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2015年9月28日

再生電力と生鮮品

 地方に行ってみると、太陽光発電のパネルが傾斜一面に設置され、こんなところでも再生エネルギーを創っているのかと驚く。かつては好ましく思っていたが、昨今の自然災害の猛威をTVで見るにつけ、再生エネルギーの太陽光パネルが、決して良い面だけがあるのではないと考えている。エネルギー政策は、基本的には可能な限り再生エネルギーを使用するのが好ましいが、自然に任せた太陽光、風力等の再生エネルギーは、原子力や火力発電のように絶えず一定の電気量を人間の意思で確保するというわけにはいかない。今後比率を高めていくには、蓄電をはじめ、いくつかの技術開発が必要だろう。緑の党が活躍するドイツでは、再生エネルギーと火力発電で自国の電力を賄う計画を立てている。再生エネルギーが供給過多の際は近隣の国へ買取価格を下げても売っているし、足りない時には近隣から買取る契約をして電力の一定量を確保している。日本は島国であり、ロシアや韓国、中国や台湾との電気のやり取りが出来ない為、原発まで含め、電力の問題は多面的に、より慎重に考えなければならない。再生エネルギーの問題も、水力発電まで含め、再度計画を練り直さなければならないと思う。

 再生エネルギーは、世界的にはその国の電力マーケットで値段が決まる。電力マーケットは生鮮食料品花きと同様で、保存が効かない、作るに天候、売るに天候だ。我々の生活を考えても、一日の中で活動時間、休んでいる時間、すっかり寝てしまって活動を停止する時間等、それぞれの時間帯によって電力の消費量は変わる。ここを明確に考えておかなければならない。電力マーケットの事を考えていると、市場の価格形成機能の重要性と、鮮度保持・保存の技術の大切さが分かってくる。鮮度を落とさず保存する定温庫の設置が、生鮮食料品花きには必要不可欠なのだ。そうなると、重装備の市場を運営するのは大変な投資コストになる。

 日本は今、農林水産省をあげて水産、青果、花きの輸出を推奨している。日本の食文化、花飾りの文化に裏付けられたそれぞれの素材を輸出しようとしているのだ。日本では「こんなに品質の高いものは、こんなに量は、要らない」と少子高齢化社会の中で言われたとしても、世界は広い。日本の良いモノだったら欲しいという人たちは沢山いるに違いない。そこに輸出できれば、中小零細の業者が多いこの業界でも、良いモノを作り続けることが出来る。市場内の仲卸は生産者と卸と組んで、需要があって、物流が便利な国の仲卸や問屋さんへ、定期的に生鮮食料品花きを輸出できるとよい。鮮度の問題から少量でも週1回から3回の間で輸出するのが理想だ。その目的で今度、中央魚類、東京青果、大田花きの三社は、場内仲卸さんの仕事を作るべく、台湾の高雄で展示商談会を開く(東京都生鮮物輸出協議会)。やや規模の大きい卸がまず先陣を切り、プロモーションし、実際の商売は仲卸さんにやってもらうつもりだ。

 どうしたら鮮度を落とさず、日本の素晴らしい農水産物を届けることが出来るか。もう既に良いモノを作っている中小企業の農林漁業者が、今後とも質を落とさずに生産出荷し続けていくためには、消費量が少なくなる日本だけでは駄目で、今後発展していく国の消費者にも買ってもらう必要がある。そこが、日本一国内で完結しなければならない電力問題と異なる点である。

投稿者 磯村信夫 : 15:45

2015年9月21日

花の消費に直結する住宅政策

 遅れていた小菊類の出回りが多くて値を下げたものの、27日の日曜日がお月見なので「お彼岸の花束にススキを添えればロスは無し」と、彼岸用の花も順調に取引されている。

 今日は敬老の日だ。団塊の世代も65歳以上の高齢者になり、日本で四人に一人以上が高齢者となっている。私も昨日、孫から彼女の大好きなガーベラの花束を貰い、一日早い敬老の日となった。都市部にいると、高齢者の住まいや行動が否応なしに目につく。首都圏は、若い人たちの比率が他の地方よりも高いが、その実、田舎には長男が残り、二男や妹たちは都会に行った訳だから、高齢者の数は地方の何倍も多い。家の周りの居住空間を見てみると、家を建替えたり新たなマンションが出来ているのが目につく。そして、新築マンションのすぐ側に、今では住んでいるのが殆ど高齢者になってしまったマンションがあり、空き室が目立つ。大規模修繕をしているマンションは、空室をリフォームして売り出してはいるが、廃墟になりそうなマンション等もある。日本全体では、二人に一軒の割合で家があるにも関わらず、年間百万戸もの新築の住宅が出来上がる。新しいマンションが分譲されているが、20年も経つと資産価値は新築のおよそ三分の一以下になるのが普通だ。従って、駅から少し遠い所では売れ残りが出来ている。今後の都市計画をどうするのか。早く手を付けてもらいたいと思う。家だけを見ても、もうこのままでは日本は立ち行かない。何らかの改革が必要である。

