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2016年2月29日

中国に対する小生の見方

 上海で開催されたG20が終わった。思い切った踏み込みが足りなかったとの評価があるが、社会主義市場経済をとっている中国が、余剰設備の償却や為替まで含め、一定の方針づけをしたことは評価できる。世界経済の具合が悪くなったことを誰もが感じるようになって、まだ数ヶ月。これからもう少し混乱は続くであろう。

 今日は、文化大革命の頃から、特に文化と花き産業に関心を持って度々中国を訪れた小生が、中国はそれなりに今後とも発展するだろうという見通しを持っている根拠についてお話ししたい。現在、大田市場でもNFD会員の買参人が上海や北京で教室を開いており、その生徒さんたちが来ている。習近平国家主席が贅沢を慎むことの一つに、公の場での行き過ぎた花飾りがあったが、少なくとも裕福層の間では家庭での花飾りへの関心が高まっている。さて、今日の本題は、共産党一党独裁でこのまま中国は発展するのか、ソ連や東欧のように国が混乱して民主化していくのか、小生の見解を述べてみたい。

 まず読者の皆様に知っておいてもらいたいことは、共産党は8千万人党員と言われているが、1935年の延安時代から「個人档案(個人履歴書制度)」が記録されていることだ。それは、その人がどこにいようが、どこに行こうが、その上司は必ずその人を評価し、また家族まで含め、個人の人事関係を徹底的に調査している。こういう国柄であるから、当然に発展をしてきて、現在、農村解放区や都市の企業や事業所が「単位」で編成され、労働者の人事や住まい、教育や医療、年金や福利など、共産党から派遣された書記が生活全般をコントロールしている。そして、単位の構成員は共産党員以外も1840年の阿片戦争で政治が乱れ国が乱れてしまうと、結局自分たちが不幸になってしまうということを誰もが骨身にしみているので、1949年の共産党国家としての独立から2014年までが中国復興の時期、これから100年後に向けて、かつてそうであったように、国際社会の中の大国中国に向け、習近平国家主席の方針を共有している。

 日本人から言わせると、これだけの締め付けがあっても中国の人たちが中国に留まり生活をしているのは、1970年代後半、鄧小平が出した社会主義市場経済制度により急速に豊かさを実感できているという点と、今申し上げた平らで広大な面積の中国が地域によって分裂していたのでは、結局は戦争が起こり、自分たちが不幸になってしまうので、共産党の支配により一つの国であることはベターだと考えているからである。暴動はしょっちゅう起きているし、今後も起きるだろうが、順次、中国共産党は社会を改善している点も見ている。その手法は「民主集中制度」といわれるもので、共産党の指導者は多くの人たちの意見を民主的に聞く。また、その問題解決のために専門家をブレインとし意見を聞く。すなわち、あらゆる調査をし、民主的な方法で問題解決をしていく制度だ。そのことを人民は知っているから、共産党政府は良くやっていると思っている。

 最後に日本の論客たちが中国崩壊をいうときに、汚職腐敗の問題をいうが、これは構造的な問題であり、上手に政治的な舵取りをしないと、高度経済成長から低成長の時代に入ろうとしている中国において、人民の反発が爆発する危険があるだろうといわれている。この件の政治の舵取りについては今後の中国首脳部に任せるとして、腐敗は構造的なものだと、現時点では言わざるを得ないことだということを話しておく。

 中国は共産党一党独裁である。共産主義なので私有財産はなかった。しかし、鄧小平が社会主義市場経済制度を取り入れた。市場経済の中には国有(正確には共産党所有)と私有財産がある。社会主義には権力がある。何をどうするかということや、既にできた私企業に対する許認可権などの権力である。権力を独占しているのは中国共産党である。したがって、権力を私有財産に変換できるシステムが中国の社会主義市場経済制度にあるということだ。だから汚職が起きてもやむを得ないと小生は考えている。この行き過ぎを修正しようと習近平国家主席はバランスを取りながら国家運営している。

