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2010年7月26日

花き業界再構築への道

先週のこのコラムでサブプライムローンに端を発する100年に一度の経済不況で、需要不足からまず個人消費が見込める分野へと花売場が移行していった様を報告した。具体的には駅中専門店チェーン、花束加工業者が納品する量販店の花売場など消費者の目に留まるところで花が売られる。消費者がいるところに花売場が出て行った様を報告した。賑わう売場を持っているのは電鉄会社だったり、量販店だったりするので、当然家賃代が必要になって、その家賃分だけ結果として農家手取りが減ってしまったことを報告した。

需要不足、デフレ、財政悪化は日本国としての問題だが、同時に日本にあるすべての産業の問題でもある。花き業界でも個人需要を追い求めて、消費者に近づいたが、部分最適の時代は終わり、花き業界全体の全体最適を計画し、実行しなければならない時となっている。それがリーマンショック後3年目の本年からやることだ。

花き産業振興室の方針と今年10月に出される第9次卸売市場整備基本方針に、花き業界、生鮮食料品流通業界の全体最適の答えがあると期待している。

<参考資料>
農林水産省HP内
花き産業振興方針

市場流通ビジョンを考える会
第9次卸売市場整備基本方針に関連して(提言)

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年7月19日

売るのが難しくなってサプライチェーンに新たなメンバーが加わったので農家の手取りが減った

曇天に次ぐ集中豪雨の後、ようやく梅雨が明けた。今度は強い陽の光で葉焼けや花焼けの被害が心配だ。今年の夏の出荷物は強い根っこが出来にくい栽培環境であった。そこに来て、冷夏予測が猛暑予測に変わり、暑さに慣れるのにはもう少し時間がかかるだろう。この夏の作柄は出荷量で去年より1割少ないといったところである。植物の健康も心配だが、それを作る生産者の意欲に陰りがあるのも心配だ。

サブプライムローン問題から早3年目。品目別所得の平均値からすると、米や果物ほどではないが、野菜に比べて花の農家手取りが劣ってきたのが私の懸念材料だ。冠婚葬祭については、花の消費量と金額は堅調と言える。しかし、ここでは場所代や紹介料などの名目で、コミッションが3割以上支払われる。仮に3割としても、10,000円のうち3,000円は式場業者に行き、7,000円で10,000円の花を作ることになる。しかもこれらの冠婚葬祭の花を作るとなると、高い技術が必要になる。となると、それを行う従業員の給料も一定水準以上出さなければならない。これが廻って仕事用の花の農家手取りは小売価格の1/3から1/4へと少なくなっていった。

法人需要がリーマンショック以降少なくなったが、個人需要はしっかりしている。駅や集客力のある小売店にテナントで入ると、売上高家賃比率は15%~20%近くを言ってくる。10,000円の花は2,000円を大家さんに払い、8,000円で10,000円の価値の花を消費者に販売する。チェーン展開していれば本部経費も必要だ。そうやって必要経費分を支払っていくと、小売業者は仕入れ価格を小売価格の1/3から1/4の一定割合に抑えていかなければならなくなる。

街で自分が所有する家族経営の花店を営んでいれば、10,000円分の花は仕入れ価格が5,000円で良い。しかし自分の物件ではない場合は、家賃も出さなければならない。消費者は個店からチェーン店へと花の場合でも「お買い場」を移している。ここでも農家手取りが少なくなっていることが解かる。

スーパーマーケットの花を見てみよう。スーパーの花は花束加工業者が作って納品したものだ。だから花束素材の花は上代の1/3~1/4が仕入原価となってくる。だから花屋さんがサービス花束を作って売っている場合とは、仕入れ価格が違ってくるのが分かるだろう。花束加工業者に働いてもらわない限り、消費者に自分の花を届けることが出来ないのだから、生産者は失礼な言い方だが扶養家族が多くなり、手取りが少なくなっている。

このようなことが21世紀になってから起こり、とりわけここ3年間では元気な野菜に比べて、花は農家手取りの点で見劣りすることが多くなった。ここにやる気の問題があり、それを私は心配しているのだ。
今後の日本農業を考えると国際競争力が強いのは、果菜類と軟弱野菜、花、果樹の4つにあると思う。野菜は現在、中国の残留農薬問題と餃子問題から国産が人気となっているが、近未来は貿易統計を見ていると、廉価版の輸入野菜、みずみずしくて甘い国産野菜と二極化して行くと思われる。お惣菜用の輸入野菜が多くなってきたときに、野菜の単価は下がらざるを得ず、そのときに花が手取りの面で野菜と同じようになっていく、それが2015年までの見通しではなかろうかと考えている。だからここ数年、花作りはちょっとしんどいときが続くと思うが、生産性の低い死に筋の花をカットするなどして製品化率向上に努め、所得を上げる努力をしてもらい、また我慢のときと思ってもらいたい。

