大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2007年8月 | トップ | 2007年10月 »

2007年9月24日

前日集荷

消費者の手元に渡って咲ききるか、何日保つかということは最も大切なことである。それゆえ、湿式輸送のものが増えている。大田花きでは荷の半分以上を仲卸と地方の卸売市場等が買ってくれているから、即小売店というわけにはいかない。したがって湿式でも花だるまやソフトバケツなどを使い、ダンボールの荷姿で横積みできるようにお願いをしている。飛行機や宅配業者、あるいは混載の荷物を扱う運送店などは水がこぼれるのを最も嫌う。この時期、横にしても水がこぼれない水の量は生産者と共通の認識を持っておかなければならない。品質保持はその場の見栄えにもつながり、かなり多くの輸入された花はリパックしソフトバケツで水揚げされている。湿式になっていないのは菊とユリ、葉モノ、そして一部のネイティブフラワーだけであろう。ほとんどの輸入品がリパック、水揚げされ、シャキっとしたのはここ三年のことであろう。

物日になると専門店の販売量は日頃の2倍から3倍だが、量販店は6倍くらい。場所によっては10倍になるところもある。量販店の花は花束加工されているから自社で花束を作る場合もあろうが、ほとんど花束加工業者が花を仕入れ、花束を加工している。すなわちワンクッション流通過程が多くなっているわけだ。そうなると花屋さんが直接仕入れて販売するといった仕入サイクルより一回早い仕入サイクルとなる。それが花束加工業者の仕入日だ。加工業者にとっては、花代もさることながら人件費のウエイトが大きいから、残業しないで一定数量をこなしたい。そうなると鮮度の良いものを毎日仕入れて、毎日加工する。そうすると無理なく無駄なく良い花束が出来る。こうなっているのだ。

更に仲卸や市場のスペース、そして荷を運ぶトラックのスペースも限られている。例えば大田花きでは同時に4つの異なった場所で荷を受け、荷捌き業務をしている。同時にしないと間に合わないので場所を借りて行なっているわけだ。でも月、水、金の晩はその場所は余裕がありすぎと言うよりも仕事が無い。大田市場の花き部のところでは鉢物を扱っているから良いものの、他の場外の3箇所は使いたくても使えないのだ。そこで今年の暮れから主要な産地にお願いに上がるであろうが、切り花の売り日は月、水、金だが、入荷は毎日という風にしてもらいたい。沖縄県の太陽の花、おきなわの花の2出荷団体には、飛行機、船を使ってほとんど毎日出荷を促して、春の彼岸の荷を物流させてきた。消費者の花を買う買い物動向がますます物日にそのピークが高くなってきている。こうなると物日は、これに合わせて生産者に作付けしてもらわなければならない。いつも出荷している作付け面積の少なくても3倍、できれば6?7倍作付けしてほしいわけだ。そうなると切ってきて、自分の撰花場に置いておきたくてもはみ出してしまう。2日分なぞ貯めておけない。だったら農協の集荷場に持っていく。農協も2日分なぞ貯めておけない。だから毎日農協、トラック会社、輸送会社、卸、仲卸、加工業者は働き、流通加工する。消費者がほしがっているのに供給できないというチャンスロスを減らすため、こうしなければならない。「鮮度が大切だ」「朝摘みだ」一方にこういった完熟、朝採りなどの需要がある。もう一方に流通加工上、最もチャンスロスを逃さないような面から、堅い切り前、前々日出荷、これにより的確な情報売りが可能となる。物日はまず後者を作り上げることが現時点で最も花き業界にとって重要なことだ。

P.S.
大田花き在宅セリ、OLIVE(大田花きインターネットを経由する取引)の審査基準について

株式会社大田花きは中央卸売市場大田市場花き部の卸売会社として、1990年農林大臣から認可され営業をさせていただいております。また1997年、現JASDAQ取引所に株式を上場しております。
またコンプライアンスは大田花きの社業全般に及び、したがって個々の取引関係にも当然各ステークホルダーから透明性を追及されます。お取引先におかれましても、厳しい審査基準がありますことを、この場をお借りしてご了承いただきたく存じます。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年9月17日

