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2013年2月11日

BCP(ビジネス・コンティニュイティ・プラン)(事業継続計画)

 生鮮食料品花きの中で、2005年を100とすると数量・金額共に最も落ち込んでいるのは、魚である。毎年築地の初市にマグロの相場が発表されて景気が良いように感じていらっしゃる方も多いと思うが、魚の消費は減少している。

 もう40年も行き付けの近所のお寿司屋さんがなくなって色々と新しいお店を開拓しているのだが、徒歩で行ける範囲では良いお店が見つからない。ネタはもちろんのこと、山葵の利かせ方やシャリの温かさなど、好みに合ったものを握ってもらえないとなるとやはり行き付けのお店を見つけなくてはと思う。消費者としてもオーバーに言うと、食べる楽しみがひとつなくなってしまってがっかりしているところだ。
 これがビジネスとなると、いつまでも今まで通りに花を出荷してくれたり購入してくれるか分からない。いつまでもお取引先が元気でやってくれるとは限らない。そういう時代になっているということだ。

 卸売市場の大田花きからすると、今までは買参人が期日通りにお金を払ってくれるかどうかチェックをし、与信管理をしていれば良かった。確かにこれらは大切なことだが、もうそれで良いという時代は終わった。
 出荷者においても補助金で立てた温室の返済が終了し、それを機に温室を売り出している生産者がいる。今まで花の生産面積を拡大してきたが、今度は縮小し、ここ3年で生産面積が半分になってしまった産地もある。
「出荷したいのも山々ですが、運賃が高くなって・・・」
と、地元圏内や出荷しても一番近い三大都市圏の一つまでという産地が出てきて、量だけでなく品揃えに影響が出た産地もある。

 卸売会社の立場で言えば、取引先の経営方針・収支バランスなど、BCPに関わることをしっかりと考慮し、お互いに話し合っておく必要がある。赤字の会社は言語道断だが、黒字の会社でも状況の変化によってBCPを考えておく必要があるのだ。そうでないと年次計画が描けない。

 昨年の暮れ前、関西の花き市場が倒産した。今年に入ると首都圏の2社が自主廃業をした。卸売市場だから社会インフラなので影響が大きい。
 しかし、冒頭にお話した通り、たった1軒のお寿司屋さんでも少なからず市民に影響を与えるのだ。

 足元の2013年から消費税が上がる2014年、2015年まで統廃合が激しいと見る。
 花き業界で仕事をしていく上で、BCPについて再度考える必要がある。リーマンショック後、3.11でBCPが注目されたが、現在の花き業界においてBCPは今日的な問題であり、BCPでサプライチェーンを構築するお取引先を見つめ直し、消費者に期待される花のサプライチェーンを極めていく必要がある。
 種苗から生産、川中・川下流通、いずれも取引先を確認する時代になっているのである。

投稿者 磯村信夫 : 15:27

2013年1月14日

自立した国民が支える花き生産と消費

 この頃、日本でも"男性不況"ということをいうようになった。
 工業製品のmade in U.S.A.がアメリカ経済の空洞化と共に少なくなってきて、働き口は三次産業になったと言われるようになった。日本でも公共事業の見直しやグローバリゼーションで求人はますますサービス産業が多くなり、女性が多分野で活躍するようになってきた。

 自分の世界に引きこもり、人付き合いなどコミュニケーションを不得意とする青年は多い。困ったものだ。また、独身男性で所得の低い人が結婚しないでいる。これも社会問題だ。
 どのようにして日本男子がコミュニケーション能力と倫理性を身に付けていくか、ここに日本の活性化が懸かっているといっても過言ではない。
 悲観的な見方をすると、非正規雇用者率が上がる中、収入が十分でない独身男性にフラワーバレンタインといっても、花を買う筈はない。それでは元も子もないので、フラワーバレンタインはそこそこ稼ぐ若い人たちを相手にする。生活にゆとりがある格好良い独身男性や40代のお父さんがターゲットだ。その世代をターゲットにした広告だが、むしろ実際は、イタリアの大人の男性のように齢を取れば取るほど格好良くなる55歳以上の人たちがバレンタインデーに花を購入するのではないかと思う。
 それは何故か。
 一つには、金銭的な余裕があるから。
 二つ目にこの世代の方が主体性を持って生きているからで、お世話になっている人に花をプレゼントする確率が高いからだ。
"自立"とは、「他に依存していることを認識している」ことをいう。妻や秘書、或いは看護師さんには本当にお世話になっているのだ。

