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2010年10月18日

社会インフラとしての卸売市場システム

国税庁から2009年の給与所得者の統計が発表された。総数は2009年は前年よりも82万人減って4,506万人となった(前年比1.8%減)。戦後最大の減り幅なのは団塊の世代がいよいよリタイアし始めたからだ。給与所得は237千円減って406万円となった(5.5%減)。景気とは関係なく15歳から64歳のいわゆる生産年齢(=最多消費年齢)が減っていくわけだから、日本のあらゆる産業分野で国内消費は減っていくことになる。

これを前提に花き業界にいる1人1人が経営をしていかなければならないが、法人需要が減っていくことは日本が今までの同一化社会から価値観の多様化する社会に移っているのでやむを得まい。しかしホームユースにおいては、食べるものと違い、胃袋が小さくなったり少なくなったりするのではなく、むしろ1人当たりの居住空間は広がる。花や緑は育て飾る楽しみがあり、しかもそれが生き物であることから、場の雰囲気を盛り立てる。花や緑は、解かった人にこそ不可欠なものとなっているので消費に不安はない。環境問題も消費を後押しする。


さて、10月15日に市場流通ビジョンを考える会では第9次卸売市場整備計画を前に、会としての提言を鹿野農水大臣に行った。新しい卸売市場ネットワークの時代を迎え、更に卸売市場が社会の進展にともない能力発揮ができるように提言を行った。

核になる考え方は生鮮食料品花き業界は卸売市場ネットワークを通じ、国民に価値、そして需給バランスを反映した価格を提供することによって、これまで以上に国民にこの国に生まれてよかったという豊かさを提供するものだ。消費者である我々一個人は、要る時そのものが価値あるものになる。よく言われるように、曲がったキュウリだろうが、葉がシラサビ病の菊だろうが、要る時消費者は必要になるからそれにお金を払う。しかし消費者は要らない時は価値を見出されていないから質が良くて安くても買わない。

生鮮食料品花き業界においては、生産者や農協、卸売市場、仲卸業、小売業の業者が価値に序列をつけ、需給バランスで相場は変動するが相対的な価値は変動しない。菊を例に取ると、名古屋以東は愛知のスプレー菊が一番の価値ある産地の品物で、他県のスプレー菊は愛知県のものよりも相場が高くなるということはほとんどない。需給バランスは絶えず変動し、価格は変動するが、価値は変動しない。それはあらゆる産地の荷を見て、触って、使っている業者による価値付け、評価があるからだ。目利きによる産地の序列付けは適正で、産地や生産者の力が衰えると、下位に落ちてかつてのブランドもコモディティー化する。

近頃、ファーマーズマーケットや道の駅が繁盛している。これも一つの成熟国家としての農産物流通、あるいは手軽なレジャーという側面からの楽しみの一つである。もちろん安全安心という側面も大変大きいと思う。しかし全部が直売所で生産流通することは出来ないのはいうまでもない。生産側から見ると直売所や地方の市場に出荷する農家。もう少し規模が大きくなると農協出荷も多くなり、地元の中核市場にも出荷する農家。そして更に規模が大きくなると地元中核市場と中央中核市場に出荷する農家。もっとプロ化して、更に中央中核市場と輸出まで考えるようになる農家がある。卸売市場はそのネットワークを通じて、市場外流通業者の需給調整機能も行ってきたが、スケールメリットが利く利益が出せる品目は市場外流通を使い、品揃えや少ししか要らないもの、あるいは余ったときや本当に不足したときなどに卸売市場を使われては経営体力が弱ってしまい、結局社会のインフラとしての役割を果たせなくなる。市場外流通している大量消費品目を市場ネットワークに更に有利に取り込めるような市場のあり方を今回提言した。価値と価格を認定する取引所としての卸売市場。価値を守ってきたのは我々卸売市場を司る業者である。今後はますます生鮮食料品業界・花き業界において素材価値が重要度を増していくだろう。それぞれの用途に応じたオープンな出荷と調達を可能とする卸売市場を活発化するのが第9次卸売市場整備計画であってもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 2010年10月18日 00:00

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