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2009年4月27日

価格が下がり続ければ需要は増えない

プライベートブランドだけではなく生鮮食料品で、昨年良かった野菜の価格までもが下がり始めた。スーパーで下げて売り始めたのだ。また旅行もかなり安くなってきた。マッサージもエステも学習塾に至るまでも値段が安くなって、新聞では「消費に刺激」というように需要を喚起するようなことを言っているが、実際はそうはならない。「高くなりそうだ」だとか、「買えなくなるかもしれない」とか、「手に入れるのが難しくなりそうなとき」に人々は買いたがるし買う。そこでマーケットは賑わう。下がり続けている限り、様子見をするし自分の相場観に合えば需要を先食いするだけだ。よって需要は今までより増えるというわけではない。それを私は1992年から特に1998年12月から大田市場でずっと見てきた。だからいかに価格を下げ続けることに危険が多いかということを嫌というほど知らされてきたのに、金融危機から転じた自動車、弱電消費不振、そして今やついにはサービスや生鮮食料品・花までデフレになっている。デフレで生き残るには結局他に真似のできないモノやサービスを提供すること、時代に合わせた価格で価値を訴求することが必要である。経済統計によると、定期預金にお金がたくさん集まっている。価格がどんどん下がるから、消費に踏ん切りが付かないので結局余剰資金となって普通預金のままではしょうがないから定期預金をするかとなる。その定期預金がすごい勢いで集まっている。すなわち消費者はお金がないわけではないのである。

2009年、2010年と消費不振で花もご他聞にもれず大変だ。だからまず各社は経費削減、原価管理を徹底する。しかしその中にあっても、新しい商品を世に問うことを忘れてはならないのだ。研究開発費にお金を使い、新しい花やサービスを作る。そこに一早い消費不振の打開の方策がある。前々回紹介した花屋さんは余剰金を上手に取り込んでいる。生き物で命に限りがあり、一定の期間で商品が回転する花き産業は4月15日以降、法人需要と冠婚葬祭需要が昨年に比べてもう一段小さくなって、価格が乱れた。それは陽気によって出荷物が増え、個人需要を取れず廃棄されたものが多かったためで、よく言われる消費不振というわけではないのである。個人の需要をターゲットに花保ちする花をいっぱいのボリュームで買ってもらう。「衝動買い」はなくなっているから「目的買い」をさせるDMや宣伝、売り場に次週の商品予告を書き、お知らせする。そして目的買いさせる。こういった店作りをしていくのが小売現場での我々の今期のやり方だ。リテールサポートはこれに尽きる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年4月20日

苦境の一手

花き業界内の会合で、2月までは大変悲観的な見方をする人たちが多かったが、3月に入り4月の上旬まではどうやら売上高ベースで前年をクリアしているところが多くあり、なんとなくほっと一息。場合によれば、案じたより良い成果が残せるのではないかという楽観的な見通しを口にする人も出てきた。世間では確かに売れていない商品が多いが、売れている商品もあり、マスメディアの論調もいつの間にか明るい話題を探して報じようとしている。それゆえどちらかというと、花き業界では花のシーズンであることもあって、一時の悲観論一色がほとんどなくなりつつある。しかし実態はそれとは裏腹に業績は確実に落ちている。ここ3年間で見れば、最も良かった2007年を売上げで上回る週はほとんどない。そのときと異なるのは法人需要が少なくなってしまっていることだ。また生産原価および付帯費用も昨年上がったままで、下げていく交渉がなかなかうまくいかない。特に運賃は大手運輸会社が赤字決算だったことが示す通り、ただ単に運賃を下げてもらうことなど難しい。

さらに三つ目は生産者のモチベーションが下がっていること、小売店のモチベーションも同様に下がっていることである。母の日までは一般消費者は花と緑の季節と認識しているので荷動きは良いだろうが、その後どうするか対策を立てる必要がある。というのも、所得が下がっている中、国から支給された給付金の額を上回ったお金をゴールデンウィークや母の日で使い、花の需要は一段落。そのとき景気対策で新たに予算組みをした効果が例えアナウンス効果でも出てきたとしても、実体経済は縮小均衡しているのではないだろうか。

