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2016年3月28日

"今"に集中せよ

 年度末の週となった。オフィス街では、送別と入社の花が動く週だ。このごろは、オフィス街が商業地に衣替えしているので、桜の花の需要も大変多くなっている。この3月、住宅地とオフィス街では忙しい時期が違う。弊社は、東京・横浜の中心部に近い為、年度末と年度の始めは大変忙しい買参人さんが多く、法人需要の多さが胡蝶ラン一つとっても目につく。

 さて、本日は、当たり前のことだが"今"という時について考えたい。"今"は過去の集積であり、未来の予言でもある。過去と未来を繋げること、つまり、過去を受け入れながらも未来を創ることだ。だから、 "今"に集中する。過去の遺産で食っているのでは駄目で、未来を創る行動をしなければ、エントロピーが高まって死期が早まるだけだ。しかし、花き産業は、生き物である花から学んでいる筈なのに、産業として、また、それぞれの組織体や個人が仕事の上で未来を創る時間を割いていない。過去の繋がりでご用命頂き、その処理をする作業でおしまいになっている。年度末、改めて省みることで"今"に集中する。一方、未来を創る"今"にもっと集中して、実際に時間を使う。これを行っていく。

 メンテナンスと言われようが、たまたまイノベーションを思いつこうが、とにかく、未来を創ることに時間を割けたか、行動出来たかをチェックしながらやっていく。こう決意するのが、年度末から年度始めにわたる今週に思うことである。一日の中で明日への投資をどの位行ったか、花き業界と人して、自分自身の行動も含め、チェックしていきたい。
 

投稿者 磯村信夫 : 12:43

2016年3月21日

今後の物日対応について

 12月と並んで切り花の需要期である3月、今年の市況は16日(水)から供給不足となり、過去5年で最も高い単価となった。何故そうなったのか、生産・消費、小売店の角度から分析し、今後の物日について考えたい。

 2015年度(4月~3月)の物日の相場を振り返ると、前進開花で8月盆の菊相場は高騰した。ここ15年無かった高値である。周年産地は暑さで奇形花の発生があり、露地栽培は高齢化で生産が少なかった。安定した出荷が出来ず、例え大産地でも日頃の出荷比率に合わせて市場を絞り、出荷数量を決定した。こうして8月は高騰した訳だ。また、消費者においては、伝統回帰から、お墓参りの需要は想定したよりも減っておらず、団塊ジュニアまで含めて、今後とも微減が想定される。また、7月盆の地域でも、盆は8月だと思っている若い人たちが増え、終戦の日にご先祖様にお参りする習慣が出来ている。

 9月の敬老の日・お彼岸期は天候にも恵まれ、ジャストインタイムであったので、生産者良し・消費者良し・小売店良しの花き流通となった。12月は稀にみる暖冬で、端境期にならず1月出荷の商品が年末に出てきてしまった為、花束加工業者や量販店、そして、間際の仕入れで荷が潤沢であった小売店も、皆さんまあまあの結果であった。もちろん、消費者も良い花が割安に買えて良かったのだが、景気動向もあり、生産者、卸・仲卸は前年を下回った。 

 さて、この3月は、昨年の8月盆と同様の展開だ。団塊世代が高齢者となってリタイアをし、退職の送別の花の数は確かに少ない。しかし、団塊ジュニアの子どもたちが小学校を卒業したり、中学へ入学したり、また、謝恩会や送別会、結婚式は結構多い。また、全国各県で花き振興協議会が発足され、国産花きイノベーション推進事業の予算で、花育活動が活発に行われている。そんな関係で、地元の花屋さんがもう一度学校と良い関係を築き、卒業式や謝恩会等の花の需要が喚起されてきている。単価は安いかもしれないが、日本中で行われている為、この需要は大きい。