 更に主体性や自主性についていうと、積極的に他者に役立つことで、しかも自分のやりたいことを行うことを「主体性を持って生きていく」という。こういう人たちは"縁"を自分の力で良いものにして結果を生み出す人だ。
 自立を身に付けるには、現実をしっかり見つめる眼を持たなければならない。それを持つ為には、持ち前の素直さと道徳教育が必要なのである。

 花き業界がさらに良くなる為には心の糧としての農産物である"花"の生産から流通までを担当する我々が、主体的に消費拡大に向け、生産販売することが肝要だ。
 安倍首相が道徳教育を教育の重要課題として位置付けているが、花き業界にとっても大変好ましいことである。花の仕事は日本人の精神生活と深く結び付き広がっていく。

投稿者 磯村信夫 : 15:53

2013年1月 7日

国産花きは国際競争に勝つ品質を身に付ける

 あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。

 12月クリスマス前からバラを始め、団塊ジュニアの好む花が期待した程、相場が出ていない。その一因に、曜日の並びがある。3連休は2011年後半から起きているレジャーブームで若い人たちを中心に遊びに出てしまう。
特に今年の正月は今日の7日から仕事始めの会社も多く、花の需要がレジャーに取られた。中高年はそれなりに家にいて、静かな休日を過ごしていた。
12月下旬から絶対量が不足しているが、そうはいっても小売店にも予算があるから全面高にはならない。確実な中高年向きの花が相場を押し上げ、仕入れ金額がかなりいっぱいになってきたので、バラを始め洋花類は安いという結果が初市まで続いた。
しかし、この第2週は成人式の週で、いよいよそれぞれの生活が通常に戻る。よって今日から洋花類は挽回していく。
そして、この寒さで昨年同様、3月までは入荷量少なめで小じっかりした市況が続いていく。

 さて、年末の衆院選で自公の圧勝となり、安倍内閣によって日本の経済再生が第一の目標となってきた。
1995年が生産年齢人口のピークでそれ以降、日本のほとんど全ての業種は売上を落としている。
人口減少の日本はベースとして内需においては、マイナス2~5%のプレートの上にのっている。そもそも日本は輸出入におけるGDPのシェアはそれぞれ20%弱なので、圧倒的な内需主導型。
そして今後は国内需要が減っていくので、景気を良くするとすれば国際競争力をつけ海外から稼いでこなければならない。。
農業の分野においても同様だが、東京電力福島原子力発電所事故による汚染で、生鮮食料品の輸出は極端に減ってしまった。

 そして、2012年の6月、中国大使館の一等書記官がスパイ容疑で捕まった。
農林大臣、副大臣を中心に対中農産物輸出事業を促進させ、日本のTPP参加を阻止する工作に出た。その時も中国は日本からの農産物を輸入禁止にしていた。
中国でのフェアは日本のマスコミにも取り上げられた。
高品質の日本の米は、値段の違いを乗り越えて中国で売れるとしたものが、結局は国を挙げてのやらせで、その活動の一環であったことが分かり、私個人としては輸出の困難さを知った。
今後何を目標に生産地に良質の生鮮食料品花きを国内外の消費者向けに生産してもらうか。
所得が増えない日本においてデフレ圧力は強いが、内需しかないのであれば、このまま本当に高品質のままで良いのかを正月に考えた。

 第55回日経・経済図書文化賞を受章した小池和男氏の「高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた」と題する本を時間をかけ正月休みに読んだ。
小池先生は、国際競争力ある日本の工業製品が生まれたのはデミング賞などのQC(品質管理)活動は、戦後のことのように言われているが、事実は戦前の1920~1930年代で綿紡績業が世界一になってからである。
いくつもの指標を具体的に取り上げ、解説をしていらっしゃる。
日本が欧米に先駆けて、現場の生産従事者に定期昇給制を敷き、経営者は毎年生産効率が上がるよう期待し、実際よくその期待に答え、会社一丸となって「共働」して行った。


