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2009年10月26日

韓国ソウル圏の花の消費事情

昨日、横浜ランドマークタワーの隣のビル、クイーンズスクエア1階でフラワーデザインコンテストがあった。優勝したのは大田市場花き事業協同組合の教育委員長である池上のフラワーショップ花徳の堀さんで、賞賛の声が上がっていたそうだ。私は午前中に行ったのでコンテストはまだ行われていなかったが、オランダ球根協会から花材提供があり、オリエンタルハイブリッドユリの消費拡大にと消費者に直接訴えかけるシーンで花材を提供する姿勢を、我々日本の花き業界も見習わなければならないと思った。

ユリと言えば、韓国産はコンスタントに入荷があり、すっかり国内産地と同様一定ポジションに定着している。先週、ソウルの花市場に行ったら、仲卸のGさんは「韓国は2?3輪しかいらないから、それより多く付いているのものは日本に輸出してもらうのです。韓国には外貨獲得の輸出援助振興がありますから、大田市場にもずっと一定量行っていると思います」と言う。韓国に行くと2年前と違ってウォン安でお金の使い出がある。ソウル圏では輸出主導型で景気は戻ったようだ。東京圏のような不安な感じや倦怠感のような空気はもうなくなっている。

ソウル市場の場長に状況を聞くと、「昨年は肥料や農薬、資材や燃料の高騰で前年より入荷が3%減った」と言う。「ソウルはまだいいが、釜山やテグーなどは5%くらい減った」と言う。「でもソウルは単価が高くなって、特に切花は確実に需要が増えてきていて、市場の売り上げはトータルで4%増だった」そうだ。今年は夏くらいからかなりの手応えが感じられていて、入荷は横ばいで去年よりも売り上げは良い状況が続いているそうだ。

韓国は北との戦争後、ベトナム戦争にも参戦し、日本でいう団塊の世代が10?15年遅い。ソウル圏ではほとんどの人たちの住居はマンションだから鉢物から伸びてきたが、韓国では若い人たちから切花の需要が起こり、今では団塊の世代でも使うようになっている。まだまだ冠婚葬祭用が多いが、それでも店売り15店舗のチェーン店ができるなど、コーヒーチェーンが町に溢れるにしたがって、韓国でもおしゃれで手ごろなホームユースの花が売れようとしている。本格化するのはあと4、5年先だろうが、しかし新しい動きはすでに見て取れる。

韓国はEUとFTAを結び、2011年から実施される。そうなると日本の花の輸出は韓国でオランダと激しく競合することになる。世界のサブカルチャーの発信基地は渋谷地区で、ロンドンのファッションの発信基地ピカデリーサーカスは渋谷のスクランブル交差点を真似て、オリンピックの年2012年にスクランブル交差点を導入する準備をしている。世界で日本だけがスクランブル方式を使っているのだが、多数の人をスムーズに移動させるだけでなく、ロンドンはファッション、特にサブカルチャーまで含め新しいものを発信する場所として渋谷のイメージを借りてスクランブル交差点を導入しようとしている。このように渋谷は世界から注目されているのだが、渋谷と最も似ているのがソウルの明洞だ。明洞あたりも少しだが花に注目する人がいて、将来の韓国の花の需要を先取りしているようだ。国民1人当たりの年収1万ドルで人生の通過儀式の花。2万ドルでそれプラス物日と大衆のホームユースの兆し。3万ドルで家庭需要、手軽なギフトと世界を見るとこのようになっているように思う。2万ドルの香港とシンガポールに加えて、台湾や韓国は日本の花を評価してくれる人たちが住む場所だ。将来のFTAをにらみながら、輸出振興を今からしていくことが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年10月19日

問屋半減?アメリカの中間流通?

