大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

2013年8月19日

先進国の農業の取るべき道

 農業先進国は果菜類・軟弱野菜・花・畜産・一部果物に特化するべきである。
知識集約的で安全で新鮮な付加価値の高いものを作り出す農業は日本農業のお家芸だ。

 今日の日本経済新聞に北海道信用農業協同組合連合会、通称JA北海道信連が生産農家の格付けを6段階区分で行い、優秀な農家への囲い込みを図りたいとした旨の記事があった。
 今までのJA信連は、内々で格付けのようなものはあっただろうが、成績の良い農家も悪い農家も同じ貸出利率でお金を貸していると聞いていた。
 お金を貸し出すことはハイリスクなので、当然経営体の格付けと金利差があって然るべきだと思うが、とにかく再起してほしい、頑張って農業を続けてほしいという温情主義から貸し倒れることもあった。これが普通になったというべきだろう。農業は農場経営という一つの事業であるからだ。
 花き卸売市場協会でも、今期上期中に経営診断マニュアルを作成し、早速自己点検をし、問題や将来への不安があった場合、市場協会のコンサルタントに相談してもらうことにしている。

 日本農業がクローズアップされているが、例え小面積でも良いものを作ればやっていける日本農業にしなければならない。
 私自身の考えは、EUのように所得保障をし輸入関税率を下げ、農産物も国際的な価格水準となり、消費者負担を軽減し、高級品だけでなく中級品以下も価格が下がる訳だから、お惣菜や加工食品、加工花束も優先的にGM品種ではない新鮮な国産を使い、日本の農業が持続的に発展するようにする。
 そして、予定利益を上回った分はボーナスとして生産者に支給される。こういったEU諸国が行っている農業政策にしてもらいたいと考えている。
 
 さて、消費税増税まで含め、農業界・花き業界において、変化が起ころうとしている。まず現在のルールの中で力いっぱい努力し安定して消費者に花を購入してもらえるよう流通させる。
 続いて、更に力を入れていくべきことは、生鮮食料品花き業界は、種苗から小売店まで一丸となって安全・安心を絶対条件に農業生産生鮮物流通でEU並みの諸条件が獲得出来るように政治的活動をしていくことが必要である。この点がこの期に特に重点的に行うことである。

投稿者 磯村信夫 : 10:16

2013年8月12日

今年の8月盆市況

10日(土)に日本橋三越で開催されている「假屋崎省吾の世界展」と江戸東京博物館で特別展示されている「花開く江戸の園芸」を観にいった。お昼過ぎの一番暑い盛りだというのに、人を掻き分け見るようで、花や園芸文化に対する日本人の関心の強さを垣間見たようで、花卉業界で働く私としては大変嬉しく思った。
 今年は12日でお盆の市が終わる。今年の8月盆の市況の傾向が出たので、9月のお彼岸に向けての出荷や仕入計画などに参考にして頂ければと思う。
傾向は次の通り

(1)前進開花に高値なし
小菊が前進しており、作付けも多かった。
北東北の一部遅れていたところもあったので、予約相対を組んでいる人に前倒し納品をさせてもらった市場も多く、前進開花だから少なくなるのなら、前にとった人も我慢しようが、少なくなるどころか、むしろ少し増えてきてしまった為に、小菊は運賃も出ないほどの安値に泣いた産地もあった。3月の彼岸に次いで本年2回目である。

(2)スプレー菊は施設の産地がほとんどなので、国産は暑さで遅れ気味であった。
マレーシアを中心にした輸入のスプレー菊も円安と現地の人件費高や飛行機運賃高で昨年より、少なくても2割高く売れないと輸入業者は丸っきり利益が出ない。
こんなことからスプレー菊は当初、市況は順調であった。しかし、昨年の12月から台風で小菊の大産地が壊滅的な打撃を受けた為スプレー菊を小菊と同様に仏花に使う業者が日本全国で多くなった。その後、小菊が量的に出回るとともに、注文で手当てした業者はせりでスプレー菊の相場が下がるので嫌気がさしてかえって手を出しにくくなり、スプレー菊の相場がさらに下がった。本年3月の相場と同様、小菊とスプレー菊が一緒になって全体の相場を押し下げる傾向となった
露地ものが多い8月期であるのでリンドウのように開花遅れで相場が高いもの、同じ紫でチースのように施設もので前進開花して需要期になくなってしまったものもあり、3月のように全体相場がダメというわけではないが、小菊とスプレー菊が全体相場を押し下げているというのは、8月盆でも3月同様の結果であった。

