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2009年12月28日

一年間ありがとうございました

本年一年ご愛顧いただきまして、大変ありがとうございました。おかげさまをもちまして、明日の止市をもって本年の営業は終了いたします。花き卸売市場としての役割をつつがなく果たせましたのも皆様のご厚情によるものと御礼申し上げます。来年も中央卸売市場の卸売会社としての役割を今年以上に果たしていく所存ですので、変わらぬご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。

日本が生み出す富は1ドル=90円に直すと、20年前のレベルにまで落ち込んでいます。商の実感からすると、金額ベースで20年以上前の1980年代のマーケットサイズ売れ具合ではないかと感じます。もしそれが事実だとすると、デパートやスーパーが店舗を閉鎖したり、希望退職者を募ったりしていることは、ある意味で当然のことだと言えます。花き業界もデフレで単価が下がっているだけではなく、各分野で数の調整局面になっていることを認識しておかなければなりません。特に花き物流を担当する農協の集出荷所、運送会社、卸売会社、仲卸は最大の需要期の12月になっても、火・木・土には入荷がほとんどありません。月・水・金には2日分の仕事をしなければならないという状況になっています。2日分を1日の一定時間で処理するため高性能な機械設備を入れたり、深夜労働などで人件費が高止まりしたりせざるを得なくなっています。このように損益分岐点が大変高くなっているのですが、生き残りをかけた今は売上でなく利益の時代なのに、デフレで黒字化することが大変難しくなってきます。

花の流通業は2010年から最初の5年は、業態変革か仕事を止めるかが迫られている時代であると言えるでしょう。花き産業のどこの分野でも明確なビジョンをもとに仕事をしていかないと、売り上げを作り、利益を出していくことが本当に難しい時代になったと言えるでしょう。

弊社はそういう難しい時代といえども、6割の家庭が1年に一度も花を買ったことがないという花き業界で仕事をさせてもらっているわけですから、可能性はまだまだあり、今の倍は花が売れると考えています。祭事の花とホームユースに集中して戦略を練って、取引先に満足してもらうつもりです。国内産地にも売れ筋と生産性の高い花を中心に作付してもらい、価格競争力をつけて利益アップをしてもらうつもりです。

それでは皆様、良いお年をお迎えください。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年12月21日

2009年 3大ニュースのその3

今年の松市と千両市は景気の影響を受け、上級品が安値、家庭向けの短いものが堅調であった。クリスマスの需要が今ひとつ盛り上がりに欠けていることを思うと、お寺と神社を崇拝する日本人の文化は脈々と受け継がれてゆく。

さて三大ニュースの三番目は、需要を創って販売に成功した宮崎県の有限会社綾園芸殿と株式会社ジョイフル本田殿が日本フラワービジネス大賞2009に輝いたことだ。私が日本フラワービジネス大賞選考委員会の委員長をしており、恣意的になりやしないかと自らをチェックしてみたが、どう考えても後ろめたさなく今年の花き業界の三大ニュースの一つに入れるべきだと考え、今日の発表とした。
育種・生産部門でビジネス大賞に選ばれた有限会社綾園芸の草野修一氏は、今のラナンキュラスブームを作った人だ。イノベーション=改革×普及であるので、普及をするためにご自身の生産出荷だけでなく長野県のフラワースピリットという生産組織と地元のJAの花き部会に有望品種を作ってもらい、特定の市場に出荷している。品種を選定するとき、作る立場、売る立場、使う立場の人たちに来てもらい選抜し、実際の出荷物としての栽培につなげる。こうやって日本独自の品種が開発され、人気のラナンキュラスの半分の品種は草野さんの品種になっている。需要を創造したわけだ。
また流通・販売部門では株式会社ジョイフル本田殿がビジネス大賞を受賞した。豊富な品揃え、専門スタッフによる商品企画と商品管理など、よく勉強している社員が鉢物、苗物、切花を販売する。花だけでなく、土も栄養剤も鉢も花瓶もいろいろな材料を選びプロセスを楽しんで作品を作っていく上で、もっとこうしたら部屋に溶け込むだとか、お出迎えするときに花が引き立つだとか、品物だけでなくトータルのサービスを販売している。日本の花売場の中で最も素晴らしい花売り場の一つがジョイフル本田殿である。今後ますます時を重ねて進化していくことであろう。

