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2014年8月 4日

あぶくまカットフラワー、生産開始

 台風12号の大雨で九州・四国ではお盆の花が前進開花しているので早めに買ってもらいたいとする生産者や市場に打撃を与えている。

 ここ2年ほど円安や中東のイスラム原理主義者との問題・ウクライナ問題等から、アメリカでシェールガスが本格的に採掘が始まったというのに、油代が高止まりし、生産者は経費増にあえいでいる。油の要らない時期に出荷して油代を稼ごうと、葬儀や盆に必要とされている白菊を中心に特に九州で生産が増えた。一輪菊の周年産地は、いずれも油の要らない時期に生産を増やしたが、結果として日本中で供給過剰となり安値が続いていた。いよいよ需要期も間近の8月となり、持ちの良い菊や小菊は常温でも一か月近く持つので、早めに仕入れをして定温庫の中でストックしておこうという時期が、今週の8月8日前までである。そこで台風の11号の動きが気になるところだが、天候のことなので仕方がない。早く走り去ってくれて、花店の仕入れの時は悪天候でもお盆の時には店頭が賑わうよう、すっきり晴れて欲しいものだ。

 福島市から一時間弱の所にある川俣町の山木屋地区。先日3日、道の駅川俣でトルコギキョウの産地として有名なあぶくまカットフラワーの出発式が行われた。日中は30度以上あっても、夜は20度以下に下がる。桜の開花も札幌地区と同じ時期だそうだ。また、福島原発被害により避難地域に指定されている。除染も終わり、あぶくまカットフラワーメンバー全員で、今年から以前と変わらぬ自主共撰共販での出荷が始まった。通勤農業をしながら山木屋地区で花を作る。一人もかける事なくもう一度農業をやろうと決意した方たちは、福島の農業者だけでなく、広く花き生産者たちに勇気を与えてくれている。復興庁としても、先陣を切って農業を始めたあぶくまカットフラワーの方たちの後に続いて欲しいと願っているだろう。

 この川俣町でも、小菊を新ふくしま農協花卉部会のススメに従って生産する方たちがいる。2011年、食べるものは風評被害で買い手がつかない物が多く、このままでは農業が出来ない所までいった。しかし、小菊は東北と都内の市場が中心に受け入れ態勢を敷き、それなりにお金にする事が出来た。こうして新ふくしま農協は、岩手や秋田県同様、夏の小菊の日本を代表する産地となっていった。余談だが、今年は前進開花して川俣町の生産者もお盆用のものが出てしまった人もいる。

 花の復興事業はまだまだ続く。あぶくまカットフラワーの方々はその場所に住めない為、パートさん達を雇えないからだ。小さなお子さんのいるご家庭の不安がある。その地域が子供たちへ、また孫たちへと、持続的に発展し続けて行かないと農業の発展は有り得ない。今後、あぶくまカットフラワーの皆様方と、どのようにすれば最も生産歩留まりのよいトルコギキョウを生産出荷出来るのか考えていきたいと思う。まだ数年は家族労働でやって行かざるを得ないだろう。その時、労力配分等からどのようにしていけばいいのか。限られた労働力の中で、ニーズやウォンツにフィットさせる花き生産をしないといけない。お金を取らないといけない。これを一緒に解決するのが、私たち市場の役目である。

投稿者 磯村信夫 : 16:35

2014年6月 2日

花店はB to C良し、B to B横ばい

 第一四半期も残すところ後一か月。消費税が上がって青果や花の売れ具合はどうであったか。
 生鮮品の売り上げの中で、野菜・果物・切花、鉢物を比較してみると、"みかんの花咲く丘"、"リンゴ追分"でヘビーユーザーが戦中派と初期の団塊の世代の人たちが中心の果物が苦戦。
 次いで、ヘビーユーザーの年代が50歳以上の花が振るわなかった。人口が多い団塊の世代も60歳以上になり、団塊ジュニアも40歳以上となって、健康をいよいよ考えるようになってきた。なので、果菜類・軟弱野菜は消費税率上げでも然したる影響は受けていない。