 花の小売店業界から見ると、セルフの花束販売をしている量販店が、物日には通常の何倍にも売場面積を広くし、一日の売上金額が通常の10倍以上となっているようだ。全国の仲卸は花束加工を行い、小売店でも花束加工業者として量販店に納入している所が数多くあり、現存するスーパーマーケット、ホームセンターで、物日に花束を販売していない所は日本中で殆どなくなった。しっかりスケジュールされて花束加工・納品が為されるので、いつ仕入れて幾つ花束を作り、いつ店頭に並べるかが、日本中で全国一律になっている。一方、量販店の花売り場にシェアを奪われた花の専門店は、後継者がいない所が店を畳んだり、そうでなくても、嘗ては物日に仏花は3倍売れた所、今は2倍少々の数量しか売れなくなっている。しかも、一顧客あたりの単価は低下気味で、物日の仕入れは、物日の前の市1、2回のところが大変多くなった。さらに、地方でも宅配便が1日で届いたり、都市部ではインターネット販売で当日配送される為、気持ちの上で日本全国の専門店は使用する間際1回の市で仕入れている。

 今後の傾向として、特に仏花が売れる物日には量販店のシェアが高まり、逆に専門店のシェアは低くなる。そうなると、専門店の買参人が殆どの卸売市場は、存続が難しくなる可能性がある。流通量にしても、量販店は売れる物日で売場面積を広め、物日が終わると小さくする訳だから、物日とそうではない時の格差が益々大きくなる。徒歩と自転車で買い物をすることが出来る各県の都市部以外、物日の格差が益々大きくなるから、専門店の存続が難しくなるということだ。しかし、専門店は、新しい花との生活を提案するプロだ。ギフトや冠婚葬祭の花だけではなく、切花にしても、鉢物類にしても、新しいモノを取り入れて自分流にデザインする。お客様をうならせる新しいトレンド、あるいは、新しい花は、face to faceで接する専門店からしか生まれない。専門店が少なくなると、花の買い物コスト削減や、ワンストップショッピングで買い物時間削減を売り物にする量販店やインターネット花店の販売にも影響してくるだろう。ファッション業界のように、トップクラスの専門店を模倣して、大衆価格で販売すれば売れるという訳にはいかない。従って、花き業界をあげて、専門店の数が少なくなり過ぎないように、頑張って商売してもらえるようリテールサポートをしていかなければならない。これが、花き業界、そして、大田花きの方針だ。

 最後に整理すると、日本の花き産地は、花き輸入商社まで含め、今後とも天候や経済状況により、供給が不足する可能性がある。一方、需要量は、物日と普段の差が広がる。従って、人手不足や天候不順を前提に、鮮度保持対策と納期を守ることによって、計画通り物日に販売できるようにする。また、消費者の金額的な負担を少なくし、きちんと開花する、あるいは、花持ちを約束する商品をお届けすることが必要だ。専門店は、卸売市場から天候と産地状況をよく聞き取り、リスクも考えて、今までより早めの1、2回前の市から商材確保をして、余裕を持って販売することをお勧めする次第である。 

投稿者 磯村信夫 : 16:49

2016年3月14日

国民生活にとって、農協と卸売市場は欠かせないという事実認識の上に立った改革が重要

 農業従事者の平均年齢が高齢者となった日本農業において、現内閣の下、農協改革が進められている。先日も、配合飼料を供給する会社に対して、提供価格に競争力がないことを指摘し、合併等の改善を促すことがあった。また、農協系の金融についても言及した。そして、農協改革が進められている今、卸売市場についても、何らかの構造的な改善・指導があるかもしれないと考えられる。

 私は、花き産業で働く一人として、日本の園芸特産物農業の現状を理解しているつもりである。イタリアより長い日本列島の縦長の地形と、戦後の農地改革によって狭くなってしまった1戸あたりの耕地面積、この2つの弱点を日本農業は持っている。これを補ってきたのが、協同組合精神による農協の各産物部会の集配センター・販売センターとしての役割、また、消費地の卸売市場の集配センター・販売センターとしての役割だ。園芸特産物においては、この社会インフラが、国民生活にとって欠かせないものであるとの事実認識をした上で、農協改革や農業者団体、関係業者の改善・勧告等が為されるのであれば良い。しかし、地域農協、地域卸売市場が成り立たないような改善命令であれば、アメリカ・EUのように、国が農家の所得を一定水準保証しないと、先進国では農業はやっていけない。

