。失敗から生まれる成功だってあるんだ。それも人との出会いの中にあたりするんだけどね。」
"失敗から生まれる成功がある"だなんて、石井さん、エジソンみたいですね!
「失敗は成功の母」――by トーマス・エジソン
「私の人生は振り返るとその繰り返しだよ。
トライ(Try)&エラー(Error)・・・で終わらず、&リカバリー(Recovery)&インプルーブ(Improve)アーンド サクセス(Success)!」
PDCA(Plan-Do-Check-Action)ならぬTERIS(テリス)といったところでしょうか。
石井フラワーガーデンの格言
■ ムーランは、何千年もの歴史を持つナポリの地で、貴族様が類稀なる感性で作出した世界の逸品。
手にしたときはナポリの風を感じてください。
そうそう、ムーランは登録商標です。石井さん以外は、「ムーラン」、あるいは「ムーランルージュ」の名前で花を出荷できませんのでご注意ください。
■ 商機は人と人とのつながりにあり!商機を勝機と捉え、人とのご縁を大切にせよ!
■ 街を見ても人を見ても、生活の中には観察ポイントがたくさん!
一歩外に出たら、観察眼を光らせて、時代の変化をキャッチせよ!
■ 人生はTERIS!
失敗から生まれる成功がある。by 剣闘士 勝男
最後に「イタリア貴族のスミレ ムーラン」の美しい画像をお楽しみください。
(合成ではありません)
向こうに見えるのはベスビオ山です↑
それではみなさん、Enjoy your life!!
アリベデルチ! ciao, ciao~!
※数々の貴重な写真は石井フラワーガーデン様からご提供いただきました。
2012年6月29日
vol.95 皿井植物園(愛知県) 後編
★今後の展望と方向性
「これからも観葉植物にとって厳しい時代が続くと思う」という社長の皿井さん。
ではどのように乗り越えますか。
「売り方を変えていきたいと思う。
生産は会長に任せて、私は販売をもっと考えていきたい。
実際に5-6年前から出荷する時の鉢をオリジナルのものに変更したんだ。それまでは生産鉢といって、生産する時のプラスチック鉢のまま出荷していたんだけど、それをデザイン性のあるものに変えたんだ」
今まではこのように鉢の縁のあるもので出荷していました。
これを飾るとき、多くの場合、おしゃれな鉢カバーを使うでしょう。
しかし、↓このようにファッション性のある鉢で提案することにより、商品としての完成度が高くなり、使う人もこのまま飾れるようになります。
これは、・・・陶器鉢ですか?
「陶器鉢もあるけど、多くはプラスチック鉢」
でも一見陶器のように見えますね。
「陶器では重いし、せっかく納品しても割れていたりするでしょ。逆に出荷先で取り扱う人に迷惑をかけちゃうことになるんだ。
だから、数量限定で、本当に一部のみを高級品として陶器で出荷して、もっと気軽に楽しんでもらうためのものは、おしゃれにデザイン性を高めつつも取り扱いやすいようにしているんだ」
なるほど、デザイン性を重視しつつ販売者や消費者の便宜を図る。観葉植物としての完成度をより高めて出荷しているのですね。
「お客様がどのような商品を買いたいかということをいつも考えるようにしているよ。
売れない商品を作っても仕方ないでしょ。売れる商品をいかに作って、いかに売っていくか。ヒット商品が出たとしても寿命は短いから、次の商品として何をどう提案していくか、常に考えるようにしている」
★会長インタビュー
花きの生産・販売を取り巻く環境がものすごいスピードで変化していますが、生産側としてはどのように対応していきますか?
「1+1=2までの理解能力の人に√(ルート)の計算を教えても、これは暖簾に腕押し。
つまり一人ひとりが能力を持っていないといけない。オートメーションといっても、機械と同じなら機械がやればいいこと。少量多品種の時代は、全ての鉢物の管理が同じというわけではない。それぞれの商品の特性を理解して従業員が技術を上げていかないと、正しく水やりもできない。
個々の従業員の能力を高めてもらって、またそういう人に集まってきてほしいと思う。ここが私たちの生産のキーを握っていると思うんだ。
仕事は体が2割、頭が8割。
職場に行く前から既にやることは決まっていて、体を使って2割を体現していくだけ」
なるほど、頭を使わずして仕事はできない。しかも8割が仕事の外でインスピレーションを受けたりして決まっていく。2割はシンプルにアウトプットということですね。
「現場でも頭が働かなければ、なんぼ体が丈夫でも2割の仕事しかできない。
“百姓は馬鹿でもできる”と言われた時代もあったが、今は違う」
そうですね、農家さんは仕入れから生産、販売、マーケティング、経営も何でも全て自分でやらなくてはならないわけですから、オールマイティで頭の良い人でなければできることではありません。
「でも、うちの場合は例えば従業員が100人いたとしても、自分で考えて植物を育てられる人は片手ほどもいない。指示しなければ水をやることすらできない。」
会長もなかなかお仕事に厳しい方とお見受けしました。
それだけご自身に厳しいことを課して、実行してきたが故のことでしょう。厳しい実情を踏まえ、これからはもう従来のようにはいかないと、将来を案じます。
皿井植物園さんの未来は?
「雇うことと育てること。一人ひとりの能力を開発すること。これが今後のカギを握る!」
つまり“人”ということですね。
どういう方に来てほしいと思いますか?採用されるときはどのようなところを見ますか?
「優しい人に来てほしい。他人と植物と全てに対して優しい人。それはもうヘルパーの気持ちでね。
植物は自分力では歩くことも食べることもできない生き物。自力で身動きの取れない人をお世話するのと同じ。
植物を扱う時も乱暴にするのではなく、優しくいたわれる人であってほしい。
そして、そういう人たちをまとめる立場の人になってほしいから、頭のいい人に来てほしいと思う。
通知表で“5”ばかりという意味ではなくて、“常に考えている人”ってこと。全てのことには意味があるのだから」
というお父上のお考えの一方で、社長の喜清さんはご自身の方針を明確に持っています。
「一人ひとりの技術を高めていくことは必要。だけど、もっと大切なのは、個人の能力に頼らなくても同じ品質の物を大量生産できるという仕組み作りだと思うんだ」
なるほど、誰でも同じように生産できる仕組み作りですね。
「昔は生産の品種数が少なかった。生産効率もいいよね。
だけど、現在は嗜好の多様化から生産品種が多くないといけない」
観葉植物も切り花と同じで少量多品種ですね。消費に目を向けた品種のラインナップが必要です。
「となると、例えば5品種を一つの施設で温度とか光量とか同じような環境で育てないといけなくなるよね。だけど植物の性質や対応はそれぞれ異なる。管理が大変だし、対応も難しい。結局一人の能力に頼らざるを得なくなる。だから会長はもっと従業員一人一人の能力や技術を向上させたいっていうわけだけど、私としてはそれをいかにシンプルに行っていく仕組み作りをするかが課題だと思っている」
これは一見逆のことをおっしゃっているように見えますが、まったく矛盾していません。
消費の多様化でそれぞれの植物に合った管理をしていくこと、また誰でもそれができるように、仕組み作りをしていることは、植物の大規模生産を行う上で企業にとって必要条件でしょう。
しかし、誰でもできるようなしくみがあったとしても、一人ひとりの意識が低く、言われたことだけをやっていては、植物を育てることなどできません。
気象状況は毎年変わりますし、植物は工業製品ではありません。些細な環境や状況の変化に気付いて対応する力。これは仕事に携わっている限り、どのようなポジションであっても必要とされていることかと思いますが、植物栽培であれば、なおさらそれが必要なのです。
誰でもできるようしつつ、従業員一人ひとりが考える力を付ける。
これが会社のボトムアップに繋がることはどの企業でも言えることではないでしょうか。
新しい消費形態の時代に生まれた新しい課題。そこに取り組む若社長!
皿井植物園さんは観葉植物を作るだけでなく、栽培の仕組み作りにもチャレンジしています!
いろいろと皿井植物園さんのポリシーやリバイバル大作戦について教えていただきましたが、これらの苗はどこから仕入れるのですか?
「マッサンやユッカなどの観葉植物の原木はコスタリカから、パキラやミリオンバンブーは中国・台湾から、チューリップやヒヤシンスの球根はオランダから仕入れるんだ。」
もしかしてご自身で海外に行って買い付けていらっしゃるのですか?
「いやいや、そこまではできないよ。私たちは生産
ほとんどは私たちのビジネスパートナーさんから購入するんだよ」
どこか輸入されているパートナーさんをご紹介いただいてもよろしいでしょうか?
「いいよ。ひとつは豊橋にある株式会社タクトさん」
あ!なんと、ちょうど豊橋にあるのであれば、えーい!行ってしまえ!トツゲキ探検隊!!
探検隊の血が騒ぐぅ~!いざタクトさんへGO――――!
来てしまった・・・突然すみません。ウンチク探検隊改め、トツゲキ探検隊と申します。
ムチャな訪問にもかかわらず、ご親切に迎えてくださったのが、株式会社タクトの代表取締役社長西川滋(にしかわ・しげる)さんです。
タクトさんの主な業務は、球根・苗・観葉植物の原木等の輸入販売のみならず・・・
● 鉢物コチョウランなどを中心にした花きの生産出荷、販売
● 切り花商品(ブーケやアレンジメントなど)の加工、卸
● 輸入した球根のパッキング(↓このパッキング機械は国内でも3社くらいしかもっていないのだとか)
などなど、幅広くビジネスを展開されています。
そもそもどうしてタクトさんという会社が生まれたのでしょうか。
「私は20代の頃は大阪で繊維の輸入業務に携わっていてね。そこで貿易のノウハウを培い、29歳の時に出身地の豊橋で今の会社を設立したんだ。
幸福の木が売れている時に、コスタリカに原木があるって聞いて、独りでコスタリカに発った」
その時西川社長はおいくつくらいだったのですか?
「31歳くらいかな」
まだ中南米の情報など入手しにくい時代。未知の国に独りで行くのは怖くなかったのですか?
「今のようにネットもなかったからね。まずマイアミまで行って、そこからどうするか考えた。
ロサンゼルス経由で、そこからメキシコシティ→エルサルバドル→ガテマラ→コスタリカというルートで行ったこともあるよ(笑)。
六カ国語辞典を片手になんとかコスタリカの種苗会社と取引できるようになった」
すごいバイタリティ!!
「皮切りが中米でなんとかうまくいったから、その後海外の取引開拓の自信になったと思うよ。
でも、逆に国内の営業は若かったし、できたばかりの会社だし、生産者さんの間では知られていなかったから、信頼されて取引が始まるまでに時間がかかった」
どうやって信頼を獲得したのですか?
「生産者さんのところに毎日通うとか、お客様のご要望を何でも聞くとか・・・そうやって困っているお客様のリクエストを“なんとかしましょう”と引き受けてお役立ちしてきたことかな。
なんとかしましょうとご要望を叶えるうちに、こうして業務が多岐にわたるようになったんだ」
タクトさんの特色は何ですか?
「生産側と販売側とにたくさんの繋がりを持っている。
大田花きにも出荷者として、また同時に買参人としても登録している。だから、川上と川下の両方の意見を聞くことができ、それをマッチングさせることもできるんだ。」
ワオ!種苗供給会社でありながら、大田花きの出荷者さんでもあり、また買参人さんでもあるなんて・・・どうも、いつも大変お世話になっておりますm(_ _)m
「それから、差別化として他社にできないような仕組みを作らないと生き残れないよね。
シンプルなブローカーだけなら誰でも真似できる。私たちはブローカーでスタートしたけど、今ではそう簡単には付いて来れないような機能が備わったと思う」
そのタクトさんは、この7月から第30期がスタートします。30周年おめでとうございます。
会社にも寿命があり、30年が一つのターニングポイントなるという説もありますが、30周年を迎えた今、どのように思われますか?
「やっとスタートラインに立ったと思うよ。当社の場合はスタートがゼロだったから、まだまだやることはたくさんある。30年続いたということは、ひとまず業界で認められたということかなと思う。ここからが心機一転、もう一度スタートしたいと思う」
2012年、タクトさんは再スタートを切ります。
★皿井植物園の格言!
① 品質の良い観葉植物は、良いリレー栽培から生まれる。
リレーする段階で誰かが自分だけ儲けようとすると、ずみが出て、良いものを安定的に供給することはできません!そのためには良いビジネスパートナーを持つこと。
フェアーに仕入れて、フェアーに販売!
良いリレー栽培をするには、よりよいリレーションシップを構築することが大切!
(あー、オヤジギャグ最近毎回やな~。スミマセン^_^;)
② “お客様が求める商品を、買いやすい価格で、安定的に供給し続ける”---これがモットー!
そのためには、オートメーション化と同時に従業員一人ひとりの能力開発を行うべし!
★名前の由来と管理方法
みなさん、今回の記事に出てきた「マッサン」という名前、耳にしたことありますか?
初めてこの名前を聞いた時は、アタクシも「“マッサン”てなによ?!」と思ったものでしたが、マサヒコさんかマツイさんのニックネーム・・・ではありません、はい。
“マッサン”とはドラセナ・マッサンギアナの略名で、別名「幸福の木」。こういえばピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。
ではなぜ「幸福の木」なのか。
どうやら、それはハワイでは、マッサンを玄関に置いておくと幸福になると言い伝えられているからだそうです。
なるほど、マッサンはラッキーツリーなのですね。
マッサンの管理方法
暖かいところが好きなので、エアコンの冷風や冬の冷気に当てないよう気を付けてください。
最低気温は15度くらいを目安に。 また、夏の直射日光に当てると葉が焼けてしまうので、室内でお楽しみいただくのがお勧めです。
水やりは、やりすぎるくらいなら、乾いている方が◎。水をやりすぎると、根腐れを起こし、栄養を吸えなくなってしまいます。葉に異変が現れたら、既に根がダメージを受けている可能性大!設置場所にもよりますが、夏でも1週間に1回水をやれば十分。水をやって根を傷めるくらいなら、極力やらない方が安全。
10月以降は2週間に一度でも大丈夫かも。愛情過多は禁物系植物なので、冬場は放置系がお勧めです(*^-^)ノ
でも寒いのはダメ!