 では、花の小売店では、どのような状況だろうか。全国の仲卸業者で花束加工をする人が多く、彼らはもともと出身母体が花の専門店だったので、花のことを良く知っている。そのようなわけで、納品先の量販店の花は良く売れている。
 ただし、ロス率ばかり気にしているスーパーは、持ちの良い仏様の花しか置かない売り場となり、つまらなくなってお客さんに相手にされなくなっているところがある。

 専門店は二極化して来ていて立地条件に関わらず、やる気のある専門店は売れているが、やる気のない専門店は、淘汰されていくと思われる。縮小している小売店の数が少なからずあるので、卸売市場としてゾッとしているのだ。頑張っている花の専門店はいずれも前年より10%は良い。B to Cの流れは(ビジネスから一般消費者)は期待できるのだ。

 花店でも、B to Bの事業は決して楽観視出来ない。B to Bとは結婚式、披露宴、葬儀の花などを業者に納めているところだ。競争は益々激しくなっており、今までよりもバックマージンを余分に要求される花店も出てきた。花の売れ具合は、B to Cは上昇、B to Bは横ばい。
 ただし、業界全体からしたら、一般小売店がスーパーマーケットの花売り場によって淘汰される局面にあるので、ちょうど地震の構造のように花き業界のプレートは下へ潜り込んでいる。エスカレーターで言えば、下りのマイナス5から10%位のものに乗っていると言えるだろう。
 このような中、通称"フラワー振興法"が国会を通って予算付けがなされる。勿論、国の為にも花き消費を、花き生産を、業界を挙げて盛り上げて頑張るが、実際に効いてきたなと実感できるのは、2016年の後半から2017年に入って、今から3年くらい経ってからだろうと思われる。それまで、ふるい落とされないようにしながら経営をして行かなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 12:58

2014年5月 5日

世間では倒産件数が少なくなってきたが・・

 5月11日(日)は母の日。和歌山県農殿(経済連に相当する)、JA紀州殿が中心に行っている「母の日参りキャンペーン」(亡くなったお母さんの為に母の日にお墓参りをする)でスターチスや菊の動きが良くなって来た。潜在需要を顕在化できつつあるのは有難い。

 さて、金融円滑化法の期限が2013年3月31日で切れて1年少々経つ。その間、大田市場の仲卸が破産申請をし、1件の地方卸売市場が同様に破産申請をした。それ以外にも、経営が大変という噂のあるところは少なくなく、20世紀と変わらない仕事のやり方をしているところは、花も当然のように篩に掛けられ落とされていく。
 東京の場合、中央卸売市場には仲卸がいて仲卸の競争力=卸の競争力であるが、卸は仲卸とどのような形で協業を図り、大田市場なら大田市場としての他市場に対する競争力をどう図っていくかを検討して行かなければならない。話は戻るが、資金繰りに悩んでいる花き業界人は多い。それは、91年バブル経済が崩壊した後も花き業界は順調に伸びていて、"八百屋さんのポケットの法則(※)"を守らずとも、どうにか仕事をやって来れたからだ。
 
 21世紀に入り、銀行の金利が0になるくらい各企業はお金を返済に回し、内部留保に努めてきたのだが、花き業界はピークが20世紀末だったので、まだまだ"八百屋さんのポケットの法則"を守らずとも事業運営が出来たのだ。
 資金繰りに困った小売店でこういう人もいる。市場で仕入れる場所が卸・仲卸と2つあるから、仕入代金を卸で溜めて取引ストップされた場合に仲卸で購入して卸に支払う。卸でまた溜めて仲卸で支払う。市場と市場との間で、行ったり来たりしながら溜め込む人もいる。いつの時代もこのような人はいるが、現代社会においてカードローンを組んだりする個人はいても、事業を営む者には現在ほとんど見られなくなった。経営者失格はほとんど退場させられたのである。しかし花き業界にはまだいたということである。

 出荷者と卸との取引は勿論のこと、卸と仲卸、仲卸と小売店、運送店との取引も同様である。取引先と決算書の交換による相互信頼の上に契約を結んで取引しよう。
 気配では、いま少し業界では倒産が増えそうである。