 私事で恐縮だが、大学の経済学部で学んだのが、マネジメント思想家クリス・アージリスの経営学であった。
フレデリック・テイラーを始め、いくつか科学的な管理方法はあるが、アージリスはまさにこの"共働をすべき"ということを自分の経営学の基礎とした。
教わったことは"人間をこう見て欲しい"ということであった。それを日本流の経営と言って、Japan as No.1から転落し、失われた10年、20年と言っているが、これは日本流でも何でもなく日本人が思う、共に仕事をする者同士の組織のあり方と役割を言っている。
我々日本人はこれで通す。私はこの思想で会社を運営していく。

 小池氏から教わったことを言うと、物を高級品と大衆品、或いは量産品に分けると、私たち日本人からすると量産品は人件費の安い途上国に任せれば良いと思ってしまうことが多い。
しかし、小池先生は大衆品・量産品は品質が高くなく、それを作る技術は低いと断定してしまうのは危ういと注意を投げかけている。作る上では、返って高級品より高度な技術を要することもあるのだ。
車を例にとって高級品のロールス・ロイスやフェラーリは少数の技能の高い労働者が一環して組み立てる。確かに多様な作業をこなす。
しかし、カローラのラインなどは一見したところ、単純な作業を繰り返しているようだが、もう少し良く見てみると、難易度はかなり高いものであることがわかる。
それは、1ラインにエンジンの大きさ、変速機など違った組み合わせの70種類ものカローラが流れてきて、それらを的確に無駄なく自分のパートを仕上げなければならないわけだ。
このようにして、故障の少ない、多種多様なカローラが同一ラインから作られていく。

 花でいうと、かなりシステム化されている電照菊でさえも同じ畑の中でも多種多様な成育状況があり、それに合わせて一つ一つ対処し的確に自分の荷として纏める。
また、共選共販の場合、それを持ち寄って共働する仲間と統一のブランドの商品として決められた規格別に揃ったものにする。
部会の中ではあたかも大農場のように、部会長が社長になって役職者だけでなく、生産者一人一人にそれぞれの役割があり、農協の検査担当者や販売担当者と共にブランドを固めていく。これが日本の量産の花の在りようだ。なので、共選共販は、一般的な個人出荷の一段上の難しさがあるが、そこの統一感は小池氏が指摘する「共働」にあり、精神は孟子の井田法の教えにある。
日本の花作りの場合、確かに1970~80年頃に国際競争力を付けてきたわけだが、その大元には量産していく中での物つくりの品質世界一を勝取った繊維工業があり、生花の共選共販には孟子の井田法がある。

 今後ますます国産の花の品質を高めていく為には、現場で働く我々が"技術研究と研修""品質への発言""働く者としての所得と福祉"、この3点を身に付けていかなければならない。
これは共働している川上・川中・川下の全ての花き業界の人たちの責務である。

投稿者 磯村信夫 : 16:16

2012年10月15日

小さな会社もまずミーティング

 昨日の14日まで丸の内の仲通りでガーデンコンテストとIMFの総会に合わせてイルミネーションが施されていた。東京駅の新装開店と云おうか復興工事が終わり、10月に入ってこの2週間新しい装いの銀座・有楽町・丸の内を楽しんでもらった。国内外の人達は、日本の良さ、東京の素晴らしさ、そして可能性を再確認したことだろう。

 花き市場協会では青年部が6日(土)と10日(水)「丸の内花市場」を行い、花き流通における卸売市場の存在をPRし、セリでは双方向性のやり取りの楽しさを感じてもらいバラとユリ中心に抱えきれない程の花を買ってもらった。

 IMFの諮問機関である委員会のステイトメントは、世界経済は下振れリスクがあること。また、アラブ地域や日中間の領土問題などで不確実性が高まっていること。これを特に先進国の英智協調で再度安定した経済成長へ乗せていくことを期待し、共同声明とした。確かに世界中の株式の出来高は少なくなり、債券が買われていることを考えると先行きの経済見通しは明るくはないと見るべきだろう。