では、「ユッカ」って何?「ユッケ」と似ているけど肉じゃないし、「ユカちゃん」でもないし?何語??
はい、お答えいたしましょう。
「ユッカ」とはその学名をユッカ(Yucca)・エレファンティペスといい、別名「青年の木」とも呼ばれます。
なぜ青年の木かというと、若い芽がつぎつぎと芽吹いてくるからなのだそう。命名の父はなんと皿井勝喜会長。
リュウゼツラン科です。アガベとかサンスベリアなどもリュウゼツラ科なので、比較的暖かいところが好きな植物ですね。アガベといえばテキーラの原料ですし、テキーラといえばなんといってもメキシコ!
管理方法は、メキシコのイメージで!!ってどんな?
水やりは1ヵ月に一度くらいでもOK!乾燥には比較的強いけど、水のやりすぎや寒いところはNGです。1-2月に暖房を切り、5度以下になる場合は要注意です。
そして最後に「マジナータ」。
“マジ、アナタ??”ではありません。本名はドラセナ・コンシンネ・マジナータといいます。愛称は「真実の木」。こちらも会長が命名されました。
ハワイで生まれた幸福の木のように、縁起の良い名前の方がいいだろうという会長の思いがこもっています。
こちらもリュウゼツラン科。原産地はマダガスカルですから、やはり暖かいところ好き♪
水のやりすぎよりは乾燥気味にしておいた方がいいでしょう。
★おまけ
最近の研究結果によると、観葉植物をオフィスに置いておくと、以下のような効果が期待できるそうです。(Dutch Flower Councilより)
・ 空気清浄効果
・ 心の鎮静効果
・ 仕事の効率アップ
・ 健康維持
(湿度を保つことによるドライアイや乾燥肌、のどの痛み、頭痛などの防止)
・ 騒音吸収
・ 癒し効果
(同じ症状の入院患者であれば、緑の見える部屋にいる患者の方が、回復が早いという実験結果も出ている)
もちろん観葉植物と一口にいっても何を置くか、また置いた植物のコンディションにもよると思いますが、観葉植物を置くことによるメンタル的な効果がいろいろと発表されています。
心と体の健康のために、是非身近にグリーンを置いて楽しんでくださいませ~(*^-^)ノ
まずい、今回も長くなりすぎてしまった(+_+)スミマセン
いつも気長に最後まで読んでくださるウン探読者のみなさま、どうもありがとうございます!
次回を是非お楽しみに❤
2012年6月28日
vol.95 皿井植物園(愛知県) 前編
愛知の鉢物、続編取材のため、満開のアジサイを楽しみながら快調に車を飛ばして渥美半島を一路北上!
(もちろん制限速度以内ですから、ご心配なく)
キキキーッ!(←急ブレーキの音)
ギョッ∑(゜◇゜;)
ギョギョーーーッ!な、なんかおる~!!
ウゲッ!Σ⊆・д・⊇!!!
ゲ、ゲムジー~!!ヒョエーーー!
毛虫がコンクリの道路の上を横断中。
いやいや、なんのなんの、生産者さんを取材させていただくウン探たるもの、毛虫様ごときに動揺してはなりませぬ!
こんなことは当たり前!人類みな兄弟、殺生することなかれ!
もちろん、殺生はしませんが、毛虫は人類ちゃうやろて・・・^_^;
と、立ち止まったところは・・・キョロキョロ(゚ー゚?)キョロ(*゚ー゚)ゝキョロ
ぬぁ、ぬぁんと目的地の皿井植物園さんではないか!ワオ!w(゚o゚)w!!ラッキー❤
皿井植物園さんといえば、観葉植物の数量安定、品質安定の代名詞的な産地さんで、観葉植物のひとつのカテゴリーのリーダー的存在。
大田花きの園芸チームを以ってして、
「いわゆる日本のナショナルブランドみたいなものだね」
と言わしめる皿井植物園さんでは、生産に対しどのような取り組みをされているのでしょうか。
いざ潜入です!ラジャ ('◇')ゞ
こちらが皿井植物園代表取締役社長の皿井喜清(さらい・よしきよ)さん。
お父上である会長の皿井勝喜(かつよし)さんがここ田原の地で園芸の生産を始め、2代目となります。(↓写真右側が会長の勝喜さん)
従業員さんはおよそ100名の大規模経営。花の生産で従業員100名といったら、相当大きいですよ!
経営面積は、施設、露地を合わせておよそ11.5ha。30品目100品種以上に及びます。
渥美半島に農場14箇所(!)、更には中国にも2つの農場を有しています。
えええーーーッ!∑(゜◇゜;)
チュ、中国にも圃場があるのですか?
でも中国の生産管理はどのようにされているのでしょうか。
「基本的には中国の人に任せているよ。たまに見に行くけどね」
その信頼関係はどのように築かれたのですか?
「以前中国からの研修生が3年ほどうちで働いていてね。
彼が中国に戻って、今、中国農場のトップとしてやっているんだ。日本向けの商品の栽培をね」
なるほど~!彼がどういう人であるかを良くご存知なわけですね。
それなら安心!
★環境
ここ渥美半島は、三河湾と太平洋に囲まれ、黒潮の影響で冬も比較的暖かく、降水量と日照量が多く、農業には好適な環境です。
年間平均気温 16.0℃
年間降水量 1,620.6mm
年間日照量 2202.2時間
(地点:伊良湖、1981-2010年統計、気象庁
※「地点」において田原市の統計データが十分ではなかったため、同じ渥美半島にある伊良湖のデータを採用いたしました。皿井さんの農場のうち6つは伊良湖にあります)
東京と比べてみると、
年間平均気温 16.3℃
年間降水量が 1,528.8mm
年間日照量 1881.3時間
(地点:東京、1981-2010年統計、気象庁)
と、伊良湖の方が日照時間も降水量も多くなっています。
また、皿井植物園さんの多くの圃場がある田原市においては、総農家戸数4,584戸、農業産出額779億円で、市町村別でみると全国第1位を誇る日本屈指の農業地帯です。
農業産出額を部門別にみると、花きが365億円(47%)と最も多く、次いで野菜、畜産の順となっています。(皿井さんご提供データ)
「関東でいえば、千葉の房総半島に気象環境が似ているかもね」と皿井さん。
田原市は以前の田原町と渥美町と赤羽根町が合併して生まれました。どの町も全国的に花の生産が有名で、もしかしたらウン探読者のみなさんも耳にしたことがあるかもしれません。
いや~、ここ田原市は農業生産の超大手だったのですね!m(_ _)mマイリマシタ!
★歴史 ~皿井植物園さんの誕生~
社長のお父上である勝喜会長にお話しを伺いました。
会長のお父上は、田原で酪農に従事されていました。酪農も田原では大きな産業のひとつで、その中でも皿井さんは地域で最大級の酪農家でした。ですから、勝喜会長も学校では酪農を勉強され、昭和34年、酪農家の後継者として就農されました。
(昭和34年といえば、皇太子、現在の天皇陛下がご成婚された年。伊勢湾台風が襲来した年でもあります。)
それを何がきっかけで園芸に転換されたのでしょう?
「昭和40年頃ね、戦争が終わって人々の生活が安定し始めた頃、これから経済は伸びていくものだと思った」
昭和39年 ビートルズ来日、OECDに正式加盟、東海道新幹線開通、東京オリンピック開催、佐藤栄作内閣成立
昭和40年 いざなぎ景気始まる、国鉄「みどりの窓口」開設
昭和41年 新東京国際空港建設予定地を成田に決定、100円札廃止を決定、郵便料金値上げ、自動車生産高世界第3位
・・・ふむふむ、なるほど日本が高度経済成長を遂げた昭和29年から48年までの真っただ中ですね。
「これから日本の人の生活は豊かになって、潤いを求めるようになるだろうなと思ったんだ。
みんなのお腹がいっぱいになったら次には花を楽しむ時代が来る。もちろん観葉植物もすぐには受け入れられないだろうけど、将来的には必ず受け入れてもらえる日が来ると予測して、鉢物生産に転換したんだよ」
とはいえ、一度に全てを変えたわけでなく、地域一番だった会長のご両親の功績とご意思も尊重し、昭和51までの10年間は酪農との複合経営を行い、その中で徐々に鉢物生産を増やしていきました。
ご両親も夢にも植物に転換されるとは思っていらっしゃらなかったのではないかと会長はいいます。
「経営というのは究極的には利益を出さなければならない。
手持ちの農業規模を維持しつつ、利益を出していくために選んだ道が園芸だったというわけなんだ」
★出荷場
こちらは出荷場。渥美半島内の14の農場で作られた商品をこちらに集め、このように商品をきれいにして、トラックに積まれ各市場に届けられます。
Wow!∑(゜◇゜) さすが大規模農場。
ベルトに観葉植物が乗って、動いていく観葉植物をベルトの両脇に立っている人がきれいに掃除をしたり整えたりしていく・・・鉢の汚れを拭いたり、余分は葉を取り除いたり。
商品ラベルを付けて、保護のためのネットをかけて・・・
ゴミはベルトに残し、自動的にゴミ箱へ、鉢物は台車に載せてトラックに掲載する準備です!
こうして手早く作業をしていくのですね。
さて、観葉植物に詳しい方もあまり関心のない方も、このような商品を目にされたことがあるのではないでしょうか?
コレ、どうやって作るの??(゚_。)?と思われたこともあるのではないでしょうか。
はい、お待たせいたしました。その秘密をウン探が明かしましょう。
★ミリオンバンブーの編み編み
ミリオンバンブーは長い状態に育つまで、そのまままっすぐに育てます。
↓
希望の長さまで育ったところで、下葉をむしります。
(そういえばそうですね!編んであるところには葉がありません!
そんなところに手がかかっていたとは!!)
↓
中国で編み込み
ほうほう、器用な方が目にも止まらぬ速さでパッパとされるのでしょうね、きっと。
編みながら上の高さを合わせる。
(ナヌッ?上の高さを合わせる??となると・・・?)
↓
上から編んでいって、下を合わせるため、長いところはバチン!と根ごと切る!!!
ナニ??(゚o゚;)
下を切るのですが?根ごと??
「そうだよ」と社長の皿井さん。
聞き間違いかと思って二度聞きしてしまいました。
そうです。編み編みミリオンバンブーの場合は、高さを合わせて編んでいき、余った長さは下を切るのです。それも根ごと。
↓
鉢に植える。発根を待つ。
↓
発根したら日本に輸出。
なんとこんな仕掛けになっていたのですね( ^ー゜)b
★パキラの編み編みは?
パキラの編み編みは苗が小さい時に“茎が急に伸びる”生長ステージがあり、その特性を利用して編んでいきます。
その時はまだ茎が柔らかいので、茎と茎の間に空間を作りながら、サクサクっと編んでいく台湾での作業になります。
これが生長したところでまた畑に定植して、太く大きくなり、編み編みの空間も詰まっていくというわけです!
わーい!謎が解けた~(^o^)丿
「この編み編みのしくみが象徴しているように、いかに効率的で確実なリレー栽培をするかが、良い観葉植物を出荷するポイントになるんだ。リレー栽培するのは、編み編み商品だけじゃない。当社で扱うほとんどの商品がそうなんだ」
※リレー栽培とは
苗の生育段階に合わせて異なった生産者で栽培をしてくことをいいます。
それぞれのステージに合わせた環境を作り、生産者間でリレーしていくことで、栽培の効率化を図ることができます。
「リレーの段階で誰か一人でも自分だけ儲けようとすると、必ず別の人のところにしわ寄せが行く。そのような状態で良い品質のものを継続的に出荷できるわけがない。全員がフェアーに仕入れてフェアに販売していく。品質・数量・価格が安定するのは、このチームワークによるところが大きいんだよ」
↓苗は以下の図のように流れて消費者のみなさまの手元に届きます。(クリックで拡大)
★“売れる”とは?
「うちは90%以上市場出荷しているけど、“市場で売れたから売れたことにはならない”と思っているんだ」
では、どこで売れれば売れたと言えますか?
「小売店で売れて初めて“売れた”といえる。市場で売れても小売店でロスになっては売れたことにはならない」
小売店で売れるためにはどうしたらいいと思われますか?
「もちろん消費者に買ってもらうこと。
そのためには、
① デザイン性の充実・・・今ある素材をどう使うか
② 販売店との連携
こういうポイントを考えなくてはならないと思うよ。生産担当といえども、生産だけをしていればいい時代ではない。
近年は本当に売りにくくなった。単価も下がったし、数量も出ない。従来のように作っているだけじゃだめなんだ
本当に単価も下がり、数量も減ったのでしょうか。
平成3年から20年までの鉢物の卸売推移を見てみましょう。
↓こちらが鉢物全体の卸売数量と単価です。(クリックで拡大)
そしてこちら↓が観葉植物の卸売数量と単価です。(クリックで拡大)
(データ元:『フラワーデータブック』 財団法人 日本花普及センター)
観葉植物(下のグラフ)を見ると、平成15年をピークに生産は一気に減少。
通常、供給量が減れば価格は上がるのが市場原理というものですが、平成15年以来単価がほとんど上がっていないのが現状です。
また、平成20年の卸売取扱量は平成5-6年とほぼ同じなのに、卸売単価は半分とまでいかないまでも、55%ほどになっています。
「平成14、15年ころから売りづらくなってね。需要に対して生産量が多かったんだよね。急に売れなくなったわけじゃないんだろうけど、そんな感じを受けたよね。だから1割生産量を減らしたのに、売りにくさに変わりはなかった。
このころまでは生産者は作るところまでやっていればいいと思っていてね、誰からの注文かも気に掛けなかったんだけど、このころから“まずい!どうやって売っていこう!?”と思うようになったんだ。そのタイミングで出会ったのが、鉢皿付きの品の良いプラスチック鉢。
表面の土が見えるのも良くないと思って、化粧石を敷くようになった。
こうして商品を作り上げて、徐々に
これからもみなさんに“カジュアルに楽しんでいただけるもの”を作っていきたいと思う」
ナショナルブランドである皿井植物園さんは、こうして会長・社長足並みをそろえて、観葉植物のリバイバルに取り組みます。
後編に続く・・・
2012年6月20日
vol.94 かねいち園芸(愛知県)
日本列島はすっかり梅雨入り・・・台風が日本列島縦断中だし(-_-;)超メイワク
今年も本格的な夏はもうすぐそこ!!
