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2013年6月24日

このような現状の中で花や青果業界が活況となるには

 先週17日の月曜日、東京都花き市場協同組合の会議で、花き生産者代表者2名と県の花き担当者の方、全農群馬県本部の花き担当者の方と、花き生産活性化の為の話し合いをした。

 民主党 野田政権に続き、自民党 安倍政権もTPP参加を発表した。全中がTPP参加に反対しているので、日本農業についての在り方が、かなり突っ込んだところまで国の産業の在り方として日々議論は展開されている。
 世界最強の農業国である(農業貿易上は第2位の)オランダを一つの手本にしたいとする動きが活発化してきている。それに向けて、農業政策を策定・実行して行こうというのである。
 一言で言うと、知財としての園芸分野の発展である。もちろん園芸分野の中に花きも含まれる。それプラス農業専門の不動産業。
 そして、所得保証やエネルギー助成などの政策的なものである。

 群馬県の方々と話していて産地サイドが声を大にしていたのは、農家が生産コストを割らずに利益を出していける価格での"販売力"だ。産地は花き生産を維持し活性化させるには、更なる販売力が必要だということであった。

 少し横道に逸れるが、青果物流通の話をする。とある産地会議で青果卸会社の社長さんが「長い間作り続けている作物を自分の思う時期に好きなだけ作付けて、この価格で売ってくれ、と言っても青果市場には蓄えが尽きて無くなってしまっているのです」とおっしゃっていた。
 マーケティングをするのであれば、作付けの段階から関わって行かないと、天候等により予期せぬ量が出た時、その青果物は行き場所がない。もう店頭売り用もカット野菜用も安く売ったから量が売れるという訳ではないのだ。需要構造が変化してしまった。農業も当然だが、マーケティングをし、消費者が好むものを世に出さなければならない。
 何も検討をしないで、昨年は良く売れたからその分今年も作ろうというのでは、あまりにもリスキーな時代となっている。
 
 産地において安定して生産をする為には次の機能が必要である。花作りがいるから花を作り続けることが出来るという訳ではない。消費者に購入してもらうこと。花の小売店さんが多少でも儲かることが必要だ。

1.インプルーバー(花き産業を進化させる人)
①マーケッター ②育種家 ③試験普及所

2.プロデューサー(生産する人)
④苗供給業者 ⑤生産者 ⑥出荷調整前処理(商品化する人)

3.ディストリビューター(流通させる人)
⑦定温物流させる人 ⑧セールスする人
⑨マーケット情報をフィードバックする人

 以上の9つの要素が園芸産地には必要である。一人何役の場合も可能だが、これらの機能を果たして行かない限り、産地が継続発展することはない。
 
 ようやく日本の農業界もオランダと同様、産業人としての意識になってきた。これからが楽しみである。

投稿者 磯村信夫 : 12:44

2013年6月17日

カトレアと胡蝶蘭

今年は、南カリフォルニア花市場創立100周年記念の年である。ハワイ、カリフォルニアのサリーナス中心に広島や鹿児島、沖縄の人たちが移り住んで花を作った。その人たちが、より公正に取引が出来、生産者も仲卸や小売が良いようにと市場を作ったのだ。
20世紀の後半には、父ブッシュが麻薬の代わりに花を作ることを奨励し、関税をゼロにするなど、コロンビアとエクアドルがカリフォルニアに代わってアメリカ国内向けの花の産地になって行った。
今では、日系人たちが作ってきたハワイの花、カリフォルニアの花の足跡は、意識して見ようとしないと見えないが、カリフォルニアでは21世紀になって日系人に代わってオランダ系アメリカ人が花き生産の分野では南米に伍して活躍している。

 戦後、アメリカ人が好きであったアンスリウムやカトレアは日系人たちが深く関わっている。日本向けのアンスリウムの輸出基地は現在台湾となっているが、20世紀の最後の10年ではハワイが中心で日系移民のオザキさんが品種改良した赤の品種"オザキ"、里芋の葉に似て混色にもなる品種"オバケ"など、オランダの育種が進む前は日系人が育種したアンスリウムの品種が世界を席捲していた。