100年に一度とも言われる経済危機で、各国政府は100年に一度の景気のテコ入れ策をしている。それで景気は少し落ち着いて、下げが止まったようにも思う。しかし、あらゆる分野で消費は2割減というのが先進国の姿である。政府のテコ入れが少なくなると、二番底のリスクがある。だからゆめゆめ来年の後半には2007年並になるとは考えてはならない。健全な金融情勢と雇用情勢になるのは少し先のことである。それは2015年という人は多い。花の景気もずるずる下がっていく状況から、来年の12月ないし2011年の1月からは品目や会社によって反転して前年比を上回っていくと予想される。そのような会社は今年のビジネス大賞の2社のように需要を創っていくところであろう。「1/1000構想」で花き業界全体で花き消費の宣伝をしていく具体的な話し合いが年を越した。まずは花き業界のそれぞれの会社がサプライチェーンの良き協力者を得て、消費者が喜ぶ花やサービスを創って販売する。綾園芸殿、ジョイフル本田殿を手本にイノベーションを行い、新しい需要を創って販売することが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年12月14日

2009年 3大ニュースのその2

その産業の魅力度とは期待成長率が高く、その業界の企業の資金繰りも健全で(財務の安定性)、平均マージン率も高く、市場規模も広がる可能性があって、顧客もさらに増えてくることが一つの尺度となっている。こう考えるとなにやら今の花き産業は魅力がないように思えてくる。だが、私は今年の10月10日、全国の仲卸団体である社団法人全国花卸協会が社団法人化パーティーで発表した「花は人を幸せにできる」を信じており、花市場として実行する決意でいる。これらは現実を見据えてのことで、悲観してのことではない。こういう言葉がある。「失敗したいのなら将来を恐れると良い。成功したいのであれば将来を楽観し、熱意を持って向かうべきだ」今年1年、プロゴルファーの石川遼から学んだことはこれだ。

1、花の法人需要減
法人需要の減退で花き市場の取扱金額は1割減。世界同時不況でさらに日本国内の国際化は進んだ。国際化は先進国では格差を生み、発展途上国では富の向上を生み出す。また技術革新は先進国で格差を生み出し、発展途上国でも格差を生み出す。だからコペンハーゲンのコップ会議で、途上国から先進国が持っている環境保全技術を無料で開放せよといっているわけだ。そうはさせじと先週国際展示場で行われた「エコプロダクツ展」で日本企業は環境技術を武器に勝者になろうとしている。さて、国際化と技術革新はこのような結果を生み出すが、世界はワンワールド。物価と賃金が世界同一になっていこうとしている現代。マッキントッシュやユニクロのように、先進国の会社が独自のノウハウを持ち、それを明かさず、NIEsやBRICsとwin-winの関係を作る。言葉は悪いが新植民地主義でビジネスする会社が伸びている。
日本の何でも自社だけでやる自前主義では競争に勝てないということだ。

2、イノベーション=開発×普及
日本の自前主義では普及に難があり、携帯電話に代表されるように、せっかく日本がトップを切り、世界最高のものを作りながら結局世界に認められないということになる。NOKIAと比べてみれば、日本の戦略が普及という点においてどれだけ劣っていたかが分かる。自前主義の日本企業が国際競争で負けて、日本はGDPベースで、需給ギャップが35兆円から40兆円もある。内需拡大と国際競争力強化は企業の努力だけではおぼつかない。羽田空港のハブ化のように、国家戦略が必要である。
日本の強さは何か。それは「丁寧なものづくり」と「誠実な商売」である。研究開発だってお手の物だ。

 3、今年のフラワーオブザイヤー
財団法人花普及センターで2009年フラワーオブザイヤーが発表された。受賞した赤いバラの『サムライ08』は、京成バラ園が種苗を取り扱っているフランスのメイヤン社の作出品種だ。メイヤン社はEUの会社でイノベーション=開発×普及で行うから、『サムライ08』は日本だけでなくコロンビアからすでに輸出されている。もう一つのフラワーオブザイヤーは弊社のもので恐縮だが、フラワーオブザイヤーOTA最優秀賞に選ばれたのは緑風舎・高木ナーセリー作出の小さい胡蝶蘭『なごり雪』だ。どう普及させるかだが、日本で完成品を作るが苗は台湾とのリレー栽培だ。早く多くの生産者に作ってもらいたい。そして優秀賞に兵庫六甲農協淡河支店のテッポウユリ「プリンセスオーゴ」。そして特別賞に越後中央農協のチューリップ『ゲープランドキフト』だ。日本だけのローカルな花とは言わせない。ファッション同様、日本一の目利きが選んで、世界の産業人が納得する2009年の日本の花だ。

 4、内なる国際化で2年で金額2割減の花き業界
国際競争に勝てなかった日本の企業群は3Kをケチる。広告宣伝費、交通費、交際費だ。企業の交際費に支えられている花の支出は大変大きい。企業は工場を海外に移転する。国内の雇用は減り、地価は下がり、地方の経済力は弱くなる。設備投資も社員のボーナスも少なくなって、非正規雇用の人たちの所得から減り始める。こうして今度の不況ですっかりあらわになったのが日本の中産階級が崩壊した姿だ。かつて実質60%、心情的には80%中産階級であった日本国民は、今30%になった。こうしてホームユースでも、物日は単価が下がれば今までと変わらず消費されるが、普段は効かなくなってきて、それがデフレ圧力になっている。こうして法人需要減と単価安で2年で2割の売上が吹っ飛んだわけだ。この日本も必ず復活する。復活した花き業界はもっと暮らしに欠かせないものにしていくのだ。その一端としてまずターゲットにしたい顧客は次の人たちだ。