夏といえば象徴的なのがハイビスカス。
今回は全国でも屈指の品質を誇る愛知県のかねいち園芸さんを訪れました。
かねいち園芸さんのリピーターである某仲卸O社のSさんに伺うと、
「なんといっても花付きがいいよね。ぴかイチだよ。」
大田花きの鉢物営業T担当に聞いてみると、
「一般的にはハイビスカスだからといって、日本の盛夏に耐えられるほど暑さには強くないはずなのに、かねいち園芸さんのハイビスカスは花持ちもいいし、新しい花芽もどんどん上がってくる。
ホント不思議なくらいなんだよね。
日本で有数のハイビスカス生産者と言って間違いない!」
なんという高評価!w(゚o゚)w オオー!
ウンチク探検隊結成以来7回の夏を経験し、なぜ今までかねいち園芸さんに伺うことがなかったのかと思うほど。
8回目の夏を迎える本年、満を持してかねいち園芸さんに潜入してまいりたいと思います!ъ(*゚ー^)イザ!
東海道新幹線の豊橋駅に降り立ち、渥美半島へ向けて一路西へ西へ・・・。
太平洋を臨む渥美半島の突端手前でハイビスカス生産を営むのは、
かねいち園芸の渡会正人(わたらい・まさと)さん、46歳。
お祖父様の代から野菜やポットマムを作り始め、シンビジウムや観音竹、アロエやグリーンネックレスなどに取り組みましたが、今は“なぜか”ハイビスカス中心の生産となっていると渡会さん。
ここで「“なぜか”そうなっている」とおっしゃいますが、のちほどその“なぜ”が明かされますので、どうぞ最後までご一読ください。(今回も長くてすみません^_^;)
渡会さんの生産面積は加温施設が3,000坪、加温システムのない育苗用の施設が200坪、合わせておよそ3,200坪。生産のほとんどが5寸鉢で年間15万鉢を生産、出荷しています。
施設の中は、何万鉢と並ぶハイビスカスの鉢でいっぱい!
ん??(・・∂) アレ?
割り箸を持って何をされているのでしょうか?
“花×割り箸”でイメージするものといったら、ユリなどの“花粉取り”ですが、ハイビスカスは花粉が花を汚すわけでありませんから、取り除く必要なんてないでしょうし・・・ナンデ???(゚_。)?(。_゚)?
「ハイビスカスは1日花だからね、咲き終わった花を取り除いているんだよ」
と渡会さん。
そうなんです、ハイビスカスは1日花。つまり、1日きれいに咲いて終了。う~ん、「美人薄命」を体現したかのような花です。切り花でも流通がないわけだ!
終わった花をこうして1鉢ずつ手作業で摘んでいくのも地道で気の長い作業です。
←1日で咲き終わった花
↓終わった花を摘み取って、きれいにしていく。割り箸はマストアイテム!
終わった花を取り除いても、次の花がどんどん開花するので大丈夫!
ハイビスカスは1株の新陳代謝の良い花だったのですね!
かねいち園芸さんには、何色あるのでしょうか。
「主に4色だよ。色別の構成は、赤と黄色が多いかな」
渡会さんによると、生産品種の色は大別すると、
赤が最も多く30%、黄色30%弱、ピンク25%、オレンジ15%
「面白いことにその年によって売れる色は違うんだ。
基本的には赤、黄色が人気なんだけど、今年はなぜか赤がいつもにも増して人気だよ。
もちろん季節によって、春先はピンクが出て、夏も本番となってくると、赤やオレンジの人気が出てくるというのは例年の傾向ではあるんだけどね。」
う~ん、この人気の動きというのは何と関連しているのでしょうか。
色見本の会社であるパントンによると、2012年の流行色は「タンジェリンタンゴ」。
トマトとニンジンを合わせたような情熱の赤オレンジです。この発表からいけば、オレンジが出てもいいような気もするのですが、今年は赤ですか・・・。
ぐるぐると圃場を巡りながら拝見していると、突然目の前にどか~んと土の山が!
よもや、これはハイビスカスの生産に使っている土か?
「そうだよ、この土を使っている。」
キラーンッ( ̄▽+ ̄*)!
見つけてしまった!
この土にかねいち園芸さんのクオリティの秘密が隠されている可能性大!?
★土に秘密?
黒々と、またふわふわとしていかにもハイビスカスによさそうな感じ♪
ダイブしたら、ふんわりと受け止めてくれそうなほど!・・・って、まあダイブはせーへんけど。渡会さんの大切な資源ですから・・・
この土はどうやって作るのですか?
「土を1年畳んで、堆肥を入れて、ピートや黒ボク(火山灰土と腐植でできた土)なんかを入れてね、熟成発酵させるんだ」
へ~、1年畳んでねえ~、・・・って、たッ、畳む??(゚ー゚*?)オヨヨ?
“土を畳む”って何ですか?キョロキョロ 土をタ・タ・ム??
「土を寝かせるってことね。
これを見て。
こうやって土を寝かせるんだ。
堆肥とかを混ぜて、シートをかぶせて熟成、発酵させる。
混合物の構成比は親父が研究して辿り着いたものだけど、これが最も良い。
↓右側の土の山が完成したもの。
既成の土で済ませず、こうしてオリジナルの土を使うと、やっぱり地力が違うよね」
なるほど、それで力のある良い株ができるのですね。
「こうしてふわふわしていなければ、水も吸収しない。水を吸収しないと早く乾いちゃうでしょ。
でも軽いけど、握ると一瞬固まるでしょ。それからゆっくりと崩れる。
これは水持ちがいい証拠なんだ。
うちは手潅水だから、そんなに給水力が良くないとどんどん乾いて、水やりが追いつかない。はたまた給水力が悪くて軽ければ、風が吹くと飛んで行っちゃうし。
こういう土を使うと根の張りもいい」
うわっ!!
土の中にいろいろがミックスされています。
なるほど、これをハイビスカスに使っているわけですね!
よく見ると・・・みなさん!コチラ↓↓↓
渡会さんのハイビスカスの表面から根っこがぴょんぴょこ出まくっている!!!
白いの全部根っこですよ~!!!(; ゚ ロ゚)ナント!!
コレ、鉢の中はどうなっているのでしょうか?
“うんちく探検隊”改め、“わがまま探検隊”は渡会さんに懇願して、見せていただいてしまいました。
ジャジャーン!
なんと!縦横無尽にびっしりと張るハイビスカスの根!根!根ッ!!
こうでないと、次々と開花する株にはならないわけですね。
暑い夏でも花持ちが良く、花芽がジャンジャカ上がってくる理由は、ハイビスカスの株の力によるものであり、更に元を辿れば、株の力を生み出すこの土に理由があったのです!!!
★冬はピンチ?!
ところで渡会さん、ハイビスカスの出荷期は主に夏ですが、冬場は何をされているのですか?
まさか常夏のハワイに研修という名のバケーションに行っていたりするのでしょうか??~(^◇^)/ ウホホホ
「ピンチしているんだよ」
あ、ホント??仕事されていらっしゃるんですか。
「冬場はずーーーっとピンチ。圃場にある全15万鉢を繰り返し何回何回もね」
はい、みなさん。ここで「ピンチ」とは、「追い込まれた厳しい状況」とか「窮地」のことではなく、
園芸用語でピンチといえばいわゆる「摘心」のことを指します。
ハサミでチョキチョキ!
「1回目のピンチが終わる頃には最初にピンチした鉢の枝が伸びてくるから、また2周目が始まる。朝起きてから夜寝るまでずっとピンチに次ぐピンチだよ」
へー、ピンチ作業ってハイビスカス生産一大作業なのですね。
「そうだよ。私の場合は生産に重要なことの7割はピンチだね」
WOW!w( ゜Д゜)w
7割も占めるのですか!
そんなに重要だなんて!
となるとやはり、パートさんに任せずピンチはご自身でされるのでしょうか?
「そうだね。私と嫁さんしかしない。」
このピンチというのは、ハイビスカス生産の要のようです。
どこをピンチするのですか??
「こうやって天辺から出てきた芽を、バチン!とここで切る。
これがピンチをした跡。
一つの鉢につき最低でも3回は必ずピンチをする」
あ、ほんとよく見れば、ピンチしたばかりの形跡がたくさん!
そうです、このピンチという作業は、頂芽(ちょうが:植物の生長点)を摘み取る(=“芯を止める”といったりします。だから“摘心”)と、その脇から新しい芽が出てくるという植物の性質を利用したものです。
頂芽をピンチすると、側枝が2本出てくるので、枝の張りや開花を促進させたいときに行います。
つまり、このピンチ作業なくして花芽とたくさん付けることはないのです。
また、このピンチ作業が開花を促すだけでなく、全体の形を整えることにも繋がっています。
「たとえばこの2つを比べてごらん。
一見同じように見えるかもしれないけど、こっちは注文品としては絶対に出荷しない」
ふむ・・・“こっち”ってどちらでしょう??
目の肥えたウン探読者のみなさまはもうおわかりですね!( ^ー゜)b
「右側はこの枝がぴょこって出ているでしょ。
ちょっとバランスが悪い。
これはもうB品扱いなんだ。この枝のピンチが甘かったんだよね・・・☆=(+_+。) 」
なるほど、渡会さんは選定基準も厳しいし、それ以上にご自身のお仕事に対しても厳しい。
B品が出た=ご自身のピンチが甘かった。“あれだけやったけど、まだ足りなかった”と振り返ります。
自社製品に対するこだわりも深く、同時に商品完成における全ての責任をご自身で負っています。
切り花の生産では、1輪を大きくするために、脇芽や新しい花芽を摘み取ったりするのですが、それだけピンチをすると、逆に通常1輪が小さくなりそうですが、渡会さんのハイビスカスの輪の大きいことなんのって!
手持ちの物と比べてもこんなにおっきぃ!!
5寸の鉢の直径は15cmで、ボールペンの長さとほぼ同じですから、品種によっては鉢の直径と同じくらいか、それよりも大きい花をたくさん華麗に付けるものもあるのです。
★生産全体 ― ピンチ7割=残りの3割は?
ピンチ7割とおっしゃっていましたが、あとの3割は何ですか?
「“2割が矮化剤”(わいかざい;植物の成長、とりわけ茎の伸長を抑制するもの。こんもりとしたかわいらしい形の鉢物を生産するのによく使われる)のタイミングと“1割が防虫”かな。
私はどこで研修を積んだわけでもないし、自分の経験で見極めて行うしかないんだ。
品種によって矮化剤のタイミングも防虫の必要性も異なる。虫は出てしまったらおしまいだから、いかに未然に防ぐか注意しながらやっているよ。
まあ、あとはもちろん何を育てるにもそうだけど、光・温度・水。この三拍子のバランスは間違えちゃいけない。
過ぎたるは及ばざるがごとしで、多すぎてもいけないし。分量が決まっているわけではなく、ここは“熟練の感覚”によるところが大きい。」
温度管理で注意していることはありますか?
「最低温度は冬でも14度を切らないようにする。
夏は施設の中だし40度くらいはいっちゃうよね。暑すぎないように遮光したり、風を通したり」
取材当日も天窓が開いていました。
冬は夜でも14度をキープするのですか?
「そうだよ。だから燃料費はすごくかかる。
これが燃料タンクなんだけど」
はい、みなさま、こちらをご覧ください。
これが農家さんにある一般的な燃料タンクです。
中には浮き輪が入っていて、このメモリは浮き輪が上がると下がる、下がると上がるので、満タンのときには下に印があり、目減りするに連れて徐々に上がっていくのです。
そして、右側にあるこの赤い矢印が「ここまで印が上がってきたら、次の燃料を注文しましょう(*^-^)b」マークです。
「このタンクひとつが重油2,000リットルなんだ。
冬場はこの1本が1週間でなくなる。今年の冬は1リットル80円以上したから、タンク1本で18万円」
ぬぁ、ぬぁんと∑(゜◇゜;)
1週間で18万円が飛んで行ってしまうのですね・・・パタパタパタ(←万札に羽が生えて飛んでいく音)
あ、いやいや、18万円の重油代がかかるのですね!
「ひと冬で合計70kgくらい使う。
なぜ14度なのかというと、4月出荷スタートに合わせた温度調整と、この経費との採算がぎりぎりのところが14度っていうことなんだ」
なるほど、そのような理論に裏打ちされた14度だったわけですね。
ところで、かねいち園芸さんは海岸から数百メートル入っただけの海岸沿いにあります。
すぐそこが海ですが、潮風による影響はないのでしょうか?
・・・塩害を受けやすい品目はたくさん!特にお正月に使う千両などは強い潮風にあたると葉先が黒くなってしまうので注意が必要ですが??
「もともとハイビスカスは強い植物だよ。沖縄で生け垣にされているくらいだからね。台風でもみくちゃにされても、元気に花をつける。葉色も変色しない」
そういえば、昨年ウン探で八丈島に行ったときも、サボテンやヤシの木に交じってハイビスカスが植えられていました。(八丈島のハイビスカス→)
八丈島といえば、台風だけでなく日ごろの強い暴風から、昔は2階以上の住宅が立たなかったというほどの暴風地帯です。そのような地域の生垣に使われるくらいですから、とても生命力の強い植物なのですね。
「そうそう、だからここでも潮風の影響は全くないし、夏場に外に出しておいて潮風にもまれても、普通に花を咲かせる再生力のとても強い花なんだよ」
これは、ますます魅力的に見えてきます。
★渡会さんにとってハイビスカスとは?
