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2007年6月25日

需給バランスに対応する取引 ?何事もバランスが大切だ?

オランダ最大の卸会社であるダッチフラワーグループの一つ、インターグリーンは花束加工会社として世界で最も優れた会社だと言われている。
輸入品の比率が高くなりはじめた20世紀後半から、自社の品質水準も考慮し、地元ウェストランド地域で花き栽培をして欲しいという郷土愛で、花束用の多くの花をウェストランドの花市場のメンバーに生産をお願いしている。インターグリーンの場合、花保ち、鮮度保持を重視して、かなり生産現場まで踏み込んで仕事をしている。そして更に花束の美しさなどの商品性を追求している。結果、その商品が圧倒的な競争力をヨーロッパでは持つようになり、おいそれとヨーロッパの大手スーパーはインターグリーンとの取引をやめようとしない。とにかく取引量が安定しているのだ。インターグリーンが取引先のスーパーに来店される花のお客様の為に尽くそうとする姿勢には本当に頭が下がる思いがする。
近年、EUは景気がまあまあ良いが競争は一段と激しさを増し、それは花売場でも同様である。だから「売れたら発注する」こういう間際発注になってきている。とある大手スーパーはインターグリーンに前日発注するという。インターグリーンのリスクは大変なものだ。しかもインターグリーンは花の調達には予約相対が多いから、この需要の増減をどうするか。店頭の需要はアコーディオンみたいになっている。花は物日の度に需要が高まり、それが終わると急に小さくなる。
例えば中央ヨーロッパ、ハンガリーやルーマニアなどは今、40度近い猛暑である。花の需要が極端に減っている。こういう変化にどう対処すれば良いのか。「売るに天候、作るに天候」これが花の特性だから、いつも決まった量がサプライチェーンを流れる訳ではない。その為、スーパーなどの大口需要家は、花加工業者だけでなくウェストランドの市場そのものにも安定供給の責任を負ってもらっている。卸売市場が備えとなっている訳だ。

日本では、せり取引から相対取引へ。生産者も委託だけでなく値決め・予約相対というふうに安定した取引を望む声が高い。それは消費者が、より気分に任せて花を買うようになった裏返しではないか。潤沢に花が供給されるようになり、消費者はある意味贅沢になってきた。日本の需要の変動は大きくなっているのだ。
インターグリーンはPDCA(plan?do?check?action)のサイクルでここまで進んで来た。しかし地球温暖化で気温が大きく振れ、グローバリゼーションでどこの国も低所得者の数が増えている。こういう中でイベント、物日を増やし、花は消費拡大を図っているが、好みの変化、天候の変化が激しく、そして早くなってきており、これに応える為にはやはりアドリブに近い、間際の取引に近いせり取引なしには考えられないというのは、今のオランダの現況だそうだ。日本でもその傾向は見え始まっている。

投稿者 磯村信夫 : 16:00

2007年6月18日

事前情報

ASEAN諸国の経済統合とアジア太平洋地域の自由貿易圏について、いつも頭からこのことが離れない。日本は感性豊かな花を出荷し、非価格競争の土俵で戦うことが第一にやるべきことだが、それと同じくらい大切なことが加工用・業務用の花、花束需要や葬儀の花に向けた低コストな花、小売価格の高くて3分の1、基本は4分の1の素材価格でも利益の出る花つくりをすることが必要だ。非価格競争のところが最も大切な主戦場になるが、輸入されにくいものといえば鉢物と苗物となり、そうなると商売上のことだが、大田花きは早く積極的に鉢物を取り扱っていくことが現在お取引いただいている荷主さんに役立っていくことに繋がってくる。ガーデニングブームも終わり、デフレが進行した21世紀初頭、大田花きでは徹底した内部改革を行なった。デフレを受け入れ、その中でも確実な努力が出来る者を営業の核としたのだ。必然、マーケティングマインドに富んだ人間が営業、ロジス、情報システムなどで活躍することになる。そして2005年、大田花きの鉢物の営業体制を刷新し、歴史ある鉢物園芸市場である大森園芸を母体とする大田花きの鉢物スタイルができつつある。2007年に入り好調に営業が回りだし、園芸店やホームセンターが鉢や苗物の売上を落としているものの、専門店や一部食品スーパーなどの鉢の需要はそこを打って好転してきており、そこへ向けて30歳、40歳の消費者へ向けた鉢物を提案し、評価いただけるようになった。やっている方が古ければ、当然作られた鉢や苗は時代に取り残されていく。遊び心もまだあり、しかも仕事のスキルはすっかり磨かれた30歳?40歳前半ここを中心に展開をしていくべきだ。花の場合ボリュームゾーンはもう少し上の年代だが、この世代の人たちに認めてもらえない限り、花き業界の発展、日本の花き生産の発展はありえない。

そこで流通においてもやるべきことがいくつかあります。鉢物生産者や苗物生産者は卸売市場へ事前情報をインターネットやファックスで送り出荷してくることを徹底していく。今から17,8年前、大田市場花き部が開場するとき、僕は大森園芸でとにかく「事前情報がないと取り引きできませんよ」あるいは「できたとしてもどうしても荷物と一緒の情報ではセリ順が遅くなったり、当然セリ前取引ができなかったりなど、あなた自身が不利になりますから必ず事前情報を送って下さい。」と普及活動をしていた。今ではほぼ100%切花では事前情報を出荷先の卸に送ることになっているが、鉢の生産者はそれが徹底されていないので「何も特別なことをする必要はありません。委託品を送るときに当然予定をしてもらわなければならないから事前情報を早く送ること、情報が違ったらそれを刷新して早く訂正することなど、普通の取引上の連絡をするようにして下さい。」と基本的なところからも園芸業界をサポートしていく必要があるようです。