 (※)"八百屋さんのポケットの法則"
 なぜ八百屋さんの前掛けには2つのポケットが付いているのかという話。公私混合させない為、一つは売った代金で、預かり物の仕入れた代金で市場に払うお金を入れるポケット。
 もう一つは、アルバイト代や自分の給料、お店の家賃などに使えるお店のお金。しかし、まだ利益ではない。利益を含むお金を入れるポケット。売上げを二つに分けること。

投稿者 磯村信夫 : 12:15

2014年4月28日

農業改革を花のサイドから見る

 TPP交渉が暗礁に乗り上げ、継続案件にはなっているものの、日本とアメリカ双方の意見の隔たりは大きいものがある。日本の場合は、既に農産物の関税など、自民党が昨年の選挙で約束した線ギリギリまで譲歩しているが、アメリカ側はロビー活動が大変強く、現政権が一定の譲歩をし得る権限を有していないので、交渉は続けるが、今後もなかなか難しい問題となる。

 ヨーロッパでは、関税を上げ、一定水準上げたままにしておき、消費者に高いものを購入してもらい、生産者の所得を確保する政策から、関税を順次下げていき、消費者に良くて安いものを購入できるようにするが、生産者には所得補償をする方式を取っている。税金を払う国民と農業を行う生産者双方の気持ちとメリットを考慮する必要がある。

 ここで触れておきたいのは、なぜアメリカがこのように日本から見ると硬直的になっているかである。イギリスでマグナ・カルタが行われ、人民主権の民主選挙で民意が政治に反映されるようになった。
 しかし、新しい問題が起きたり、状況が変わったりすると、国会で意見を述べることができるのは議員個人となる。それでは民意が必ずしも反映されるとは限らないと、民意を反映させるロビー活動を正式な手段として認めることをマグナ・カルタでうたっている。このようにして、ベトナム戦争でアメリカと共に戦った韓国は、戦後移民をアメリカ政府に認められ、カリフォルニア州など一部の場所に纏まって住んでいるが、そういった市などで韓国系アメリカ人によって、ロビー活動が行われ、日本人からすると反日的な像が建てられていることがある。  
 このように韓国や中国は、歴史問題をアメリカ国内のロビー活動で積極的にしかも巧妙に行っていることは、昨今の報道で読者の皆さんもご存じの通りである。アメリカの農業や自動車業界の強烈なロビー活動の中でのTPPの折衝であるが、花き卸売業者として現在起きている農業改革について述べると、もう既に福田赳夫元総理の時より輸入関税0の花きは、生産者の力は輸入品に負けないだけ大変強かった。今はエネルギーコストが上がって大変だが、まだ強い。

 しかし、花き業界全体のムードは、単価が下がったここ15年、内向き・下向き・後ろ向きになり、価格の下落率を少しでも少なくするために多品種、小ロット生産販売になって、生産サイドなら、売れ筋の品種や花に集中すべきであった。今から思うと、改善ではなく改悪の方向に来てしまったのは、結局、業者間で互いのせいにして、消費者に購入してもらう立場の者同士として連帯感が少なかったためである。
 それを通称「2014年フラワー振興法」を議員立法で国会に通していただき、改悪したり手つかずの問題事項を業界を挙げて国ベース、又は県ベースで改善していく。貿易収支が示す通り、今産油国にお金が回っている。国内で循環しないので、巡り巡ってというわけには行かない。そうなると、合理化しかない。暖房やヒートポンプをどのように使い、温度調節をするか。除湿をするか。
 運賃が高騰する中、どのように売上高運賃比率を下げ、手取りを多くするか。花き産地の中のハブ機能、積載効率の良い統一された段ボールや容器の使用など、思い切ってロジスティックまで管理して行かなければならない。

 農業改革において、花の生産流通が更に国内外の消費者に安定して購入してもらえるような生産・流通を各所に繋げて行く。急な変化を避けつつ、目に見える成果を出しながら一歩一歩上がって行く。それがTPPをきっかけに議論されている農業改革における花版の方向性である。

 大田花きで働いたのち、農家である実家へ戻り、現在スプレー菊を作っている生産者に、"企業が農業をやるよりも、農家が企業家精神を活かし農場を経営して行くことこそ、真の農業改革である"と伝え、まずは5000坪を目指して取り組むよう目標を共有している。確実に彼は実行してくれている。花の農業改革は地域のJAや普及所、卸売市場を友として確実に行われていく。