 こういうことを中国の人たちは知っていて暮らしている。これを前提に経済文化の交流をする。現にドイツが、そして花の分野ではオランダが中国と一緒に経済成長しようとしている。フローラホランドが昨年12月にオランダ王室、首相を伴って中国に行ったのは、中国経済を信用してのことであると小生は思っている。現在、小生は日中文化協会のメンバーとしての立場でお付き合いをしているが、お互いに交流していけば、お互いに理解し合えるところも多い。経済界においても同様で、少なくとも、花き生産消費、花飾りの分野においては、日本は中国の先を行っているので教えて差し上げる立場にあると思う次第である。

 中国は今、公共の場所や人生の通過儀礼だけでなく、家庭の中に花が入ってきた段階になっている。ビジネスから言えば、是非とも輸出により、人口減少で需要が少なくなる日本の穴埋めをし、さらにそれを上回る利益を優秀な生産者にもたらせたいと考える。もちろん、日本のいけばな協会やフラワースクールの発展も願う次第である。

投稿者 磯村信夫 : 16:16

2016年2月22日

社会性を一義に考えながらも弱点を補強する

 第10次卸売市場整備計画の骨子が、2月17日に開催された日本花き卸売市場協会の理事会で、卸売市場室より説明があった。少子高齢化の中で、社会インフラ業である花き卸売市場の流通量がこのままでは減ってしまうと想定し、従来の市場機能にプラスして生産者へ、あるいは、小売業者へ、一歩も二歩も踏み込んで協業することによってこそ、既存の卸売市場を利用させうるというものである。

 元来、卸売市場は市場法により策定された"社会性"を第一に考えた流通業である。しかし、それ故市場法によって役割や手段を制限してしまう面があった。これを、第10次卸売市場整備計画では、生活者視点での機能の強化をし、役割を多角化していこうとしている。「規制緩和」という言葉で表されることもあるが、一般企業のマーケティングを参考に説明するとこうなる。コトラーのマーケティング手法を使い事業を伸ばすためには、まず「マーケティング1.0」で企業の生み出すモノやコトの機能や品質を争う。次に、それにプラスして「マーケティング2.0」で消費者視点での他社との差別化を図る。さらに、現代では「マーケティング3.0」で、モノやサービスの社会的価値や、企業としてのミッション、ビジョンを社会に示すことが必要だ。これをブランドとして販売する。衣料品業界で言えば、ユニクロの社会性、また、個人の良心に価値をおく「これがいい」ではなく、もっと生き方そのものを表現した無印良品の「これでいい」等、世界では社会性の高い価値を生み出している企業が、貧富の差を問わず人々に選ばれ利益を出している。

 卸売市場に話を戻すと、差別的取扱いの禁止や、受託拒否等、社会インフラとしての成り立ちから、社会性は良しとするが、あまりにも少ない利益であったり、赤字の事業体もあるなど、必ずしも自らの力で社会を良くしていくということが出来ていない。開設者である地方自治体に助成金を依頼したり、国にも援助をお願いしている実情がある。しかし、これではいけない。NPO法人は、風がなければ空には羽ばたけない。一方、企業は自走することが出来る。利益を出すことが出来るからこそ、自走エンジンを健全に保って社会を良い方向に進めることが出来るのだ。当然、考えてモノ、コトを商いしているので、世界の一流企業はチップ以上(※チップは15%が目安)の利益を出そうとしている。自走する為に15%以上の営業利益を出すことが、社会性を一義に考えた私企業の在り方だとグローバルスタンダードでは言われている。日本では考えられないことだ。そんな高い営業利益率を卸売市場には求めないが、卸売市場(卸売会社と仲卸)は、より価値の高いコトやサービスを提供することにより、出荷者や輸送会社、小売店に対し、強い働かきかけをして自社の働きを買ってもらい、自走エンジンを健全に保ってもらう必要がある。

 卸売市場は東京オリンピックまでのここ5年、生き残りと自社の繁栄を考える時だ。社会性を一義に考えながらも、もう一度、「マーケティング1.0、2.0」で自社の強み、弱みをしっかりと把握し、消費者視点での差別化を図った営業活動を行っていかなければならない。それが、第10次卸売市場整備方針が施行される2016年度である。