 カトレアの切花と言うと、年末のレコード大賞を思い出す。TBSがキー局になってレコード大賞を発表していた。胸には大輪のカトレアをブートニアとして入賞者の胸に付けられ、いかにこの賞が素晴らしいのかをテレビの前の視聴者に強く印象付けた。
カトレアは一番豪華な花、ランの女王様であるので、花持ちが一週間以内のものがほとんどであったが花持ちよりもその気品と豪華さで十二分に価値があった。カトレアの生産が増えるとともにブートニアやコサージュというよりも、むしろ花を最も多く使う人生の通過儀式・葬儀にカトレアが使われるようになった。

 一輪白菊とカトレア、この時代が続いている。人生の通過儀式は団塊の世代と団塊ジュニアの世代によって変革され続けている。既に成熟国家になった日本とヨーロッパでは結婚式だけではなく、葬儀も自分のライフスタイルに合ったものにしてほしいと亡くなる場所まで含め、本人が希望するようになって来た。
葬儀の話をすると、一輪菊を多く使用する葬儀から、棘があるので今まで使われなかったバラを使う葬儀、故人が好きだったり見送る上で遺族が好きな花で送ることが多くなってきた。個人的には一輪菊とカトレアは、シンプルで尊厳があり素晴らしい装飾だと思うが、「わぁ、綺麗。花に囲まれて送ってあげたら故人は幸せでしょうね」というような美しい花に囲まれた幸せを演出するようになって来た。これが、洋花と切花胡蝶蘭の需要が増えている理由である。


 カトレアは主体的な花形の上に持ちがあまり良くない。又、傷みなく輸送するのは中々難しい。その為、国産に限られる。しかし、胡蝶蘭は上手に荷作りすれば、現在全出荷されているベトナムのものも良い品物だ。十二分に使える。持ちも良い。
 こうなると、胡蝶蘭の品種改良は現在台湾で盛んなので、アンスリウムの産地がハワイから台湾に移ってしまったように、切花胡蝶蘭の産地も台湾に移って行くかもしれない。
 消費者の好みはその方向に向かっているとすると、ファレノの国内生産者は鉢物だけではなく、良い切花も出荷する必要がある。そして、高品質マーケットでシェアを取っておく必要があるのだ。

生産協会の洋蘭部会でカトレア部門とファレノ部門の会議に先々週、先週とこのような話をした。
育種はカトレア、胡蝶蘭に関わらず、新しい時代を作っていく源であるから日本発の新品種カトレア、ファレノでなければならない。これを洋蘭部会の活性化のルネッサンスの基礎に埋め込んでおいてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年6月10日

リテールサポート

 東北、北海道の産地からいよいよ出荷が始まってきた。先週末から北は関東と変わらない気温で、今日の荷物の到着は遅れ気味。普段より一時間以上も入荷が遅くなって、仲卸さんたちは相対品の分荷が出来ず手持ち無沙汰で、現場巡回していると早い到着を要請された。

 市場によって、役割は違うが大田市場のようにハブを役割としている市場は、遅くとも午前0時前に入ってもらう必要がある。そうでないと、手待ちが増えたり大田市場を出発する時間が遅くなるので、取引がキャンセルされたり、また遅いのが恒常化するとその産地はセリ取引以外では取引出来なくなるので、結局産地は全国規模に渡る買い手大手との取引がなくなる。花持ちの良い花ならば、定温管理し一日前に出荷して貰うことが必要となる。

 さて、公益財団法人食品流通構造改善促進機構の理事会で、隣に座った日本スーパーマーケット協会専務理事との雑談の一コマを紹介したい。
 挨拶をし終わると、彼は"磯村さん、花はこれからですね"と、嬉しいことをおっしゃる。
 彼の話をまとめると、以下のようになる。

 スーパーは売場構成によっても違うが、全体売上額の3分の1が魚・肉・青果だ。"魚離れを少し甘く見ていたのではないか。歳を取れば、また魚に戻ってくると思っていたが、そうならず歳を取っても肉を食べると言うことになっているのではないか。もう一度、食育や魚の調理法等の提案をしなければならない"と彼は言う。
 