「“好きなもの”だよね。自分の手に合っている。
結局のところ、私はハイビスカスが好きなんだ。私の性格と合っていると思うよ。」
はい、ここが冒頭の「なぜ」に対する答えです。
“自分の性格と合っているから好き♡”という掛け値なしのシンプルな理由によって、結果的に集中と選択を行い、鉢物の需要低迷期を乗り越えられることになったといっても過言ではないでしょう。
将来はどのような生産を目指しますか?
「昔はね、目指せ日本一のハイビスカス生産者って思っていたけど、日本一にもいろいろあるからね。
量で日本一とか、品質で日本一とか、サイズで日本一とか。
私の場合は“かねいち園芸に頼めば安心”ていう信用の一番になりたいと思うんだ」
う~ん、「(*'へ'*)
お話を伺っていて最後までわからないのが、この「かねいち」というお名前の由来。
渡会さん、どうして「かねいち」っていうのですか?
「お爺さんの代からの屋号なんだ。
なぜ屋号に“かねいち”なのかは、逝ってしまったお爺さんに聞かにゃわからん。
“金が一番”からきているわけではないと思いたい。
“一番稼げるように努力しましょう”ということじゃないかなと自分なりに解釈している」
なるほど、お祖父様が残してくださったものは、生産ウンチクのみならず、そのスピリットまでもですね。
★かねいち園芸の格言
良いハイビスカス生産の裏にあったのは・・・
① 独自の研究によるオリジナルの土 花持ちの良さは土の力による!
② ピンチ、ピンチに次ぐピーンチ!
栽培での重要度はピンチ7割!
ピンチをすればするほど、かねいち園芸の経営はピンチとは無縁になります!
(うわぁ~、究極のオヤジギャグ!)
③ 信用第一!かねいちブランドを守るために、日本一の信用産地を目指す!
★良いハイビスカスの見分け方
① ツボミの多いものを選びましょう!
株の強さの指標になります。また、次から次へと咲くので長い間楽しめます。
② 枝ぶりの良いものを選びましょう。横や上から見たときにたくさん枝分かれして、こんもりとしているものがGOOD!
③ 幹の太いものを選びましょう。青々と茂った葉をかき分け、下からちょろりと失礼して、主幹の太さをチェック!
太くてしっかりしたものであればGOOD!ボーダーラインは、5寸鉢であれば、ボールペンよりも太いこと。これ大事♪
★ご家庭での管理法
水を切らさないように、夏場は1日に1-2回は水やりをしましょう。
しかし、やりすぎて受け皿に水を溜めるのは禁物です('-^*)b
ハワイのイメージがありますが、決して直射日光が好きなわけではありません。
株が大きくなれば地植えもOKですが、鉢に植えている間は、日当たりの良い室内においてカーテン1枚くらいの日差しがちょうどいでしょう。かねいち園芸さんでも、真夏は遮光して、葉が変色しないように十分注意しています。
花が終わったら、できればひと回り大きい鉢に植え替えるといいでしょう。こうすると、翌年また花芽を付けやすくなります。根が伸びれば、上の葉や芽も伸びる。芽が伸びれば花芽も付くというわけです。
地植えの場合は、株自体が大きくなってからでないと、冬の霜や雪に負けてしまいますので、気を付けましょう。
★消費者の皆様へ一言
「愛情を込めて作っています。嫁さんより大事にしているかも?」えへ((^┰^))ゞ テヘヘ
「いやそんなことはない!」(と、すかさず否定する渡会さん)
ハイビスカスは、大切にすれば玄関先でも屋外でも何回でも花を咲かせてくれます。霜にあてなければ、木化してアジサイのように大きな株になります。ぜひかわいがってください。
なるほど、アジサイの大きい株はあちこちで見かけますが、ハイビスカスの大株はあまり見かけません。
もし鮮やかなハイビスカスがご自宅にあったら、圧巻かも。
ご近所の話題になりますよ、きっと( ^ー゜)b
2012年5月 8日
vol.93 平園芸(福島県)
いわき市 平園芸へ
今回はもうすぐ「母の日」ということで,母の日のプレゼントの代名詞と言えるカーネーション、鉢物に迫ります。
美しいカーネーションで有名な福島県の平園芸のもとへ訪れます。
上野駅からスーパーひたちに乗っていわき駅へ。
田園風景を想像していたので、都会さに驚きです!
車で15分ほど行くと到着です!
今回平園芸のたくさんのウンチクを教えてくれたのは薄葉大介さんです。
2011年9月からお父さんの丈夫(たけお)さんから代替りされました。
ちなみに平園芸の名前は地名に由来し、「福島県 いわき市 平」から来ています。
花芽を合わせる
さっそくカーネーションに迫っていきましょう!
平園芸では直径15cmの5寸鉢を主に、4寸鉢と6寸鉢も作っています。
鉢物のカーネーションは「すべては母の日のために」と言えるほど、母の日前の出荷に照準を定めます。5輪程がきれいに咲いた頃が出荷のベストな時期だそうですが、咲き加減を合わせるためにハウス内の日照管理、温度管理は非常に大切にされています。ハウスの窓を開けたり、暖房器で調節したりします。
一鉢ずつ見極める
ハウスは全部で18棟もあります!
そして、カーネーションは全部で3万2千鉢も植えられています。
ハウス内はきれいに縦横ともにピシッと整列したカーネーションの鉢花が並びます。
さらにここがポイントなのですが全体的にそのハウス内の咲き加減が揃っているのです!
実はこれは人の手によってできた光景なのです!
品種は同じでも、各鉢ごとに、やはり多少の成長の早い遅いのずれが出てきます。
例えば、暖房の吹き出し口のあたりは気温が高くなりがちなので花の開花が他の場所より早くなります。一方で、ハウスの入り口近くはハウス内より低い温度の外気に触れる機会が多いので開花が他の場所より遅くなります。
また、ハウスの真ん中あたりは日が当たりやすいのに比べ、ハウスの端や柱の場所、ハウス内のカーテンの継ぎ目で2重になっているあたりは陰になりやすく、花の成長も遅れがちになります。
そうした置く場所による花の成長のずれを全体として差が出ないように、日陰で成長の遅かったものを日当たりの良い場所へ移すといった置き直しを一鉢一鉢見て判断し、行っているのです。
この成長の差の判断は各人の目で判断されるので、パートさんたちとの共有で難しい点でもあるようです。
見事に咲き加減が揃っていて、たくさん育てられていた「グランルージュ」という品種は、最初にみたハウスでは1輪かつぼみかというもので統一されていましたが
次に入ったハウスではもっと咲いているものでそろっていました。
3万2千鉢を一つ一つそろえるとは、非常に手間暇がかかっています。
このハイレベルさなので水やりも一鉢ずつ手でやっています。「よく底面給水で鉢の下から水を吸わせる方法がありますが、それだと常に根が濡れていて根が弱くなるんです。」
パートさんたちにも水やりをお願いしていますが、6人ほどのパートさんたちで3時間程もかかるようです。
根が強く育つことのメリットは何でしょう。
それは水ストレスに強いことです。
カーネーションが市場などに出荷された後は様々な環境が待っています。
直射日光がたくさん当たるところだったり、日光が当たりにくいところ、、、また、日本全国どこへ行くかもわかりません。暑かったり、寒かったり様々です。
カーネーションたちにはそれまで育ってきた温度良し、日照良し、肥料良しの平園芸のハウスの環境が一番居心地良いので、外に出ていくことは過酷に違いありません。
植物全般に言えますが、快適にすればするほどその環境が当たり前だと感じて育ってしまいます。水やりも底面給水にすれば常に水がひたひたの状態が当たり前になってしまいます。
すると、出荷後水が常に十分ではない環境に置かれるとすぐにストレスを感じ,根が傷んでしまうのです。
根が傷んでしまうと、植物全体元気がなくなってしまい、葉の下の方(下っ葉)も黄色くなってしまいます。
こうした出荷後のストレスを少しでも減らすため土の表面から水をやっていきます。
水やりの時期の目安は「手で持って軽くなった頃」で表面の土が乾いたくらいです。
より乾いた環境に強くなるために水のやり過ぎを避けています。
この管理力が品質がよくてボリュームのあるカーネーションにする決め手でしょう。
消費者のことを思ってくれているのは嬉しいですね。
色を選ぶ
現在は20品種ほどのカーネーションを育ててらっしゃいますが、やはり色で欠かせないのが王道の赤とピンクのカーネーションです。
赤とピンクで全体のおおよそ3分の1を占めます。
さらに赤、ピンク以外に黄、オレンジ、紫などさなざまな色の品種を栽培しています。花の専門店さんは1ケース6色入ったMIX6種を好んで仕入れることから、平園芸では赤、ピンク以外の色の品種の栽培にも力を入れています。
その他市場などの注文に応じての栽培もしています。
王道の色を重視しつつ、複色のもの、香りの強いもの、珍しい色合いのカーネーションも作られています。
品種選び、大切なポイントは
●株張りするもの(ボリュームがあるもの)
●成育性の良いもの
●花の形が整っていること
●色合い
●輪数が多いこと
●花保ちが良いこと
●花ふけの遅いもの(退色のおそいもの)
●花の弁が多いもの
●葉の色 など
毎年こういったたくさんの点に注意が払われ、同じ赤色でも優れたものが選ばれます!
また、“ベロが目立たないもの”というのも、意外と気になる人が多いのでポイントです。
ベロとは、、、
↑この花の中から白く出た糸のようなものです。雌しべの一部、花柱(かちゅう)と呼びます。
どんなカーネーションにもこの花柱はあるのですが、品種によってこの花柱が花の中に隠れて見えません。真っ赤な「グランルージュ」はまさにそうです。↓
また、今年の母の日が終わり次第来年向けの品種選びが始まります。
大田市場の中央通路で毎年鉢物カーネーションの展示がありますが、いろんな品種紹介や、最近の売れ行きを踏まえた来年に向けての提案がされているので、それも参考にされるそうです。
カーネーション 出荷までの道のり
母の日から遡ること半年。
9月終わり~10月初め頃に種苗会社から「挿し穂」という茎から根が出た状態のものを仕入れ育てていきます。
3~4週間後には1本の茎が伸びて茎の節数が3~4節ある状態になっています。
この時期に“ピンチ”という芽を摘む作業を行います。
このピンチという作業をすることで茎の脇から新しい芽が3~4本出てきて、茎数が増えるわけですね。
このピンチ作業は12月後半にも行われます。
茎に節の数が13個ほど見られるようになった頃、花芽ができます。つぼみの兆しです!
そして1ケ月後 つぼみが小豆の大きさです。
さらに1カ月後 色が見え始めます。
さらに1週間後 開花です。
この道のりを経ていよいよ市場へ出荷です。
薄葉さんの今まで
薄葉大介さんは平園芸の長男として生まれ、幼い頃から家業を継ぐものだという意識の中、育ってこられました。しかし、ずっと今までこのいわき市にいたわけではありません。大学時代は東京で過ごし、経営学部だったそうです。意外な過去がありそうですね!
大学受験の時に農学部と経営学部を受けて両方受かったのですが、
「もともと理科が好きではなかったんですよ。」と振り返ります。
また、「新聞を配達することで奨学金をもらえる新聞奨学生という制度があって、その募集が文系の学生に限られていたんですよ。」
というわけで、2つの学部を天秤にかけた際に経営学部へ進まれました。
その新聞奨学生ですが、お話を聞いていますと結構タフです。毎日の朝刊、夕刊を配り、加えて月末には集金をする仕事もあります。「普通に社員みたいに働いている感じでしたよ。」と語ります。
しかし、「大学よりそっちの方が楽しくて、、、」ともおっしゃるので決して辛い毎日というのではなく、楽しみながら大学生活を過ごされていたのが分かりました。
矢祭鉢物研究会で学ぶ
そんな薄葉さんも大学生活を終えて実家に戻られると、お父さんの勧めで福島県矢祭町に研修へ行くことになります。
福島県は縦に3つの地域に分けられ、東を浜通り、西を会津、真ん中を中通りと呼ばれます。矢祭町は中通りの最南端に位置します。
この矢祭町に矢祭鉢物研究会というカーネーション、シクラメン、ポインセチア、ルクリア(ニオイザクラ)、プリムラなどの鉢物生産において名人級の人たちの集まりがあります。
略して、矢祭鉢研です!
