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2015年11月23日

第二の産業革命下での宅配騒ぎ

 先月下旬から11月20日までの単価水準を見ると、大震災のあった2011年と同様、過去五年間で最も低い単価推移となった。今年は秋が早く彼岸後の天候にも恵まれ、個人消費全般は上向きだった。花も、小売店は「ようやくトンネルを抜け出しつつある感じ。ロスが少なくなってきている」と言っていた。しかし、11月に入ると、週末の度に天候が悪く、現況は過去五年間で最低の単価推移だ。花は三気商売で、天気、景気、やる気で構成されている。天気は芳しくないが、花の景気は最悪期を脱していると判断している。従って、花が売れるか売れないかは努力ややる気の問題であるから、是非とも売っていって欲しい。

 11月22日「いい夫婦の日」の小売店舗の売れ具合はまだ分からないが、今朝もいよいよクリスマスの飾り付け商材を買いにきている人が多数来場していた。アメリカではThanksgiving Day(感謝祭)が終わってからクリスマスの飾り付けをして、1月半ばまでその飾りを楽しむ。一方、日本では、勤労感謝の日が終わった後、冬支度と共にクリスマスの飾り付けをする。そして、12月20日くらいから徐々に正月の装いに入っていく。クリスマスの飾りは25日で終わりの所が多い日本だから、商店やレストラン等、早めに飾り付けをしていきたい意向は分かるが、正統派は新嘗祭(勤労感謝の日)まで秋を楽しむムードだろう。

 ICT※を携帯まで含め誰もが利用するようになって、物流の大切さが、宅配業者の活躍と共に国民の共通認識となってきた。大田花きは新しい物流棟を建築中で、一年目の工事が終わろうとしている。12月の繁忙期には工事を中止し、1月からまた一年をかけて建設する予定だ。なにやら昨今、インターネット物販会社が、その日に受注した品物をその日のうちに届けるとか、はたまた、会員であれば1時間以内に届けるとか、大手アマゾンの仕掛けから宅配業者は大変なことになっているようだ。花の宅配便の場合、横に出来ないし、一つ一つ手渡しでないと傷んでしまうので、宅配業者にとっては扱うのは厄介な品物だろう。常温で済むものはまだいいとして、不在の時は生ものだから傷んでしまう。また、コンビニやマンションの宅配受取ロッカーには入らない大きさのものが多い。もう一度、JFTD等、花屋さんの間での宅配業務を見直して、花き業界をあげてこの物流業務の利便性と安全性を訴えていく必要がある。そこへ行くと、B to Bの弊社 大田花きが作っている物流棟は、売り手と買い手の出会いの場を提供する場所で、鮮度保持物流や、コンビニ業界であればそこへ卸す専門商社が行っている物流機能を担うとするものだ。

 オランダの市場のように、販売による手数料収入は20世紀の三分の一となっている日本の卸売会社が多い。オランダはその対策として、その国が近代国家としての証である「所有権」の概念から、1/3台車・バケツ貸賃、1/3市場の使用場所代等、1/3販売手数料の収入で埋めている。日本の花市場も、今までと同じことをやっていれば、赤字にならないのはまだマシで、青果卸にいたっては、大手の所でも赤字になっている所がある程だ。こういった業界の停滞状況の中では、意志決定をする際、どうしてもいつもと同じ、昨日の繰り返しになりやすい。だが、食っていけないのなら違うこともやらなければならない。もう一度、原理原則に則った商売に戻し、その上で仕事を再定義し変化させる。そういう問題意識を持ったワンマン型の経営者と35~45歳位の中堅社員が、その会社や業界を変えていかなければならない。

 イーコマース業者や宅配業者が、そして、諸条件から卸売市場も、消耗戦とも言える、利益を第一に考えない流通を行っているが、現在の日本においても「キャッシュアンドキャリー※」で売り上げを伸ばすアメリカのコストコやドイツのメトロは、売上高営業利益率を10%以上確保している。また、日本ではかつて、上野御徒町の「二木の菓子」は、お客さんが一定のロットのお菓子の代金を現金で支払い、自分で持って帰るキャッシュアンドキャリー形式を売り物にした。こうすれば、販売者はそんなに利を乗っけないでも販売できる。

 人手不足の折、ロボットの導入や自動化を行わない限り、今のイーコマース業者と宅配業者が利益をあげてゆく方法は、取扱数量を増やし、損益分岐点を上回るようシェアを獲得することである。シェアを高めて他を排除することで、今は我慢の時期でも、今後利幅を上げてゆくだろう。そうなると、将来、消費者はどこを通じて買うかと言う選択肢が狭まってくる。インターネット販売であれば、どんなに小さい店舗でも、ユニークな商品であれば、大手販売業者が放っておかない。花き業界の小売業者まで含めた我々物流業者も、そして、消費者も、オムニバスのチャネルの販売まで含め、産業革命に次いで、今起きている第二の産業革命の流通部門の実態を見て、冷静に判断をしなければならない。原則はキャッシュアンドキャリーが最も安いことを認識して、どういう物流を使い消費者に届けるか、自分で責任を持ち意思決定していかなければならない。


※ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術)
※キャッシュアンドキャリー:現金で商品を購入し、お客自身が商品を持ち帰る制度のこと。

投稿者 磯村信夫 : 2015年11月23日 15:52

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