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2008年6月 9日

国内消費をどうするか供給を考える

オランダと連絡を取り合っていると、ガソリン代が1リットルあたり1ユーロ50セントもするという。1ユーロを160円で換算すると、240円だ。為替のマジックだろうが、それにしてもガソリン代は大変高い。日本の生産者と話していると、燃料代や資材の高騰、運賃の値上がりで売上高営業利益率が1.5%?2%落ち込んだという。これを頭に入れて、我々は力売しなければならない。しかし消費者に買ってもらえなければ、花を生産したり流通させたりする意味がないわけだから、プライシングに気をつけながら、生産者がきちんと商売になるようにしたいと思う。

オランダのとある友人とまたアメリカのマイアミの友人と連絡を取り合っていたのは、次のような仮説をどう思うかアドバイスをもらうためである。小生まで含め三人は、このような点でまず意見が一致している。現在の食料品高や石油はじめ鉱物資源の値上がりは、アメリカ・ヨーロッパが必要以上にバイオエタノール燃料の生産振興、補助金支給をしたため。そして次に産油国はドル決済で、ユーロに対しドルが弱くなるとその分ニューヨークやシカゴの先物取引所で石油や他の希少金属類が上がる傾向になっていること。貿易黒字国である中国や日本など、そして石油産油国などの国々はお金がたまり、低金利で過剰流動性を持っているから、投機筋は実需に裏付けされていると言われている石油やコモディティーに資金を向け、高値をあおる格好となっている。これら3つの因果律で意見が一致している。

これを確認した上でディスカッションしたのだが、2人はこの高値相場は2年以内に収束すると、1人は異常に高くならないがOECDが5月29日に発表した通り、食料品は向こう10年で3?4割高くなることは認めざるを得ないと言う。3人が詳しく知りえる、アジア地域、アフリカ地域、南アメリカ地域の花の生産動向を見ると、アフリカではタンザニア・エチオピアの一部、南アメリカではチリ・ブラジルの一部、アジアでは中国の一部を除いて新規の面積拡大は既に止まり、既存のところは縮小を計画したり、現に縮小を余儀なくされたりしているところがいくつもある。

小生から「今後の食料品高で花の生産はここ1?2年はもう増えないと見て良いか」との質問に「増えない」で3者は一致した。国内の生産はというと、天然ガスを使っているオランダやデンマークなど、そして21世紀になってもう一度花の大規模栽培が行なわれてきたカルフォルニア州は生産面積で横ばい。日本は海外と比べてみると一戸あたりの面積が小さく、それぞれの生産者も採算が悪化しており、5?10%出荷量が落ちるのではないかと予測される。

今期の第1四半期である4?6月が前年度と最も違う点は、一輪菊が安いことだ。葬祭の飾り付けの洋風化もあるが、それよりももっと大きいのが白の一輪菊の大産地が燃料高で過去にない出荷パターンとなっており、花き業界人が経験してきた相場見通しが大幅に狂ってしまい、結局景気動向を反映して安値になっている点だ。足元では緊急の出荷調整とまた今後の生産計画段階での国内主力産地の出荷量の適正化を計る以外にないが、原油高が更に進むとなると12月?4月までの菊・バラ・カーネーション・鉢物類の作型が大幅に狂ってくることもリスクとして覚悟しておかなければならない。これは日本の花き事情を知るアメリカ人とオランダ人の意見だが、小生もそう思う。日本の農業者の場合、目標は赤字にならず事業を存続し、後継者を育成することにあり、決して利益を得るために花作りをしている訳ではない。そうなると、今後の対策としてこの考え方はどうだろうか。花作りを4つのカテゴリーに分けて、収入の得方を考えるべきではないかと思う。1つは地元の道の駅やファーマ?ズマーケット、あるいは農協の直売所などで花や苗を販売する生産者。自分で持ち込んで、場所代などで10?15%手数料を払う。次にもう少し広く地元の卸売市場にも出す、あるいは拠点的な直売所に出す生産者。3番目には道州制に基づいた地域の拠点的な市場に出荷する生産者。最後に政令都市や大消費地に出荷していく生産者や産地。この4種類に分けて、出荷先や販売先から逆算して花き生産の有り様を考えなければならないのではないか。現在、日本国内で増えているのは規模の小さい、あるいはお母さん方が取り組んでいる地産地消型の花作りだ。直売所での価格設定が安すぎる場合が多い。裾物だからこの値段でということが多いのは解かる。この値段を見た地域の小売店はもっと安くしなければいけないと安売り競争になってしまっている。また花屋さんが成り立たなくなっている時期や地域もある。しかし今はこの山を越えないと4つの類別の生産者が活躍することが出来ず、日本農業の新しい形も生まれない。産業としての農業、自分で作り自分で消費することの延長線上の農業、それぞれに合った農産物流通にきちんと分けて、農業を再生するまたとないきっかけが今だと、私はアメリカ人とオランダ人とのディスカッションで強く感じた。農業に対する更なる理解を日本国民に促す絶好のチャンスが訪れたので、生産者と販売、それに合わせた流通業者の役割など新たに定義しなおして、農業分野でも21世紀に通用する農業の有り様を再構築していきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 2008年6月 9日 00:00

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