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2011年11月28日

年末市況を占う

第48週の今週で12月となる。昨日はいい天気だったから、繁華街が賑わっていただけでなく身近にある紅葉を見るために、公園や街を散歩する人たちが多くいた。勤労感謝の日以降、暮れに向けて少しずつ活気付いてきているような気がする。

松市、千両市は関西が12月に入るとすぐ行うところもあるなど先行し、東京の花き市場は可能な限り遅い市をしようと開催日を後ろにずらしている。今年気になるのが食品スーパーが持っている東京電力福島第一原子力発電所の事故による茨城の松や千両の被ばく状況についての心配だ。東京近郊ではないが、ある食品スーパーで、茨城県産以外のものを要望するところがあり、社内の品質カイゼン室は急ぎ、実際の被災状況を調査するなど、実体解明に先週動いた。結局いわゆる風評であったが、風評被害をなくすため、都内花き市場だけでなく、松・千両市が早い関西の市場にも情報を共有してもらった。花の卸売市場は1年1回の市にがんばって茨城の松・千両を売っていきたい。
(※さらに詳しい情報は大田花き 品質カイゼン室 五十嵐・平野まで)

さて、本題の暮れの花の景気動向だが、暖冬の影響とタイの洪水、EUの金融不安による実体経済の落ち込みなどが10月中旬から出てきて、11月に入り週末に天候が恵まれず消費量が前年の90%くらい、単価が10%減の90%となって、9×9=81の売上になった小売や仲卸、卸も出るなど、昨年と同じ仕事の仕方だと2割減の状況に陥っている。ニューヨークウォール街の格差是正デモ、格差政策反対デモで示すとおり、日本でも実態は一部の裕福層と中産階級が壊れて下向している。この実体をどうにか是正しようと、野田政権がかざす中産階級の維持・育成政策や税制の見直しを行おうという機運が震災後の日本の復興意識の中に出てきた。

花の消費のパイは1999年、日本人の総所得が減り始めてから、右肩下がりで下がっていった。すなわち花のような生活に彩を添える商品は、健全な中産階級がそれにふさわしい生活を行っていない限り、消費は維持ないし増加することはない。団塊ジュニアの層は毎年所得が上がり、40歳までは正社員である限り前年をクリアしているから、この層をターゲットにした花の小売店、例えば青山フラワーマーケット殿のように堅調な伸びを見せているところもあるが、40歳を過ぎてからは所得が伸びる人と伸びない人がいるし、会社も伸びている会社と縮んでいく会社などが明確になっていくから、ここからはある意味で各自各社の自助努力より政治の問題と言える。しかし日本は既婚女性が働き続ける傾向にあり、夫婦の収入を合わせると中産階級の水準に入る。しかも親の援助もある。したがって日本はG7の中で個人消費とGDPの維持は決して暗くない。

10月以降、日本は気持ちは前向きだが、経済はより厳しくなっていく中にあって、少なくても働く半数の人たちの世帯が前向きな消費行動を起こせるような実際の収入を維持しなければならない。これは女性の更なる社会進出で可能である。政治も企業もヤングママが安心して働ける環境を作っていくことが必要だ。しかし今だその実体はプアーだ。普通の人が中産階級に属せることが日本経済と社会がうまくまわっていく必要不可欠な要素だとあらためて実感をした11月の市況であった。未だ足元の失業率アップと非正社員化で実質所得が増えないので買えない状況なので、いくらおせちの受注が早く、11月中だけで3割以上の受注率だといっても、12月の花の消費は楽観できない。とにかく団塊ジュニア世代とダブルインカムの新興中産階層をターゲットに、昨年に比べて一工夫も二工夫も消費者に付加価値を加えて販売できるようにしなければ「きずな消費」は堅調でも昨年を上回ることは難しい。売上増を狙いたい。それが出来れば12月市況はこじっかりで、売上は前年比プラス、できなければ5~10%のマイナスとなろう。楽しくステキなお歳暮、クリスマス、お正月の商品を作って行きたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年11月21日

先週習った2つのこと

昨日の11月20日(日)、目黒の雅叙園でマナコフラワーアカデミー50周年と池坊東京武相会30周年の合同作品展示会と式典があった。目黒雅叙園の広い2階に展示された作品の数々に、1輪1輪の美しさを活かして奏でた造形を堪能した。式典に真子やすこ先生、るみこ先生を慕う教え子はもちろんのこと、花のすばらしさに感動した多数の人が駆けつけてすごい熱気であった。

