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2010年3月29日

春爛漫

3月下旬に東京の近辺では大きな花のイベントが三つあった。幕張メッセで開催された家庭園芸普及協会主催の「日本フラワー&ガーデンショウ」、上野の東京美術館で開催されている華道家元池坊東京連合支部主催の「池坊東京連合支部いけばな池坊展」、そしてパシフィコ横浜で開催された日本フラワーデザイナー協会主催の「日本フラワーデザイン大賞2010」だ。それぞれのイベントは盛況で、大変見ごたえがあり、いずれも人出は昨年より多かったのではないかと思う。

今まで桜が咲く頃花が売れないと花屋さんはぼやいていたが、リーマンショック前の2007年春頃から花の時期になって花屋さんの店頭で花が売れるようになってきた。花見の仕方も夫婦で散歩のスタイルを取る人たちが増えて、家に花を飾ろうと帰りに花屋さんで切花や鉢物を買っていく。駅の近辺に花屋さんが出店したことも影響しているだろうが、母の日までを花のシーズンとして、小売店も潤うようになってきた。水も臨界点で氷になったり水蒸気になったりするが、花の社会現象も桜の時期に花が売れるようになったのは首都圏だけではないと思う。

さて、この3月は法人需要についても目鼻がついてきた。もちろん需要がかつてのように回復したわけではない。かつてと比べると低調なのだが、しかし今年は役員の入れ替わりや昇進、昇格、新組織への移行など、向こう10年を見据えた大幅な社内改革が多くあった。新社長が若返ったところも多く、40歳代前半の会社も珍しくない。異動した人たち向けに離任式やパーティーがあり花束がよく動く。また昇格の人たちに胡蝶蘭も久しぶりによく動いている。会社お届けの大きなものは25,000円から30,000円くらいが多く、中にはご家庭に届けるミディの胡蝶蘭もある。まだまだ贈る企業は昔と違って限定的だが、花の法人ギフトについて最悪期を脱したと言えるであろう。

では今後どうなるだろうか。皆様方もちょっとしたホールの観葉植物を見てもらえば分かる通りフェイクが多い。この造花のフェイクはよく出来ているが、やはりそれに気付くと興ざめする。これはお金と手間の掛けようの問題だが、これが生のものにもう一度代わるのはそう簡単ではない。法人需要は限られると予測されるので、花き業界は個人需要をどう取り組むかにかかっている。3つの展示会で使われていた花の品質はさすが日本の生産者が作った花だと言える世界で最高の質のものが使われていた。一方にこの花を流通させ、もう一方にはもっと廉価版のものを大量に流通させる必要がある。それには切花日や出荷日を明示し、普通の人が買える価格帯のすなわちワインや日本酒や焼酎と同じように800円から2,000円、高くても2,500円で一週間楽しめる花を提供したい。日本の生産者と小売店にお願いしたいのは、量が動く価格帯で小売販売し、それで利益が出るように量を作って売ってもらうことである。もちろん栽培技術だけでなく、種苗会社にも協力してもらわなければならない。普段の花を量多く流通させる、それがここ10年で日本の花き業界がやらなければならないことだ。まずは量。量を作り、一人一人の消費量は今までとあまり変わらないが、全体として量を買ってもらう。少子高齢化でも花は飾るスペースが減ることはない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年3月22日

Wチェックが出来ている機関を信ずる

社内の配置転換や人事異動などで花を贈ったりもらったりする週となっている。20日から今日までの三連休で引越しも大変多く、「今日の午後の花のお届けが多い」と地域の一番店はうれしい悲鳴をあげている。春は本当に別れや出会いで花を送る機会が増える。

こんなときに気になるのが天気だ。先週末は大荒れの天気で今日のせり前取引でお彼岸用の花は、当初見込みより三割ほど少なかった。しかし昨年の11月から続く天候不順で、特に日射量が必要な洋花類は不作だから需要量より入荷が少なく持合い。この傾向はエルニーニョが収束する梅雨前まで続くのではないかと予想している。消費者の所得は落ちているので単価はシビアだが、個人消費をさらに開拓すべく原産地表示や採花日表示、花保ち保証などの運動を盛り上げ、減農薬や地球温暖化防止に貢献しているMPSの花などを多く取り扱っていきたい。

MPSは世界30カ国で承認されている花の環境負荷逓減に関する国際基準だが、2004年に世界消費者連盟コーデックスがEUROPE GAPに参加している農産物を積極的に買おうと採決したが、MPSはEUROPE GAPを批准しており、花のMPSは実際ヨーロッパ系のホームセンター、量販店はすべて第一に扱う花と決めている。日本でもようやくMPSのように農業の分野でもISO2001あるいはEUROPE GAPと同様、本部が定期的に抜き打ちチェックする。自己申告だけでなく他者がWチェックをしたものでないと信用しない、あるいはオーソライズしないという風になってきた。