昨日、BSで大リーグのニューヨークヤンキースの試合を見ていたら、観客は分厚いダウンジャケットを着ていた。2週間くらい前から寒くなり、今年はアメリカ東海岸もヨーロッパも本当に寒い。秋がなくて、急に冬になったようだ。

2週間前、コロンビアの展示会に行く前後、アメリカに立ち寄って流通事情を見てきた。だいたい5年ごとに見ているのだが、前回と比べて変わった点は以下の通り。

インターネット花店の伸びは大きい。特にナンバーワンのProflowersは1ドル=100円換算で、開業10年目にしてもう350億円の売上があり、有機野菜や有機いちご、あるいはオリーブのバージンオイルが120?130億円あるから、もうすぐ500億円と毎年二桁成長している。もちろん他のインターネット店も伸びてきている。1-800Flowers.comやFTD.comなどである。専門店の数は5年前と比べると2/3?半分くらいになっている。同様に街の角々にあったコンビニ的なグローサリーショップの花売場は激減している。その代わり、スーパーマーケットやディスカウントストアの花売場は充実してきており、インターネット花店が「7daysギャランティ」、「10daysギャランティ」をしているし、スーパーで花保ちを保証しているところも増えてきた。

アメリカは日本のような卸売市場がないから、たとえばニューヨークであればブロードウェイの98丁目や99丁目、中南米の花の集散基地マイアミや他の都市でも多くの問屋があった。しかし小売店が少なくなったり、個人店のグローサリーショップがなくなったりで半減している。
小売店舗ではこのようにインターネット花店やスーパーのディスカウント花店が増えたわけだが、もう一つ増えたのが倉庫運送の物流業者だ。マイアミやアトランタなどに代表される物流基地で、物流業者が鮮度保持や水揚げまでして、商物分離の物流業務を担っている。まさにサードパーティーロジスティックとはこういうものであるかと感心させられるほど、コンピュータネットワークに基づききめの細かい鮮度保持とピッキングシステム、そして配送網を作っている。アメリカのアメリカたる所以だ。生産性が高い。英語を話せない人たちを使って、これだけの生産性を確保するわけだから、花束やアレンジを加工しているブーケメーカーが「美」を作っていると言うよりも、物流作業の一環として作っており、高い生産性を確保しているのも頷ける。これがヨーロッパや日本とちょっと異なる点だが、生産性は本当に高い。DHLやUPSに代表される高速宅配網。日本では知られていないが、その質に勝るとも劣らない請負倉庫物流業者たち。本当にアメリカは花の分野でオランダとは違う成長の仕方をしている。

最後にいくつかファーマーズマーケットを見たので報告しておく。花では世界最大のチューリップ生産者や枝切フリージア生産者はアメリカ人である。それはオランダから農業をやりに引っ越してきた人たちで、優秀な農場経営者が5人いる。いずれもカリフォルニア人。今まで球根類の生産はアメリカであまり行われていなかったから一挙に拡大した。ちょうど日系人の内田さんが胡蝶蘭の最大の生産者になっているように(ニューヨークの花屋さんの1/3の売り上げは胡蝶蘭ギフトではないかと言われている。そのくらいニューヨークでは胡蝶蘭ギフトが大切になっている)、球根切花、とりわけチューリップとアイリスはオランダ系アメリカ人のお手の物となっている。

サンノゼだと冷涼だから作ろうと思えば1年中作れるかもしれない。ラナンキュラスもアメリカでの生産は大きい。そういう風に花も野菜も苗物も取り扱うファーマーズマーケットが各所にある。花で有名なのは、アメリカで花のトレンドをリードするフィラデルフィアとボストンの近辺。自分で生産していないものも多いので問屋で仕入れたものや問屋が出店しているものが大人気。新しい傾向のものが売れるという。どちらかと言えばファーマーズマーケットは会員制のディスカウントストアのような感じでアメリカでは受け止められている。政府も援助しており、日本のようにきめの細かいサービスはないが、ドーンと盛りだくさんの量を買っていく人にはありがたいカテゴリーの店である。これもアメリカで問屋が少なくなっている原因だ。中間流通業者である我々もどうすれば消費者と生産者、消費者の代弁者である小売店に役立てるのか、新しい機能を考えてやっていかないと、今の時代、中間流通ほどお荷物になる。中間流通がコスト高の原因だと言われたのでは困る。長い目で見て、まず消費者利益を、次に生産者利益を考えて仕事をすることが我々の役目だと、アメリカの流通事情を見てそう思った。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年10月12日