(3)輸入白菊があるので一輪白はパッとしない相場が続いた。
日本の夏は暑いので高温障害で開花が遅れる。
そこで足りない、足りないで来て、堅調相場が続くというのが周年生産の白菊の8月盆の市況パターンであったが、これが崩れた。中国産に加え韓国産が市場によって出回っていることが大きい。下位等級品は輸入品で、という加工業者のニーズがそうさせたのであろう。さらに一輪菊は物日に一時的に量が必要になるのは日本だけで、日本の相場が下がると他の国へ持っていきようがない。スプレー菊とは違う。

(4)受注を中心にした輸入商社は3月のように大損を出さずに済んだ。
しかし、見込みで輸入した商社や見込み予約相対をした市場や仲卸はいずれも3月同様の損失を出したと思われる。
大手小売店や花束加工業者は、予約相対で結果として高いものを仕入れて儲け損なったが中堅輸入商社や8月盆は大丈夫、とタカをくくって見込み発注をした卸や仲卸は3月同様に手痛い損をこうむった。こうなると9月は損しないようにと、間際の仕入が多くなる。それでは輸入商社も国内産地もやってられない。
もう一度全国レベルで今年の小菊・スプレー菊・一輪菊の国内生産量はどうなっているのか?など生産状況の把握を正確にしていくことが必要だ。かっては、市場協会へのアンケートを踏まえ、国の花き室がそのへんの数字を把握していた。それができなくって、推測で相場を動かすようになっている。
3月の彼岸、8月盆と仏花関係が過去5年続いた堅調相場から「不確実化」へ動いている。こういう時こそ、正しい情報を共有していくことが必要だ。さしあたり9月のお彼岸は、3分の1~半分が予約相対で抑えておくというのが買い手の偽ざる気持ちであろう。

(5)1年間で270万人生まれた団塊の世代はあと3年で皆65歳以上になり、これまでのように盆に田舎に帰って墓参りをする人も少なくなっていく。65歳定年になっているが、年金がこれからいつから出るのかによって、いつまで働くかが決まる。
8月の盆や春の彼岸、あるいは、ゴールデンウィークなどにリタイアを前に第二の人生を考え、ご先祖様に報告する為に親父やお袋の眠っている墓にお参りを重ねてきた。分家して都会に出てきている次男、三男、あるいはお嫁に行った娘さんなどでは、中期高齢者になると急に墓参りの頻度は法事のときなどに限られてくる。その傾向が団塊の世代の初めの人が65歳以上になって、総量からすると既に盆需要減となって現れてきているのだ。
だから今から3年~5年前位までみたいに仏花が売れるという訳ではない。毎月一日、十五日の花もそうだ。先祖崇拝の日本の信仰や風習を守っていきたいとは思うが、仏花需要は確実に少なくなる。それを手軽なギフト需要と季節の中の家庭需要に代えていく必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 16:51

2013年8月 5日

観光では地元のものを賞味してもらう

 僕が良く行くところがそうなのかわからないが、夏休みになってから外国の人や地方の人が東京に沢山来ているように思う。

 昨日も用事があり新宿伊勢丹に行ったが、本当に外国の人や地方の富裕層が多く、本物のデパートとは、買回り品を求める「お買い場」であることを感じさせる。
 店員は親切で商品のことを良く知っており、プロ意識の高さはさすがで、海外からわざわざ伊勢丹を目的に来日することが少なくない、というデパートである。
 デパートという業態をここまで追求している会社はそうはない。ここで購入したものは損した気がしないし、損をさせない価値と価格のバランスがある。