弊社は株式公開会社だから、コンプライアンス上、社員一人で仕事が完結するということはあってはならない。人間は必ず間違いを犯すものだから、1つの意思決定に対して他の人からチェックが施されなければならないということを嫌と言うほど身に染みて感じている。特に上席者ほど周りが遠慮するので間違いを犯しやすい。これは社内が大変なリスクを抱えているということだ。ようやく中央市場の卸売会社でもコンプライアンスが叫ばれ、会社法の忠実義務や取締役や執行役の善管義務などを出すまでもなく、誰もがWチェックで行いを正すことが必要だとする環境が社内にある。ここで商売柄問題なのがスピードである。即断即決で花の値段を決めるのが卸売会社の基幹的な仕事だから、せり場はアカウンタビリティー(説明責任)が利いてチェックが行われるから良いが、せり前の相対取引、あるいは今後増えるかもしれない買付取引は要チェックである。上司の承認や稟議書は後付になっていないかなどコンプライアンス委員や監査担当のメスが営業を中心に入る。今まで日本はアカウンタビリティー(説明責任)が足りないと海外から指摘されてきた。今はコンプライアンスが足りないと指摘される。特にトレーニングが足りていないのは部下が報告を怠る点だ。その日の報告や週二回の経過報告などきちんと自分がWチェックを受けなければならない。意識とそのための実務のトレーニングがない。また上司の丸投げも業界の悪しき風習で、結果が悪いと結局個人攻撃になって、仕事が積みあがってこない。この弱点を正すため花き業界の人たちは更に報連相とマネッジメントに心を砕こうではないか。

日本は大企業を中心に新たなこれから10年を歩み出した。しかし大手以下は経済界でもガラパゴス化しているのではないかといわれている。少なくとも我が社にはガラパゴス化の傾向がある。台湾に出張に行った社員のレポートを読むと、コチョウランの苗を販売する業者はへこたれていない。新たな活路を日本以外の国に求めて苦闘しながらもがんばっている。日本のシンピジュームの種苗会社も日本はダメだが中国への苗の納入が間に合わないと言う。何も外に顔を向けろとだけ言うのではないが、もう過去の仕事のやり方で生産性の低い点は改めて、すでに出発していなければならない。改正食糧法の後、最も規制の多い業種である卸売市場の規制を緩和し、当たり前の仕事のやり方を行っていけるように消費者と取引先に利をもたらせる状況を作っておく必要がある。それが2010年3月の年度末のチェックすべきところである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年3月15日

国産と外国産の物日のすみわけ方

今日は台湾の黄菊、中国の白菊の入荷が大変多い。
国産だけでは足りないので、輸入品になる。小菊は沖縄が需要量を充たしているので輸入品はない。花のマーケットは国際化して久しい。物日は需要が爆発するから、品質の良い愛知・静岡・九州産のものを前から仕入れて、自分の鮮度保持技術でお彼岸に合わせて販売する買参人がいる一方、間際になって手当てをしようという人たちがいる。かつては間際になって買う人たちは当然相場がはねるわけだが、それでもよいとする専門店の人たちが多かった。しかし今では物日であっても普段の価格で売りたいと思うから、国産品プラス束売り用は輸入品になる。

台湾から黄菊とスプレー菊、マレーシアからスプレー菊、中国から白菊が物日の需要増のときに主に花束用として出荷される。では専門店で一本売りできるかと言うと、マレーシアのスプレー菊のように適地適作で、しかも飛行機で来ていて、市場に着いて品質にブレがないものは一本売りできるし、専門店が好んで買う。もちろん量販店も買い、マレーシア産のスプレー菊は世界で最も品質がよいとされる国産と比べても単価的には遜色がない。しかし台湾産と中国産は船便で、温度設定が出来るリーファーコンテナを使う。詰めすぎると冷気がまわらないから、40フィートコンテナで80,000本、200本入りで400ケースが1コンテナの目安だと言う。1コンテナ単位で荷を受けられる大手市場も開市日を選ぶ。例えば今日15日の月曜日であれば大丈夫だが、3月の第1週では荷は捌けない。そういうことで大手の卸売市場も中小の卸売市場も12日の金曜日と15日の月曜日のせり分は輸入品をドカンと売る。それに合わせて、その前に着いた荷物もこの日に出されるから、このコンテナの荷は良いが、このコンテナの荷は下葉が上がって使えないというように品質にバラつきが出てくる。ここが物日のときの台湾産、中国産の菊の弱点だ。

10年前と違って、輸入品だから(いつ切花したかわからないので)単価は安いということは一切ない。輸入品でも必ず品質の均一化が求められているのだ。また国内の産地に要望されることは、品質を持続し、物日のときに何本、どの等階級のものが出荷できるか、1ヶ月前には出荷先の市場に伝えておくことが必要だ。それをもとに卸は物日の営業計画を1ヶ月前に立てる。採花日表示や出荷計画は金額ベースで世界第三位の花の産地である日本の生産地の欠かせない仕事となっている。

P.S. 物日になると輸入品が増えるので、店頭での原産地表示、国産なら県別表示は消費者に選んでいただく上で必須事項となってきた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年3月 8日

ホームレスとのひととき

昨日は朝の4時30分頃から雨が降り出した。
ホームレスになって1ヶ月くらいだと思うが45歳近辺の女性が気になって、いつもいる大森駅近くの水神公園のところに見に行った。

