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2015年6月 2日

青果市場も日本の生産者とともにあります

 同じ市場(いちば)にいる人間として、今回は青果物業界について少し触れてみたいと思います。

 花きも市場経由率が高いのですが、実は青果も高く、特に国内産青果物の約9割が市場を流通しています。世間ではよく「市場経由率が下がっている」といった話が出されますが、それはスーパー等量販店が産地から直送取引をするので、市場経由率が下がったという話になってしまいます。また、確かに農水省から発表されている市場経由率という点からみると、果物は50%を切っているし、野菜も70%台です。しかし、この数字は国内で流通した加工用の輸入青果物も分母に含んで計算した数字なのです。国産の青果物だけで捉えると、市場経由率は9割近くになります。何か矛盾しているように感じると思いますが、その原因は先ほど述べたように、市場経由率の計算の仕方にあります。全ての消費量、例えば果物のジュース、ゼリー、いちご味のお菓子に入っている果汁。こういった材料を全てひっくるめると、「卸売市場を経由しているのは50%」となってしまうのです。野菜の例でいっても、冷凍餃子が沢山輸入されていますが、餃子の中に入っているキャベツも入れて、市場経由率を算出すると70%台になるのです。これが多いか少ないかは議論が多々あるかとは思いますが。実際のところは、日本の生産者が作っている青果物のかなりの量が市場を経由しています。花きと同様、我々、青果市場も、決して生産者と市場の距離が離れているわけではなく、日本の生産者ととても密接な関係にあります。
 
 市場経由率と並んで話題に上がるのが、日本の食料自給率です。実はこの自給率も、数字の捉え方で誤解されやすいのです。例えば、輸入牛を食べても、国産牛を食べても自給率は変わらないのです。なぜなら、日本の肉牛を育てるには、1キロあたり、ほぼ輸入に頼っているトウモロコシ11キロが必要だからです。国産牛1キロを食べるという事は、輸入の作物11キロを食べているのと変わらないということです。また、昭和30年代、日本の自給率は約70%でした。でもそれは、米や魚の消費が多く、あまり肉やチーズ、バターを消費していなかったからです。洋食化が進んだ現代とは大きく異なっています。食生活が欧米化してしまうと、自給率が必然的に下がってしまいます。つまり欧米化した現代の食生活を直さない限り、自給率は昭和30年代の頃には戻らないのです。ここを考えずに、自給率を上げましょう、農業を活性化させましょうというのは、ややピントがずれた議論になってしまいます。国を含めて、我々の食生活が変わらなければ、自給率は上がらないのです。この本質的な部分を理解しておくべきであると思います。少なくとも我々青果市場としては、自給率を落とさない為に、多品目、多様種の鮮度の良い青果物を産地から消費者に向けてスピーディーに提供しなければならないという思いで日々取り組んでおります。

取締役 川田 一光
(東京青果 株式会社 代表取締役社長)

2015年6月 2日 12:32

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