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2008年12月15日

消費者中心経営

昨日は松市だった。景気の悪さを反映して、1?2割の安値といったところである。しかし昨年までは人気薄であった根引松や五葉松など、生け花やアレンジの素養がないと使いこなせない松が活発に動いた。
それには二つの理由があろう。一つは男松にせよ女松にせよ、良い根引きやナタ切りのものなど、生産量が少なくなって地方の大手の花屋さんや市場の人たちが大田花きのせりに参加するようになったこと。二つ目はこの経済の調整局面を自分たちの生き残りの局面と捉えて、専門店は積極的に量販店で売りにくい根引松や五葉松を売ろうと前向きに取り組んだこと。

このように花の専門店としての持味を前面に押し出し、この難局を乗り切っていこうとする意欲は今年のフラワーオブザイヤーOTAにも表れている。詳しくはHPのサイトを見ていただきたいと思うが、2年連続でダリアの‘黒蝶’が年間グランプリに輝き、しかも昨年の新ふくしま農協から、今年の秋グランプリは山形おきたま農協、そしてさらに年間グランプリではダリアを安定して年間出荷することを目的に作られたみなみ信州農協花き部会の‘黒蝶’が選ばれた。

私はこのことをこのように捉えている。不安定な時代にあって仕事を続けていくためには、時代を映し出す花を選ばなければならない。そこで花屋さんは‘黒蝶’を仕入れた。そしてその花屋さんは‘黒蝶’を使い、飾った。お客様はお金を払っただけのことはあると感じ、花屋さんは対価以上のものをお客様へ差し上げることが出来た。消費者に買ってもらう「第一の真実の瞬間」に‘黒蝶’は勝利し、ユーザーや消費者に使いやすさや花保ち、揃い、そして美しさなどを与えたみなみ信州農協は「第二回目の真実の瞬間」に勝利した。特に経済の調整局面ではリピーターを作る「第二回目の真実の瞬間」で必ず勝利しないと明日はない。

花き業界のすべての人たちのお客様はただ一人、消費者だ。その消費者にお金を払ってもその花のある生活のシーンが良かったと思ってもらい、リピーターになってもらうこと。これが種苗・生産・農協・運送・卸・仲卸・小売の花のサプライチェーンを構成するすべての人たちの共通で唯一の目標である。花き業界は今、消費者中心経営をしようとする人たちによって再編されようとしている。景気が悪くなればなるほど、消費者主義の花き業界の完成度が逆説的に高くなってゆく。誰しも今つらいところだが、消費者に喜んでもらえることを念頭に、自分の役割に磨きをかけ、花き業界全体の最適のために取り組めればと思う。

投稿者 磯村信夫 : 2008年12月15日 00:00

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