 大田市場の最寄の駅である流通センターからモノレールに乗って浜松町へ行く時、領土問題から乗客で韓国、中国の人達がめっきり少なくなっていることがわかる。また、東京の花の関係者の会議は秋葉原で行うが、電気街でも中国の人達が減ってもう一度秋葉原の店は日本人相手にメイド喫茶のビラを撒いたり、店舗を変えて飲食店になったりとにかく日本人向けの商売に既に変えて行っている。

 花も暦年で云えばまだプラスでいる所もあるが、4月~10月だと前年よりマイナスの所がほとんどと云える状況になっている。これは花き卸売市場の現状だが、この景気の悪さと止まらないデフレ現象をどうするかというものである。こういう時こそ経営力の差が出る。経営力の最たるものはもちろん経営者の力によるが、良き従業員がミーティングをしベクトルを合わせてPDCA(※)をしているかに尽きる。経営の良くない所は朝礼くらいは行っているが何をどう取り組むかなど、Pもなければ業務のブレイクダウンの話合いのDもない。

 社員教育まで含め、まずミーティングを行って良い会社になって、そして外部要因である景気や天気を跳ね除けたい。景気が悪くなると組織の大小を問わず、例え家族経営であっても話合いをして行動しているかという良い経営のところが伸びてゆく。伸びないまでも落ちが少ない。小さな会社もまずミーティング。これを今週は提唱したい。

(※)PDCA・・・Plan(計画)Do(実施・実行)Check(点検・評価)Act(処置・改善)

投稿者 磯村信夫 : 13:01

2012年10月 1日

合言葉はスマートな市場

 台風17号で被害にあわれた皆様に御見舞い申し上げます。
そして15号、16号と2回の台風で甚大なる被害にあった、沖縄県、鹿児島県の産地の皆様このたびの17号でも甚大な被害があり、せっかく作業場、ハウスなどを建て直して、今ようやく冬用に植えつけようとしている最中でありましたのに、また台風被害に合われましたこと、お見舞いの言葉もありません。たとえ植え付けが遅れても、時機が来てご出荷頂ければ日本中の市場は一生懸命販売することをお約束いたします。

 花は今、物日の「花の買場」が専門店と量販店の2つになって量販店が力をつけてきています。消費は高いものが売れにくくなっていますが、しっかりしていると言ってよいと思います。肉、魚、野菜、花の生鮮4品の内、魚の消費が落ち込んでいます。どうにか挽回しようと「ファストフィッシュ」あとは煮たり、焼いたりすればよいだけの加工したものがでてきています。確かに、お店でさばいてもらわないと出刃包丁のないお宅が多いので魚は面倒くさいということでしょうか。団塊Jr.以降の人たちで魚のさばき方の上手な人は少数派でしょう。高学歴になって女性も働くから「ファストフィッシュ」の考えはもってこいです。しかしこれだけでは魚離れは止まりません。もう一度地元をあげて地産地消の食文化をPRする必要があります。PRしなきゃ困るところまで来ているということは魚市場の経営が悪化しているところが、多いということです。