投稿者 磯村信夫 : 16:33

2016年2月15日

フラワーバレンタイン

 2月も半ばのこの時期、荒れた天気であることが多いようだ。母が他界する前、僕が生まれた時のことを話していたのを思い出す。自宅から歩いて10分足らずの場所にある病院に、母は雪の中を歩いて行って僕が生まれたという。2月16日のことだ。父も駆けつけ泣いて喜んでくれたと、身辺整理をしていて「へその緒」が出てきた時に、僕に渡しながら母はそう言っていた。そういえば、2年前の大雪も、今年の春一番も大荒れの天気だった。この時期はこういうこともあると思いながら、フラワーバレンタインを迎えた方がよい。

 立春後、花のイベントが続々と開催されている。東京ビックサイトでは(一社)JFTD主催『フラワードリーム2016』が、東京ドームでの『テーブルウェアフェスティバル』の後、『世界らん展日本大賞2016』が開催中だ。また、先日は横浜美術館で(一社)アジア花の文化協会のシンポジウムが開かれた。さらに、銀座松屋では『いけばな古流協会展』が、池袋サンシャインシティでは『第65回関東東海花の展覧会』が開催されている。2月はそれらの東京近辺のイベントを回っていた。そんな中、昨日は小学校の同窓会に参加した。先生の体調が芳しくない為、先生のお住まいの近くである茅ケ崎で開催された同窓会に、17名もの同窓生が集まった。アングロサクソンの国から始まり、今はヨーロッパ中というより、日本とイスラム圏、アフリカを除いて殆どの国で、本命の女性に男性が花をプレゼントする日になっている、という事を知らない団塊の世代の人達であった為、2月14日、こんな大切な日にクラス会が開かれたわけだ。集まった中で女性が一人、フラワーバレンタインを知っている人がいたが、彼女は海外との繋がりが深い会社に勤めていたことのある人たちだった。

 クラス会の後、フラワーバレンタインの店の売れ具合を見に行った。時間の関係から、駅ナカ・駅周辺の専門店しか見ることが出来なかったが、しっかり売れていた様子だった。その帰宅途中、家内にフラワーバレンタインの花を買った。そのお店では、私の前に4人の男性が並んで会計やラッピングを待っていた。(一社)花の国日本協議会とタイアップしているJ-WAVEや、新聞にも取り上げられたし、男性ファッション誌でも紹介されていたのを見ているのか、あるいは、海外滞在の経験がありフラワーバレンタインを知っているのか。日曜日なので、カジュアルな服装だった為、どのような仕事をしているのか分からないが、そういった青年から中年位の方々が並んでいた。

 フラワーバレンタインは着実に成果を上げ、花をプレゼントすること、花を持って帰ることがカッコイイという印象を生活者に与えることに成功しつつある。これをもっと普及させると共に、価格的にも、しょっちゅうプレゼントをしても負担にならない金額にしていかなければならない。どうすれば、生産者と一緒に再生産価格の問題を解決出来るだろうか。花の消費拡大イベントが沢山行われている中で、供給体制を強化しなければならないと感じた次第である。

 追記:今朝、スーパーに納品している大手花束加工業者の人たちと立ち話をしていたが、「うちはフラワーバレンタインは全然関係なかった」と彼らは言っていた。

投稿者 磯村信夫 : 15:34

2016年2月 8日

量が少なくても高値で総額を補える時代ではない

 本日は旧正月。インバウンドでアジアの方が宿泊されるホテル等には、花が綺麗に飾られている。また、切花だけでなく、三本立の胡蝶蘭がお出迎えしている所もあり、華やかな空間を演出している。ベトナムでは花桃を飾るそうだが、アジアでは中国のネコヤナギやキンカン、そして、シンビジュームの鉢ものにしても、人々の暮らしの中には花文化の伝統が続いている。

 昨年の11月から、花の消費は冠婚葬祭の花と1日、15日の仏花が全体の相場を引き上げる要因ではなくなってきた。花の小売店では、20世紀に活躍していたディスカウンターが殆ど存在しないので、豊作の時に的確に家庭に花を届けてくれる役割の店が本当に少なくなっている。消費者の花のお買い場は、スーパーマーケットやホームセンターが存在感を増し、消費者の期待に応えて花売り場も充実しつつある。専門店の分野においては、駅ナカ、駅周辺の店舗が依然として消費をけん引しており、商店街の仏花中心の店、あるいは、仕事花中心の花屋さんと明暗を分けている。そこで考えなければならないのは、仏花や冠婚葬祭の需要は大切だが、今の生活者のライフスタイルからして、今後しばらくは伸びが期待出来ない。現在の業者間の競争から、確実に業者数の調整、総需要の減少があると考えるべきである。そうなると、立地条件に恵まれない花会社は、外に営業に行く、JFTD花キューピッドに参加する、インターネットでの需要の掘り起こしをする必要がある。