花は人を幸せにできる

このたびの台風18号で、被害にあわれた多数の皆様方にお見舞い申し上げます。
特に甚大な被害をこうむられた三重県、愛知県、静岡県西部、福島県の生産者の皆様、出荷物がない間にも皆様方のファンである買参人としっかり連絡を取り、心をつなぎとめておきますので、私ども卸売市場は今まで以上に連絡を密に取らせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。


私事ですが、私はどちらかと言うとラジオ派で、特に毎朝4時06分頃からNHK第一で放送されている「心の時代」と日曜日の12時15分からNHKFMで放送されている「トーキングウィズ松尾堂」という番組が大好きです。それを散歩しながら聞くのが趣味です。
昨日の「トーキングウィズ松尾堂」は途中から聞いたのですが、出演者の田中ウルヴェ京さんはシンクロナイズドスイミングのメダリストで、今はメンタルトレーナーです。その京さんのもっとも大切な言葉、それはシンクロナイズドスイミングで名を成した後、ある意味では生きる目的を失った時期だったそうですが、お名前は聞きそびれましたがアメリカの心理学の権威の方から「成功とは、人に役立つ自分のやりたいことをやること」だと言われて、それをご自分の教えにしていらっしゃるそうです。「俺が俺が」で生きている私たちですが、この自我をもっと大きな、人に役立つために使っていくことこそ自分がやりたい分野で、力を授けられ、成果が上がっていくのだと思います。自分のためだけにやりたいことをやっていたら、それは成功とはいえないのでしょうね。


田中ウルヴェ京さんからこの話を聞いたら、頭の中はすっかり10日土曜日の夕方に六本木ヒルズで行われた社団法人全国花卸売協会(全国の仲卸協会)設立記念レセプションでの小池常務の締めのご挨拶を思い出していました。私の中の小池常務は「大好きな花の仕事を通して、笑顔の絶えない、またすべてを受け入れる力を与えてくれる花。素直な気持ちになれる花がそこにある生活をしてもらうことに業界の誰もが今、全力を傾けようでないか」との力強くも澄み渡ったご挨拶を思い出していました。決して自分勝手でなく、我々は花が人を幸せにできると信じているのです。私たちは花を売って売って売りまくりたい。1/1000構想で集めた基金で花を買って買って買いまくってくださるように消費者を誘導したい。そう思いながら散歩しました。
台風の被害にあわれた方々の荷がない間の留守を守り、定位置をあけて待っている我々の花市場の仕事の仕方のこと。また日本中で6割の家庭が1年で1回も花を買ったことがないという我々からのコミュニケーション不足の改善のことも、私の中で熱い決心になっています。成功とは人のためにやりたいことをやりきること。全国の同士とともに、いい仕事をさせてもらっていると、感謝したい気持ちになっています。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年10月 5日

コロンビアの花のサプライチェーンに学ぶ

大田市場花き部の中央通路にて長野県南信ハウスカーネーション組合のカーネーションが展示されており、今朝、長野県南信ハウスカーネーション組合の内田組合長から「ようやく天候も回復し、良い品物ができるようになったのでぜひ使ってほしい」とせり前に挨拶していただいた。