    投稿者 磯村信夫 : 16:44

    2014年4月21日

    ニューノーマル消費

     今日の日本経済新聞で、4月から消費税が8%に上がった後、今迄通りに支出する人は世論調査で全体の3分の2近くいることを知ってほっとしているが、花の商いは過去5年間の中で単価水準が下から数えた方が早いくらいのところで取引量・金額ともに低迷している。これからゴールデンウィーク、母の日とガーデニングやギフト用の花を中心に、活気を取り戻したいところだ。

     近年、燃費の良い車が多くなり、ガソリンを入れに行く回数が減ったが、先日ガソリンスタンドに行った際にスタンドの状況はどうか聞いてみると、確かに経営は大変そうだが、新たにレンタカー事業を行い健全経営しているという。ガソリンスタンドのレンタカー事業は、"ニューノーマル消費"に応えたものだ。

     ニューノーマル消費とは、2011年にニューヨークのウォール街で、マネー資本主義に対してデモがあったことを記憶されている方も多いと思うが、近年の環境変化は新たなお金に換えられない価値観や消費行動を生み出した。それは、2012年頃から特に目立つようになってきた。前年に日本は3.11があったのではっきりと分かる。持続可能なライフスタイルは、地方に新しい雇用を生み出している。勿論、観光業の復活も地方の求人においては大きな要因だが、地産地消的な動きは今日の日経新聞の有効求人倍率の記事にも表れている。日本の各地で頑張っているのだ。

     園芸作物には、小売りの現場で(生産者のことや原産地がわかる)"顔の見える表記"がされており、安全安心だけでなく○○県の繋がりの消費で国産品を選んで購入する人が多い。これを花束やカット野菜などにもしっかりと表記してもらいたい。特に切り花バラに対しては、咲き切るかどうか品定めをしたいので、是非とも原産地表示をお願いしたい。ヨーロッパでは、カーボンフットプリントや、この花を買うと現地の子供たちの給食費として寄付されます等のフェアートレードのメッセージを添えている。別の角度からのニューノーマル消費だ。

     大田市場でも自動販売機の収入は場内花壇の植栽費として、使っていることを自販機に明示している。このような社会が良くなることを考えた投資・消費スタイルが、新しい良識ある消費スタイルとして、人々の中に定着してきている。私の住んでいる大森の町がそうだ。ご家族で頑張っている飲食店が仮に値段が少し高くても、応援したいと思ってそういうお店に行くことが多い。地元、家族の繋がり、地域がより良くなるように。
     そうなると、日本全国で江戸期の藩の時代に培われた伝統や花文化が継承出来たり、場合によっては復活できる可能性がある。農家と小売店が地元の市場と一緒になって、一緒に農業の6次産業化をしていくことになる。一方で、グローバルエコノミーの中で生きていく。効率性と利便性の追求だ。生産者の立場でも消費者の立場でも、である。
     
     そしてもう一方に、ニューノーマルの価値観で生産し、消費する。この2つの使い分けのポイントだが、幸せが一つの基準となるので、売上げやら利益では推し量れないものとなる。ただ、食べて行かなくてはならないので、収支合わせが大変だ。そこだけがポイントとなるのでしっかりと行っていくことが大切だ。
    仕事の立場にたった時、得意な手立てが2つのうちどちらかに偏ることはあるだろうが、大きな企業であろうがニューノーマル消費を思い、小さな企業であれば、長期的且つ効率的に生き残れる方法でニューノーマル消費に向けていくことが必要だ。

     世界の中でも地方の文化に独特のものがあるのが日本だ。外国の方が来ると日本各所の多様な文化に驚く。この多様な文化のそれぞれの発展の時が来ていると言って良い。よく生産者と話すと、農家が生きて行く上でそこまでお金はかからないという。すなわち、ニューノーマル消費を行っているのだ。もう一度、自分の地域の素晴らしさを再確認し、それを売り物に農業、仕事、ボランティアまで含め、働く場を地元地域の維持発展のために作ってもらいたい。これが、差別のない花から学んだことである。

