大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 100年に一度 | トップ | 価格が下がり続ければ需要は増えない »

2009年4月20日

苦境の一手

花き業界内の会合で、2月までは大変悲観的な見方をする人たちが多かったが、3月に入り4月の上旬まではどうやら売上高ベースで前年をクリアしているところが多くあり、なんとなくほっと一息。場合によれば、案じたより良い成果が残せるのではないかという楽観的な見通しを口にする人も出てきた。世間では確かに売れていない商品が多いが、売れている商品もあり、マスメディアの論調もいつの間にか明るい話題を探して報じようとしている。それゆえどちらかというと、花き業界では花のシーズンであることもあって、一時の悲観論一色がほとんどなくなりつつある。しかし実態はそれとは裏腹に業績は確実に落ちている。ここ3年間で見れば、最も良かった2007年を売上げで上回る週はほとんどない。そのときと異なるのは法人需要が少なくなってしまっていることだ。また生産原価および付帯費用も昨年上がったままで、下げていく交渉がなかなかうまくいかない。特に運賃は大手運輸会社が赤字決算だったことが示す通り、ただ単に運賃を下げてもらうことなど難しい。

さらに三つ目は生産者のモチベーションが下がっていること、小売店のモチベーションも同様に下がっていることである。母の日までは一般消費者は花と緑の季節と認識しているので荷動きは良いだろうが、その後どうするか対策を立てる必要がある。というのも、所得が下がっている中、国から支給された給付金の額を上回ったお金をゴールデンウィークや母の日で使い、花の需要は一段落。そのとき景気対策で新たに予算組みをした効果が例えアナウンス効果でも出てきたとしても、実体経済は縮小均衡しているのではないだろうか。

例えば失業率を例にとると、3%から5%に失業率が高まった。となると、100人に5人は普通の消費行動ができないから当然消費を落とす。そうすると前年比2%分だけGDPベースでマイナスになるから、トータルとしてモノが売れなくなった会社や業界は苦境に陥る。もうかなりスリム化してきたが、さらにスリム化するとなると当然人や賃金の問題に手をつけざるを得ない。こうしてまた消費がしぼむ。こういうサイクルが実は始まったばかりなのだ。日本では大手企業が工場の統廃合をリストラ策として発表し、実行している。だから桜が咲くころになって三大都市圏の相場が高く、地方の県庁所在地の相場が安くなっている。地方の場合は昨年の年末、派遣切りや工場の閉鎖話が出てきたときよりも実態はもう少し厳しくなっている。これを花き業界はどう見るかだ。縮小均衡の可能性はさらに高い。運賃は下がらない。コンビニが価格競争に入ったように、花も価格が安くなる。そんなときに生産者は持つのか、小売店は持つのか、愛想を尽かして辞めていくのか。

社会のインフラ商売である花市場の役どころを大田花きなりに判断し、このたび九州・福岡空港の脇で仕事をすることになった九州大田花きは花き流通会社として弊社なりの問題解決の手段として誕生した。
大田花きの花生産者に対する想いをシンボル化したのが吉武社長、消費者に対する想いをシンボル化したのが田中専務。この2人の取締役が困難の時代に九州から花き業界を活性化させてくれることを大田花きとして期待している。2010年下半期以降の景気回復後にいよいよ始まるアジア諸国とのFTA、EPA。そうなった状況下にあっても日本の花き産地は名実ともにアジアで最強の花き産地でなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 2009年4月20日 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.