日本でカーネーションを作るようになって100年。夏にもこんなにすばらしいカーネーションが長野県から北海道の高冷地で作られるようになり、夏場に花持ちの良い花として切花の必須アイテムになっている。日本のカーネーションはコロンビアと中国のカーネーションと国際競争している。特にコロンビア産は手強いライバルだが、その良さを見習って日本国内でより良いカーネーションを流通させていこうと思う。
先週コロンビアのボゴタで二年に一回開催されるproflowersという展示会に行ってきたので学んでいただきたい点も含め、簡単にレポートしてみたい。

カーネーション、バラ、アルストロメリアで有名なコロンビアはいずれも日本のスケールからすると大大農場ばかりだ。今回の世界同時不況で切花の単価が下がっており、信用不安もあり、ペソ高ドル安も重なって、キャッシュが足りず閉鎖を余儀なくされている会社もある。しかし最適地で生産されていること。早朝収穫し、温度コントロールの利いた集荷場でしっかりと予冷と前処理、水揚げ、翌日箱詰め、差圧予冷、温度コントロールの利いたトラックで飛行場に持って行き、飛行機でマイアミに。機中は貨物室も20℃未満でかつてのように凍るような事故はもうない。マイアミ到着後、サービスレベルの高い物流作業は、差圧予冷、品温をまた2℃に下げ、その温度帯で保管物流作業(カーネーションは2℃だがバラは1℃で作業)。そして日本に輸送。アトランタ経由だったり、ロサンゼルス経由だったり、ニューヨーク経由だったり、アンカレッジ経由だったり、いくつかの飛行機会社を使い、指定時間までに成田に届ける。機内は一定温度に保っているが、成田に着くと夏場だったら暑いので、早速箱の中のカーネーションやバラの温度が見る見る20℃近くに上がり始める。最大手のクラシックさんのように品質管理を忠実に行っている輸入業者の方は箱ごとに温度計を入れてもらっている。早速クラシックさんは通関後、自社の保冷庫に荷を引き取り、品質管理。箱から出して再度選別、水揚げ。水揚げする水を冷やしておくことが重要なポイント。そのままにして水も一緒に2度まで温度を下げようとすると6-7時間かかってしまう。だから冷たい水を先に用意しておくのだ。そして選別、水揚げをして、翌日市場に出荷する。このようにしてコロンビア産は切花後7日?10日で小売店の店に並ぶ。そのためには適地で作られるという以外にこのようにポストハーベストのためのたゆまぬ努力が積み重ねられているのだ。クラシックさんに品温管理表を見せてもらうと、この時点で農場、この時点でマイアミ、この時点で成田、というように卸売市場に品物を大切に届けようとする努力がここまで行き届いていると頭が下がる思いだ。「こんなにきちんと管理していると、コロンビアのカーネーションはクレームはほとんどないでしょう」と問うと、「物日の時にクレームがあります。その原因を調べてみると、STS(チオ硫酸銀など)エチレンを自ら出さないようにさせる物質の含有量が少ないことがあります。ですからいくつもの農場に仕入先を分散させて、仕事の負荷を下げ、十分に前処理してもらい、クラシック品質基準を保って取引先に迷惑をかけないようにしようとがんばっています」と直接クラシックの西尾社長から話をいただいた。私たち国内業者は、生産から消費者の手に渡たり、毎日楽しんでいただくところまでを自らの責任として、流通品質の保持をコロンビアのカーネーションに習い行う必要がある。今年のボゴタでのプロフラワーズでは日本の37社の会社が訪れた。円高もあって仕入れは1割安くなったが、新たにカーネーションの輸入を始める人もいて、日本のコロンビア産のカーネーションの単価は1割以上も下がって採算を合わせるのは、ましてや利益を出していくのはプロの業者といえどもそんなに簡単なことではない。その中でマイアミのロジスティック業者も日本の輸入商社も必要なところには徹底的にお金をかけて手を入れ、日本の消費者に届けてくれようとしている。我々国内業者はさらに気を引き締め、学ぶところは学び、消費者に選んでもらえるように今後販売していきたいと思っている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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