例えば失業率を例にとると、3%から5%に失業率が高まった。となると、100人に5人は普通の消費行動ができないから当然消費を落とす。そうすると前年比2%分だけGDPベースでマイナスになるから、トータルとしてモノが売れなくなった会社や業界は苦境に陥る。もうかなりスリム化してきたが、さらにスリム化するとなると当然人や賃金の問題に手をつけざるを得ない。こうしてまた消費がしぼむ。こういうサイクルが実は始まったばかりなのだ。日本では大手企業が工場の統廃合をリストラ策として発表し、実行している。だから桜が咲くころになって三大都市圏の相場が高く、地方の県庁所在地の相場が安くなっている。地方の場合は昨年の年末、派遣切りや工場の閉鎖話が出てきたときよりも実態はもう少し厳しくなっている。これを花き業界はどう見るかだ。縮小均衡の可能性はさらに高い。運賃は下がらない。コンビニが価格競争に入ったように、花も価格が安くなる。そんなときに生産者は持つのか、小売店は持つのか、愛想を尽かして辞めていくのか。

社会のインフラ商売である花市場の役どころを大田花きなりに判断し、このたび九州・福岡空港の脇で仕事をすることになった九州大田花きは花き流通会社として弊社なりの問題解決の手段として誕生した。
大田花きの花生産者に対する想いをシンボル化したのが吉武社長、消費者に対する想いをシンボル化したのが田中専務。この2人の取締役が困難の時代に九州から花き業界を活性化させてくれることを大田花きとして期待している。2010年下半期以降の景気回復後にいよいよ始まるアジア諸国とのFTA、EPA。そうなった状況下にあっても日本の花き産地は名実ともにアジアで最強の花き産地でなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年4月13日

100年に一度

100年に一度の経済危機だが、100年に一度の日本農業のチャンスだと私は考えている。三菱総研の植物工場研究会だけでなく、人材派遣大手パソナの農業独立支援や農業団体への人材派遣、あるいは渋谷ギャル社長の農(ノ)ギャルなど、今までにない社会現象が起きている。

昨日もしじみで名高い茨城県涸沼に行った。そこで枝物の名手鶴田さんのお孫さんに会って、お兄さんの方は「おじいさんの後を継いで農家をやりたい」、弟は「市場に勤めてせり人になりたい」とおじいさんの薫陶を受け、中学生になって方向性を決めている。

そういえば千葉のカーネーションの名手稲葉さんのお宅でも、お孫さんが後を継いで花をやっていて、大変良いものを出している。子どもではなく孫が継いでいく形もあるし、長野県のJA諏訪みどり農協では農協のハウスのリース事業で都会から新規就農者を募集し、すっかり一人前のカーネーション作りに育て上げ、その人数も増えて花き部会は成長している。北空知も同様で、私が知らないだけで、全国でこのような動きがあることだろう。

農業は新しい時代に入っており、国としてのリスク管理の中での食料確保や国土保全、そして消費者の身心にわたる健康など日本農業を再構築する今までにない戦略を打つときが来ている。補正予算にも前倒しをして新機軸の政策が色濃く映し出されているが、大切なのは実行力である。

あともう一つ、ここのところで新しい小売店が活躍し始めているので報告したい。一つは10坪以上の専門店業態の花売場を経営するデザイナーが花屋さんとなった会社で、フランスの会社とも提携をしている。まさにフランスの専門店のよさを店の中で醸し出している。しかしブランドのような超高級店ではない。フランス人がそうである通り、自分たちが見て良いと思ったものを提供している。そしてこの店の良いところはレイアウトまで含めた花のデザイン性がやわらかいがエスプリが効いている点だ。これが花をよく知るオシャレな人に受けている。