    投稿者 磯村信夫 : 12:51

    2014年1月13日

    2つのインパクト

     今月末の旧正月で需要が高まっているのであろう。アジア諸国からのラン、菊、カーネーション、バラ、ユリ、葉物の輸入品が少なくなってきた。今年は、日本からもアジア諸国へ向けて輸出が洋ラン鉢、切花とも一定量あるだろうと期待する。
     
     さて、本年日本経済に及ぼす大きな影響は、消費税アップとTPP問題である。消費税アップは、少子高齢化で今まで日本を支えてきてくれた老人に対して社会がお世話するのは、当たり前だと思われるので税負担は止むなしとするところだ。これからも税率が上がっていくことが想定されるので、業者はしっかりと転嫁出来るように、また表示方式は外税方式にして行くべきだ。来年度の第1四半期は消費が鈍ることが想定されているが、品目も期間も日本経済に与える影響は限定的なものになると言って良い。
     
     TPP問題は、日本の国民一人当たりの年間所得は4万ドル以上であるので、安い人件費の国で作られた品物と真正面からぶつかってくる。そういう状況で競争するとなると、少子高齢化の中で、IT等を使いシステム化、ロボット化する等、合理化・省力化が欠かせない。また、普通の産業でも新しいやり方をする、新しい物を作る。或いは文化的なもの、芸術文化を創っていく。そして、海外から観光客に来てもらうべく、日本をフランス並の観光立国にする。
     
     せっかく高齢化で最先端を走っているので、四苦(生・老・病・死)に関わる産業を更に深め拡大し、そのソフトを輸出する。また、優秀な人を招くことが必要となる。言いたいことは、今までの内向き、後ろ向き、下向きではいけないということだ。従来の無駄なこと、不合理なことや日本人の価値観でフェアではないことを改善し、国として生きていくということだ。
     
     人に言うことを聞かせる為には、武力や軍事力、経済力、人徳や文化の力、この3つを兼ね備えていかないと人として国として未来を確実なものには出来ない。花き産業も同様で、国や地方自治体の援助がなくても他産業に打ち勝っていくだけの強い生産力と販売力、経済基盤の力、そして文化の力が必要だ。それらの力をつけていくのが今年だ。各自、実行力、資金、人徳を心掛けて行こうではないか。

    投稿者 磯村信夫 : 15:47

    2013年11月25日

    再出発は人材の育成から

     足元の花き業界の景気は、10月11月と上半期と比べてパッとしない。流通業者が言うには、「値段が高いので売れない」というのだ。市場としては、生産量が増えていないのに、消費者の求めに応じて安く売るというのは、生産を更に少なくしてしまうことになる。
     なので、デフレをストップしてなぜこの価格なのかを消費者に説明したり、アレンジやデザインや鉢物の鉢そのものの色合いをより見栄えの良いものにしたりして、納得価格で提供するしかない。
     勤労感謝の日が終わり、ようやくクリスマスの装いをする時になった。クリスマス、お歳暮仕事の需要期のここで販売するためには、消費が二極化する中でこれ以上安くしないと売れないというのでは困る。そこで、小売店の人の力によってコストパフォーマンスを上げていくのだ。
     
     日本のあらゆる業界では、1991年のバブル経済の崩壊で新入社員の数を絞ってきた。その間花き業界は成長が続いたので、1999年まで優秀な人材を迎え入れることが出来た。
     種苗から生産、市場(卸、仲卸)、小売の各分野において、今では中堅になっている優秀な社員の人たちが他業界に比べて多数いる。
     しかし、21世紀に入ってここ10年、単価の下落が示すとおり、デフレでとにかく出血を止めて出さないことばかりに腐心をしてきた。そこで、今問題になっているのが、"花き業界を反転させよう"としても人の力がやや足りないということだ。特に第一線の若い人たちの知識とスキルが不足している。
     1960年以前に生まれた人と、それ以降に生まれた人たちとを違う日本人と分ける考え方がある。名前に関しては末尾に「~男」や「~子」と付く人は1960年以降少数になり、小学校の机も一人机になった。子供たちはお稽古で忙しく、親子で夕飯の時間が異なることも一般的になってきた。この傾向は1970年以降から更に強くなっているのだ。