 話は変わるが、毎夏個人的に何か思い出に残ることをしている。この夏は、国立博物館を徹底的に見て回ろうと火・木に通っている。
 今までルーヴルやエルミタージュ、オランダのアムステルダムの2つの美術館、台北の故宮博物院など、一週間そこに滞在して作品の数々を鑑賞することを夏に行ってきた。
 天気や鑑賞時間による光の明暗、見るこちらのコンディションによって見え方が違うので、大きな博物館や美術館は続けて通わないとどうしても見損なってしまう。
 そのような理由で、今年の夏は国立博物館に通っているのだが、ここでも以前より外国の方が多く感じる。
 今、縄文土器の特集が開催されているが、決して太古のものというわけではなく、身近で伝統が今の日本人に繋がっていることが良く分かる。

 自宅と会社の間を行き来しているばかりだと、グローバリゼーションの実態がよく分からないが、秋葉原に行けばロシア人が増えたことが分かり、伊勢丹に行けばアジアの富裕層が来ているのも分かる。博物館にはフランス人を始め、ヨーロッパ人とアメリカ人たちが夫婦で来ているのが分かる。

 私たち花き業界人は日本の消費者に購入してもらうのでどうしても内向きだが、観光という視点からみると、世界から日本に来てもらい、日本食と国産の花でおもてなしをしたいと考える。観光=国産化、或いは地域化であることを観光の国際化の中で思う次第である。
 
 観光するということは、その地域の文化と食、花でおもてなしを受けたいものである。すなわち、私たちの誰もがその他のローカルなものでおもてなしを受けることが観光の醍醐味なので、"グローカル"ということが観光のキーワードになっている。
 このキーワードは花の生産ということに繋がる。小さい単位では、そこの町村、少し広げて県、更に広げて地方、もっと広げて日本産、ここまではグローカルの中で観光に来た中で許される範囲だ。
 しかし、伊勢丹のように百貨店の世界の雄を目指し、プロとして世界から良いものを選ぶとなると日本への観光とは違い、外国産のものも許されるということだ。
 外国人や地方からいらっしゃった方々へのおもてなしとしての結論は、地元の特産物があれば最高だ。B級グルメでも良い。
 
 しかし、何もなくてもおもてなしの心があれば、それさえあれば工夫が必ず出てきて、そのパフォーマンスが観光の資源として成り立つのではないかと思う。
 何もなければ人と智恵の心で勝負だ。

投稿者 磯村信夫 : 15:18

2013年7月 1日

株主総会で質問

 定点観測をしていると、ブルーの比率が花でも高まっているように見える。サッカーのサムライブルーから始まって、洋服の黒はすっかり定番になったものだから、ブルーの洋服やらアクセサリーなどが人目を引く。
 
 花は暑さを楽しむヒマワリの黄色やオレンジ、ジンジャーやヘリコニアなどの赤に代表されるものが人気だが、その他にも季節を表す白やブルー、そして葉物のグリーンがある。この中でもブルーの花は比率が上がっており、カーネーション、リンドウ、トルコギキョウ、スイレン等、時代の色として持てはやされて来ている。NFD(※)の"花ファッション"のトレンドの通りだ。

 さて、今日はもう一つ。先週の第26週は株主総会のピークの週だった。弊社大田花きはその前の週の土曜日だったが、株主の皆様から総会でいただいた質問の一部をご紹介したい。
 輸出についての質問をいただいた。農産物の輸出は日本の大きなテーマであり、可能性は十二分にある。
 
 大田市場 青果の仲卸で現在衆議院議員として活躍されている平議員は、産地がリンゴやみかんを輸出するのも良いが、卸売市場の仲卸が輸出業務をすることの方が先方のオーダーも受け易いし、日本農業の得意な傷み易いが生でいただく物(桃やびわ等切花含む)が継続的に輸出され、トータルの金額からすると、輸出金額が多くなると考えられ、この方向で政策決定され、植物検疫を市場ですることなどの実行対策も具体化されて来ている。
 
 今後、大田市場としては、韓国(ソウル圏)、中国(上海圏)、台湾(台北圏)、香港、シンガポールのそれぞれの市場か仲卸と商売したいと考えている。
 スポットの話では、パリやオランダの花市場に日本の花を輸出しているが、商売として成り立たせる必要がある。目処が付きつつあり、質にこだわる仲卸と良い物を作る生産者が一緒になって輸出業務に本格的に取り組んで行くことを簡単ではあるが説明させていただいた。