仕事の質を上げよ

先週の14日の金曜日、仲卸通りは買出人でごった返していた。母の日以来の賑わいだ。今年は敬老の日の花はあまり盛り上がらないと感じていたが、しかしいざとなったときにやはり売れる。もっと花の素晴らしさをこういう物日に伝えたいのだが、今後とも地道に広報活動や消費宣伝をしていく以外にない。「商いは飽きないこと」とよく言われるが、まさに飽きずに運鈍根で物日をおもしろいものにしていきたい。

業界やその中の会社を見ると、グローバルな業界か日本の国内だけでやっている業界か分けることができる。また首都圏や中京関西圏、あるいは北九州圏はグローバル経済圏だが、地方は日本国内経済だけなのでドメスティック経済圏ということができる。花き業界では種苗業界や花の輸出入の商社はグローバル化しているが、ほとんどが国内のみで完結していると言えるドメスティック業界だ。東京には外国人がたくさんいるので街も国際化しているのがわかる。新しい高層ビルがどんどん建って、景色も都心部は様変わりしている。地方は昔からの良さを保とうと、中には新幹線を反対するところもある。内向きでこのままの良さを残しながら生活していこうというのである。これら内向きの産業や内向きの地域にあっても、グローバル経済の影響を排除することはできない。それは経済学で言う「要素価格均等化の定理」のためだ。

中国製のシャツを買ったとしよう。そのシャツを構成する要素、人件費や工場の土地代、機械代、もちろん素材代、通関や運賃など、これらの中国の要素と日本の要素が均衡化していく。よって日本の人件費が特にドメスティック業界や地方都市では横ばいだったら上出来、下がっていきそうだと経済学の定理は言う。そうなると私たちはどうすれば良いのだろうか。それは量的成長から品質の良いものを買ってもらい安心できる花の買い物をしてもらうこと、また時代とともに進化する消費者価値を的確に捉え、自分の製品や自分の店や会社をブランド化すること。こうした場合、消費者価値によっては、結果として売上を減らさず伸びるかもしれない。そしてドメスティック業界の私たちは物流まで含めた流通改革を行なうことによって無駄を排除していくことが欠かせない。商いとして今までやって来たすべて手仕事の花き業界では、省力化と経費削減をしながら、安心してお客様に買ってもらえる花を提供する。このむずかしいが、当たり前といえば当たり前のことを実行していきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年9月10日

重陽の日

先週の土曜日は台風で延着した切花が多くあった。露地が多い時期なので土曜日の市にも切花は結構あるのだが、それにしても木曜から金曜の朝まで東名が御殿場?大井松田の付近で不通だったので西から来る荷物、また長野県でも中央高速が不通だったので新潟を回らずに東名に入ってくるため、大型車が何台も延着した。セリ前、担当者が本日の入荷量や状況報告などをせりに臨む買参人にしているが、金曜日のせり場にいた買参人の多くは、日ごろ買い付けている荷が延着だとわかると、土曜日にその荷を買いにわざわざ来てくれていた。それぞれの産地が、日頃から自分のものを買い、消費者に届けてくれている花屋さんを大切にしてくれているおかげだと思うと本当にありがたく思った。

昨日は重陽の日で目黒雅叙園では、マナコフラワーアカデミー本部と池坊東京武相会の花展があった。大田花きでは、今だからこそ菊をもう一度あらゆるところで使われる日本のメインの花にしようと本格的に努力を始めたところだ。切花の菊というと、いつの間にか白菊は葬儀の花、黄菊は仏花となってしまった感がある。しかし雅叙園のこの展示会を見て、そんなに狭い範囲に役どころを限定してしまうのはいかにも菊に申し訳ないと思った。

展示会では生の花と造花も使われていた。なぜ造花の菊を使うのかというと、大輪で咲いた菊というのがほとんど出回っていないからだ。だから先生方はやむなく咲いているピンポン菊やシャムロック、アナスタシアなどとその造花を一緒に使わざるを得なかったのだろう。