     花は日本と西洋の文化、そして生活文化の上に消費がある。関心はCO2問題など環境問題の上にもある。こうなると、文化やら社会問題の知識と認識、そして花を育て、より美しく魅せる為の見せ方の技術が欠かせない。その上にマーケティングが身に付いていないと消費者の先に行くことは出来ない。こういった人材育成を読者の皆さんが属している組織でやってもらいたいということだ。"On the job training"(企業内で行われる教育訓練の手法の一つ)は当たり前、大切なことは社内で或いは花き部会でカリキュラムを作成し実行してもらいたい。

     先日、花キューピットの幹部の方と市場協会の執行役が意見交換をしたが、その際JFTD学園長が成人教育ならぬ、既に仕事に就かれている人を対象にした「出前授業」をするといった計画を聞き大変素晴らしいと思った。
     
     タダならいくらでも売れる。生産者のことを考えずに安ければいくらでも売れる。しかし、我々は生産者に適正な対価をお渡しし、花き生産をもっと活発にしてもらわなければならない。
     その為には、文化に根ざした販売をするための"知識"と"技術"が必要だ。それを勉強するのである。早速、皆さんの組織で取り組んでもらいたい。

    投稿者 磯村信夫 : 12:04

    2013年10月28日

    日本通のアメリカ人が見た花の消費

     先日、オランダ系アメリカ人の友人と日本経済と花のパイが20年前と一緒だという話をした。彼は、1999年アメリカのマイアミでインターネット花店「フラワーファーム」を立ち上げ、その後ライバルのサンディエゴの「プロフラワーズ」と合併し、そこの社長をしている世界最大のインターネット花店だ。1ドル100円にして、現在450億円強の取扱金額がある。

    彼は大の日本通でマレーシア、タイに洋蘭の仕入れに行く時に必ず立ち寄る。話し合った内容は、当然アベノミクスのことだ。私から「日本の現在の予算のうち、税収からは約40兆、国債等の借り替えで40兆。必要の予算の半分も税収で補えていない」このように言うと、彼は「だから私は1995年位からいつも言っているだろう。もっと金融を緩和して、デフレを止めてインフレ目標を作り、経済を成長させなければならない。ヨーロッパの主要先進国もイギリスを除いて少子高齢化だ。イタリアは日本よりもっと生まれてくる子供の数が少ない。しかし、ヨーロッパの平均でこの20年間GDPは2倍になっている。日本もまともな経済政策を行えば、GDPは20年間で2倍になっていただろう。今の赤字国債の借り換えなどなかった筈だ」というのだ。

    私は今アベノミクスで最後のチャンスだと思っている。日本は綺麗に儲けて綺麗に使う。経済活動に倫理性、精神性を求めながらやって行こうとしているのだ。日本を取り戻すということは、経済の分野においても倫理性を重んじて経済活動をやっていく。石田梅岩や二宮尊徳などの「日本の仕事道」を作ってきた人たちの経済を取り戻そうというのだ。

     彼は、コロンビア大学のMBA出身なので、日本文学者のドナルド・キーン氏が日本に越してきて、自分の死に場所を日本に定めたことやアップル社のスティーブ・ジョブズ氏が時間さえあれば日本に座禅を組みに来ていたことをよく知っていた。なので、彼も日本が好きなのだが、日本は確実に良い方に変わってきていることを言っていた。

    それは1970年代生まれの団塊ジュニアの人たちが顔を上げて前を真っ直ぐ見て仕事をしているというのだ。彼は私と同じ年で、日本では団塊の世代が目をギラギラさせて仕事に打ち込んでいたことを知っている。しかし、それとは違う、もっと清々しいが日本のことを想っている人たちの生き様を彼は私を説得するように伝えた。学校を卒業し、社会に出て暫く右肩下がりだった70年代生まれも上昇志向というのとは異なるが、成熟社会を受け入れながら日本人として難しい国際関係の中でしっかり生きて行けるというのだ。

    又、日本の伝統を守りつつ確固たる足取りで生きていけるのではないかと彼は感じている。私からすると花で言えば華道、華道をベースにしたフラワーアレンジメントなど、日本人ならではの花の表現など更に発展させるべきだと考えているが、現実は少し壁があるように感じている。