 また、為替の質問があった。円安に傾いたドル、ユーロの為替水準で日本の小売価格、或いは生産費または輸出において、どのような影響が出ているのかというものであった。1ドル95円~105円、1ユーロ125円~140円の間であれば、努力の範囲内で収益を落とすことなく生産・販売・輸出の3つが出来るであろう。
 
 しかし、今までのやり方では収益を落としてしまうので、生産者であれば製品化率を上げる。流通業者であれば、より価値のある物を扱う。ロスをなくす。輸出であれば、その地のマーケット調査をしっかりと行い、クールジャパンの一環として格好良い花のデザインを含めて素材を輸出して稼ぐということである。
 一定の円安なら、"やれば出来る"ということをお伝えした。どこの株式公開会社でも一般の株主がその会社の進むべき道を示唆してくれている。
  
 参院選挙前で、マスメディアは政局や経済活動について色々と言っているが、園芸分野の花き農業、卸売市場と仲卸、そして小売店を見ている限り、自分の花の仕事に社会的意義を見出してやる気になってやっている人は成長している。
 花き業界は泣き言を言わず、やる気を持って行えば、必ず成長していくと自信を持って言うことが出来る。

 ですから皆さん、チームを組んで一生懸命花き業界を前進させましょう。


※NFD・・・公益社団法人日本フラワーデザイナー協会

投稿者 磯村信夫 : 15:57

2013年6月10日

リテールサポート

 東北、北海道の産地からいよいよ出荷が始まってきた。先週末から北は関東と変わらない気温で、今日の荷物の到着は遅れ気味。普段より一時間以上も入荷が遅くなって、仲卸さんたちは相対品の分荷が出来ず手持ち無沙汰で、現場巡回していると早い到着を要請された。

 市場によって、役割は違うが大田市場のようにハブを役割としている市場は、遅くとも午前0時前に入ってもらう必要がある。そうでないと、手待ちが増えたり大田市場を出発する時間が遅くなるので、取引がキャンセルされたり、また遅いのが恒常化するとその産地はセリ取引以外では取引出来なくなるので、結局産地は全国規模に渡る買い手大手との取引がなくなる。花持ちの良い花ならば、定温管理し一日前に出荷して貰うことが必要となる。

 さて、公益財団法人食品流通構造改善促進機構の理事会で、隣に座った日本スーパーマーケット協会専務理事との雑談の一コマを紹介したい。
 挨拶をし終わると、彼は"磯村さん、花はこれからですね"と、嬉しいことをおっしゃる。
 彼の話をまとめると、以下のようになる。

 スーパーは売場構成によっても違うが、全体売上額の3分の1が魚・肉・青果だ。"魚離れを少し甘く見ていたのではないか。歳を取れば、また魚に戻ってくると思っていたが、そうならず歳を取っても肉を食べると言うことになっているのではないか。もう一度、食育や魚の調理法等の提案をしなければならない"と彼は言う。
 
 ここの所、週末に丸物が売れるようになって来ており、おばあちゃまが娘や孫を連れてスーパーへ買い物に行き、教育の為に旬の魚を買っていくそうだ。良い魚売場は遠方からも買いに来てくれる。
 季節物である魚介類は種類も多く、もうスーパーでも最寄品ではなく買回り品となっている。そこへ行くと、肉はだいたい牛・豚・鳥の3種類なので、調理方法の提案やちょっとしたお惣菜など、提案力のあるスーパーがお肉の良く売れているところだ。
 又、野菜や果物は毎日の食生活で欠かせないので瑞々しさが売りとなり、青果売場が良いと来客数がかなり安定するそうだ。なので、生鮮品では、まず青果売場をキーにしなければならない。  
 
 しかし、ここ1~2年どこのスーパーでも青果に力を入れ、宅配業者やコンビニまで青果を扱うようになって競争が激しくなり、利益がなかなか確保出来にくくなっている。
 それではと生鮮4品目の花を扱うところが増えて来た。スーパーで花を売るとすれば室内なので当然切花が多くなるが、これもしっかりとお客様へ商品説明や産地説明などお知らせする。組み合わせやアレンジメントはちょっとした料理と一緒で提案する。単品でも美しいので、提案によってどうとでもなるのだ。

