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2015年6月 8日

老い楽の品種作り ~絶滅種を再現する~

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(出所:L'Illustration Horticole Vol.2, 1855)

 いつの間にか70歳を超えてしまいましたが、種苗会社を引退して8年、昔取った杵柄のペチュニアの品種改良を続けています。1834年、南米に自生する2種の野生種が交配され、そこから現在のペチュニア園芸品種のほとんどが出発しています。

 さて、この植物画(ボタニカルアート)は、すでに1855年に販売されていた緑縁(グリーンエッジ)6品種です。このブームは終焉し、100年以上も絶滅したものと思われていたのですが、最近日本の個人育種家の努力で奇跡的に再現されました。おそらくこのイラストのような品種があったことを知悉している方はおられないでしょうが、この緑縁種の各色を完成させてみようと思いついて数年が経過、今年こそはと1000株も畑に植えて大事に育てています。

 当面の一つの目標は、この植物画の時代にはまだ発現していなかった、赤色の緑縁種の育成です。そして、数日前に咲きだした数株が、なんとこの夢の花色を見せたのです。まだ緋赤色とはいえないのですが、おそらく世界で初めての新花色と言えるでしょう。エキサイティングの毎日で、高血圧や日射病の懸念もなんのその、真っ黒になって何度も畑を行ったり来たり。恐らく明年には、ビジネスパートナーによってこの新種の苗の増殖、販売ができることでしょう。夏目漱石ばりに表現すれば、「名前はまだない」のですが...

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(今咲きだした赤色のグリーンエッジ)

 私は頭の体操や健康のために、個人育種家と名乗るのにはおこがましいくらいの「老い楽の品種作り」にいそしんでいますが、日本には種々の花の個人育種家が大勢いらっしゃって、毎年素晴らしい品種が作出され、花産業の下支えをしているのです。おそらく個人育種家が活躍していることでは世界一、日本が誇れる園芸界の至宝です。

取締役 須田 畯一郎
(元 株式会社サカタのタネ 代表取締役専務)

2015年6月 8日 11:00

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