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2013年4月29日

少し端境期です

 今年のゴールデンウィークは、曜日の並びが平日を挟む為か、関西や首都圏に出来た新名所を尋ねる人も多く、都心部のお花屋さんもしっかり営業するという会社が多い。また、ゴールデンウィーク中だというのに、結婚式もあり何か時代が変わっているように思う。

 切花・鉢物ともに堅調相場は、向こう一ヶ月位続きそうだ。直接の要因は、天候不順による端境期で、産地リレーがスムーズに行かない為だが、構造的には昨年は単価でおよそ10年前の2001年並の切花。1ケースあたりの入り本数は少なくなってケース数は2割増えているので、1口あたりの価格は10年前の2割安。鉢物類も同様で1口あたり10年前の2割安となっており、しかも運賃が高くなっている。
 こうなると、利益が薄いので生産を増やすと言うのはなかなか難しく、スムーズに荷を運べる集出荷施設があるところでないと、消費地への出荷に不具合が出る。宅配便を利用すると運賃コストが売上高の2割を超えてしまう。これでは、ロットや品物によって手取りがなくなってしまう。

 21世紀に入り、鮮度保持の為、一定の温度をコントロールが出来る集出荷施設の投資やIT化など生産に関わる設備投資だけでなく、選別・集出荷に関わる投資が行われたところでないと花き生産は少なくなって、もはや花の産地と言えなくなっている。もちろん地元の"道の駅"や"ファーマーズマーケット"で稼ぐ花農家はいる。しかし、それはほんの一部だ。
 このような状況だから、3月のように急に平均気温が暖かい日が続くと荷がどっと出て安値になるし、4月の中旬以降、今度は朝晩は寒く、高冷地はまだ冬のように冷えているとなると、限られた中での産地リレーなので荷が薄く空いてしまう。
 
 供給において輸入花まで含め、こういう状況になっているのだ。ここを抑えておかないと良い花き流通が出来ない。卸売市場から、市場間ネットワークをして各市場の役割の多様化が必要なのである。
 
 最後にもう一つ。4月~3月の年度で見た時に売上が伸びている、今後も期待の切花と鉢物を3品目紹介したい。
 まずは、ご存知の切花のダリア。今後、鉢や苗、ガーデニングでも良いものが出てくるであろう。2つ目は世界中で注目されている切花のアジサイ。3つ目は鉢物のバラである。いずれも2桁以上の伸びがあり、今後とも期待されている物だ。
 
 我々が安く買おうとするのは既に知っている物で、我々が高くても買いたいものはブランド品と新しいものだ。新しいものについて私たちはもっと取り組んで行かなければならない。


〈推選図書〉
①東京農業大学 教授 藤島廣二 監修
『くわしくわかる!食べもの市場・食料問題大辞典1 市場からみえる食の流通・販売』 教育画劇社

②法政大学経営大学院 教授 小川孔輔 著
『フラワーマーケティング入門』 誠文堂新光社

投稿者 磯村信夫 : 15:44

2013年4月22日

胡蝶蘭の切り花

 寒さが続き、供給が少なくなって切花の相場が2ヶ月ぶりに上がってきた。まだ白菊は安いが、それ以外の花は概ね例年通り、ものによっては平均相場のプラス10~20%高になっている。

 今年の東京は、桜の時期にちょうど高冷地のように、一度に様々な花が沢山咲いた。そういう状況だったので、この寒さで例年並みの季節の進み具合になって穴が開き、供給が少なくなったということであろう。昨年までと違うのは、国産品の出荷減を輸入花で補うことが為替の問題もあって単価的に難しくなったことだ。又、国内産地も更に出荷先の絞り込みを行い、大手市場に荷が寄ってきている。
 
 品目的にもその傾向がバラやトルコギキョウに顕著に表れており、1965年~1975年生れの広い意味での団塊ジュニアの世代が多くいる地域の市場が伸びている。この人たちと、その親である戦中から団塊の世代は、人生の通過儀式の仕方やら花を変えてきた。