    しかし、彼はそうではないと言う。2011年の3.11の時「今バルセロナの飛行場にいるが、日本は大丈夫か。もし、花の供給が少なくなるようであれば何でも言ってくれ」と早速電話が入った。彼は日本の再生は必ず成し遂げられると感じており、私は勇気をもらったようで、花の消費もGDP同様、もう一度成長を軌道に戻して行っている気がするし、必ずそうさせたいと思った。
     
     自信を持って、日本人として日本の伝統美の上に花の消費を拡大しよう。2月14日のフラワーバレンタインも古くは奈良時代の梅や、戦後の母の日のカーネーションのように舶来のものを取り入れて自分のものとして吸収している日本の伝統にのっとりフラワーバレンタインをやって行く。こういう気持ちで、現在日本の花き業界はある。

    投稿者 磯村信夫 : 16:51

    2013年9月23日

    マリッジペナルティーと事実婚

     大森近辺でお墓参りが活発に行われているかどうか見る場所が2つある。1つは、日蓮聖人が亡くなられた池上本門寺。もう一つは、鈴ケ森から品川までの旧東海道にずっとあるお寺にお墓参りをする人たちの数や花の大きさ。
     
     昨日は旧東海道を歩いて見てきたが、よく人が出ていたし、アベノミクスで花束は大きい。これで月曜日も堅調な相場が展開されると思った。
     東京・横浜は7月盆だから8月盆のところと違い、9月のお彼岸はひと月抜けたので、家族でお墓参りに行く。庭がないからお墓参りに行くとなると花屋さんで購入する。なので、9月のお彼岸は他府県よりも需要が高い。農業新聞で各市場の入荷量を見ると、いかに東京地区が秋の彼岸に需要が多いか一目瞭然だ。今年は天候に恵まれ、18号の台風の被害が残念であったが、生産者良し小売店良しの彼岸であった。
     
     今日はもう一つ、今後の結婚式の花と家庭需要の花を考えてみたい。日本は先進国の中で、結婚をすると会社を辞める女性の比率が高い唯一の国である。子育てなどで仕事を離れ、子供に手が掛からなくなってからパートやアルバイトなど外で働き家計の足しにする。だが、これでは一家の所得が減り、日本全体で見たら生産年齢の人口が減っているのだから、やはり同じ会社に勤め、産休・育児休暇を取り、社会で子供を育てる。
     まずは保育園の完備をするなど、生産人口減を防いで一家の所得を上げて行く主人公に既婚の働く女性がなること。こういった女性のライフスタイルに今日本全体が着目し期待しているところだ。

     女性が働くようになると、ヨーロッパで言われているマリッジペナルティーというのが起こってくる。一家で所得が上がるので、所得税は累進性だから余分に税金を払わなければならないということになる。
     マリッジペナルティーから法的に結婚をしないで事実婚で家族生活をしている人たちがフランス・北ヨーロッパでは大変多く、ごく普通のことである。私の知っているフランス人・オランダ人・スウェーデン人・ノルウェー人・デンマーク人のうち、4人は事実婚で、1人は結婚したが、別れて今は事実婚で彼女との間には子供もいる。
     
     日本でも8月28日、最高裁は婚外子の相続格差は法の下の平等を保障する憲法に違反する。との決定を出し9月4日に関係者に申し渡した。谷垣法務大臣はそれを受けて、関係法令の整備を行う準備を始めた。
     ヨーロッパやアメリカで起きてから、だいたい10年くらいすると日本もそんな風になっていくのが通例だったが、日本では結婚だけは明治時代からの慣習で法的に正規で結婚することが続いていた。
     東京では、結婚式・披露宴を行う人が半分、式を行わない人が半分と言われている。結婚する組数が減っても一組あたりの結婚式や披露宴の額が増えていた。なので、大安が週末にあると洋花の相場が上がるということがあった。
     
     そして、式を挙げない人も法的に婚姻届は提出しているのである。婚外子が相続などで差がつかないとなると、家族のありようが法的にフランスや北ヨーロッパのように近づいていくことになる可能性がある。こうなると、どのくらいの人たちが今の結婚式・披露宴の形を今度とも続けていくだろうか。
     