さて今日は、先週の46週に習ったことで、心を捉えて離さない2つのことを皆様方にお話ししたいと思う。いずれも日経MJに載っていた記事だそうで、1つは博報堂生活総研の記事。もう1つはハーバード大学マイケルポーター氏のCSVの記事である。
先週、福島に行く機会があったが、車中から吾妻連峰、安達太良、そして磐梯山を臨むにつけ、日本でも有数の景観を誇る自然豊な福島をなぜ原発事故でこんなにしてしまったのか、激しい苛立ちを覚えた。博報堂生活総研は毎年定点調査をしている。震災後、生活者が目指すのは「自分で自分を運営する」という生き方で、社会における自分の役割を自分で作り、役割を果たそうとしている。このように自己責任の意識が高まり、社会の課題解決を自ら行っていこうという意識が高まっているそうだ。
ビジネスからしたら消費の現場で、生活者と社会的な課題とつなぎ支援をすることが企業のビジネスの機会であるとも伝えている。社会の人たちとつながりたいと思っている人が約60%いて、「自立なくして連携なし」としている人が約55%もいることは新しい日本を作っていく時代に入ったと言える。

またもう一つのマイケルポーター教授のCSVは、Creating Shared Valueという概念で、今年の夏に農業協同組合方式のオランダの花市場FloraHollandがマイケルポーター氏の授業に取り上げられ、その後FloraHollandはオランダのベアトリクス女王からロイヤルの称号を得た。その考え方である。今まで企業は競争相手を同業他社、仕入先、販売先、新規参入者、代替品としてきたが、CSVは長期的な成功を目指すため、企業と地域が協力し合って、品質の維持や健全な中産階級の維持、育成などを考えて、長期的に社会的便益を供与し、見返りとして応分な利益を得られるようにしなければならない。あくまでも社会的な便益を尽くすことにより、応分な対価を得るという協業の精神に則った仕事の仕方こそ本当の仕事だというのだ。世界はリーマンショック後、日本では東日本大震災後、本来人が持っている善意に目を向け、足元を照らし、自分の国から良くなっていこうとしているが、それは日本にとって決して内向きだけになるのではなく、花であれば日本の消費者にとってすでに欠かせない産地となった台湾、韓国、中国、マレーシア、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、コロンビア、ケニア、そしてオランダなどとそれぞれの社会がよくなる方向での取引をしていく必要があるということである。
すなわち、取引ではなく共通の目的を持った取り組みをしていく、これが仕事を通じた我々花き業界の課題なのである。仕事の社会的意義をもう一度見つめなおし、それに向かって全力でぶつかっていこうではないか。

投稿者 磯村信夫 : 16:52

2011年11月14日

インフレになる前に利益確保

今朝、現場巡回をしていたら、夜間の荷捌きチームの現場に小さな冷蔵庫があった。しばらく私は家電量販店に行っていないが、雑誌によると日本は冷蔵庫や扇風機など身近な弱電の輸入国になっているらしい。それが大田花きの現場でも実際に起こっていた。「テレビもそのうち輸入品になるのではないでしょうかね」とその場にいた社員は言っていたが、それくらいの勢いだそうだ。

そういえばヨーロッパに行っても価格決定権は家電なら中国、テレビは韓国と中国、ラップトップのパソコンは中国、衣料品も中国やアジア、それよりもちょっと良いものが南米、このように新興国が価格のイニシアチブを握っている。そういえば日本では薬が高いが、ヨーロッパやアメリカではジェネリックの薬やビタミン剤など医療が発達したインド産のものも多く、日本で買うのが馬鹿らしくなる。すでに薬も価格のイニシアチブを新興国が握ったといえるだろう。化石燃料他、鉱物資源など食料まで含めて必要不可欠な一次産品の値上げに苦しんでいる世界、特に経済成長が著しい新興国はインフレで経済成長率が相殺されかねない。一方先進国はデフレ懸念だ。デフレが続くジャパナイゼーションはヨーロッパでは起こりそうなリスクがある。しかし人口が増え続けているアメリカでは、同じ先進国でもデフレの長期化のリスクは少ない。こう考えると先進国も今度のEUの経済危機が落ち着いて、少し経つとすなわち12年後半~13年にはインフレを懸念しなければならなくなるだろう。インフレはある意味で無益な税金のようなものだから、ここをどのようにしてきちんと納めるか、国家の経済手腕が問われるところである。