 今年目立つのはランで、カトレアから胡蝶蘭に儀式で使われる花が変わりつつある点である。カトレアは、かさばるので遠隔地からの出荷はほとんどない。少なくとも輸送体系は傷みやすいので、直送でないと流通出来ない。胡蝶蘭は上手に荷造りするとアジア圏なら、傷まないで市場に届く。
そこで胡蝶蘭の得意な台湾は、アンスリウム・オンシジューム・トルコギキョウに次いで、胡蝶蘭の切花生産を本格化させる気運がある。
 
 台湾の生産者は、良いものとなると皆が作り始め、日本で相場が立たなくなると一気に作ることを止めてしまう。こういうことが時々あるので、台湾の輸出商の人たちと日本の主に輸入する協会と花市場は、しっかりと価値を保ちながら消費を拡大する施策を取っていく必要がある。
 
 日本国内でも胡蝶蘭の鉢物生産者が切花を生産したり、逆に将来の切花安を予想して、胡蝶蘭の切花生産から鉢物生産に向かっている生産者もいる。台湾の生産者は、どっと作ってペイしないと止めてしまう。これでは、せっかく消費を拡大したのに品物がないのでは困ってしまう。
 継続出荷、持続性を持って輸入商社は台湾の産地に今申し上げた事情を伝え、生産出荷をコントロールしてもらわなければならない。
 高額商品の花が上向いているというのに、台湾の生産者が水をさすのは止めてもらいたいというのは、私の気持ちだ。

投稿者 磯村信夫 : 17:49

2013年4月15日

BCP(事業継続計画)をしっかり立て経営する

 4月10日(水)、フローリメックス社が倒産手続きをしたとのニュースが入ってきた。2月のチコレラ社倒産に続く、オランダ花き業界で2回目の大型倒産だ。
 フローラホランドが敗戦処理に向けて従業員や施設など業務を引き継いでくれるところを探す助力をするという。

 2月の時点では、イタリアやスペインを中心にしていたチコレラ社なので不景気の為、然もあらんとも思った。
 
 しかし、フローリメックス社は大元はドイツの会社であり、ヨーロッパが今バランスシート不況と言えども、ユーロはむしろ割安に動いており、ロシアなどにも着実に輸出出来ているのでトータルの輸出金額は増えていたはずだ。
 それなのになぜ・・と調べてみた結果、

・子会社の花束加工で大クレームが起き損失がかさんだこと。
・社員の給料遅延があり労働争議に発展していったこと。
・大手の顧客をライバル会社に取られてしまったこと。

以上の3つが原因であった。
 
 メインバンクでもナーバスになっているこの時期ゆえに起きた倒産とも言えなくはないが、BCP(事業継続計画)など経営の根幹に関わる視点がずさんだったのだ。
 このことは、規模は違うかもしれないが日本でも起こりうる。本年度は、スーパー、ホームセンターとも2014年4月の消費税上げ、2015年10月の消費税上げを見込んで出店を加速している。今年一年で量販店は、もう出店する場所がないくらいまで新たに出店する。

 2012年度から、すっかり儲からなくなってきた花束加工でバレンタインデーやお彼岸のように物日で大クレームをされたら、立ち行かなくなるかもしれない。
 どのような品質管理をすれば良いだろうか。クレームが来ない安心して販売してもらえるものを作るだけではなく、店頭での管理まで納入会社は気を遣わなければならないのだ。もちろん宅配便を使うとしたら、温度管理も欠かせない。