法人需要が少なくなって、個人需要に期待がかけられる昨今だが、需要が減った割合よりも供給が少ない。この傾向はまだ続くと、先週発表の種苗会社の品目別種苗の販売実績は物語っている。花き生産者はぜひとも現実を見据え、また将来を良くしていくべく、心志を養って生産をしていただきたい。小売店も独立店舗として経営して行くのは難しい時代になっている。だから去年よりもサービスレベルを上げ、地元に密着した店作りを展開していってもらいたい。

ここ3年、月曜日が荷が多かったのは、勤めに出ている娘や息子が手伝ってくれたためだが、もう2010年からは就労している家族だけで出荷するから、月曜日でも量は多くならない。確実に今までとは時代が違っていることを認識し、マイナストレンドのままの人と早くも反転しそうな人と混在している現状をしっかりと見据えていき、どうすれば上昇できるか考え行動する時期となっている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年7月12日

菊相場の安定化に寄与

今年の7月盆は参議院選挙やサッカーのワールドカップの決勝戦で買い手も気はそぞろと言ったところだが、開花が遅れている品目が小菊やミソハギなどいくつもあり、前年よりやや良いくらいの売上を確保している卸売市場が多い。取扱高が前年をやや上回っているのは、出荷期が需要期を外して後ろにずれ込んで単価が高いのが表面的な理由だが、高齢化で盆の仏花需要が確実に高まっていることと、日本最大の菊の生産地である愛知みなみ農協が今年4月から一輪菊4部会を一本化し、窓口も一つにして相場のばらつきを抑えたことによる効果が大きい。中京以東のどこの卸売市場も一輪菊の主産地は愛知みなみ農協で、せり前価格の*台の相場を決めるとき、出荷量とそれぞれの地域の中核市場の相場を参考にし、そこと折衝してwin-winの関係で値段を決めていくと言う。このようなコントロールの利いた仕組み作りの勝利とも言えるのである。

花や生鮮食料品は作るに天候、売るに天候で在庫がきかないから、流通は卸売市場の役目となるわけだが、花市場は切花が主として月・水・金、鉢物が主として火・木・土で商いされるからせり取引だけでなく、せり前取引の価格も産地状況、販売状況などを加味し、お互いの考えをぶつけ合わせて、卸と生産地は値段を決めることが出来る。せり前取引が多くなってくると、卸売市場は委託出荷物を相対するのだから、産地との値段についての事前の話し合いやせり前であっても誰にいくらで売ったのかなど、インターネットで常時産地が見られるようにしておくことが必要である。もちろん買い手もである。Wチェックをできる必要がコンプライアンス上欠かせない。

昨年の台風18号で愛知県は被害を受けたが、4月から愛知みなみ農協が一輪菊部会を一本化し、窓口を一本化することによって拠点市場と取り組んだ。これによるメリットは一般の小売店もいたずらな安売り競争を仕掛けられる心配がなくなり、結果消費者にも安定して菊が提供できるようになり、全体の菊類の相場が安定してきた。この仕組みを消費者からたくさんお金を巻き上げる仕組みにしてはならない。謙虚に我々は昨年よりもより良いものを割安に提供し、我々の自助努力を認めてもらうようにしていく必要がある。消費者無視の事業者都合を心配するくらい、愛知みなみ農協と愛知県経済連の菊のせり前販売システムはスマートに機能している。反面教師は個人出荷の多い鉢物である。分割して統治せよは権力者がイニシアチブを取るやり方だが、分割されてはならない。家族経営がまとまって、本論は消費者のため、具体的には生産者であれば販売者のため、小売店であれば生産者のため、卸売市場は生産者と販売者のため、サスティーナブルな販売状況を作っていく。そのためには家族経営の個からグループ化へ、さらに大きく農協のグループ化、そうやって各地の市場でシェアを取る。一定の規模によって自分たちの存在を明らかにし、流通させていくことが花き業界でどうしても必要だ。まとまった場合のロットは一番小さい単位でも生産面積で一荷主5,000坪を目標にしたい。気が合う者同士、あるいは地域でグループ化し情報を共有化し、一つのお財布でそのお財布から各自の販売金額をもらう。そういった大きさが必要になっていて、それらを上手に積み上げていき大型化し、農協一輪菊部会を一本化して、好成績を出しているのが愛知みなみ農協だ。時代が要望している。その結果として愛知みなみの菊部会は成績が良いのであろう。その影響で菊の相場が安定しているのである。
*台の相場...建値としての相場のこと