もう一軒のとても元気な花店は、経営理念を掲げて、それを目標に仕事をしており、年次や月次の計画は具体的だし、天気による見切りのタイミングや在庫情報など、社長と店長のコミュニケーションは目を見張るものがある。店長は地方出身の若い人たちがほとんどで、若い女子店長も物日のときなど手を真っ黒にしていた。昔の花屋さんはよくこういうアクがついた真っ黒な手をしていた。家の近所のその店の店舗に行くと最後まで従業員はお年寄りの話しもきちんと聞いてあげている。質素と言うより粗末な本社。本社にある作業場や集出荷場はお世辞にも広いとか綺麗とはいえない。そこで各店長は朝揃い、夜は閉店後最後の従業員が戻ってくるまで社長は待つ。そうしているうちにいつの間にか10店舗を越えた。ここはよく売れる。ここのチェーンの中に雨が降っても売上が落ちない店が4店舗もある。信じられない販売力である。こういった注目される二つの小売り会社はやる気が開花したようにこの不況下で活躍している。この二社を思うとき、世間の目は節穴じゃないなと思い、ありがたく感じる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年4月 6日

活気ある業界の一つの条件は人材

とある大手の仕事屋さんで現場を見ていたら、良い動きをしている社員がいるので「なかなかいい社員がいて頼もしいですね」と言うと、その社長は「彼のうちは花屋さんで後を継がないでこのまま務めると言っています。まぁうちは助かるけれど、ご両親からしたら継いでもらいたいでしょうね」ということがあった。

先日、懇意にしている千葉の生産者が、子どもを連れて訪ねてきた。私から「大学受験をする前に農業の大切さを教えたい」と息子さんを連れてもらった。息子さん本人は農業関係の大学に行かないという。お姉さんと同様、福祉の道に行きたいと言う。農業の大切さを懇々と説いたが、どうも独立独歩でやる仕事は嫌なようで、サラリーマン生活をしたいのかもしれないと思った。花屋さんの子弟にしても農業の後継者にしてもスポーツ選手と同じで、実力で生きていくこと、あるいは起業をしていくことを嫌う風潮がある。なんとなく易きに流されがちなのではないかと思う。

花き業界を見ると一代目が圧倒的に多い仲卸に人材が豊富だ。それは起業化し、小さくても自分で責任を取って生きていっているからだ。しかしいつの間にか花き業界でも未来を託すに足る素質のある人たちも次のような理由で牙を削がれてしまっているのではないかと思う。

1つは学校や会社の組織の平等化である。現実はパレートの法則通り、2割の人が8割の稼ぎをし、言われたことしかやらない人や言われたこともやらない8割の人が2割の富を稼ぎ出している。この有能な上の2割を「出る釘は叩かれる」で押し込めてしまい、育てなかったのではないか。2つ目は組織が大きくなりすぎ、内部調整にエネルギーを使い経営者的存在が育たなかったのではないか。20人の組織でも大企業病に陥っている会社もある。3つ目は学校や会社、農協の組織は機能組織のままでゴーンさんのいうクロスファンクションチームやアメリカの会社のように利益単位ごとのチーム、特に有名なのはP&Gのブランドごとの組織のように、利益単位の組織になっていないのではないか。

大田花きのことで恐縮だが、取扱高が全体の1割しかない鉢物は、利益単位の組織になっているので黒字である。それまでは機能別の品目としての組織であったため赤字であった。それが利益ユニットとしての組織に変えて、暇なときは社内の各部署に出稼ぎに行くなどして責任者は黒字化した。日本の組織は機能別の縦割組織だから稼ぐ組織に変えていく必要がある。この工夫は京セラのアメーバ経営などいくつか方式があるが、人を育てるという観点から言えば、部署横断プロジェクトチームと人事異動に尽きると思う。花き業界を広く見渡すと2代目、3代目、4代目が多い。いつの間にか仕事の野性を感じさせる人たちが少なくなっている。戦国時代の武将や豪族のような人材が多数輩出される風土を作らなければならない。業界の高年齢化とはマンネリ化とほとんど同じ意味だからだ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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