     高齢化の先頭をいく日本は、葬祭に関して東京で大まかに言って、通常の式が約3分の1、家族葬が3分の1、直葬が3分の1となっている。
     こうなると、ここ10年以内におそらく東京オリンピックの頃には、普通の結婚式が全体の3分の1、婚姻届を出して親戚や友人とレストランで食事をする人が3分の1、同棲とは違う事実婚を希望し、何もしない人が3分の1程になっていくのではないか。結婚式・披露宴の花の総需要は組数の減り具合よりも減るので、業者は寡占化する。花店はどのウェディング業者と組むかによって運命は決まる。
     
     また、女性がずっと働く中で、マリッジペナルティーを下げながら生活するとなると、子供が生まれてその子を差別することなく日本社会が受け入れて一緒に子育てしてくれるだろう。そうなると、自由になるお金はあるので、特に女性にとって楽しい生活の小道具としての普段の花の需要は高まっていく。
     
     花好きの人は気に入った花を一本一本購入し、自分で活けたり、ガーデニングをするだろう。だが、大半の人は忙しいので、出来合いのブーケや鉢物を買うだろう。この出来合いの比率がますます高まっていくのである。最初から花束やアレンジメントになったものを買うので、販売者は素材がどこの産地でどんな名前なのかを説明しなければならない。
     
     また、一週間持つ切花、ひと月はもつ鉢物、これが花持ちの条件になってくる。こういう家族の在り様の変化の中、今後専門店のフローリストはギフト以外にどう家庭需要を開発していくか。次の競争の現場はテーブルワインと同じ価格帯のアレンジした「普段の花」だ。ここに専門店の繁栄のキーがあるように思える。

    投稿者 磯村信夫 : 16:22

    2013年9月 9日

    上手くやるにはやることとやらないことを取捨選択すること

     先週7日の土曜日に、花の卸をしている人たちと"ブエノスアイレスで東京が2020年のオリンピックに落選した時、安倍首相始め、リーダーたちがどういうコメントをするかによって、景気が悪くなる懸念がある。"と話し合っていた。
     出来ることは何でもやろうという意気込みでここまで来たので、東京オリンピックの招致成功は、今年度の設備投資や消費意欲の活発化を更に後押しするだろうし、消費税値上げによる需要の減退、それによる腰折れのリスクはかなり少なくなったと見て良いだろう。
     
     この9月の需要期も現在のところ、小菊が前進開花していて、鮮度保持定温庫がある大手の買参人を中心に購入して貰っているが、当然セリ場にも多く出回る。そんなことから、相場が弱含みで推移するとなると、今年の夏の天気で作柄が大変悪く品質を考慮すれば、絶対量は10%以上少ないというのに、結局間際になって品質の悪いものが高値となってしまうのは消費者に迷惑をかけることなので避けたいところ。出来るだけ情報を共有化し、情報で相場上げ下げの幅を小さくしようと考えている。
     この課題については、今後生産協会と市場協会が情報交換会をして少しでも相場形成に役立てれば良いと考えている。
     なぜ生産協会かというと、21世紀になってこの10年余り続いた国内の花の生産減は輸入花で補うという供給構造が崩れたからだ。
     それは、このコラムでも記載している通り、2013年3月、8月の小菊とスプレー菊の相場を見てもらえば、いかに輸入商の人たちが損を出したかがわかる。下り坂になったとき、大手も落ちるが、中堅以下の落ち幅は大きい。
     良いときには誰でも良くなるが、比率で言えば中堅以下の会社の業績がどんと良くなる。円安に触れて花の輸入商の損益分岐点は上った。今後は国内景気がもっと良くなって単価を上げる努力が実るまで待つしかない。
     こういう状況だから、まず市場協会と生産協会が物日に向けて国内の生産状況と需要動向を話し合い、業界全体にその情報が伝われば良いと考えている。
     
     21世紀に入って単価が落ち、経費が上がって利益が少なくなった。今まで一人良かった輸入会社も皆良いとは言えなくなった。こうなると、売上げと利益を決めるのは3つの要素だから、景気はプラス方向、業界は今のところ利が薄い状況、最後に戦略。これが各自の持ち味で、この戦略でボトムラインをプラスにして消費税の値上げに備える。ここに今、成長への勘所がある。

    投稿者 磯村信夫 : 15:50

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