卸売市場は中央卸売市場と地方卸売市場に分かれますが、今、魚市場で問題になっているのは公設市場と協同組合の地方卸売市場です。ただ単の地方卸売市場ならば開設者は民営ですから、国や地方自治体は責任はありませんが、公設となると市や県が開設者となります。また組合ですと当然その組合が責任を負いますが、市町村や場合によっては県などと深く結びついており、施設の老朽化などで優先的に公設や組合卸売市場の面倒を見なければならないようになっています。卸売市場の問題点は「営業成績(財務体質も含む)」によって業績の悪いところを出して、やる気のある所を入場させる、入れ替えのシステムがないことです。中央卸売市場の場合、総務省から「計画倒れの中央市場は地方卸売市場にせよ」という指摘があり、中央から地方化へ進みましたが、結局経営の問題なので業者の入れ替えがないというのは今の世の中おかしいことになります。今後は消費者の数が減っていくわけで、しかもその人達は忙しくても、あるいはリタイヤ組であれば時間がたっぷりあっても、上質な日常を送りたいと思っています。よってどのように品格のある国民生活を生鮮食料品、花きの分野から実現していくか、それが我々卸売市場の役目であります。そうなると中間流通業者として、自ら律し、勉強してレベルの高い経営をしていく必要があります。流行り言葉で言えばスマート市場を作りだすことです。もちろんIT化や低温化も必要です。何よりも消費者の立場に立って鮮魚を扱う。一次加工、2次加工したものを扱う。1社で品揃えできない場合が多いので、市場間でグループを組みネットワークで小売店の消費者のニーズを満たすのです。まず消費者ありきでネットワーク化された市場に自分の市場に作りかえるのです。今、生鮮4品では魚市場から淘汰が始まり、そろそろ最終局面にも来つつあります。国の責任から県や市町村の責任に、責任の所在が移管しただけではなりません。やはり民活です。我々花の業者は切花は手を入れないと商品にならない魚のようなもの、鉢物は果物のようなもので参考となる市場運営の例は違いますが、良い市場、悪い市場の2つを見て学び健全経営をしていきたいと思います。合言葉は「スマートな市場」であります。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2012年7月17日

日本のものつくり

 日本企業のものつくりについて、議論する機会を昨日の日曜日、銀座でもった。そして、家に帰ってTVをつけると、made in Italyにこだわった中国からのフィレンツェへの移民が、衣料品を輸出している現況を知るにつれ、複雑な思いを持った。今日は花も含めた日本のものつくりについてお話したい。

 日本のものつくりは基礎研究と、そのこだわりによって今でも世界に冠たるものであるが、その作られた物については、消費者に押し付け気味であったり、消費者からすると、過剰品質で使わないものが多くあったりする。よって、作られた製品については、消費者が欲しいと思うものではなくなっている可能性が高い。特徴的には、Apple社のiphone、ipadや、Samsung社の Galaxyに負けている。Appleは、既存の技術を組み合わせ、消費者がこうあってほしい、あったらいいなという物を創りあげる。Samsungは、地球上の各地域でどんなスペックが必要か調査し、その地域に合った商品を提供している。決してSamsungは日本製品よりもTVでも安い物を提供しているわけではないのがヨーロッパに行ってみればわかる。グローバリゼーションとデジタル生産化によって競争は、その物を使って何がしたいか、どのようなサービスをもたらしてくれるか、お金を出してくれる消費者の立場にたったものつくりの競争になっているのだ。

 2010年、世界で最も大きなトラブルは、中国の毒入りミルクを抑えて、トヨタのフロアマットが引っかかりアクセルペダルが戻り難いという事故と、トヨタの対応が一位となった。日本では、大々的に報じられなかったのは日本のものつくりの強さ、とりわけ看板方式など生産プロセスに日本の強さがあり、日本のものつくりは今でも世界最高の品質だとの日本人の自負がこの2010年のThe Timesのランキングニュースを小さくさせたのであろう。グローバリゼーションそして職人芸を取り込んだNC工作機によるデジタル生産は、どこの国で作ろうが同じ品質の物を造り上げることが出来る。工業における成功は、何を造るのかにかかっているのだ。農業の分野でも数値化、デジタル化しようと現在日本のコンピュータメーカーは、職人芸と云われるものつくりをデジタル化し、誰がやっても品質を安定化させることが出来る農業にしようとしている。現状は日本列島は縦に長い。気象条件もそれぞれ違うので、良い農作物を作るには複雑な組合せがあり一筋縄ではいかないが、その努力を始めたので必ず完成するであろう。