その1人、金澤さんは(有)矢祭園芸として生産されていて、花の栽培や育種で高い技術を持つのはもちろん、研修生への生産技術の指導など、人の育成にも力を入れていらっしゃいます。
薄葉さんは矢祭園芸の研修生として、またその研修生たちや研修を終えた元研修生たちで創った現在20名ほどから成る「金澤塾」という勉強会の塾生として生産の技術を学びました。
金澤さんの考えでは、“実際に自分で失敗しながら必要な知識を学ぶ”というもので、薄葉さんも実際に研修する中で、植物の温度などの管理、病害虫対策の技術を磨きました。
そして、研修後実家で生産を始めます。平園芸ではそれまでお父さんの丈夫さんがシクラメンに力を入れて生産されていましたが、大介さんが生産を始めることになって、カーネーションの生産も加わることになりました。
薄葉さんは今も矢祭鉢研の月1回行われている生産についての検討会に参加し、ひたむきに日々技術向上に努めています。
個人で自分流に作ると花芽の具合が鉢によってバラバラになりがちですが、
矢祭鉢研には、「この時期はこれぐらいの育ち具合が良い」といった目安がしっかりあります。
薄葉さんは、出荷予定の鉢物のサンプルを、種類ごとに各6~10鉢を検討会の時に、厳しく名人たちの目でチェックしてもらっています。
自分はこの矢祭鉢研の名人たちと共に厳しい基準に沿って作っているのが強みと言います。
現在平園芸ではシクラメン、カーネーション、アッツ桜を3本柱に生産し、昨年からチェッカーベリーも始めました。各花の出荷時期が集中していないので年間を通じ、良いリレーができているそうです。
広い土地を生かして量も多く生産されていますが、4本柱のように種類を絞ることでその花の性質を細かく把握し、品質を第一とした生産が行われています。
アッツ桜の珍しい品種も見せてもらいました。
東日本大震災では
先の大震災では原発事故でもいわき市は避難指示が出ませんでしたが、薄葉さんは幼いお子さんの雄大君(当時まだ1歳)もいるので自主避難をすることにしました。
「いわきに帰ってくるのがいつになるかわからない」という辛い思いの中、薄葉さんがパートさんたちに平園芸の休業を知らせた時は、皆さん涙、涙だったそうです。それだけパートさんたちもこの平園芸を大切に思われていたのですね。
薄葉さんはその後お姉さんのお家や、ご親戚の勤めていらっしゃる会社の社宅がある千葉へご家族で避難されました。
これまで愛情を込めて育ててきた花たちを残して、またこれから先の見通しがつかない不安定な状態で生活するのはとてもしんどかったと思います。
1ケ月経って、4月半ばには原子力発電所から半径20~30km圏内の屋内退避指示が解除され、いわき市の放射線量も低いことが確認されました。いわき市から避難していた人たちも戻り始めました。
薄葉さんは避難してから、ありがたい縁で学生時代に新聞奨学生でお世話になったお店で働かせてもらったりした後、いわき市に戻りました。
震災後、平園芸で再び花を作れるようになり「またパートさんたちと一緒に仕事できるのが嬉しい」とおっしゃいます。
「パートさんたちを“雇っている”というのではなく、仕事をパートさんにして頂いている、みんなに助けられて成り立っていると感じます。」
こうした謙虚さ、どんな人も大切にする姿勢はパートさんに話をする雰囲気からもうかがえました。
平園芸のモットー
こうした姿勢は、薄葉さんのお父さんの丈夫さんが考えられたキャッチフレーズ
「人と共に 花と友に」にまさにつながっています。
これには一緒に働いてくれている人がいて、市場で売ってくれる人がいて、いろんな人が関わってくれるおかげで花を生産できることができ、また、花が友達のように身近な存在になってほしいという思いが込められています。
花は好きになるのに年齢、性別は関係ないので、たくさんの人に花好きになっていってほしいと薄葉さんはおっしゃいます。
ちなみにこのキャッチフレーズを考えたお父さんの丈夫さんは、今は家庭菜園とお孫さん雄大君のお世話を楽しんでいらっしゃるということでした。
平園芸の格言
○たくさん作っても愛情は一鉢ずつしっかりかける!
○母の日に向けて花芽をしっかり合わせる!
○人との結びつきを大切にする!
平園芸からメッセージ
●カーネーションは多肥料を好む植物なので、開花している時期には多くの肥料を必要とします。長く楽しんでもらうために肥料を随時あげてください。
●置き場は日当たりの良いところに飾ってください。
●水をやった後に受け皿に溜まった水は、しっかり取り除いて下さい。
最後に
もうすぐ端午の節句です。雄大君がいるので、立派なのぼりが立っていました。
↑雄大君。穏やかで安心した表情が印象的でした。素敵な人たちと、素敵な環境の中で大きくなってね。
今回平園芸さんに訪問させて頂いて非常に人への思いやりを大切にされているのを感じました。この思いやりが花へも向けられています。
今年も母の日の出荷が楽しみです!
(文責:kadono hiromi)
2007年8月 4日
Vol.43 千葉県 処(ところ)園芸
7月某日、鉢のセリ日・・・大田花きの1Fフロアを上から見てみると、とってもトロピコー(トロピカル!)
ハイビスカスに巨大クワズイモ、沖縄からのビッグな観葉植物がたくさん!夏商材が多く、まるで南国からごっそり抜き取ってきたかのような熱帯植物がフロアを埋め尽くします。
写真の左上にちょろっと見える白い一角は胡蝶蘭です。
中でもひときわ鮮やかにその一角を染める商品があるではないか。(中央下)
・・・一体これは何なのか?
アジサイの出荷はほぼ終了だし、何よりアジサイより更にビビッドカラー!
チューリップなんて季節外れだし・・・ガーベラか?いや違うなぁ。
ブーゲンビリアの色でもないし。
下に降りてみると、・・・OH!!なんとなんとベゴニアではありませんか!
こんなにボリューム満点で、発色が美しく、素晴らしい品質のベゴニア・・・一体これはどなたが作っていらっしゃるのか。
商品に貼られた出荷シールには千葉県「処園芸」(ところえんげい)と書いてある。むむ・・・。
処園芸さんとはどんな方で、どこでどのようにベゴニアを栽培されているのか。
どうしてこんなに品質のしっかりしたベゴニアが作れるのか、その秘密が知りたい!
あ?、も?、こーなったらじっとしていられない!早速千葉まで行ってみることにしました!
いざ千葉へ!
翌日(早っ!)・・・快晴!
ありがとう、お天道様!あなたはいつも私の味方だ。(相変わらず大袈裟やな)
一面田んぼの中に「東関道」をひた走りに北上・・・
この田んぼの真中をひた走りに走っていくと、見えてきました国民宿舎の「サンライズ九十九里」!!
国民宿舎でありながら、太平洋を独り占め!
サンライズ九十九里を過ぎると突然キラキラとした太平洋が見えてきました!
ここで高速を下りて、海岸通りをまっしぐら。
この“海岸通り”がまたまた乙なもの。
まだまだ旬の時期とは言わずとも、既に海にはサーファーの姿がちらほら。
道の両脇にずらりと並ぶサーファーショップは時期になればその街が1年の中で最盛期を迎え、多くの人で賑わうことを容易に想像させます。
このサーファーショップの並びに突然現れた乗馬クラブ・・・なんで?
馬に乗るのも波に乗るのも同じ「乗る」繋がりってことですかね。・・・まいっか。
訪問前のお勉強!
タララッタッタッタ?♪
ハイ!ここでベゴニアの基本的なお勉強タイムですー!
ベゴニアはシュウカイドウ科に属し・・・
シュウカイドウ科ってなんだ??
しかも調べてみれば漢字で「秋海棠」と書くではないか。
「ドウ」の字は「堂」ではなく「棠」であることに注意。さすが植物だけあって、下は「土」ではなく「木」であるらしい。
そんなことはどうでもいいとして、ネットで検索すると以下のように出てくる。
「シュウカイドウ科とは、中国?マレー半島原産の多年草。葉は互生し、卵状心形で先は尖り、縁に鋸歯がある。花期は9?10月。山地の湿り気のある木陰にしばしば群落をつくる。本邦では観賞用に栽培するが、中国では根を秋海棠根(シュウカイドウコン)と称し、活血薬とする。また花は天ぷらにして食べられるという。」
・・・むむむむ。「花は天ぷらにして食べられる」というところしか理解できない・・・無念。
つまり、シュウカイドウ科を英語で言うと「Begoniaceae」で、「ベゴニア科」みたいなものですね。
よし!分かった!!
このBegoniaとう名前は、フランスの植物収集のスポンサーであるミッシェル・ベゴン(Begon)さんの名に由来します。もしかしたら、今のベゴニアは「ベゴニア」という名前ではなく「ミッシェル」という名前だったかも・・・?いや、ありえまい(-.-)
一般的にベゴニアは以下の4つのタイプの大別されます。
?四季咲きベコニア(センパフローレンス)
?冬咲きベゴニア(クリスマスベゴニア)
?球根ベゴニア
?エラチオールベゴニア
先が長いので、ここでは?-?の説明は割愛させていただきます♪あしからずm(_ _)m
通常、市場に出荷されているのは?のエラチオールベゴニアで、処園芸さんのベゴニアもこのタイプです。
南米原産の球根ベゴニアとイエメンのソコトラ島原産のベゴニア・ソコトラナの交配による品種で、ドイツの育種家オットー・リーガーさんが多くの品種を開発したこともあり、リーガースベゴニアとも呼ばれます。この名前なら聞いたことがある方も多いかもしれませんね。じゃ、エラチオールと呼ばれるのはエラチオールさんもたくさん品種開発をしたのかというとそうではなく、最初に育成されたときの品種にちなんで“エラチオール”と呼ばれているわけです。
はい!そこでイエメンのソコトラ島ってどこ?と思った方へ、ソコトラ島の場所を調べてみました!
ありました、ありました↑
サウジアラビアのあるアラビア半島からから300km南に浮かぶ島で、アラビア文化発祥の地と言われるイエメンに属します。面積は3,600k?程度で、択捉島よりやや大きいくらいですね。
位置的にはアフリカ大陸至近のため、気候は1年中暑く、アラビア海のガラパゴス島と呼ばれ独特の動植物が生息しているのだとか。
紀元前にはアレキサンダー大王がアロエの生産地であるソコトラ島を占領させたともいいます。
アラビア本土を向いている北側では商売のために来航したアラブ人やインド人、はたまたギリシャ人などが入り混じって住んでいたため、様々な文化が融合して発達したようです。
ソコトラ島を知らずして、エラチオールベゴニアを語ることなかれ!
もしエラチオールベゴニアがお部屋にあったら、魅惑の島ソコトラ島が少し近くなったような気がしませんか?
・・・な?んて考えているうちに。おっと危ない
道を間違えるところでした!
処園芸さんのハウスはこの鳥居の見えるところを左に入って行きます。
そして到着しました?
このハウスの中にあの立派なベゴニアたちがあるのでしょうか・・・
何はともあれ、早くあのベゴニアを拝見したい!
“とにかくハウスに連れてって?!!”とわがままを言って早速ハウスに御案内いただきました。
・・・
だーーーーーー!
すんごい!鮮やかに広がる一面のベゴニア。
まるでキャンバスに絵の具でべったりと色付けしたかのような、いやいやしかし透き通るような美しさをも備える鮮色。
遠くから見る限りではなかなかベゴニアとは分からないほど色で面を埋め尽くします。
ベゴニアってこんなにきれいだったんだと再認識させられる瞬間でした。
そして早速、こちらが処園芸の処ご夫妻です。満面の笑顔で迎えてくださいました。
ご主人の處要一さんと奥様の茂美さんです。
処園芸さんは全部で9色のベゴニアを栽培していらっしゃいます。
きれいな色を備えるまでの成長過程はこちら↓
親木から挿し木をして約10日。こんなかわいい赤ちゃんベゴです。
挿し木をしてから鉢上げまでおよそ1ヵ月、赤ちゃんベゴはここで養生します。
鉢上げをしてから5週間後・・・(ここまでに一度ピンチをします)
ちらほらと花を付け始めるのが10-12週間目・・・
鉢上げからおよそ13週間で満開、出荷を迎えるわけです?
ピンク、かわいぃっ!
このハイクオリティのベゴニアを栽培するための處さんのこだわりは一体なんなのでしょう!?
まず培養土にこだわっていらっしゃいます。
赤土とピートと堆肥をオリジナルブレンド。
“土のこだわりがなくなったら良い物は作れないよ。技術云々より、やっぱり土だね。”と処さん。
次に潅水は手潅水とプールベンチ!
プールベンチは乾いたら水を吸い上げてくれるので、手潅水と変わらず、微妙な塩梅を見ながら水をやることができます。
そして最後は植物をよく観察すること!
親が子の様子を見て微妙な変化に気付いてあげるように、處さんの植物に対する愛情の目で以ってよく「観て」あげることが大切!
・・・と伺い、私も“ベゴニアを観てみよう!”とハウス内を一緒に歩いていると不思議な物を発見!
こ、これは一体何なのだ
ここで伝票を数えるための指サックか、もしくは・・・むむむ。全く分からない!
どうやら一緒に置いてある緑のスティックが関係しているらしい。
ヒント:このスティックの長さは21cm
答えは、仕立ての際に仕上げる支柱を挿す時に使う指サックでした。
そのままでは枝が暴れてしまうので、このグリーンの支柱を3本程度立てることによって、“きちんと”コンパクトに仕立てるのです。
こうやって→
家の敷居をまたいで外に出るときにピシッと襟元を正して行くのと同じような感じでしょうか?
この支柱を4号鉢に3本ずつ挿していくので、ずっと作業していると指が痛くなってしまうとのことです。
そのためにこの指サックで保護しているわけですね。
それでも奥様の指には“ベゴニア支柱タコ”(っていうんか?)が出来ていました。
ほら!!↓じゃじゃ?ん!
この支柱挿しはひとつひとつ手作業でやるため、時間のかかる本当に大変なお仕事なんですよ。それをピーク時にはパートさん2人と1日に500-600鉢を出荷するのですから、気の遠くなるような作業です。
しかしこのベゴタコ(さっそく略してしまった・・・^_^;)のお陰で、支柱を指す前と挿した後ではこんなにも違うんですよ。
使用前⇒
使用後⇒
“しゃんと”しましたよね。キュッとまとまり、コンパクトに美しく、そして品が備わりました。
(あ?!!私も自分に支柱を立てて、重力に抵抗できる体になりた?いっ!!)
なんて騒いでいるうちに、次なる不思議を発見。
・・・??? こ、これはなんだ??
よもや處さんはこんなところで髭剃りをされているのか?
しかもこのような昔懐かしL字カミソリ(安全ガードなしにて凶暴)を使って・・・?
だっ、大丈夫ですか??
よもや処さんのお顔は傷だらけ?
なんて、ふと處さんを見上げると、處さんのお顔はつるつるではないかーーー!
どうやら髭剃りに使っているわけではないようです・・・じゃ、ナニ??