 日本フローラルマーケティング協会の小川会長がおっしゃる通り、生鮮4品目の花でまだ0.5%程の売上シェアしかないので、まずは1%にするにはすぐに出来そうだ。次は3%を目指して行く。
 まず、売場を作り、次にそれに合った商品構成をする。こういった順にスーパーの花の売り方も考えて行く必要がある。
 
 今年の西武ドームで開催されたバラ展では、昨年よりも若者が多く、お母さんとお嬢さんの二人でいらっしゃる方も多かったと聞いている。売場作りは、そんなに難しく考えなくとも実行すれば売上が伸びると思われる。

 こういう状況だとすれば、我々卸売市場はリテールサポートに力を入れなければならないということだ。花の小売店は、専門店・量販店・ホームセンター、カタログ或いはネット販売、この4つが消費者の為に必要であるが、それぞれに合ったリテールサポートをする必要があり、それが消費を伸ばすことに直結すると思えてならない。

投稿者 磯村信夫 : 16:42

2013年6月 3日

黒字の会社は業績を知り、責任を取っている

 第22週の先週は、一般社団法人日本花き卸売市場協会の総会が仙台で行われた。3.11の復興とともに、花き需要そのものを卸売市場がリーダーシップをとって復興して行こうと決意した。同様に、22週から花き市場や仲卸会社などいくつかの総会があり出席してきた。

 平成24年度は、1・3月期が予想外の厳しさで赤字や大幅な減収の会社が多く、業績の良かった会社はほとんどなかった。
 その中で、ある会社は安倍総理がリーダーシップを持って日本再生を行おうとしている今、日本が二等国に陥らない為の最後のチャンスであり、花き産業においても同様だとして、グローバルな視点で自社と自らの役割を再度見直し、財務体質の強い新たな取引先を開拓する。そして、自社で描いたストーリーを以って開拓するなど今までと異なった営業活動を展開して行くとした会社があった。

 また、ある会社では社外取締役からのアドバイスで顧客・小売カテゴリーについて偏りが指摘され、量販店との取り組みの在り方を再考させる話があった。このような会社は、総会後の取締役会においても活発な意見が出て、社員数は少ないものの人が育っているとの印象を得た。社員の数ではなく、結果にこだわり、花で食べて行こうとする意欲が強い社員たちがいると、その会社は活性化する。少なくとも赤字にはならないように思う。
 
 とある小規模だが優秀な会社は、花付き花木、実付き花木について勉強し、取扱量を増やして季節の味わいを付けたホームユースを展開しようとしている。枝物の勉強から始めてホームユースを本格化する営業活動を行う。
 また、ある会社では水遣り、水揚げなど基本中の基本を社員が正しく知り、持ちの良い高品質な物をリーズナブルな価格で提供できるようにしようと講師を招いて勉強を始めている。やはり大切なのは"人"である。
 
 今年の母の日を見ても、ご主人が団塊の世代で後継者がいないところも頑張ってはいるが、時代とずれてしまっている店舗が多いように感じる。現役でやっているのなら時代とともに変化しなければならない。何も時代を創れとは言わないが、少なくともコンビニエンスストアの発展から学び、我々花き業界人であれば、どのようにしなければならないか分かる筈だ。
 自分を変え、会社を変えていくことが必要であると株主総会に出席し、強く感じている。

投稿者 磯村信夫 : 12:19

2013年5月27日

今の潮流

 昨日の日曜日、日本橋の高島屋で開催されている"公益財団法人日本いけばな芸術展の展示会"と銀座松屋で開催されている"マミフラワーデザイン展2013"を見に行った。満員御礼、人の波をかき分けてしっかりと拝見したが、花材の活かし方はもちろんのこと、器は作者の身体と化していて、先のパリでの世界卓球大会やプロゴルフのトーナメントのように道具そのものが実際に身体となって花を活かしている。
 集中してみると、人ごみの中に自分がいることすら忘れてしまう。たった一振りでも宇宙の表情を表す交響曲やオペラのような味わいを魅せてくれて、時が経つのをしばし忘れた。
 ちなみに道具が身体化していることを脳科学ではプリパーソナルスペースというそうで、まさに現代は使いやすさだけではなく、道具を身体化して表現していくことが必要なのである。
 