 さて、現時点では農業と同様、人の感性や手仕事が大半のアパレル産業において中国人達がmade in Italyにこだわり、フィレンツェに移住して作って世界に輸出している。イタリア人達は、自分達は移民する民族だと思っていたのが、20世紀の後半、ユーゴスラビアが崩壊し、移民を受け入れるようになり、今度は中国人も来るようになって、国際化に慣れていないイタリアは戸惑っている。Made in Japanの衣料品が出稼ぎに来た多くの中国人達によって作られているが、made in Japanは信用出来ると思っている日本人が買い手だ。まだ移民してきた中国人が、made in Japanを輸出しているわけではない。私自身は、イタリアのメーカーにはこだわっても、それがブルガリア産であろうが、トルコ産であろうが、他国産であることにこだわらない。そのメーカーのデザイン力と品質を保証するところに信頼を置いているだけだ。これと同じようなことに日本の花き業界も既になっているのではないか。優秀なメーカーが国内では、九州と長野県に生産基盤を持っている。愛知県から大分県へ拠点を移した生産者もいる。マレーシアは日本の生産者と国際交流を重ねながら、日本の消費者にメーカーとして広く受け入れられるようになって一定の地位を占めている。

 日本の花が特段優れているというのではないのである。日本の生産者の強みは、もし日本の消費者に販売するのであれば、好みを誰よりも知っているので、先回りしてその花を作り、提案することが出来るということである。農業まで含め、ものつくりは既に国際化し、品評会に出す良いものを作るだけでお金が取れるという時代は終わったのである。

 誰に売るのかのSamsung流、何をしたいのかをイノベーションで新しい物を作るApple流、こう考えていくことが今の時代のものつくりではないかというのが、私の考えである。フィレンツェに移民した中国人はmade in Italyのファッションが格好良いと思っている人に売るのを商売にしている。これもSamsung流と云えるであろう。

 今、話題になっている、アメリカのオリンピック選手団のユニフォーム問題は、ラルフローレンデザインのmade in Chinaだそうだ。賛否両論あろうが、アメリカのビジネスを体現しているので面白い。今後日本では、made in Japanで他国の花を排除することがないようにする。売りはあくまでも自分の名だ。その産地、生産者が価値を決める。なくなっては困るというのがブランドだから、名前を覚えてもらってトレンドを先取りする。そのことにものつくりは心がけるべきなのである。これは、花作りも同様である。華道・フラワーデザインの先生方も同様である。

投稿者 磯村信夫 : 06:02

2012年7月 2日

ユリの八重化

 総会の時期も終わり、今年も残すところ後半分となった。各企業の取組みを見る限り、世界経済の縮小の中で、積極的に手を打って行こうとしている企業の姿が浮かび上がってくる。とりわけ勢いづいているのが内需関連のコンビニ、量販店、インターネット販売などで時局を捉えて夫婦共稼ぎや高齢化をイメージした戦略に出ている。

 人口動態やら時代の雰囲気は花き業界も一緒で、今週末に七夕があるが、笹でも大きいタイプの2メートル以上のもののうち、約20%は老人ホーム向けであると大田花きは推測している。介護付き老人ホームが出来てから、所謂老人ホームとケア付きマンション的なものと、この分野での深掘りが始まっているが、元気なうちにマンションに引っ越すのと同様にホームに入る人が増えてきている。七夕の笹でこれだけの需要があるのだから花や緑にも需要があるはずで、頭の老化防止といっては何だが能力トレーニングの為にもう一度生け花やアレンジメント、或いはコンテナガーデンなどの教室の需要を展開するのも面白いのではないだろうか。

 そしてもう一つ。今ユリのシーズンなのでユリの向う方向性について話をしたい。まだ、先端を行く人達が使い始めた位だが、今後の潮流になっていくと感じている。それはユリの八重である。出荷の時の切り前が難しい点はある。又、蕾が大きいので移送中に花首が傷んだり折れたりする可能性がある。だがそれにも増して咲き足がゆっくりで咲いて見事だし、今流行りの重ね着である上に花粉がないから服やテーブルを汚す心配もない。八重でなく一重も処理をすることによって花粉が出ないようにしている産地もあり、花粉対策に一層の注意を払っている。八重品種改良の時間もあるから急激に増えるというのではないが、今後5年間をとってみると、この流れは1つの潮流になるのではないかと推測している。大田市場の周りでも山ユリが咲き始めた。ハイブリットユリにとって新しいものである八重化、花粉なしの潮流を大田花きとしてサポートしてゆきたい。