実はベゴニアを挿し木で増殖するための穂切り用カミソリだったんですね。
液体は消毒液で、病気が伝染しないように殺菌しているのです。
そか、よかったよかった。(ほッ)
訪問中、始終ニコニコとご対応くださった處ご夫妻。
ベゴニアを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
どうしてもご主人の處さんとベゴニアのイメージが結びつかないのですが・・・(あ、失敬!)
「昔はね、全く園芸とは関係のない業界の会社員だったんですよ。」
とこちらの失礼な質問にも気さくに答えてくださる處さん。
会社員当時から独立心があり、ご結婚された茂美様のご実家がベゴニアなどの園芸品の栽培をしていたことがきっかけで“これをやってみよう”と決心されたそうです。
しかし「ド素人だったからねぇ」と處さんは当時を振り返ります。
一体ベゴニアの何が處さんに栽培を決意させたのでしょうか・・・。
最も大きなポイントは周年栽培できる!ということだったそうです。
ご自身で園芸の素人という認識を持っていらしたからこそ
“失敗するかもしれない。失敗しても周年出荷できるベゴニアなら、次の周期がすぐにくる!”
というリスク軽減が大きなポイントとなったのです。
しかし、このポイントはひっくり返せば「少し本来の周期に乗り遅れると、一作とりこぼしてしまう」という危険とがあります。
お独りで経営を始めたばかりの時は「周年回していかなければ!」という重圧と、次から次へと回ってくる周期に追われる状況下での限られた作業時間から、寝る時間を惜しんでまでハウスに立ち作業をしていたとのことです。
きっと今は随分余裕が出て、当時を懐かしく思っていらっしゃるのかと思いきや、
“いやぁ、今でもその重圧は同じですよ。初心忘るべからずです!この仕事だけやっていればいいわけではありませんしね」
とお仕事に傾ける情熱と真摯ぶりを語っていらっしゃいました。
以上のような處さんの情熱がこもった良いベゴニアの見分け方を伝授しちゃいます!
まずスリーブを取ります。(←これを面倒くさがらずにやることがポイントです!)
分枝や全体のバランスがをよくみて、バランスよくまとまっているかどうかが大きなポイントとなります。
処園芸さんの格言
1. 他社には真似できない處さん独自の土!
2. まるでベゴニアちゃんたちに問診をして決めたかのような絶妙な潅水具合!
3. 観察力!植物の微妙な状態の変化を見抜く審美眼を磨くこと!
4.そして・・・
栽培者の性格が栽培過程や仕上げ具合に反映されると言われます。處さんはご夫婦仲良しの上に植物に対する愛情と、周りの物や環境への丁寧な心配りも忘れません。ここに発色や花保ちの良さが差別化されて表れるのです!
處さんの商品は注文される方が多く、「処園芸で!」と指名買いされる方が多いと弊社の販売担当が言っていました。つまり、これは處さんの品質の良さを裏付けていることにほかなりません。
ベゴニアは夏の暑い時期でも花保ち抜群、処園芸さんのベゴニアはとりわけ美しく咲き続けるのです!
お花屋さんで處さんのベゴニアをお求めになりたいときは「大田花き経由(←これも大事)処さんちの!(←こっちはもっと大事)」とリクエストしてください。
?Message?
お花屋さんへ
出荷するときは輸送中に花が擦れることを考慮し、仕方なくスリーブをかけています。
優しいピンク色の素敵なスリーブではありますが、そのままにしておくと花が蒸れてしまいますので、店頭に配置する際はスリーブを外してくださいね。
?消費者の皆様へ?
愛情を込めて作ったので、皆さんも愛情を込めて可愛がってあげてください。
・ お部屋の中のなるべく明るい場所に置いてお楽しみください。
・ 夏の陽射しが強い場合はレース越しに日を当てるようにしてください。
・ 冬でもストーブ至近を避け、できるだけ暖かい所で管理してください。
・ 土が乾きすぎないように花や葉だけでなく、土もよく観察するのがポイントです。
水をやるときは花や葉にかからないよう注意してたっぷりとやってください。
7月某日鉢物セリ日朝6時15分、来場される買参人さんもまばらなうちから、セリのトップで出番を待つ処園芸のベゴニアちゃんたち・・・。
可愛らしいベゴニアちゃん、処園芸のお母様たちが手にタコまで作って仕立ててくれたのですから、お客様の元でもきちんと可愛がられてくださいね?♪
おまけ♪
処園芸さんの周りは自然に囲まれてとてもきれいなところでした。
ちょうどお邪魔した日も、空の青に緑が映えてとてもきれいでしたよ。ウツギの花も眩しいくらいに咲いていました。
そんなところだからこそ、植物のみならず、動物もたくさんでるとのこと。
カエルちゃんを頂きにヘビも頻繁に出没するとのことです・・・(ぞぉ?←ヘビ苦手人間です)
2007年5月28日
vol.40 沖縄県 福樹園
ウンチク探検隊 初の沖縄上陸!
飛行機を降り立つと南国らしく蘭の花に迎えられ、心も弾みます♪
今回訪れたのは、観葉植物の産地沖縄花きさんです!
出荷量は、写真のようなコンテナで年間250本!!
毎週 約5本ずつ、多い時は10本分もの出荷があるというから驚きです。
その中でも1点物の変りダネをコダワって作られている福樹園さんをクローズアップします。
ハウス脇の事務所に入ると、今流行のモノトーンでスリムな鉢や、コロンとした丸型の鉢などに植えられたドラセナや、味のある表情を見せるセロームが!
では、これらオリジナル商品の生産現場へLet's go!
コダワリ その1
早速発見!変わりダネ観葉各種です。
独自のカーブを描く『ソング・オブ・インディア』。
和な雰囲気の『ポリシャス』。
「まともに成長しないいじけたタイプを盆栽仕立てにしているんです」と島袋社長。
インテリアに合わせてY字に仕立てた『パキラ』。
「部屋のコーナーに置いて、この下にソファーを置くといいでしょ!」と実演される島袋社長。
ここまで形成するのに4年の月日を要しています!
でも、どうやったら こんな曲がりができるのでしょうか
このように、紐などで誘引する場合もあるようですが…
水を与えると葉が重くて自然と倒れていきます。
↓
これを繰り返すとクネクネとした動きの自然な曲がりが完成するのだと教えてくださいました。
そして、幹部分をよ?く見ると年輪のようなものが!
冬場、葉が落ちて軽くなると成長が早まり真っ直ぐと伸びるのだそうです。
このスジの幅が成長スピードの跡。つまり、いじけるとはグングン伸びずに成長スピードが遅く、まっすぐに伸びないこと。普通は商品価値がないと判断されるコレに目を付けたわけです。
オリジナル商品の誕生!
元々、ご実家が農家だった島袋社長が観葉植物の栽培を始めた切っ掛けは、「面白いかな?」というわりと軽い(?)気持ちから。
始めはグリーンリース業もされていましたが、次第に値段が下がり、「もうコレばかりに頼っていられない!」と1点もののオリジナル観葉作りに奮起。 本格栽培をし出したのはココ1?2年のことだそうです。
住宅事情の変化に伴い、大鉢の需要が拡大したこと、またオリジナリティの高い商品を求める消費者が増えたことから、インテリアショップでも近頃ステキな観葉をよく見かけるようになりましたよね。
だから、時代の流れにマッチしているのです!
個性溢れる曲がったラインが特徴の いわゆる変りダネを沢山栽培されていますが、ご自身が好きなのは「モミジみたいなポッ、ポッ、ポッと葉や花が付いた、ふんわりした感じ」なのだとか。
「だって、作られたようなラインはずっと見ていると疲れるでしょ!
だから自然な感じが好きなんです。」
こちらで皆が『モミジ』と呼んでいるのは、『ポリシャス』のこと。
確かに、見た目の雰囲気は似ていますよね。
こうした観葉苗の増殖場所があるというので、案内していただきました。
ナント 広大な農場を2箇所、合わせて2万1500坪も所有しているのです!
⇒
芽を吹かせる為に背丈ほどに成長し、不要になった枝を伐採、右上の写真のように挿してから苗が出来上がるまでに1?2年かかります。
それにしても、見渡す限りの観葉畑!
福寿園の販売担当 恒石さんは、すっかり沖縄に馴染んでいるように見えますが、実は東京から沖縄へ移り住んで、まだ1年にも満たないのだそうです。
沖縄へ来て驚いたことを聞いてみると、
「冬場は曇りの日が意外と多いこと。それから…そこら辺に植わっている植物がみんな観葉植物だったこと!あと…どの植物でも花を付けるんだなぁ!って知ったことでしたね。」と語ってくださいました。
←これは、『ドラセナの花』 見たことありますか?
訪れた季節は まだ春だというのに、周辺には驚くことにアサガオが自生しています。
そして、ドラセナ畑の向こうには、ゴムの木(アルテシマ)の壁が!
「作れるかなと思って20年前に植えたものが、こんなに成長したんです。」と島袋社長。
観葉植物は根が浅いので、台風の力で倒れてしまうことがある為、今では防風林としての役割も果たしているのだそうです。
コダワリ その2
社長のコダワリは、植物だけではありません。
土も独自に配合した培養土に植え替えています。
そして、根に入り込んだ土を丁寧に落としてから鉢上げがされています。
⇒⇒
鉢底から根っこが顔をのぞかせ、葉に色がのってきたら出荷準備OKの合図!
ここでクイズ!
これ何だか分かりますか?
答えは、大きな鉢を運ぶ手押し台車でした。
とっても便利そうですよね!
今までご紹介した他にも、沢山の種類の植物が育てられていました。
まさに宝の山です!
ほんの一部ですが、ご紹介します。
アトムピンク パキラ コルジリネ
ギンリュウボク 小鳥がとまっているいるようで可愛らしいですよね。
そして、コレ何だか分かりますか?
↑初めて目にする圧巻のアガベ畑!!
今、大人気のアガベですが、希少な商品。それだけに驚きです!
今風の黒い化粧鉢に入れると、こんなにオシャレに!⇒
今後の目標について伺ってみると、
「既存の種類でも見捨てられているものがまだまだあるはず!だから、作り方や見せ方を換えて商品化していきたいです。また、本土で作られていて、沖縄にないものを沖縄で作ったらどうなるか試してみて、沖縄で栽培した方が有利な植物を生産していきたいです。」
「採算ベースでは合わない部分もあるけど、熱帯植物の需要は高いと思います。
それを生産ラインにのせて、マーケットに提供していきますよ。」
1点もの商品ばかりなので、直接 見に来る花屋さんがいるというのも納得です。
情報交換は直でも、単独での物流は高くつきますので、市場外流通は考えていません。
『市場を通す市場外流通』という新しいスタイルと言えるのでしょうか?
仕事上のベストパートナーとお見受けしたお二人!
二人三脚で新しい商品開発に励み、観葉植物市場へ更なる新風を吹き込むことを期待しています!!
福寿園さんからお花屋さんへのメッセージ
需要に応えられる商品作りに励んでいます。
生産地からの情報を発信するホームページも現在 準備中ですので期待してください。
福寿園の格言
・見飽きた観葉鉢も作り方や見せ方次第で目新しい商品に変身します!
・まともに成長しない“いじけたタイプ”、クネクネした“へそ曲がり(?)タイプ”を個性と受け止めるべし!
・直接お花屋さんの声を吸い上げ、市場へ供給される、先端の商品に期待すべし!