 高齢化と人口減少で、コンパクトシティの動きが首都圏でも加速化してきている。若者世帯は、通勤時間や利便性の観点から都心に近い高層マンションに好んで住もうとしている。郊外の両親の家やマンションに住まずに街の中心に住んでいくスタイルだ。もちろん、首都圏だけでなく、日本中の県庁所在地もこういう動きをしているだろう。花屋さんにしても、ニコライ・バーグマンがCM出演している、三菱地所レジデンスのマンションのような、"こだわりの住まい"が出来れば花が売れるだろう。しかし、どこのスーパーでも置き花が売られている今日、古いマンションがある地域の商店街の花屋さんでは、高齢化や所得減から花が売れなくなってきており、店の品揃えや花の鮮度の点から見て、諦めていると感じてしまう花屋さんが多くなってきている。だが、三軒に一軒、あるいは、五軒に一軒程の比率で、駅周辺の花屋さんと十二分に競争できる位やる気のある花屋さんが必ずあって、スーパーの置き花で済ませられない、花をよく知っている消費者はそこで買っていく。後継者のあるなしで花屋さんのやる気を判断することが多いが、それだけでなく、花の専門店としてのプライドがあり、店頭売りを一生懸命やろうとする気構えがご主人や奥さんにあれば、お客さんは必ずついてきてくれる。それが、花の小売店という商売だろう。

 空き家は今後とも増える。これをどのように、今風の仏壇が置けて、お線香をあげても匂いが気にならないような住まいづくりに出来るか。住宅ローンで首が回らなくなるような生活をするのではなく、可処分所得を確保し、家族のサイズに合わせた、豊かな生活空間を確保できるだけの住まいと家賃を日本は作り上げなければならない。散歩をしながら、夜のマンションの明かりを見てつくづく思う次第である。

※2013年時点、日本の空き家率は13.5%、一番多い東京では81万7千戸、二番目の大阪で67万9千戸。首都圏の神奈川では48万7千戸、千葉と埼玉で35万戸以上に上る。このまま古い家を取り崩さないと仮定すると、20年後の2035年には、空き家率は32%にもなると言われている。
文春新書『2020年 マンション大崩壊』より

投稿者 磯村信夫 : 16:01

2015年9月14日

各自、組織体としての経営理念を持って「組む」

 先週、第37週の集中豪雨で、北関東・東北の花の産地は少なからず被害を受けた。量的には心配していなかった今期のお彼岸だが、これで一気に荷が不足することとなった。また、ニュースでは栃木県の苺「とちおとめ」の苗に被害が出た為、クリスマスの苺が心配されていると報道していた。品目により、花も同様の心配がある。それにしても、地球温暖化による従来の常識では測れない天候異変の中で、どのように花き生産者を勇気づけたら良いか、また、農業を辞める人もいる中、生産を維持してもらうだけではなく、頑張って生産規模を拡大してもらうにはどうすれば良いのか。思わず悩んでしまう先週の天候であった。

 悩んでいても仕方がない。解決策の一つ目として、取引ではなく「取り組む」ことが挙げられる。国産であれば、国内生産者、卸売市場(卸・仲卸)、小売業者のサプライチェーン、また、輸入品であれば、海外生産者、輸入商社、卸売市場、小売業者のサプライチェーン。これら全体を考え、消費者に向け、特定のサプライチェーンごとに種類、質、量、納期を定め、役割上のリスクと難易度に応じた価格設定、取り分を決める。一緒に取り組んで、花き業界を、花き流通業界をどのように発展させていくか。消費者にサービスを提供していけるか。「取引先」ではなく「取組先」として捉えて、一緒に花き業界を盛り上げて、生産流通をしていくことが必要である。