 次にまだ水なし川だが、表面化するだろういくつかの潮流をお話したい。

 今言ったプリパーソナルスペースのように脳科学の進歩で、良く生きることについて革命が起きている。脳の仕組みが男女・国籍・年齢別により分かりつつあり、今流行のビッグデータを利用した傾向値分析にも役立っている。

○宅配便で送れない

 「取り扱えません」と、イーコマースの一般化により宅配便が増え、業者は大変忙しくなって洋ラン鉢のような規格外の大きさの物を断るようになってきた。
 また、縦にしていないと品傷みが起きてしまう花のような物も、会社によっては取扱いして貰えないところが出てきた。大手の中で一部宅配便を行っている運送会社は運賃の値上げを言ってきた。そうなると、自社ないし、友好な外部の輸送業者を持たない生産者や流通業者たちは、ラン鉢をはじめ花を送れないところが出てくる。流通チャネルの変更である。

○卸売業に参入

 葬儀関係の仕事花を行っている規模の大きい会社は、同業者や葬儀社の為に卸売を営むところが大変多くなった。花束加工の大手も卸売業を営むようになって、同業の花束加工業者に荷を卸したり、量販店や専門店に荷を卸すようになってきた。全国卸協会のメンバーは200社余りだが、日本中で専門店の数が少なくなる一方、卸売業者の数は増えている。こういったアンバランスな状況が出てきて地方市場の売上が下っている。自ら仲卸業をやっていくことが必要だということだろう。

○アジアの白一輪菊は儲からなくなっている

 この為替水準だとアジア産一輪白菊は生産減となり、中国、マレーシアの一輪菊は減る。白菊の"神馬"や"優花"を中心に日本に出荷してきたが、日本での単価安もあって、生産を見直そうとしている。円安に振れてからはや5ヶ月。アジア産地の一輪白菊生産にメスが入り始めた。マレーシアや中国では、立地条件の良い畑ならば今後チャンスがあるかもしれないが、悪い畑は作付けを止める判断をしたようだ。
 為替は小泉政権時の1ドル124円まで行く可能性もある。今後はマレーシア、ベトナムのスプレー菊の出方がどうなるかだ。

○最低価格保証をした花き栽培
 
 岩手県の安代のリンドウは自分たちで資金プールをして、天候による集中出荷の暴落時には、最低価格保証制度を用いて安心して花作りが出来るようにしているが、今伸び盛りの秋田県でも、全ての品目ではないが推奨品目に最低価格保証制度を取り入れ、生産振興をしている。
 今年は暑くなることが予想されているが、秋田県が得意とする菊類やリンドウ、トルコギキョウなど花持ちの良い物をしっかりと植えてくれれば上々の評価を受けて、更に面積拡大が出来るだろう。野菜と同様、伸ばして行く花の品目の最低価格保証制度導入は、北越・東北各県にとっては踏み込む価値がある制度だと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 16:12

2013年5月20日

ただいま菊安く、バラ良い

 今日20日は支払いの締め日と小雨が重なり、やや重たい雰囲気だが、母の日が終わり一週間が経ち、小売店も積極的にやらなくてはと先週の空気とは変わっている。
 高冷地もようやく平年並みの気候になり花が咲き始めたが、しばしの間は今までの寒さで高冷地への産地移行がスムーズに行かず、品物によっては少なくなるものが多くある。

 果菜類と花は市況の波長が似ており、20日悩みの21週目だが、団塊ジュニアの好む、野菜類や葉物そしてバラやカンパニュラなどを中心に一定水準の相場が期待できそうである。
 
 一輪菊の相場が低調なのは、現在、電照菊や夏菊などがだぶって出荷されている為であるが、構造的にはスーパーマーケットなど量販店の花売場がいつの間にか仏花に特化してしまった為、ここが動かなければ菊が安くなる。
 こういう流通構造になってしまっている為、1ヶ月以上も一輪菊が安いということになった。そうさせない為には、量販店の売り場を多彩なものにして行く必要がある。それは今期の我々の重要な仕事だ。

