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2010年12月13日

TPP参加の是非で農業政策を考える

新聞や雑誌で、韓国の経済力の強さと、日本のお家芸とも言われていたテレビや自動車も後塵を拝しているニュースがやたらと目に入る。韓国はアメリカとFTAを結んだ。オバマ大統領からすれば、負けが込んでいただけに、NAFTA以来の久々のヒットを必要以上に強調している。

先週私は用事があり行けなかったのだが、オランダ大使館で花の関係者が招かれ、クリスマスパーティーが開催された。そのときオランダ側から報告があったのは、今年の6月、下院の総選挙があり政権が交代したが、しばらく連立を組めないでいた。ようやく内閣が出来たと思ったら、イギリス同様、財政の健全化のため公務員の削減に踏み切り、農業省は経済省と合併し経済農業開発省としたと言う。世界最大の農産物の輸出国はアメリカだが、輸入も多い。輸出額2番目のオランダは輸入を差し引くとNo.1となり、世界最強の農業国である。新品種開発力やユーロ安を梃に、日本にもっと花を買ってもらおうとこの10月、花き業界のトップの人たちが全員そろって日本に来た。オランダの穀物自給率は14%と、日本の32%に比べ大変低い。しかし付加価値の高い果菜類、軟弱野菜類、花きを作って輸出しているので農業は巨額な外貨を稼いでいる。

 さて日本の経済界ではお家芸の工業が決して国際競争力No.1であるというわけではなくなった現在、どうにかFTAやEPA、そしてすべての関税が撤廃され、実質アメリカやオセアニアとのFTAとも言えるTPPをどうしても批准しなければ、少なくとも韓国に後塵を拝し、日本は立ち行かなくなってしまうと危機感を強めている。経産省は所轄官庁でないのに研究会を開き、今の日本農業の競争力が強くなってもらおうと具体的に応援策を考えている。来年の6月、農業改革基本方針が出される。このタイミングで日本のTPP加盟が間に合えばベストだと経済界は考えている。しかし間に合わなければ、11月にアメリカで開かれるAPECの会議のときに、当然会議が行われるわけだから、そこに間に合えばまだどうにかなると考えている。

私は政府民主党の所得補償がヨーロッパで行われている農家の所得補償と全く別物であることを知っている。ヨーロッパの所得補償はデカップリング方式で、作らなくても補償されるから中小零細は日本で言えば米などを作らなくても所得は補償される。よって農地不動産マーケットに土地を売っても良いと働きかけ、農地は規模の経済を活かして農業で利益を出そうと考える農業者が大規模栽培を行うようになる。
バラで言えば日本では坪300本しか切らないアバランチェを、オランダでは坪800本切る。この品種は光と二酸化炭素と温度・湿度を一定幅にしておけば、切花本数が多くなるように品種改良されたバラだ。他の作物も揃いがよく、病虫害に強い、あまり手が掛からないなど、競争力の強い品種が生み出される。
日本ではどうだろうか。米で減反をしている。うまくて生産性の高い品種を使ったら、また減反をしなければならない。政府民主党の現在の所得補償は、実際には価格維持政策に近い。消費が少なくなって、米価が下がっても、農業で食っていっている所得の50%以上が農業からである専業者は2割、そのうちの半分が65歳未満で今後期待されるプロの農家だが、専業者よりも所得の多い兼業者にも同じように所得補償がされると言うのは税金の使われ方としておかしくないだろうか。所得補償はいいが、やる気のある人たちに農地が集まり、生産性を高めて国産競争に打ち勝ってもらえるようにすべきであろう。戦後取ってきた農業政策の誤りをこの半年やそこらで政府民主党が変革できるとは思えない。この点について私は悲観論である。よって花の流通の役割を担っている花市場として生産農家には国際競争力を念頭において質でも量でも価格でも力をつけてもらう具対策を次々に取ってもらえるようにしたい。しかし日本の農業政策は明らかに政治問題であり、JAはTPP絶対反対の自分の立場を、一定のところが来たら、専業農家が農業に打ち込める方針をたがえることなく、条件闘争に持ち込むべきというのが私の希望である。

投稿者 磯村信夫 : 2010年12月13日 00:00

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