昨年ペテルスブルグのエルミタージュに行った折、回りの花屋さんをよく見た。ペテルスブルグはヨーロッパ的だが、それでも花の好みが大輪バラと大輪菊。これはモスクワを中心とするロシア人に今最も価値ある花だ。旧東ヨーロッパが、大輪菊が大輪バラと同様の価値を持つ花だと評価していること、この波紋がヨーロッパじゅうに広がっていること。したがって良い大輪新品種が、かなり多くで始めており、日本を除くアジア圏でも作られ始めていること。これらを日本の人口動態と菊文化の伝承を考えると、団塊の世代がリタイアをし始めた今、都会の超高層マンションやホテルのエントランスロビーなどに大輪の菊からスプレー菊、そして小さなマイクロマムまでを使ったアレンジが生かせる空間がどんどんできてきている。菊だからコストパフォーマンスも良い。大田花きはこのような需要を作るお手伝いができたらと考えている。

昨日は暑かったが、重陽の日に菊を使った作品を見て、菊についてやるべきことを再確認した。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年9月 3日

銀座、丸の内の秋

猛暑だった8月の実績はいかがだったでしょうか。単価水準は中旬まで過去3年間の真中、それ以降は特に20日過ぎ、最も高い水準となった。朝刊各誌ではこの8月の売れたもの、売れなかったものを各種報じているが、おもしろいことに殺虫スプレーはあまり売れなかったという。暑いのであまり人が外に出ていないのもあるが、高速道路などは相変わらずの混み具合だから夏休みはいつも通り。それを考えると夜中も25℃以上で植物や虫などにちょっと異変が起きていたと考えられる。

さて土曜日から9月が始まったが猛暑が続いていたので、どのように秋物を売り出していくか、そのアイディアを見に、土日にかけて銀座、丸の内、日本橋を見た。東京では六本木ミッドタウンが話題を集めていたが、落ち着いた大人の街としてここ銀座や丸の内界隈の人気が高くなってきている。花で言うと、最も素晴らしい装飾だったのが9月1日オープンのペニンシュラホテル。そして日本橋の高島屋であった。各所、この月曜日に花の入れ替えを予定しているので、このレポートでは限定的な土日の様相をお聞きいただきたい。落ち着いた雰囲気を出す小道具として、花を使っているのがフランスやイタリアのブランドショップだ。あまり大きくは飾らないが、大変気の利いた季節の花をさりげなく飾っている。特別なデザイナーがいたり、有名な花店と契約を結んでいたりするのだろうか、日本だけの花使いもあれば世界統一の花使いもある。ぜひとも東京に来たら、銀座や丸の内界隈のブランドショップでウィンドウショッピングをお楽しみいただけたらと思う。

花使いの街の様相も高齢化と共に「大人の」というのが一つのキーワードになってきている。新丸ビルのお花屋さんや東京駅のサピアタワーのお花屋さんなど、艶やかな中にも落ち着いた雰囲気をかもし出すところが東京では増えている。秋の花で言えばコスモスよりケイトウだ。またフランス風やイタリア風なども良いが、生け花の良さもこれらの街では注目されてきている。

赤坂の草月会館で加藤華先生の社中の展示会があった。大変珍しいオランダ柳をたくさん使っていて、その荒々しい北海の風を感じさせる柳を使った作品に打たれた。同様にミズキを使った造型にも魅せられた。蓮の葉もあったが、これら水に親しんだ材料を使いながら強さを打ち出している作風に見入った。

銀座や丸の内が商業地として根ざしているものは、やはり商売として買ってもらわなければいけないのでもう少しワクワク・ウキウキしたものだが、花の作風は元来、床の間や客間などに飾るもの。その生け花の美しさは日常生活の中で襟を正す一瞬でも良いから持っておきたい、欠かせない時間や場所である気がする。いずれにしてもバブル崩壊後、デフレで「本物」が少なくなっていったが、それではいけないともう一度質の高いものに注目が集まり出した。これらの場所では子どもをほとんど見かけない。このような場所が人気になっている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.