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2010年7月19日

売るのが難しくなってサプライチェーンに新たなメンバーが加わったので農家の手取りが減った

曇天に次ぐ集中豪雨の後、ようやく梅雨が明けた。今度は強い陽の光で葉焼けや花焼けの被害が心配だ。今年の夏の出荷物は強い根っこが出来にくい栽培環境であった。そこに来て、冷夏予測が猛暑予測に変わり、暑さに慣れるのにはもう少し時間がかかるだろう。この夏の作柄は出荷量で去年より1割少ないといったところである。植物の健康も心配だが、それを作る生産者の意欲に陰りがあるのも心配だ。

サブプライムローン問題から早3年目。品目別所得の平均値からすると、米や果物ほどではないが、野菜に比べて花の農家手取りが劣ってきたのが私の懸念材料だ。冠婚葬祭については、花の消費量と金額は堅調と言える。しかし、ここでは場所代や紹介料などの名目で、コミッションが3割以上支払われる。仮に3割としても、10,000円のうち3,000円は式場業者に行き、7,000円で10,000円の花を作ることになる。しかもこれらの冠婚葬祭の花を作るとなると、高い技術が必要になる。となると、それを行う従業員の給料も一定水準以上出さなければならない。これが廻って仕事用の花の農家手取りは小売価格の1/3から1/4へと少なくなっていった。

法人需要がリーマンショック以降少なくなったが、個人需要はしっかりしている。駅や集客力のある小売店にテナントで入ると、売上高家賃比率は15%~20%近くを言ってくる。10,000円の花は2,000円を大家さんに払い、8,000円で10,000円の価値の花を消費者に販売する。チェーン展開していれば本部経費も必要だ。そうやって必要経費分を支払っていくと、小売業者は仕入れ価格を小売価格の1/3から1/4の一定割合に抑えていかなければならなくなる。

街で自分が所有する家族経営の花店を営んでいれば、10,000円分の花は仕入れ価格が5,000円で良い。しかし自分の物件ではない場合は、家賃も出さなければならない。消費者は個店からチェーン店へと花の場合でも「お買い場」を移している。ここでも農家手取りが少なくなっていることが解かる。

スーパーマーケットの花を見てみよう。スーパーの花は花束加工業者が作って納品したものだ。だから花束素材の花は上代の1/3~1/4が仕入原価となってくる。だから花屋さんがサービス花束を作って売っている場合とは、仕入れ価格が違ってくるのが分かるだろう。花束加工業者に働いてもらわない限り、消費者に自分の花を届けることが出来ないのだから、生産者は失礼な言い方だが扶養家族が多くなり、手取りが少なくなっている。

このようなことが21世紀になってから起こり、とりわけここ3年間では元気な野菜に比べて、花は農家手取りの点で見劣りすることが多くなった。ここにやる気の問題があり、それを私は心配しているのだ。
今後の日本農業を考えると国際競争力が強いのは、果菜類と軟弱野菜、花、果樹の4つにあると思う。野菜は現在、中国の残留農薬問題と餃子問題から国産が人気となっているが、近未来は貿易統計を見ていると、廉価版の輸入野菜、みずみずしくて甘い国産野菜と二極化して行くと思われる。お惣菜用の輸入野菜が多くなってきたときに、野菜の単価は下がらざるを得ず、そのときに花が手取りの面で野菜と同じようになっていく、それが2015年までの見通しではなかろうかと考えている。だからここ数年、花作りはちょっとしんどいときが続くと思うが、生産性の低い死に筋の花をカットするなどして製品化率向上に努め、所得を上げる努力をしてもらい、また我慢のときと思ってもらいたい。

法人需要が少なくなって、個人需要に期待がかけられる昨今だが、需要が減った割合よりも供給が少ない。この傾向はまだ続くと、先週発表の種苗会社の品目別種苗の販売実績は物語っている。花き生産者はぜひとも現実を見据え、また将来を良くしていくべく、心志を養って生産をしていただきたい。小売店も独立店舗として経営して行くのは難しい時代になっている。だから去年よりもサービスレベルを上げ、地元に密着した店作りを展開していってもらいたい。

ここ3年、月曜日が荷が多かったのは、勤めに出ている娘や息子が手伝ってくれたためだが、もう2010年からは就労している家族だけで出荷するから、月曜日でも量は多くならない。確実に今までとは時代が違っていることを認識し、マイナストレンドのままの人と早くも反転しそうな人と混在している現状をしっかりと見据えていき、どうすれば上昇できるか考え行動する時期となっている。

投稿者 磯村信夫 : 2010年7月19日 00:00

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