投稿者 磯村信夫 : 15:34

2007年6月11日

次につなぐ

生産者にしても花の小売店にしても、後継者問題は花き業界全体の重要問題である。戦中派や団塊の世代に生まれた人たちは当然、長男であれば親の後を継ぐものだとして後を継ぎ、現在花き業界を盛り立てている。しかし後継者のことになるとこのようなことが今起きている。いずれも社長は戦中派と団塊の世代の人で、65歳になったら働きたくないのだろう。

「私の代で前の仕事に加え、花店とチェーン店のコーヒー屋もやっているのです。花店で都合3店舗、全部で小売を5店舗やっているのですが、そろそろリタイヤをしようと思いましてね、息子は違う仕事していて後を継がないといいますし、どうでしょう誰か良い人がいたら紹介して下さい。」

とある仲卸の社長は、「大学時代の友人は定年の時期になった。大田市場が開場して15年、自分なりに一生懸命やって来たし、ご覧のとおり不良債権もない。だから社長、誰かここをやってくれる人いませんかね?自分は大学時代の友人と同じように一度リタイヤして、違った人生を歩んでいきたいと思うのです。」

とある駅前立地で土地をそのスーパーマーケットに貸しているいい角店の花店の社長は、「一億以上売ってやろうと頑張ってやってきました。でも60以上にもなって、女房にも楽をさせたいし、子どもは女ばかりで嫁いで幸せにやっているし、誰かここの後をきちんとやってくれる人はいませんかね?」

小売店2店と仲卸、この3社はいずれも繁盛店で、後継者探しをというより、リタイヤを考えて会社を売りたい、こういう考えの経営者が花の流通業に出てきたわけだ。とある仲卸は後継者がいない花店をチェーン化して準社員として使い、一部固定給、一部歩合給にして品物は自分のところから取ってもらう、そういうフランチャイズチェーン、フランチャイズというよりそれぞれの店は同じ看板を掲げただけで統一化されていないから、ボランタリーチェーンの本部のような役割を担っている仲卸に変わっているところもある。日本の世の中全体がサラリーマン化してきたといえばそういうことなのかもしれないが、しかし花の小売業界の中には、このようなことがかなり起きているのではないか。とすると、卸としてこの花店の後継者づくりや新しいやる気のある若者に店を買ってもらうことなど、なんらかのお手伝いをすべきではないか。花店の数が少なくなることは決して花き業界にとって良いことではない。


このようなことは当然産地においても起こっている。千葉の千倉や白浜などはお父さんが働きに行っている、お母さんがパートアルバイト感覚で花を作っている。こういった房州の「お母ちゃんの伝統」があったわけだが、それも団塊の世代まで、少なくても40歳代の奥様は花つくりを選ばず、館山にパートに行く。その方が安気だという。それだから生産量が急速に減ってしまっているのである。日本中各所でこういった現況があり、我々は後継ぎがしっかりいる地域へ足しげく通わざるを得ない状況になっている。生涯現役、それが農業の良さでもあるが、しかし嗜好性が高い消費財としての花、これをやってもらうにはどうしても時代に先がけた美意識が必要だ。大田花きにいる限り、毎年5名以上の後継者を研修生として預かり、いっしょに現場作業をしているので、あたかも後継者問題はないと感じてしまうが、実際産地に行ってみると団塊の世代のその次、ここがあまりにも少ないのに唖然とする。小売流通業界にしても、花き生産業界にしても、花の卸売会社として本腰を入れて後継者つくりの手伝いをしなければならないと決心した次第である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年6月 4日

“コト”を売らなきゃ“モノ”が売れないのが花

6月1日(金)11時からジャパンフラワーフェスティバルin埼玉スーパーアリーナでのショーが一般公開された。展示会が開催されたわけではなく、ショーが行なわれたのだ。入場するのに1時間、午後1時以降は入場制限も行なった。多彩な催しや展示、そして何よりも埼玉の各市がオリジナルの緑の豊かさを田園都市としてアピールした展示が見物であった。即売品も飛ぶように売れ、2週間前に所沢で行なわれたバラのフェスティバル同様、本当に花もよく売れていた。日曜日には銀座の松屋でのマミフラワーのデザイン展を見に行った。いくつもの新しい切り口でデザインされていた。なるほど床の間もこのようにすれば今日的だな。手前だけ明いた鏡の四角の箱にデザインされた花を飾る楽しさなど、新しい視点でフラワーデザインを見ることができたのは悦びであった。作品ももちろんであったが、ここでも会場出口で売られていたモノはよく売れていた。

ブランドが売れるのは、その物語性と弛みないカイゼン、新しい驚きが我々の期待を裏切らないからだ。花き業界はそうなると、老舗であること、あるいはブランドというのを種苗から川中、川下までの各業者はとても大切にしなければならない。そしてもう一つ、“モノ”である花を買っていただくためには、“コト”ストーリー性、サプライズなどを必ず伝えていかなければならない。そうでないと花は売れないのである。売るための努力をますますしていく必要がある。小さなイベントでも良い。こだわっていることを瓦版でお客様に届けても良いし、POPで書き込んでも良い。“コト”にこだわって、自分が取扱っている“モノ”の良さをお客様にわかってもらおう、これは何も小売店だけのことではない。卸も仲卸も生産者も種苗会社も花を売るには“コト”を行なう。この癖を早くつけたほうが勝ちというのが現代である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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