花き業界に置き換えると、切花のカーネーションの分野でコロンビアが価格のリーダーシップを握った。スプレー菊ではマレーシアが握った。コチョウランの鉢の分野では、特に台湾の業者が生産をしているベトナムと中国に価格のリーダーシップは移った。今後とも日本の花の卸売価格の決定権が海外に握られる場合が当然出てくる。それは平和で国際貿易が盛んだからである。そしてその価格決定権を持っている国々のインフレはかなりのところまで来ている。例えば船の運賃動向を決めるバルチック指数は高止まっており、運賃の値上げをせざるを得ず、これだけの円高を考慮しても、石油価格を下げるところまで行かない。(ウォン安の韓国では農家・運送業はもう油高で大変だ)

このように先進国のデフレ経済下の企業はもう我慢できないところまで来ているわけだ。日本では花き流通でもたくさんの市場、たくさんの仲卸、ヨーロッパの7~10倍と言われる花の小売店の店舗密度、そんなにたくさんの花店+量販店の花売場で皆が激しい競争の中、ある意味では利益を度外視して商売をしている。しかし利益が無ければ明日への投資が出来ないわけだから、早晩その企業は存続し得ない。

花き業界だけでなく、日本のあらゆる業界にこのような激しい競争があり、現在は流通業と倉庫運送業でM&Aや合併が加速している。早くて来年の下期から再来年の2013年度には日本でもインフレを心配するようになると、所得の二極化が企業、個人ともますます出てくるので、その前に取引先に役立つ効果的な仕組みをイノベーションするか、合併とリストラで規模の効率を図っていくかが日本のやっていかなければならない大切なことと言えるだろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年11月 7日

オシャレなミラノは黒

日本近辺の海の温度が高く、この時期としては暑い日が続いているが、ラニーニャの発生の可能性もあるそうで今年の冬は寒いかもしれない。そうなると油代がかかって困るが、今のように温度調節できず需要のタイミングを計算できずに咲いてしまっていることを考えると、むしろ開花調節できるので市況は安定すると前向きに捉えるべきではないかと思う。

先週ちょっとお休みをいただいて、イタリアとオランダに行ってきた。オランダではFloraHolland市場がロイヤルの称号をいただくなど、まさに個人であればイギリスサーの称号であり、企業としてまさに名実ともにオランダの名誉企業となった。
この夏、ハーバード大学教授のマイケル・ポーター氏の競争学のテキストにもなり話題を読んだが、このヨーロッパの絶不調の経済下にあっても、前年比マイナス2~3%の売上高で、利益こそマイナス5%以上となるもののマイナス10%までにはならないと予測しているこの力はたいしたものである。

毎年1月下旬にフランスのメゾン・エ・オブジェで室内インテリアの傾向をチェックし、室内の色使いにあわせた花の色などを予測するわけだが、小生もアレンジの形や色合いなどいつも関心を持って見ている。色は爪、そして口紅、ファッション、インテリア、エクステリアと波及していくが、フランスのメゾン・エ・オブジェと同様に、ミラノのインテリアのショーが4月にあり、世界への影響力がある。そこでは黒の空間の中で目を見張り、生活に馴染むものがやはり多かったという。そういえば今度の旅行でも、イタリアの有名ブランドも街行く人も黒がほとんどで、茶よりもグレーの比率が多く、オランダに行っても日本に帰ってきても人々の服装の色使いが多彩なのでむしろびっくりするといった感じであった。ヨーロッパだから当然にジーンズが基調というのはここ5年くらいの傾向だが、それをどう黒と合わせていくかという風で、黒以外のものは少し違和感があるようなファッションやインテリアの色使いになっている。この黒と花をどう合わせるか、そこがヨーロッパのポイントだが、日本は震災後、独自の道を歩み始めたので、もう一度日本のファッションとインテリアをチェックし、どう日本のフラワーアレンジメントやコンテナガーデンを空間の中に合わせていくかを考えてみたいと思った。今まではヨーロッパの事例を参考にし、それを少しモディファイして日本で流行らせることが出来そうだと感じたが、どうも日本人のメンタリティーとイタリアとオランダのメンタリティーはちょっと違っているような気がして、マネは出来ない、自分で作る、そう感じて帰ってきた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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