2007年4月 1日
vol.36 群馬県 さかもと園芸
今回お邪魔したのは群馬県の桐生市黒保根町。 「クロホネ町」と読みますが、「黒骨」(←これだとちょっと不気味)ではありません、くれぐれも。 群馬県民なら誰でも知っている「上毛カルタ」で、“つ”で始まるフレーズは“ツル舞う形の群馬県”、 しかも「つ」はプレミアムカードで、これをゲットすると特別点がもらえるという切り札なのです! そのフレーズの通り群馬県は鶴が舞っているような形をしています。 今回訪問させていただきましたさかもと園芸さんは、その鶴の左羽の付け根の辺りに所在する桐生市にあります。 おっとヤバイ! これからアジサイの大家であるさかもと園芸さんを訪問するというのに、私はアジサイのことを何も知らないではないか! 緊急事態発生! 道中、車の中で必死に基本の「き」を勉強いたしました! ?アジサイの「花」と呼ばれる部分はどこか分かりますか? 実は↓これです。 この写真の中心部分の「ポチッ」としている部分が花です。これを装飾花、或いは中性花といいます。 →ここまですらっと出てきたら、あなたもまさに“アジサイプロフェッショナル”! 略して“アジプロ”。 でもまだまだランクCね。 写真は蕾の状態です。?では一般的に花と思われがちな花びらのような“あの部分”は何にかというと、「ガク」になるわけです。 この花びらのように開いているのは「ガク」。英語でSepal(セパル)。 “アジプロ”としてはこれもすらっと出てくるよーに。クリアできたらランクB。
はい、次。 ?じゃあ、真中のこのつぶつぶは何さ?↓ これも花です、花! これを「両性化」といいます。 つぶつぶは蕾の状態で、これが咲くと5つの花びら(Petal:ペタル)がきれいに割れて、中から雌しべ(Pistil:ピスティル)と雄しべ(Stamen:ステイメン)がぺこっとお目見えするわけですね。 ハイ!これであなたもアジプロ、ランクAに認定されました! さて、とりあえずの焦燥感も拭い去れたところで、ウンチク号が首都高を抜けて舞い降りたのは佐野藤岡インターチェンジ・・・ここまで2時間! 佐野藤岡といえばなぜかラーメンで有名。 乱立するラーメン店を尻目に少し走ると突然左手に現れたのは巨大な“プレミアムアウトレットモール” 行きたい衝動をググッとこらえて黒保根町に向けて猛進、猛進! やはりこーゆーものはプライベートでゆっくり来るものでしょう。ここはサラリと諦めるべし!(当然)
佐野藤岡ICで下りてから更に1時間。黒保根町に到着! 1時間走ると景色もガラリ変わってしまうものです。 幾度となくアップダウンを切り抜けて、なっとさかもと園芸さんに到着! 東京から約3時間・・・周りの山々の頭にはまだ白い残雪がくっきりと見えます。 よもや「赤城おろし」とか「榛名おろし」とか言われる空っ風は、これらの山から吹き下りてくるのか。 運良く取材に行った日は穏やかな日でしたが、群馬は「嬶(かかあ)天下と空っ風」という文句で有名な通り、真冬に吹きすさぶ風に向かって自転車で走ろうものなら、前に進めたもんじゃありません ちなみにこのフレーズに出てくる「嬶(かかあ)天下」という言葉ですが、一見“群馬の女性は恐妻”という印象を受けがちですが、これには誤解があります。 群馬は昔から養蚕や製糸業が盛んで手先の器用な上手早な女性は高い賃金で雇われていました。 そのため働き者だった群馬の女性は、子守りを旦那に任せて働きに出ていました。 それを第三者が見て、「群馬の女性は(本来自分でやるべき)子供の世話を旦那にさせて自分は働いている!」と勘違いしたことから始まり、“恐妻”のイメージで捉えられるようになってしまったのです。 しかし、もともとは副業だった養蚕や製糸業も専業化が進み織物業が発展すると、上州の人々の暮らしは大きく上向くことになったのですが、その原動力となり活躍したのは農家の女性だったのです。 つまり、「群馬の女性は働き者!」 群馬で「かかあ天下」と言った場合は、女性に対する褒め言葉なんです! くれぐれも誤解のないように! あ、ちょっとヒートアップしすぎましたか?あはは^_^;
さて、本題に戻りまして、アジサイの大家にお会いするためには、いくらアジプロといえどもランクA程度では極めて失礼にあたるわけです。 更に超A級になるために、ここで【もっとアジプロ講座!】 アジサイは別名“七変化”と言われるように、白色を除いて用土によって色が変化します。 酸性の用土ほど青味が増し、中性に近づくにつれてピンクや赤がより鮮明になります。(注意!:では、アルカリ性ならもっと鮮やかな赤になるかというとそうではなく、アルカリ性の用土ではなかなか植物は育たないわけです、はい。) これは赤の色素(“アントシアニン”紫サツマイモやブルーベリーに含まれていることで有名ですね( ^ー゜)b)がアルミニウムと化合すると青くなるためで、アルミニウムは土の中に多量にあり、酸性ほど水に溶けて植物に吸われるようになるからです。 日本の土の殆どが酸性土ですから、青系の花は比較的鮮明な花色になりますが、ピンクや赤系の色は紫かかって濁ってきます。 そこで坂本さんの技術力の見せどころ! 坂本さんはその育種力と栽培力で数々の美しい赤ヤピンク系のアジサイを世に排出しているのです! ご覧ください↓ ハウスには出荷を間近に控えたピンクのアジサイたちがハウスいっぱいに広がります! 一足踏み入れただけで圧巻の光景です。 アジプロの方ならご存知かもしれません。 ↓こちらはミセスクミコ♪ ピンク色が愛らしくて人気品種です。 美しいミセスクミコにうっとりしていると、もっと美しいものに遭遇しました!
おっとこれはよもや本物のミセスクミコなのではあるまいか??
じゃじゃ?ん!本物のミセスクミコ様がご登場です! 本物のミセスクミコ様はとても若々しくていらっしゃり、アジサイのミセスクミコのように頬をピンク色に染めつつ、ハウス内でテキパキと従業員の皆様をリードする信頼の厚い坂本さんの奥様なのでした。 やはりここでも群馬の女性は働き者! 艶やかな本家本元のミセスクミコさんに引き続き、坂本さん、ご登場!!
じゃじゃ?ん!!
さかもと園芸の坂本正次さんです。
「ミセスクミコと名前を付けた理由は?」と尋ねると、 「まあ、だいたい名前を付けるときは家族の名前、芸能人の名前、ゴロが良い物なんかを順位考えていって決めるんだよね。そのときは秋吉久美子とか後藤久美子とか、久美子っていう名前が芸能人にも多かったからね・・・」なんて芸能人に逃げるあたりは照れ隠しでしょうか? その名前と商品イメージがぴったり合っているためか、今では毎年母の日のヒット商品です。 とりわけ今年は昨年より色のりが良いのが特徴です! 今年坂本園芸のアジサイに出合ったあなたは超ラッキー! ------------------------------------------------------------------- アジサイの生産にはだいたい10ヶ月から1年かかります。 主な販売期は3-5月、ですから前の年の4月から5月に挿し木をして販売に備えるわけです。 ここから2ヶ月弱で出荷。(注意!青じそではありません、くれぐれも) 徐々に成長していき・・・ ↓ ↓ ↓ぐぐーん! ↓ ↓ ↓ぐぐーん!! ↓ ↓ ↓ぐぐーん!!!と生長して となるわけです。 完成 ちなみにこちらは“ブルーダイヤ”という品種です。 透き通るような涼しい青が新鮮な印象を与えます。 蒸し暑い夏に涼しく快適な空間をコーディネートするには一役買ってくれそうな好適品種ですね。 このようにハウスを見学させて頂いているとなんだか不思議なものが・・・ おっと、こんなところにどうして菜切り包丁が
よもや日本人の野菜不足の傾向を案じ、ハウス内でもアジサイの葉を茹でて食べたりしているのか?? まさか
・・・と思ったら、答えを発見!
生長した苗を植え替える際、根の回りの土塊の大きさを調整するために菜切り包丁を使っていたのでした。 何かと思ってびっくりしちゃいましたよ?。
なんて納得していたら次の不思議ちゃん発見! い、いったいこれは何なのでしょう この4輪のタイヤに載った1枚の鉄板。一見“スケボー”のようにも見えますが、通常のサイズに比べると微妙にバランスが違う・・・。スポーツ少年だった坂本さんの健脚に付いていけない従業員の方がこれを使用して伴走するとでもいうのか?まさか??
・・・と思ったら、またまた答えを発見! ベンチではなく地面に置いた鉢物を一つ一つしゃがんで見ていくのは一苦労。 腰も膝も痛くなって、耐え切れずに立ち上がったときにはズキリと関節が痛むか立ちくらみってとこでしょう。これではお仕事を続けるのは難しいですよね。 そこでこれに座ってちょこちょこっとスライドしながら移動すれば、随分身体への負担も軽減されるという優れモノなのです! 地植えが多い野菜を栽培されている方はよくお持ちのようです。
アジプロの皆さんならば、ここで知っておかなければならないことがあります。(←神妙な雰囲気で読んで下さい) 坂本さんはただの生産者ではありません! 数々の度重なる改良により数々の優れた新品種を生み出していらっしゃる育種家でもあるんです。 いままでに試作した数はなんと10万本にものぼります そのうち、世の中に残したのは20―30品種!これは大変なことなんです! しかもその品種は日本のみならず、世界中に注目されている品種を生産しているのです。 それではここで坂本さんの育種品種で、消費者の皆さんが比較的お店で手に入れやすい品種をご紹介します。 ・ ミセスクミコ ・ ブルーダイヤ ・ ピンクダイヤ ・ ユングフラウジェミニ ・ ユングフラウラベンダー ・ ウィンドミルピンク (「ウィンド見る」ではありません。ウィンドミルとは「風車」の意味で、その通りガクとガクの間に隙間があるのが特徴です。)
これらのアジサイの中ではかなりのシェア率を占めるメジャーな品種を坂本さんが育種されたなんて、いかに坂本さんが優秀な育種家であるか、お分かりいただけると思います。 ハウスの中には試作コーナーがあり、見たことの無い珍しい品種がたくさん並んでいました。 ↓ こちらは企業秘密♪につきモザイク画像にて勘弁してくださいな。 ------------------------------------------------------------------ そんなこだわりを持つ坂本さんの優秀な作品たちを世間が見逃すはずはありません! 坂本さんは数々の賞を受賞していらっしゃり、なんと2006年のジャパンフラワーセレクション・フラワーオブザイヤーに選ばれました。 受賞したのはフェアリーアイという品種です。 ↓こちらは授賞式で日本のファーストレディ安倍夫人にフェアリーアイをプレゼントした瞬間です。 とーぉっても嬉そーな安倍夫人です♪ その他、2002年にオランダで開催されたフロリアードでもGOLD賞を獲得、更に遡って1992年のフロリアードでも鉢物部門で第1位を獲得されるという輝かしい実績をお持ちなのです ハウス内にずらりと並ぶ坂本さんのアジサイちゃん ここから世界の優秀作品が生まれたのですね! では、なぜこのようなこだわりを持つ育種にも栽培にも優れた坂本さんが誕生したのか。 その秘密を(ドキュメンタリータッチで?)解明しましょう!
坂本さんは中学生の時から蹴球少年まっしぐら!・・・蹴球て(-.-) その頃はサッカー部のことを蹴球部と言っていたそうです。 「埼玉を制す者は全国を制す」と言われたくらい激戦地区の埼玉で蹴球(サッカー←しつこい?)に熱中、部長さんを務めていらっしゃいました。 あの釜本選手がオリンピックに出場したときで、それはもう蹴球に対する情熱は誰にも負けませんでした。 その蹴球熱は大学まで続きましたが、蹴球と同様に熱を注いでいたのがサボテン! 中学生のときお兄様からもらったサボテンをきっかけにハマッていった坂本さん。学校では教科書の手前にサボテンの本を隠してチラ見していたほどのサボテンフリーク! なんと大学の卒論も「サボテンの営利栽培について」!! 中学の時にお兄様からもらった最初のサボテンから徐々に増やしていき、群馬に引っ越してきたときはなんと600鉢ほども持っていらしたのだとか! そんな“サボマニ”(サボテンマニア)だった坂本さんが栽培品目をアジサイと心に決めたのは理由がありました。 やはり「サボテンの営利栽培について」大学で学ばれただけに良くご存知で、サボテンは生長が遅い上に、資金・栽培・時間、売り先の確実性などを鑑み、サボでは生計を立てるのが難しいから・・・泣く泣くサボテンを諦めることにしたとのことです 代わりに「“花”をやりたい」と栽培品目を模索。 雑誌『農耕と園芸』で企画していた鉢花のプログラム生産講座(六本木にて開催)に参加し、アジサイにインスピレーションを受け、メインアイテムとして栽培することを決意されたそうです!
埼玉から群馬に引っ越したのは昭和48年の秋・・・世間では第一次オイルショックなどが起こり、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」が封切りされ、おまけに桜田淳子・山口百恵・森昌子がデビューした年でした。あたしゃ生まれていませんが。 「昭和49年に栽培をスタートして以来33年(!)、様々なアイテムに挑戦しつつもメインの生産品目(アジサイとシクラメン)を変えずに一つのことをやってきたからこそできたのかも・・・」と振り返る坂本さん。 一つのことを成し遂げることすら容易なことではありません。 サボテンや蹴球に対する情熱を見れば分かる通り、坂本さんの一途な人となりがあったからこそ、世界レベルの数々の賞を受賞され、「アジサイの育種といえばさかもと園芸」というタイトルの獲得につながったわけです。 きっとその一途な情熱は奥様のミセスクミコ様にも注がれているに違いありません
「品種改良は楽しいけど、食べていかなくてはいけないから稼がないとね。 品種改良は先行投資で賭博的。費用対コストを考えてバランスよく生産と勧めていかなくてはならないよね。“好きすぎる”一筋ではどこかで弊害が出てしまう。」と坂本さん。 “好き”だけでは成し得ないという現実を見据えて、33年間生産と品種改良とに真摯に向き合ってきた坂本さんだけに、説得力のあるお言葉でした。
そんな坂本さんはその技術を若手の生産者に伝授するというお努めもしていらっしゃいます。 たまたまうんちく取材班がお邪魔したときに、坂本さんが生産指導をされているアグリベイスの多和田さんという方がいらっしゃいました。 (左が坂本さん、右がアグリベイスの多和田圭一さん)
多和田さんは2年ほど坂本さんのところで修行をして、今は「アグリベイス」として独立していらっしゃいます。
奥様の久美子さん曰く、「息子より手を掛けたわよ!」 そう繰り返しながら、多和田さんの肩を優しく叩いていらっしゃいました。その姿はまるで本当の親子のようでした
せっかくなので、同じ黒保根にある多和田さんの農場にもお邪魔致しました。 ↓ちょっとだけご紹介。 多和田さんのお宅も主にアジサイとシクラメンを生産していらっしゃいます。
多和田さん曰く、 「この辺は田舎でね、ハウスの周りではタヌキやイノシシ、鹿も人も出没するんですよーーー!」 こちらが「え?人も出るんですか?」と聞くと、 「うん、年寄りばかりだけどね・・・」 がーん(;_;) 多和田さーん、そんなこと言わないで?! アグリベイスで働いていらしたのは、若い方ばかりでしたよーーー!←これホント。 多和田さんのハウスではまだ咲いているアジサイは殆どありませんでした。 その代わりこんな可愛いシクラメンの赤ちゃんを見つけちゃいました! 播種して2週間の芽です。
坂本園芸さんは(アグリベイスさんも)、弊社の鉢物生産者グループ「ループワン」に所属していらっしゃいます。 ループワンの紹介ページはこちら↓
お花屋さんとご購入いただいた消費者の皆様へ 【管理のポイント】 1.置き場所 直射日光下では花が早く色あせるので、半日陰か明るい室内に置くことがポイントです。
2.水遣り自然界では梅雨時期の風物詩のひとつでもあるように、アジサイは基本的に水を好む植物です。 春から夏にかけては良く水を吸い土が乾きやすいので、土の表面がやや乾いたらたっぷりと与えます。 鉢の底から充分抜けるくらいにたっぷりと与えてください。 3.施肥 皆さんがお店で購入される時には既に与えてありますので、開花中は必要ありませんが、その後は月1回くらい追肥をして株を充実させてください。 4.剪定 アジサイの蕾は秋に枝の先にでき、翌年開花します。 夏以降、開花までの間に剪定をすると花が咲きません。7月末までに枝の中ほどで切り詰めます。 その後は間引いて日当たりをすると良い花が咲きます。
↑いかがでしょうか。世界の坂本さん直伝の「管理ポイント」。このマニュアルさえ知っていれば、「アジサイを10倍楽しむ方法」を知っているのも同然です!