 二つ目に、「取り組む」相手を見極めることだ。気が合う者同士で仕事を組めれば良いが、中にはぴったりと気が合うとは言えない時もある。その時でも、組む相手は目指すものが同じ人が良い。農協も市場も、かつての商店街、日本中にある"何とか銀座"のように、一つの組織体が自分自身で考えた経営理念、それに基づく経営目標を持っているとは言い難い。何かみな似たような会社で、また、実現すべき目指す姿を持ってこなかった。合併と言っても、積極的にチームを組む、或いは、理念は同じだが、機能を補完し合うというような合併が進んでこなかった。私立の組織なら合併できたが、自分たちはあたかも国公立の組織体のように、何も考えず、目指さず、漫然と毎日同じように仕事をしてきた感がある。これでは、人口減少社会の中にあって、心底がっちり組むのは難しい。系統組織にしても、卸売市場にしても、はっきりと自社の理念を打ち出し、仕事をする。そして、合併やサプライチェーン上取り組む相手をきちんと探すことが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 14:55

2015年9月 7日

人口減、少子化を前提に卸売市場の統合を考える

 9月の需要期であるお彼岸や敬老の日、お月見などの物日については、首都圏では荷はしっかりあり、8月盆で消費者の期待に応えられなかった分、早めに生産状況を消費者に伝え、安心して花を楽しんでもらえるようにしたい。農産物全般に言えることだが、第二四半期から価格もしっかりしてきて、サブプライムローン、リーマンショック、そして、3.11以降、低調に推移していた生鮮食料品花き市況も、ようやく堅調になってきた。

 花き産業では、国内生産減を海外の生産物で輸入商社を通じて補給してもらうという構図が崩れ、絶対量不足が誰の目にも明らかになってきた。国産では、特に鉢物類と露地の切花においてそれは大きい。出荷者は卸売会社を絞ることで物流コストを軽減、また、出荷先に定価で買い取ってもらうことで所得を上げようとしている。しかし、買取り取引の場合にはリスクがあることを考えておこう。世界には、日本やオランダのような卸売市場がない国が殆どだから、基本的に契約や買取りである。生産者は気ままに作るというわけにはいかない。買い手と運命共同体になるよう、買い手の意向を反映させなければならないし、次の作付けで契約が出来ない場合がある。こういうリスクを抱えながらやるのが契約取引だ。よって、ヨーロッパでは、卸売市場が介在した方が良いと生鮮食料品花きの分野においては考えられている。必ずしもセリ市場でなくて良いが、行政府のチェックの下、透明感のある取引を、生産者・消費者の為に行っているのである。現在、出荷量不足の生鮮食料品花きで、買取りこそ生産者の手取りを増やす方策として、その方向性を産地が探ろうとしている気持ちは分かるが、この比率を高め過ぎると、長期的にみて必ずしも生産者や消費者の為にはならない。

 では、長期的に見て、日本の生鮮食料品花き市場はどのように合併をしていけば良いか、という論拠についてお話したい。中国の一人っ子政策ではないが、日本でも国の政策により、現在三つの人口のピークがある。戦中の「生めよ増やせよ」の世代、戦後の団塊の世代、そして、その子どもたちである。女性がお子さんを生む年齢は、一般的には25歳~39歳までが多いので、その年代をとると、2010年~2040年までの30年で、子供を産む女性の年齢の人口が今より37.1%少なくなる。さらに、2010年~2060年では、55.1%少なくなる。国の政策で人口をいじると、5、60年は不自然な動きをするが、日本は今後50年、少し不自然な動きのまま人口が減ってゆくものと思われる。若い人達がその分少なくなるので、首都圏も当然、今ある「地方で育てて頂いた若い人たちを東京に送り出してくれる」といった余裕はなくなってゆく。どこの地方でも、地域での有効求人倍率は当然に高くなり、人口減にはなるが、地方都市も十二分に若い人が活躍している筈である。グローカルで地域は絶対に消滅しない。そうなると、地域の文化である食や花飾り等、独特のものを調達してプロ向けに販売する卸売市場が合併して残っていないといけない。

 旧江戸時代の藩で一つの市場があるのか、あるいは、県で一つの市場があるのか。または、道州制にした際に、その地域で一つにするのか。どのような形にするにせよ、地域文化を継承し、地域のアイデンティティに即した花きや生鮮食料品を創って作って売る。その拠点の市場が必要となる。今後10年、2025年まで、東京オリンピック後の本格的な人口減と、少子化の未来を踏まえ、良い地域合併、良い大手市場との連携、花き市場と生鮮食料品市場との合併等、形態はいくつもある。大切なのは、収支が合う事、地域の文化、立地条件に根差していることである。

投稿者 磯村信夫 : 16:34

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