3?4日前、犬を散歩に連れて行ったとき、噴水のふちに座っていて、背筋をすっと伸ばしブランド物のバッグと所帯道具の入った袋を3つ持っていた。後ろを向いていたので顔を見ることは出来なかったが、茶色に染めた髪の地際が白くなっていて、ぴんと張った背中は急転落した人生を今だ茫然自失しているかのようだった。まだ暗いのでどこかの軒先にいるだろうと思ってそのあたりを探した。

僕は朝3時45分に起きて、4時6分頃から始まるNHK第一ラジオの「こころの時代」を聞きながら散歩するのが趣味だ。この時間は新たにホームレスになった人たちが起きる時間で、近所のハローワークの軒先や品川水族館のバスの待合室など、明るくなる前にダンボールをたたんで、次の場所に移動する時間だ。50歳前後の新たにホームレスになった人たちが目に付き始めたのは2008年からだ。僕が以前よく話しをしていたかっちゃんは再就職してもうホームレスではないが、ニチレイの冷凍庫の横に車を泊め、そこで今でも寝泊りしているゲンちゃんは挨拶程度の仲間だが、もう彼の車は3台目で、だんだん小さくなって今はスズキの軽で寝ている。一昨日の土曜日の朝も挨拶をして僕は会社に来た。その2台後ろに4tトラックで寝泊りしている附木さんはもう6年もこの場所に寝に帰ってくる。きっと居心地がいい場所なのだろう。

良いとか悪いとかよりも、とにかくなんらかの理由でこのような生活をしている人たちを認め、それとなく行きずりのものだが、地域の住人として接することが出来ればと思っているが、彼らからしたらそんなことは迷惑だろう。少なくとも昨日のように雨の日には、骨のしっかりした傘があるか見て、なければそっと置いておく。いつか仲良くなればかっちゃんのように立ち入らない範囲内で世間話をして、次の人生のスタートを切ってもらえるように心に灯を燈したいと思っている。

大森の近辺には町工場の雰囲気やにおいが染み付いており、僕は町工場地帯で生まれたから金属を切ったり伸ばしたりしているあのにおい、従業員も2、3人だから生活のにおいも混じった下町のにおいが好きで徘徊する。多様な人たちが生きている社会の品川区、大田区、旧東海道の面影がそのまま残る場所は私の自慢の街である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年3月 1日

2010年2月の成果

2010年2月はお天気に恵まれなかったが、関東地方の花市場は前年並みか、やや上回ったところもあって、デフレも止んでほっと一安心であった。

法人需要は前年よりもさらに少なくなって、2007年の2月からすると半分になったと言われている。法人の減った分は取り戻せない。だから小売需要が堅調に推移しているといっても、品質の良いものがそれなりに評価され、取引されているわけではなく、単価は下がっている。2007年比では約2割価格が下がっている。消費構造が変わったのでやむを得ないと言えばやむを得ないが、コチョウランの鉢やカサブランカのような大輪のユリを作る銘柄産地等、高品級な花を作っているブランド産地ほど苦しんでいる。高級レストランやブティック・料亭では最低でも一週間は花持ちが保証できる銘柄産地のものが使われているが、今では量的に半分しか使われず、痛手を被っている。なんとしてもこのような高い技術を持った、しかも日本の花き業界を引っ張っている産地にお金を取ってもらいたい。そのためには質を落とさず、家庭用に向く品種やボリュームの花を作ってもらう。産地によっては第二ブランドを立ち上げてもらい、坪当たりの収入を2007年並みにしてもらうことをまず始めようとしている。

もうすでに改革が終わったところもあるが、小回りが利かない球根切花・球根鉢花の産地は、個人用に向く球根の手当てから始めなければならず、それがようやく本年度分から間に合う。バラにしてもトルコギキョウにしても、品評会で大賞を取るような作りから、一つ一つ見れば遜色はないが、しかしそんなに立派なものでなくても良いものを一定数量作っていく技術はなかなか難しい。

カジュアルフラワーという言葉が出来た1990年代の当初から、草丈をそんなに長くせずとも、と言われていたが、まさにその時代に入ったわけである。しかも今からは必ず咲くことを小売店は消費者に約束したいし、真夏でも消費者の手に渡ってから4日間花持ちすることを保証して販売したい。小売店の責任においてそれをするためには、買参人は可能な限り採花日を表示するように生産者にお願いして、採花日表示の花をせりにかけてほしいという。このように消費者の信頼を得るには業界全体の努力が必要で、切花だったら1週間に1回買ってもらうため、園芸ものであれば2週間に1回か1ヶ月に1回は買ってもらうため、小売店はお客さんの期待を裏切らないように販売したいとしている。そうしたときに初めて、国民生活に密着した花の売上が法人需要が旺盛だった頃の売上よりも多くなっていく。高齢化は花においてマイナスではない。現に日本国民一人当たりの居住空間は広くなってきている。消費構造の変化が明確になった今、日本国民に花を楽しんでもらえるような努力を続けていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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