今年はあなたの暮らしのパートナーにアジサイをいかがでしょうか。 きっと生活に彩りを与えるてくれることでしょう! 坂本さんのアジサイの目印はコチラ↓!
さかもと園芸さんの格言
毎年アジサイを暮らしのパートナーに迎える方も、今年はアジサイで空間コーディネートしようかとお考えの方も、是非世界の「さかもと園芸」さんのアジサイをお試しください♪ <文責:Kathy>
●おまけ● ハウス内の一方では、年末に出荷を終えたシクラメンたちが一休み。 花が終わり膨らむこの中から種が取れるんです。 ------------------------------------------------------------------------------- さかもと園芸さんとアグリベイスさんの所在する黒保根地域は、古くは平安時代に奥州から京に上る道沿いとして、江戸時代には足尾銅山から銅を搬出する街道筋として賑わいました。 黒保根町の総面積の89%を森林が占めており、清流も多くあり、恵まれた自然を生かした森林公園やキャンプ場、温泉センターなどがあります。 山あいにある黒保根町は、都会では失われてしまった人々の豊かな自然に育まれた暮らしが連綿と続いています。黒保根地域は山間地のため夏でも比較的涼しく、気候の面で花卉栽培に適しているのです。 最寄駅は東武特急「赤城駅」です。是非一度訪れてみてください。
2006年12月 2日
vol.29 千葉県 鉢物産地編 パート?
千葉県旭市の鉢物産地 第2弾!
やっと冬らしい気候になってきました。
「寒くなると赤が売れる!」と言われますが、ポインセチアの季節です。
今回は、シクラメンとポインセチアを中心に栽培しているLOOP1産地を2件ご紹介します。
?感動的に長持ちするシクラメンを!?
(田村園芸)
まずハウスに入ると、色分けされ、ピシッとまっすぐ並べられた鉢に驚かされます。
几帳面な性格に違いないと思われる田村 博さんがこちら→
そして、いただいた名刺に書かれた似顔絵そっくりで、またビックリ!
↓こちらがその似顔絵。分かりますか?ソックリでしょ!
そんな田村さんのコダワリは…
【コダワリ?】田村流・葉組み
田村さんも葉組みにひと手間かけて、きれいに変身させる魔法の手をもっていました。
そのポイントは…
鉢から10cm!理想型となる目安の高さを決めたら、もうこれ以上伸びない古い葉にまだ伸びるような葉や、丈が長い葉を絡めて、なるべく平らにみえるようにする!そうすることで、揃って見えるのです。
名付けて“ガンコ作り”!!
買った人が長くキレイな状態を楽しめるように考慮されているのです。
【コダワリ?】土
この辺の山土、赤土を取ってきて使用しています!
【コダワリ?】肥料
買った人が、最低1ヶ月は水さえあげていればいいように肥料を乗せています!
【コダワリ?】水
ラベルにも記されている『PWSパイウォーターシステム』
つまり、イオン水を使っています!
そうして完成したシクラメンがこちら→
花の根元が平らに揃って美しい!
尚且つ、末端のお客さんの事まで考慮されているので花持ちが抜群にいいと、お花屋さんの間でも人気の商品なのです!
こうしたコダワリを継承するご子息の静さん→
栽培を始めて4年目になるそうです。
これからも期待してますよ♪
田村さんの格言
・花持ち抜群!感動的に長持ちするシクラメンをお試しあれ!
?グズマニアでは国内屈指の生産者です!?
(旭園芸)
続いて、旭園芸さんをたずねました。
まずは、旬のポインセチアをご紹介!
⇒
今年 爆発的にヒットしている『アイスパンチ』は、こうして、だんだん白くなるのです。
この他の栽培品種には…
レモンスノー ウィンターローズ マーブル ピカソ …etc
栽培はプールのような場所に水を張って、その上に鉢を置いています。
ここで、
ポインセチアの豆知識
すっかりクリスマスのシンボルとなっているポインセチアですが、元々キリスト教が西半球に伝わる前からメキシコのアズテク族によって栽培されていたようです。
切り口から出てくる乳液からは、熱を下げる薬効のある調剤が作られていました。
17世紀には、フランシスコ修道会の僧侶によって、その色と咲く時期から、お祭りや誕生祭の行列に使われるようになったといいます。
そして、アメリカの駐メキシコ大使のポインセット氏がメキシコで発見し、紹介して広まったことから 「ポインセチア」になったと伝えられています。
花言葉は★『聖なる願い』★
↓林さんご夫妻。
さて、24歳で観葉植物の栽培に携わり、30歳でグズマニアを作りを始めて15年になる林さん。
観葉を始めた切っ掛けは、「マスクメロンが売れなくなって、面白そうだなと思って…」との事。
さらに、「今考えると人生のターニングポイントだったんだけど、成功するか分からなかったよね。しがみ付いてココまで来たよ!」とご苦労を思い返されていました。
でも、「野菜はいかに数量と時期を合わせるかだけだけど、植物は鉢のサイズ、スタイルをどう仕立てようか?などと考える要素が多いから楽しい!」と充実した様子で語ってくださいました。
そして、ポインセチアを作り初めて6?7年。
でも よく考えると、グズマニアもポインセチアもガクが色づく植物ですよね。
ガクが色づく植物が好きなんですか?
「花と分からないから、持ちもよく見えるしね。」と。
そんなグズマニアのハウスも見せていただきました。
と、そこでハウスの天井まで届きそうなほど成長したヤシの木発見!
そして、「おいしそうな青パパイヤ!!!」
「えっ?青いままでも食べれるの?食べれるんなら取っていいよ!」という林さんの言葉に飛びついた少年のような表情を見せる桐生隊員。
確かに青パパイヤは、沖縄では炒め料理として、またベトナムではサラダとして食べられています。
私も青パパイヤのサラダは大好きですが……。
さてさて、本題の取材に戻って、グズマニアです!
「今は時期じゃないから、あんまりいいのないよ。」とは言うものの、鮮やかな色合いが美しい!!!
出荷するまでにナント2年もかかるのです!
こちらも出荷時期に期待です。
「1日100m四方のこのハウスを行ったり来たりして1万歩じゃきかないよ。だから靴底の減りが早いんだよ!」
「労働時間多いけど、植物を栽培することは職業としては自分の奨に一番合っている!」
さらに、「今までは与えられたものをいかによく作るかだったけど、今はオリジナルを作る事が夢!」と
気負わずに楽しみながらも、大きな野望を抱く林さんでした。
旭園芸 林さんの格言
・花屋さんの利益が生産者の利益!
2006年11月27日
vol.28 千葉県 鉢物産地編 パート?
冬の訪れを感じさせる鉢物の王様と言えば、シクラメンとポインセチア!
さて、2回にわたって千葉県の優秀な鉢物産地をご紹介いたします。
場所は千葉県旭市。
今回はシクラメンの産地を2件 ご紹介します。
?最高級シクラメンを作出する秘密は??
嶋田園芸
初めてのシクラメン産地です!
園芸チームの担当者に「マスクを持って行った方がいいよ。」と言われていたのですが…。
到着してその意味が分かりました。
この辺りは畜産も盛んな地域。途中、強烈なメタンガスが車内に充満する瞬間が
ありました(>_<)
特に嶋田さんのハウス周辺は畜産団地やタメ池があり、い?い(?)臭いがしています。
こうした天然堆肥エキスも最高級のシクラメンを育てるヒミツなのでしょうか???
では、早速ハウスの中へ!
今年の出来はどうかな?
よく見ると、針金が花の周辺に巻きついています。
これは何でしょうか?
「葉っぱを広げて、中まで光を入れてあげると新しい葉と花芽が出てくるんだよ。」と嶋田さんが教えてくれました。
そうすることによって、葉数の多い、立派なシクラメンが出来上がるんですね!
そう言えば、葉数と花数は一緒って聞きますが、本当なんでしょうか?
「一緒だよ!だから葉が沢山ついたものがいいんだよ。」
そうおっしゃる嶋田さんも、野菜農家から転身されているのです。
切っ掛けは…、「体をこわして重い野菜を運ぶ事が難しくなった時、偶然空いたハウスを譲り受けて、そのままシクラメン栽培を始めたんだよ。それが間違いのもと!?いや、よかったよ!」と嶋田さん。
始めて3年は失敗の連続で、6枚しか葉が出なかったこともあるのだとか。
でも、そうした失敗があったから今がある!とおっしゃっていました。
「失敗、苦労は人生に必要だよ。挫折がなきゃ分からない事が沢山あるし、いろんな人と出会うことができてよかった。」
男41歳でシクラメン作りに転身し、最高の作り手になられた方のお言葉には重みがありました。
さてさて、そんな嶋田さんが出荷に際しての最低条件とするひと手間=最後の葉組み(*)に迫ってみました!
「女の人と一緒だよ。こうして最後の化粧してやれば、綺麗になるんだよ!」と嶋田さんの魔法の手で見違えるように綺麗になっていきます。
そして、出来上がった最高のシクラメンを手にパチリ!
*葉組みとは、葉の高さを揃え、キレイに見えるように葉を交差させたりして整える作業の事です。
でも何でこんなに手をかけるのでしょう?
確かなことは分かりませんが、嶋田さん曰く、「日本の風土なんだろうね」と。
いちおし品種は…
カムリ ↑ 冬桜 ↑
※どちらも花が転回せず下を向いていますが、決して水下がりや奇形ではありません。
冬桜は色バリエーションも豊富!
ガクが普通の品種より大きく、花弁に覆いかぶさっていますが、その姿がまた可愛らしいと思いませんか?
これらの品種も11月下旬から出荷開始です!
他に良い品物を作る秘密ってあるんでしょうか?
「水やりは地下水を利用してるんだけど、窒素量が普通の水より多いみたい。」
それは周辺の肥溜めエキスが染み出しているからなのでしょうか?
あながち自然のエキスの影響を受けているというのも、冗談ではなさそうです。
でもいくらいい環境とは言っても定植するまでは別の場所で育てるのだとか。
なぜかというと、子供用お薬なんかと同じ理由です。
パワーが強すぎるのです。
作り手が教えるシクラメンを買う時&飾る時のチェックポイント!
●前にもご紹介したように葉数と花数は同じ!だから、葉っぱが沢山ついているもの!
尚且つ、1株の葉っぱの面積は一緒!だから、小さい葉が数多くついているのがBest!
●鉢の底もチェック!根がしっかり張っていれば、ちょっとぐらい水切れしてもすぐに復活する力があります。
●そして、暖房厳禁!玄関先のチョット日が差す程度の涼しい場所が一番です!
「長持ちしたって言われるのが一番うれしい!」とやさしい表情で語る嶋田さんの愛情がたっぷり注がれたシクラメンを飾ってみませんか?
←目印はこのタグ。
シクラメン作りのスーパーマン(!?)、SHIMADAマークが目印です!
嶋田さんの格言
・手をかける事が出荷する上での最低条件!
それぐらい仕上げ作業を大事にしています。
・天然堆肥エキスの好環境で育ったシクラメンは葉付きも花持ちも最高!
?農林大臣賞を受賞した加瀬さんが作るシクラメン?
AME加瀬園芸
まずお会いするなり、「加瀬さんは元レーサーだったってホントですか?」なんて質問してしまいました!
すると、「アグリのライバルだったんだ!今はその思いを花にぶつけてトップを狙っているんだ。」と加瀬さん。26歳の頃、注目される選手だったのです!
なんと、屋号についた『AME』とは…オート・モービル・イクイップメントの略、車大好き人間には有名なアルミホイールのメーカー名なんだとか。
そして箱には、『レーシングスピリッツ』!
なるほど、これで繋がりました!
車のレーサーからシクラメン作りに転身した加瀬さん、
「レースもシクラメン作りも一緒よ!」とおっしゃいます。
「カーブ曲がる時と一緒!滑らないようにタイヤでいかに路面を捕らえて引力と戦うかが勝負よ!」
奥深いです…。
レースの話はさておき、現業のシクラメンを見てみましょう!
シクラメンでもトップを狙う男は違います。
なんと、農林水産大臣賞を受賞されていました!
今、圃場にある花は…
ジャズブラット
「味のある深い赤がいいでしょ!コレ好きなんだよ。」
実際にはもっと濃い赤なんですが、上手く写真でお伝えできず残念…。
ロマンス
ビクトリアに似て、力強く、首が太いのが特徴。
カムリ
咲くと変わります!
加瀬さんは苗生産もしています。
こちらは、切花用トルコキキョウ苗の赤ちゃんです。
そして、こちらの機械は何をするものか分かりますか?
土を入れる機械と、種まき機です。
どうして、こんな機械が必要かというと、シクラメンの苗作りのため。
シクラメンの種はこんなに小さいのです。
種から3?4週間で発芽し、3ヶ月で鉢に植え替えられる状態になるのだそうです。
最後に、
「今時期は、出荷作業と来年の仕込みとで大変なんだよ!」
と語る加瀬さん。
プライベートでも仲良しの園芸チーム 大西さんと一緒に、自慢のシクラメンを持って!
忙しい中、いろいろ説明してくださって
ありがとうございましたm(_ _)m
?おまけ?
まだ出回っていない商品を特別にご紹介!写真も初公開です。
仕立て方がオモシロイ!
来年より出荷予定ですので、乞うご期待!!!
シクラメンの原種。
こうして咲く前はくるるんと巻いているんです!
加瀬さんの格言
・いたずらに規模を拡大しないで、自分の手をかけられる範囲で生産しています!
・レースも農業も一緒!俺は地球と戦っている!!
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