 また、お彼岸以降、スプレー菊の安値が続くという、ここ20年間なかった傾向が見て取れる。理由は昨年の台風被害で沖縄県、鹿児島県の小菊類が壊滅的打撃を受けた為、昨年のお正月に小菊に代わってスプレー菊を使ってみたところ、「いけるじゃないの」と言うことでスプレー菊の需要が拡大したためだ。
 
 しかし、3月彼岸はスプレー菊も小菊も多く、価格は安値となったが、4月以降もスプレー菊は国産とマレーシア、ベトナム産等がシェア競いをしている。海外産は日本に購入してもらわなければ安定した生産基盤を失いかねない。
 特にマレーシアの生産者は、安値でも我慢して出荷する。赤字でも今シェアを落としてしまうと、自分の行き場所がなくなる。通年で利益を出せば良いという考えから、国産品と輸入品がだぶって出荷され続けている。これは、カーネーションのコロンビアや中国の生産者そして輸入商とは違うところだ。
 現在、起きている現象は一輪菊とスプレー菊は安値であり、小菊の値段はまあまあ堅調ということだ。ここ20年以来、初めての現象だ。

 もう一つ、団塊ジュニアの人たちが好む花、団塊世代の人たちが好む花、どちらか一方の世代だけだと市況は決して良いとは言えない。この2つの世代が好きな物でないと、良い相場にならないのだ。
 
 今年の西武ドームで開催された"国際バラとガーデニングショウ"は、押すな押すなの大盛況。入場者もお弁当屋さんも花売場も本当に結果は良かったと主催者は言う。
 アベノミクスのおかげもあるだろうが、この2つの世代がバラとバラのある庭を格好良いと思っているからであって、今年は昨年より30歳代の人たちの数が目立った。量販店の花売場が仏花に特化してしまったのとは、逆の現象で大盛況であった。

投稿者 磯村信夫 : 12:10

2013年5月13日

復興の為に花き生産も欠かせない

 3.11で被災に遭われた地域に安倍総理は休みを返上して行っている。なかなか出来ないことだが、昨日は仙台平野に行かれ、農業の復興具合をご覧になった。
 オランダは、被災した仙台平野の復興をいち早く援助しようと長い間干拓で培った技術で塩分濃度を下げたり、オランダで成功している大規模な施設園芸のハードとソフトを使ってもらおうと、特命農商務官を派遣するなどしている。
 
 復興で大規模温室栽培される作物は花も有力候補だ。地元の流通業者は、地元の生産者が主体になって「第6次産業」(※①)政策で花の大規模栽培しているチームがあると聞く。長崎県の諫早干拓で、中国海南島の菊にも値段の点でも負けない白菊生産の協業に弊社のグループ会社は取り組んでいるが、この規模を更に大きくしたものになると復興事業として素晴らしいものになると期待している。
 
 農業は米・麦など土地利用型、果菜類・軟弱野菜・花・果物の園芸型、そして畜産の大きく三つに分けて、それぞれ戦略的に日本農業の強みを更に磨くべきである。日本の農業者の最も優れている点は、技術力やマーケティング力まで含め人の価値にある。本当に日本の農業者は人材揃いなのだ。心技揃った農業者にしか出来ないのが、生鮮食料品花きの園芸作物と果樹などであり、この分野の中で更に一歩も二歩も世界で抜き出でたものになって行かなければならない。

 日本の園芸農業は国内の良いものを分かってくれる消費者に恵まれていたので、素材としての農産物に関わるマーケティング力と製品化する力は群を抜いているが、農場をマネジメントする力や農場のシステム化など農業を進化させて行こうとする力がここ20年少なくなってしまった。
 これをもう一度蘇らせて日本の農業を政治の力も借り、本格的に強くさせていかなければならないと私は花き産業に身を置く者として考えている。

 安定出荷や財力などで不安な花き生産者は、チームを作って花き生産をしてもらいたい。農協の花き部会や自分たちだけの法人化など、色々な手法はあるだろうが、組織体が必要だ。
 是非とも、組織体を作り、資金を確保しスケールアップして消費税が上がるであろう2014年4月からの消費減退局面を乗り切ってもらいたい。

