大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 相場ばらつく?その影にやる気と仕組の問題あり | トップ | 謙のみ福を受く »

2008年3月31日

桜と花店の価値

年度末の今日、東京地方では冷たい雨が降っている。桜が咲き出し、花のイベントもいくつも開催されている。急ぎ足でそのいくつかを覗くと、東京フォーラムの日本フラワーデザイン大賞は質が高く、時間がいくらあっても足りない。これだけ質の高いフラワーデザインのコンテストは他にない。全体を見てディテールを見る、また全体を見る。少なくても会場に来た人たちはそのように見るわけだから、どうしても渋滞する。この日本フラワーデザイン大賞でNFD花ファッション委員会の2008今年の春・夏の花の色、秋・冬の花の色を展示し、モチーフに基づいたデザインされた花を展示していた。NFDは開かれた花の団体として益々活動をエネルギッシュにしていくことだろう。

假屋崎省吾の世界展は日本橋三越本店の新館のギャラリーで開催されている。彼の作品は例えばカトレアの良さを引き出して、しかも何輪も使って一輪一輪の良さを引き出す。使っている花はもちろん市場に流通している花。それを一枝一輪すべて活かしながら自分の世界を表現している。いや、自分の世界ではなく、花の世界を表現し、それが假屋崎省吾の世界となっている。

さらにもう一つ。幕張メッセで日本フラワー&ガーデンショウが開催され、さすが花の国、千葉県の花や主催の家庭園芸普及協会会員が出展するスペースの質は高い。世界らん展と同じ流れの展示会で、最終日で雨が降るといわれていた日曜日の昼下がりだったせいか、人手のピークは過ぎていた。しかし展示されている花のレベルは大変高く、買いたくなるものばかりであった。

昨年と今年で違う点がある。それは例年だと2月、房総半島が露地のキンセンカやストック、菜の花などを見に来る人たちで賑わう頃、切花を買いはじめる人たちが多くなる。3月に入ってひな祭りが終わる頃、卒業式や彼岸があるのでもう一段切花需要が多くなり量的に売れはじまる。その頃に鉢物が売れはじめ、そして彼岸後苗物が売れはじまる。これが例年のパターンであるが、今年は桜が咲き始めて、切花も鉢物も店頭で本格的に売れはじめた。特に先週は良く売れて、どの花屋さんもてんてこ舞い。4月8日のお釈迦様の日まで忙しさが続いていくと思う。特に年度末に忙しいのは退職をしたり、人事異動があったりして花束需要が多いわけだが、団塊の世代が大量に定年退職というのはわかる。しかしそれだけでなく、今年に入り不振だった店売りまで好調だというのが今年の特徴だ。時代の心持ちというのは行動でわかる。よく言われるようにエモーションはモーションに出るのだ。だとすると、桜の咲いたこの時期にはじめて消費者の誰もが心を開き、暗いニュースが次々伝えられてもそれも受け止め、自分の来し方やこれから歩んでいく先を見つめながら生命感の躍動をキラキラ輝くように咲く花と同化し感じたいと思うのであろう。

ガソリン代が上がり、食費もかさむ。残った自由になるお金で花を買う。今、花を買いたいと思うその欲求をはっきり感じることが出来る。それにしても例年だと桜の美しさに負けて花店の存在価値がかすむのだが、今年は価値が高くなっているのがおもしろい。

投稿者 磯村信夫 : 2008年3月31日 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.