 日本の花き業界は利益が出にくくなっているが、社員の給料は労働に見合うものになっているだろうか。人を使うことが出来る優秀な人材はしっかり確保出来ているだろうか。会社が嫌になり、優秀な人材が優秀な若い社員を連れて退社するという事例が日本の花き業界にもある。会社はそのようなことがないようにしなければならない。何も煽てたり甘やかしたりするのではない。
 仕事場は戦場と同じなので、厳しさは当然のことだが、よく教育をし、信頼し、任せていくことが更なる発展に繋がる。
 フローリメックスの労使騒動は働く人たちに責任を取らせようとし過ぎたのではないかと思う。2ヶ月分の遅延が結局4ヶ月分の給料を支払うように命じられた。

 最後に大手顧客がライバルに取られるということは起こり得ることだ。ただ、取ったら取り返す、そのくらいの意気込みでないといけない。

 この間、バーに行った時にジャックダニエルがアサヒビールになって、ジム・ビームがサントリーが新たに代理店になったことを知った。サントリーはやられたのでやり返した。こういうバーボンウイスキーの世界でも生き残っていく為にはどうすべきか視野に入れて置かなければならない。
 これは花き業界でも同様だ。BCPは、存続維持する為にどうしても必要だ。日本は3月末の送迎需要を見ても、花束なら昨年は、1500~3000円、今年は3000~5000円に。卒業式、入学式など年度の始まりに使われる胡蝶蘭は、昨年よりも一週間長く相場が持った。  
 
 デパートの活況とともに、花も高額な商品から需要が復活してきている。しかし、量販店の大量出店でも分かる通り、更に激しい競争が繰り広げられる可能性が高い。花屋さんの数が更に減少していくことも予想しなければならない。
 消費税が上がりディスカウンターが人気になったが、低価格の花が更に人気になっていくことも勘定に入れて行かなければならないだろう。
 
 資金繰りまで含めたBCPの立案がまだならば、まず社内の部長以上に社長の意志を伝え目合わせすること。そして早めにプランを立てることがどうしても必要だと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 15:46

2013年4月 8日

輸出倍増計画―市場で輸出検疫―

 4月8日、今日はお釈迦様の誕生をお祝いする"花祭り"の日である。今年は、昨日の日曜日、都内では桜祭りを計画した所も多かっただろうが、大森では桜が終わってしまったことと悪天候の天気予報で中止になった。

 しかし東海道の品川宿では、商店街の人々が中心となって開催され、まだ風が強かったもののきらきら光る春の日差しの中、多数の住人が駆けつけていた。
 お寺が多い品川宿辺りに住む若いお母さんと子供たちにお釈迦様の誕生日に花をお釈迦様に捧げることが、実は自分たちが"慈悲の心"を教わっていることを教えたいものだと思った。

 日本の花き業界は、1日・15日の仏様の花と榊の入替え需要がベースとなって、お客様がお店に買いに来て下さるとき、季節の花も購入していただくというリズムで動いている。特にご高齢の方を中心に花が好きで来店して下さるのはありがたい。

 さて、おとといの6日(土)に大田市場の青果仲卸の元社長であり、現在、経済産業大臣政務官・内閣府大臣政務官である平衆議院議員の会が大田区産業プラザで開催された。
 日本農業新聞(平成25年4月4日付)でも報じられていたが、日本の農産物の輸出促進の為、卸売市場で植物防疫官が輸出検疫を出張サービスすることが出来るようになり、その人数を増やすというのだ。
「甘利大臣も実態が分かってくれて推進してくれている」とうかがっていたのが、政府の方針として新聞の記事になった。

 生鮮食料品花きの4品目は素材の良さを生かした日本人の評価に裏付けられた世界第一級の肉・魚・果物・花である。これらを市場の仲卸がコンスタントに輸出国の問屋が長くても数日で捌ける量を、多頻度に輸出しようというものだ。
 日本列島は長いので、産地が移動することもあろう。また、各県が個別に売りに行くと、現地の問屋に手玉にとられるだけでなく、ロットが大きいものだから一定期間在庫にしながら販売せざるを得ず、結局安くないと買えない。こうなると輸出補助金が必要になる。これではだめだ。
 