○全花協(※②)では
 軽減税率と既に話題になっている時限立法の消費税がスムーズに転嫁される為の価格表示に関する法制化の2つを議員の先生方にお願いし、実現させるべく頑張っている。
 EUでは、27カ国中、13カ国が卸売市場で取り扱われている食肉、魚、青果、花きのうち、花きも軽減税率適用となっている。(※③)
 
 花は、消費者にとって心のビタミン・ミネラルであり、生活に欠かせないものなので、農業においても日本を活性化させる重要な品目であることは国民誰もが理解していただけることだろう。また、表示方式は仲卸や花束加工業者、そして小売業者が量販店や式場等に納品する際、消費税を的確に転嫁出来るよう、本体価格+消費税=総額としてもらうことだ。
 
 当初、財務省は総額表示の原則を曲げるわけには行かないとしていたが、3%から5%に消費税を上げた時、納品した生鮮食料品花き業者が消費税分を認められなかった為、結局その分相場が安くなってしまったことの経験に基づくものだ。
 この2つを全花協が先頭に立って是非実現させたいと考えている。卸売市場で扱う生鮮4品目は、消費者にとっても日本の農業者にとっても絶対に必要なものである。
 
 是非、読者の皆さん方も地元の国会議員の先生方、行政府の長、そして役所の農林部に働きかけてもらいたい。宜しくお願いします。


※①第6次産業・・第1次産業×第2次産業×3次産業の連帯事業
※②全花協・・「全国花き振興協議会」の略。花きの生産、流通、販売等の団体で構成
※③軽減税率に関する資料(PDF)

投稿者 磯村信夫 : 15:20

2013年3月11日

生産技術革新を希望する

 フローラホランドの2月実績が前年比で15%も良かったので驚いている。
 1月下旬からヨーロッパでは寒波があり、2月になって温暖な気候となった。バレンタインデーの2月ではあるが、金融危機から実態経済が悪化していると言うのに、この売上の伸びである。
 一方、日本のマーケットはアベノミクスで景気が上向いて来ているのに、寒さで二桁マイナスであったから、花の消費の根強さに大きな違いがある。
 日本は仏事の物日には花は必需品となるが、日常の花、或いは花のある生活を楽しむという習慣はまだまだ弱い。
 日本の花き業界はバレンタインデーを男性が花を買う、西洋から入ってきた新しい物日にしようとしている。
 しかし、ベースになっている家庭需要というものは、やはりヨーロッパと違う。もう少し普段使いを頑張って掘り起こさなければならない。その為には、価格は大切な要素であろう。
 
 ヨーロッパに行くと、花の値段が安いので、思わず多く購入してしまう。日本の卸売価格とドイツの小売価格が同じ花もある。日本の方が安いのは苗物だけだ。後は、切花も鉢物も品質は良いが高いものが多い。

 今、アベノミクスでデフレストップと言っているが、花の場合、もう一度国際価格をしっかりと調べ、高いものがあったら農家の所得を落とすことなく、或いは農家の所得を上げても採算が合うように、どうすれば作れるかを研究すべきである。

 農業の第6次産業化で直売所や完成品を作り、売るところまでするのは良いだろう。しかし、それは抜本的な解決策にはならない。やはり生産だ。
 花や生鮮品は消耗品なのである。なので、消費者にあまり大きな金額的負担は掛けられない。もちろん高くても良いものはある。しかし、小売店が良いものを割安に販売できるようにもう一度生産の方式を研究し、実行に移してほしい。

 日本バラ切花協会の会員の方がオランダへ行き、一坪辺りの切花本数を倍近く生産する技術を学んだそうだが、天候の与件以外に必ず技術がある筈で、それをもう一度取得するべき時となっている。
 オランダの花市場の2月の取扱数量と金額を見て、やはり値段は個人消費を定着させるには欠かせない要素だと考える。
 
 生産者の皆さん、花き業界再出発の為、"良いもの安く"を始められる人から始めてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 16:32

1 2 3 4 5 6 7

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.