 ここの所、週末に丸物が売れるようになって来ており、おばあちゃまが娘や孫を連れてスーパーへ買い物に行き、教育の為に旬の魚を買っていくそうだ。良い魚売場は遠方からも買いに来てくれる。
 季節物である魚介類は種類も多く、もうスーパーでも最寄品ではなく買回り品となっている。そこへ行くと、肉はだいたい牛・豚・鳥の3種類なので、調理方法の提案やちょっとしたお惣菜など、提案力のあるスーパーがお肉の良く売れているところだ。
 又、野菜や果物は毎日の食生活で欠かせないので瑞々しさが売りとなり、青果売場が良いと来客数がかなり安定するそうだ。なので、生鮮品では、まず青果売場をキーにしなければならない。  
 
 しかし、ここ1~2年どこのスーパーでも青果に力を入れ、宅配業者やコンビニまで青果を扱うようになって競争が激しくなり、利益がなかなか確保出来にくくなっている。
 それではと生鮮4品目の花を扱うところが増えて来た。スーパーで花を売るとすれば室内なので当然切花が多くなるが、これもしっかりとお客様へ商品説明や産地説明などお知らせする。組み合わせやアレンジメントはちょっとした料理と一緒で提案する。単品でも美しいので、提案によってどうとでもなるのだ。

 日本フローラルマーケティング協会の小川会長がおっしゃる通り、生鮮4品目の花でまだ0.5%程の売上シェアしかないので、まずは1%にするにはすぐに出来そうだ。次は3%を目指して行く。
 まず、売場を作り、次にそれに合った商品構成をする。こういった順にスーパーの花の売り方も考えて行く必要がある。
 
 今年の西武ドームで開催されたバラ展では、昨年よりも若者が多く、お母さんとお嬢さんの二人でいらっしゃる方も多かったと聞いている。売場作りは、そんなに難しく考えなくとも実行すれば売上が伸びると思われる。

 こういう状況だとすれば、我々卸売市場はリテールサポートに力を入れなければならないということだ。花の小売店は、専門店・量販店・ホームセンター、カタログ或いはネット販売、この4つが消費者の為に必要であるが、それぞれに合ったリテールサポートをする必要があり、それが消費を伸ばすことに直結すると思えてならない。

投稿者 磯村信夫 : 16:42

2013年6月 3日

黒字の会社は業績を知り、責任を取っている

 第22週の先週は、一般社団法人日本花き卸売市場協会の総会が仙台で行われた。3.11の復興とともに、花き需要そのものを卸売市場がリーダーシップをとって復興して行こうと決意した。同様に、22週から花き市場や仲卸会社などいくつかの総会があり出席してきた。

 平成24年度は、1・3月期が予想外の厳しさで赤字や大幅な減収の会社が多く、業績の良かった会社はほとんどなかった。
 その中で、ある会社は安倍総理がリーダーシップを持って日本再生を行おうとしている今、日本が二等国に陥らない為の最後のチャンスであり、花き産業においても同様だとして、グローバルな視点で自社と自らの役割を再度見直し、財務体質の強い新たな取引先を開拓する。そして、自社で描いたストーリーを以って開拓するなど今までと異なった営業活動を展開して行くとした会社があった。

 また、ある会社では社外取締役からのアドバイスで顧客・小売カテゴリーについて偏りが指摘され、量販店との取り組みの在り方を再考させる話があった。このような会社は、総会後の取締役会においても活発な意見が出て、社員数は少ないものの人が育っているとの印象を得た。社員の数ではなく、結果にこだわり、花で食べて行こうとする意欲が強い社員たちがいると、その会社は活性化する。少なくとも赤字にはならないように思う。
 
 とある小規模だが優秀な会社は、花付き花木、実付き花木について勉強し、取扱量を増やして季節の味わいを付けたホームユースを展開しようとしている。枝物の勉強から始めてホームユースを本格化する営業活動を行う。
 また、ある会社では水遣り、水揚げなど基本中の基本を社員が正しく知り、持ちの良い高品質な物をリーズナブルな価格で提供できるようにしようと講師を招いて勉強を始めている。やはり大切なのは"人"である。
 
 今年の母の日を見ても、ご主人が団塊の世代で後継者がいないところも頑張ってはいるが、時代とずれてしまっている店舗が多いように感じる。現役でやっているのなら時代とともに変化しなければならない。何も時代を創れとは言わないが、少なくともコンビニエンスストアの発展から学び、我々花き業界人であれば、どのようにしなければならないか分かる筈だ。
 自分を変え、会社を変えていくことが必要であると株主総会に出席し、強く感じている。

投稿者 磯村信夫 : 12:19

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