 先週、東京では(一社)JFTD主催の『フラワードリーム2016』が東京ビックサイトで、また、『テーブルウェア・フェスティバル2016』が東京ドームで開催された。いずれも花の素晴らしさを訴え、消費拡大に役立っていくことだろう。このような、社団法人やNFD等の公益法人活動、あるいは、各県の振興協議会の花育活動等で、伝統文化の需要だけではなく、花の効用として、花は心の栄養に欠かせないものであることを知らしめることにより、健全な花き産業の発展を期する。こう実際に行っていくことが必要である。また、生産地においては、需要に合わせた品目・品種の見直しも欠かせない。即ち、「価値=メリット-コスト」の法則通りで、メリットをお知らせすることが必要なのだ。
 
 去年の8月のお盆の菊の高値を最後に、新しい枠組みの時代に入っているのである。

投稿者 磯村信夫 : 15:08

2016年2月 1日

多様化の中で生活者に選んでもらう

 大相撲初場所で、琴奨菊関が日本人として10年ぶりの優勝を遂げた。菊は花き業界にとって№1の消費実績を誇る花で、スプレー菊や新しいディスバット菊も、元とは言えば日本の菊をオランダの種苗会社が品種改良したものだ。菊の品種改良から消費拡大まで、琴奨菊関が優勝したことにあやかって、もう一度、花き業界でも頑張っていきたい。また、つい先日のSMAP解散騒動の影響で、『世界に1つだけの花』のCDが売れたり、音楽番組で流されていたりした。こちらも、花き業界にとっては良い宣伝活動になった。花き業界とは幸せな産業だと思う次第である。2月に入り、節分、立春、旧暦のお正月(本年は8日)、バレンタインデーと、花の需要期が続く。そこへ向けて、今度は業界自ら消費宣伝活動を心掛けなければならない。

 2025年には団塊の世代が75歳以上になり、葬儀や仏壇の花も需要が高まり、花屋さんは忙しくなるだろう。それまでの10年、自分の葬式は「こうして欲しい」という本人の意向もあって、葬式や仏壇の花の需要も従来と比べてますます小さくなっていく。そんな中、家庭需要とパーソナルギフト、レストランやオフィスに花を飾るウィークエンドフラワーやフラワービズを根付かせる努力をしていく必要がある。また、年代層で花の消費を捉えるのもマーケティングの一つだが、それだけでは、小売店からすると自社を時代とともに合せていく努力に欠けてしまう。「自分の店は年配者の店だから」と、売上減を認めることになりかねない。「花店の老舗という定義があるとすれば、そのご家族の三世代の方にご利用いただき、満足して頂ける店」だと、サンフローリストの藤澤さんが仰っていたが、まさにその通りだと思う。ここに向けて努力していかなければならない。

 需要者である生活者は、もう満ち足りている。何か他にはないかと思っている。すなわち、既成概念の中だけではもう伸びがないのだ。供給者である法人は、この成熟社会の中で殻を破っていく必要がある。従って、マイノリティとは言わず、ダイバーシティ(多様化)として捉え、オルタナティヴ(二者択一)ではなく、アンドで、境界線を外した商品や「コト」等が求められる。LGBT、カーシェアやハウスシェア、おにぎらず等が認知されるようになったこともその一つだろう。その家三世代の人に満足してもらえる花の専門店。難しいが、専門店はこういう店づくりをしてもらいたい。私も、具体的にこうすべきだ、という点はまだちょっと分からないのでお示し出来ないが、感覚的には、いつも新しい老舗の和菓子店などが思い浮かぶ。何かそこには、琴奨菊関の努力やら、『世界に一つだけの花』で訴えられているもの、すなわち、真実のようなものがある気がしてならない。とにかく、冠婚葬祭の花、仏花需要が縮小している昨今、マイナスを補う消費を、花き業界をあげて努力していきたい。

投稿者 磯村信夫 : 15:16

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