 5、アラ還とアラフォー
身も蓋もないわけではない。花は多くても邪魔ではないし、枯れてなくなるものでもある。だから狙いは?親元から通勤している人、親の近くに住んでいる家族。懐と心と時間に比較的余裕がある。?アラ還。花嫁修業の一つとして生け花を習った人たちで日本文化の良い継承者たち。なんといっても元気で、これから自分のためにも日本のためにももう人肌脱ぎたいと思っている人たちだ。?アラフォー。子育て真っ最中だが子どもと一緒に世界で生き抜いていくことを考え始めた世代。
人数が多く、親のすぐそばにいるし、地域に密着して住んでいる。まずはこのグローカルな人たちから再度お客さんとしてコミュニケーションを図ろうではないか。店も商品も花き産業繁栄のための仕組みをこのお客さんを軸に組み立てる。機能や技はグローバルに、センスやメッセージはローカルに、小売/仲卸/卸/生産者/種苗は自分の役目を再定義してビジネスを再構築しようではないか。これが2009年/2010年の花の商売の正解である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年12月 7日

2009年 3大ニュースのその1

いよいよ今年も余すところ、あと3週間あまり。今日は第50週目、第1日目となった。残りの4回の内3回を、花き業界の重要なニュースを1つずつお知らせしたい。
3大ニュースのまず第1は、日本列島全体で見たとき店頭需要はスーパーマーケットやホームセンターなどが主流になったということである。人口が密集している3大都市圏や政令都市の中心部などはお花屋さん優位の店売りが続いているが、車社会となった地方都市まで含めると、今年1年で完全に量販店が店売りの分野では消費者の「花のお買い場」となった。そしてその量販店自らが花束加工をする所は例外中の例外だ。花束加工業者を指定業者として選び、買取って再販する場合と、店頭で売れたら売り上げを起こし一定手数料を頂くといった委託販売方式をとるこの2つによって日本中どこでも花が売られるようになった。量販店が小売の主な場所となったということは新たな花束加工業者が増えたということである。花束加工業者は花屋さんから参入した会社、仲卸業から参入した会社、地方卸売市場から参入した会社があり、まずは仏花をつくって納品している為、一年を通じ菊、小菊の卸値がしっかりしていた。しかし仏花だけでは消費者の期待に応えられないので、来年以降は季節の花束をラインナップさせていくことだろう。

欧米では1995年まで第1回目の花屋さんの淘汰の時期があった。ベルリンの壁が崩壊し、ソ連邦がなくなって人件費の安い国から花がたくさんやってきた。アメリカではコロンビア、エクアドル、コスタリカ。ヨーロッパではケニア、南アフリカなどであった。そこからただ単に仕入れて売るというその商売は、ボリュームディスカウントをきかせて仕入れることのできるスーパーマーケット、ディスカウンターが強い。店頭売りの分野で仕入れた花を売るだけの花屋さんは淘汰されたわけだ。我々が欧米で見る専門店はいずれもデザイナーが花店を経営しているデザインショップ的なものである。その第1回目の専門店の淘汰の波が日本にはなかった。今、欧米では量販店が花持ち保証をするようになり、インターネット花店も、もう寡占化され、第2回目の淘汰の波が押し寄せている。文化も違うので日本は欧米と同じようになるとは思わないが、小売りでは花も量販店中心の時代になったのである。
日本ではこの20年ほど専門店が相手であったので国内産地は少量多品目で単価の下落を防ごうとしてきた。高品質のものを作って評価が高かった産地は、考え方を改め売れ筋への絞り込みと第2ブランドを作るなど規格を含めた大幅な見直しが必要となっている。花屋さんは小料理屋さんと一緒。プロの料理の味をお客さんに楽しんでもらう。だからこれからも専門店は消費者に必要だ。しかし、できあいのお惣菜が人気なようにできあいの花束、今後アレンジメントも必要になってくる。こういう要望が消費者から上がってきて、今年初めて量販店が小売店よりも店売りの分野でトータルの販売額上回ったのではないかと思われる。そうなると、この勢いはますます盛んになるはずだ。既存の花き業者である種苗、生産、卸売市場(卸売会社+仲卸)と花の専門店は事業を再定義し自分の強みを磨き、仕事のやり方を変える必要がある。日本の花き業界も新しい時代となっているのだ。

投稿者 磯村信夫 : 11:41

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