 生鮮品の輸出入というのは、その国の市場の仲卸の仕事であるのが普通で、鮮度が大切な鰯でもポルトガルの魚市場の仲卸がニューヨークの魚市場に毎日送っている。
 端的に、このような例が一般的で、これを日本も普通に行おうとしているのだ。
 今年の春のように、肉も魚も野菜も花も安い年には、円安も手伝って多くの量を輸出出来るはずなのに、日本ではそのルートがまだ出来ていない。市場ルートをいち早く作って行きたいと思う。
 
 後は"インボイス"も問題がある。事前に商工会議所に届けなければならない手間がある。より簡単に措置がとれるようにして行かなければ、オランダやイタリアの仲卸ではないが、生鮮品は相場 のセールスがやりにくい。

 まずは第一に傷みやすい日本の生鮮品花きは世界の誰もが認める最高の品質揃い、これを輸出することを卸売市場の新しい仕事としたい。
 平議員は何もお金をかけずに既存のものを使えば、意識改革だけで輸出額を倍増出来ると考えている。もちろん私たち市場は「その造りを海外にも売り込もう」とこの話に乗って輸出をして行きたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 16:52

2013年4月 1日

切花の卸売価格が上りにくい要因とは・・・

 先月、東京都中央卸売市場から、2011年1月~12月の都内中央市場の仲卸の経営状況についての報告書が刊行された。
 水産部では、約30%が黒字で約70%が赤字、食肉部では約40%が黒字で約60%が赤字。青果部も同様であった。花き部は、約6割弱が黒字で残りの4割強が赤字であった。
水産・食肉・青果はスーパーマーケットの比率が多くなり、自分より大きな会社と取引きするので、利益が出にくい体質になっている。花き部は、専門店の減少と、買出し人と言われるレストランや美容室などの活け込み業者の数が減ってきたことが赤字の要因となっている。

震災の年は、たしかに食料品はセシウム問題があったが、花業界では母の日まで需要がどこかへ行ってしまったような絶不調であった。2012年、暦年では改善したが、4月~3月の年度で考えてみれば、生鮮4品の仲卸業者は苦しかったのではないだろうか。それは2013年2・3月に単価が大幅に落ち込んだからである。
何故単価を抑えようとする力が働いているのか切花について考えてみる。青果の仲卸はキャベツを丸ごと納品する。量販店に直接売るのだ。なので、仲卸から専門店に卸しているのと変わらない。

しかし、切花はそこで加工業者が入る。花の仲卸が花束加工業者に納品し、花束加工業者がスーパーに納品する。そうなると、スーパーで販売するまでに一段階増えるので仲卸が花束加工業者になっていくのが潮流にもなってきた。また、こういうパターンもある。卸が花束加工業者に納品し、花束加工業者がスーパーに納品する流れだ。又、卸が別会社を作り、花束加工を行うといったパターンも含まれる。こうして切花の場合、従来より一段階多い流通過程となっている。
よって、この花束加工業者が食べていく為には、納品するスーパーから適切な対価を貰うか、そうでなければ仕入価格を安くして手間賃を出すことを考えなければならない。
こうして2012年度は、10年前の平均単価まで下がっていったと推定される。そして、更にスーパー用の花束花材の花は特定の卸・仲卸を通じてしか流通していないので、業界全体のパイは20数年前の1980年代と同じではないかと推測される。

今後、スーパーの花売場が伸びるということは、小売店の数が減少するということである為、仲卸・卸・産地とも本格的に数の調整局面に入ったと見て良いだろう。財務の健全性を第一にして、縮小均衡する卸・仲卸と下がった2012年度をばねに飛躍しようとする卸・仲卸とはっきり分かれた格好になった。当たり前だが今までと同じように働いて、皆が良い時代は花き業界において完全に過ぎ去ったのである。

投稿者 磯村信夫 : 15:55

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