 一方で多様性を謳い、一方で効率を求める。そして、効率の中には強者の支配がある。どのようにバランスをとっていくか。あらゆる法人や業種、そして、生物は、生きていけるのなら多様性があった方が良い筈だ。「生きていくために多様化して形を変えていけ」というのであれば、農協改革の下、農業者へのサービス企業として、それぞれの企業は喜んで自己改革をしていくに違いない。

 それにしても、日本の農業従事者の平均年齢が高齢者であるという事実は、国を挙げて農業の重要性をアピールし、後継者が生まれる環境を作り、若者が農業をやりたいと思うような状況を作っていかなければならないことを示唆している。個人の担い手が少ないなら、法人が農業を行うのも良いだろう。東京オリンピックまでのここ5年が、大運動をしていく最後のチャンスではと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 13:28

2016年3月 7日

ネットの価格

 5日の土曜日、昼の部のコンサートへ行った後、家内と食事をしようと、家内が好きなホテルのレストラン部門が出店している銀座の鉄板焼きに食事に行った。コンサートが終わった後に電話をしたら、空きがあるとのことで店に向かった訳だが、店内には先に中年の女性客が、我々が来た後に中年カップルや若い人達が来て、店はほぼ満席となった。ふと気が付くと、我々だけがアラカルトを頼んでおり、他の人達はコースを頼んでいた。家内いわく、グルメ紹介のネットを通じて予約しているから、ドリンクがサービスになったり、コース料理でお得に楽しめるのだという。私たちももう少し時間があれば、予めネット予約をしたのだけれど、と言っていた。支払を済ませながら、僕は何やら不公平な感じがしてならなかった。カウンターで料理人と話していて、家内が何回もそのホテルへ宿泊していることや、これからも行くだろう上得意の客であることは店側も分かっているだろう。一方、ネット予約の客は、昔で言えば"一見さん"かもしれない。もちろん、上客の場合もあるだろう。しかし、直接予約した贔屓の客の方が、何割も高いお金を払っているのは何かおかしい。唯一納得出来るとすれば、若い人たちにお店を知ってもらい、今後の固定客となってもらうための割引だろうか。2015年、ネットで買い物をする世帯が全体の30%弱になったと総務省が報じているが、ネットからの受注を安くするというのは、何かフェアではないように思う。ネット業者に仲介手数料を払っているのは、知ってもらい店の効率を上げるためだというだろうが、店を使う顧客の視点に立つと、甚だ面白くないことが多くなっているネット社会だ。ネット社会の今日、あらゆる業界でサービスと価格設定をもう一度考え直すべきで、サービスの安定まで含めると、航空会社に学ぶべきところは多い。
 
 総務省は同様に、2015年10~12月の労働力調査を発表した。それによると、結婚している25~64歳の全夫婦のうち、半数が共働きであるという。年代別にみると、妻が25~34歳までの世帯の60.6%、35~44歳が68.8%、45~54歳が73.8%、そして、55~64歳が50.3%の割合で共働きとなっている。お子さんが小さいうちは、4割弱の人達が育児に専念している。お子さんが小さいうちに、居間やテーブルの上、お手洗いやちょっとした出窓等に切花や鉢物があると、子どもが豊かに育つというのは、大脳生理学、精神医学でも証明されている。しかし、子どもが預けられるようになるまで、女性はなかなか働きたくても働けない現状もある。夫婦とも稼ぎがこれだけ多くなると、やはり週末に花を買ってもらうことが重要になるだろう。さらに、今後ますます女性が働くようになってくると、オフィスに観葉植物や、ちょっとした切花等を取り入れることで、職場の精神衛生だけでなく、そのお母さんの心のゆとりにも繋がっていくはずだ。もちろん、男性まで含め仕事の生産性を上げることも出来ると、大脳生理学・精神医学者は言っている。

 各家庭はさらに忙しくなっている。必要不可欠な家族の団欒、趣味の時間も必要だ。こういう中で、花を、うるおいのある生活をするための小道具として使ってもらうには、週末にかざる花(ウィークエンドフラワー)や、オフィスの花(フラワービズ)、そして、受け取り方をきちんと考えたネット販売。これらのプロモーションが必要だろう。花のネット販売では、お試し価格として、年代層によって値段を割り引いても良いと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 16:02

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