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年7月 5日

日本の農業のありよう

本屋で岡潔と小林秀雄の対談「人間の建設」が文庫本で出ていたので、買って読み返した。算数と体育は大の得意だったので、岡潔氏は高校時代から私の憧れる人であった。その人が大学受験にも文章が引用されるという小林秀雄氏と対談しているというので、私は高校1年のときそれをむさぼるように読んだ。若いときの読書というのは人を造るというが、本当に1ヶ月前に読んだかのようにそれぞれの箇所が思い出され、復習している気分になった。40年以上も前のことだが、当時は刹那的な快楽はいけないだとか、忘己利他だとか、人の生き方について自分を中心にした卑しい生き方を忌み嫌う価値観があった。今でも十二分に人の尊厳を旨として伝統的な美的価値観はあり、それをどのように各自が自分のものにしていくのか。真善美の価値観を体現して日々生活をしていきたいと思った。

先週、「人間の建設」を読み返したのは3回目だと思うが、2回目の大学生の頃はオランダにいて、オランダにいるときお世話になる画家のダマーベ家の長男のケイシーと夜な夜な近くのブラウンカフェで彼の友達たちと議論したりしていたことを思い出した。直近の戦争の感情を引きずるのが国と国との間の国民感情で、オランダからすると第二次世界大戦のときにインドネシアで日本と戦って、日本軍はオランダ軍に勝利したから、オランダからすると国家元首が日本に行くとなると、退役軍人たちがデモをして行かせないようにする。日本は400年前の鎖国のときもオランダと中国、朝鮮とは交易していたので、オランダとは友好の気持ちを抱いているが、オランダは日本を色眼鏡でどうしても見てしまう。そのブラウンカフェでの会話は、「日本は近年経済力をつけてきており、池田勇人首相をフランス人はトランジスタラジオのセールスマンと言ったそうだが、まさに国は保護貿易をしながら経済活動に邁進している。少しフェアーではないのではないか。」「日本より大きい面積の国はヨーロッパでは3ヶ国だけで、人口は日本はどんな国よりも多い。オランダやイギリス、ドイツから見ても日本は大国だ。」

ヨーロッパに行く度に日本の経済力は強くなって、ウォークマンが出てきたときには妬みは消えてようやくイッパシと認められるようになり、私も一日本人として嫌な思いをすることがほとんどなくなった。日本はアメリカから「もっと内需を拡大せよ」と言われていた時期があったが、日本は外需が20%、内需が80%というこのグローバリゼーション単一世界経済においても内需比率が非常に高い国である。当然農業もそうで、大企業が輸出や社会インフラの建設で儲けると、富がぐるっと回って消費者が豊かになり、いつしか本物の肉や魚、青果や花を要求するようになった。また新しい品種などを要求するようになった。世界規模で見たときに花の生産と消費は額で言えば農業生産国で2位とか3位だし、日本の農業の国内生産額8兆円は先進国ではアメリカに次いで第二位。世界では中国、アメリカ、インド、ブラジル、日本、フランスの順番で、日本は世界第五位だ。野菜や花や果樹などでも世界で5位以内の品目が大変多い。昔オランダ人と話していて、農業国はいずれも同緯度帯の横に大きい面接を持つ国が農業国すなわち穀倉地帯であり、小面積や日本のように縦長の国は今まで農業国と言っていなかった。しかしオランダや日本を見て分かる通り、日本の場合縦に長いという気候変動を利用していつの季節にも最良のものを出荷し、消費者を喜ばせると言う先進国の農業のあり方がある。日本の農業を卑下することなかれ。日本の国力と豊かさとともに、確実に好まれる農産物を生産し、農業所得で見たら世界で5、6位に入る所得をあげている。農業の多面的な機能もそれは大切だろう。しかし日本農業そのものが国民の心身の健康を十二分に支えているのである。我々は威張ることはないが、いたずらに卑下することなく、自信を持って生産と流通に取り組もうではないか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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