投稿者 磯村信夫 : 12:42

2012年4月16日

電力不足と油高

大飯原発稼動の問題から、電力不足と電力値上げに関して経営がおぼつかなくなる企業の記事が新聞各紙で取り上げられている。僕は大田区大森に住んでいるから町工場の人達の苦労をリーマンショック後、円高も合併せ嫌というほど見てきた。
そしてバラ切花協会の会員生産者の方々が夜間の割安電気を使用し、ヒートポンプを使って夏でもケニア・コロンビア・エクアドルに負けない品質のバラを作ろうとする意欲と技術に拍手を送ってきたが、このたびの値上げは夜間電力も昼間と同様の値段になるという。
夏場のバラも国産は素晴らしいが、夜間電力の値上げと共にストップしてしまうのを危惧している。
海外からは3.11後、日本国あげての節電の取組みを高く評価するとお褒めの言葉をいただいたが、原発停止後の電力不足を考えると、どのような形で激変緩和措置が行われ、又、将来は原発に頼らないでいけるかは日本のチャレンジで、そのことで日本は技術立国になってゆくことだろう。現在は激変緩和措置として安全性を確保した上、原発の早期一定稼動は必要だと、大田市場のまわりには冷蔵庫やら保冷物流施設がいくつもあってそこの間を歩いてくるたびにそう思う。
卸売市場も同様で今までは5年ごとの見直しであったが、この4月から毎年農林水産省は一定基準未満の中央卸売市場をチェックし、地方卸売市場にするとした。
地方市場になった公設地方市場は市や県が開設することになるが、市や県の経費は減るどころでなく、電力の値上げに対応しなければならないし、電力確保の為、電源の二層化などが必要となっている。

今、花や青果物の輸送は、ほとんどがトラック便となっている。かつてはジャンボジェットが飛んでいたから空港貨物で量を運べたし、運賃も安かった。それがエアラインの大競争時代になって飛行機は小さくなるし、さらにここに来てLCC(ローコストキャリア)が日本でも人気になってくるなど油代が高くなっているので、飛行機はさらに人専用のように小さくなってきている。こうなると荷を運ぶのは時間がかかっても定温管理が出来るトラック便となる。産地で余冷し、沖縄や北海道などは船を使うか、最寄の港からはトラック輸送、九州からはほとんど今トラック便になっている。そうなると市場では、定温管理が出来る定温庫や荷捌き場、場合によってはセリ室が必要で鮮度を保つには、市場での温度管理は欠かせない。
市場では閉鎖型とまではいかないが、定温管理をする売り場を持つことになる。また、持たないと生産者に出荷してもらえないので電力不足・電力代の値上げは経営を直撃する。余談だが、4月の上中旬になっても一輪菊の相場が堅調なのは、12月の「返し」の荷が出てこないからである。それは今年の冬が特別寒かったこともあるが、毎年4月になると陽気が良くなってお葬式も少なくなり、従って菊の需要は少なくなって4月の菊の相場は油代が出ないことがあった。だから、油が高いので暖房をしていない生産者が多く出荷量が少ない。産地にとっても、卸売市場にとっても、電気代の値上げと油代の高騰は経営を圧迫する。今後とも続くと思われるので、産地においては省エネ栽培方式や省エネ品種の作付け、卸売市場においてはスピーディーな仕分け作業と荷主相乗りによる効率的なトラック輸送を編み出してコストを更に下げなければならない。卸売市場全体では実質日本の中核市場となっている地方公設市場の前例にとらわれないマネジメントが期待されるのである。

投稿者 磯村信夫 : 16:31

2012年1月 9日

新しいことをやる

高齢化社会で年末年始葬儀が多い。昨年の秋の13号、15号の台風と11月に入ってからの長雨で暖地の作柄が悪く、春物の入荷が少ない。冠婚葬祭をしている花屋さんは苦労が多いスタートとなった。

今日の新聞に千葉県の人口が予定より7年も早く減少したという記事が載っていた。理由として、3.11による浦安地区の液状化問題や東電の福島原発によるホットスポット問題で、移転が続き、人口が減ったという。日本は千葉、埼玉、東京、神奈川などの東京都市圏に3,600万人もの人が集中しており、日本の人口の28%の人がいる。大阪を中心とした関西圏で15%、名古屋を中心とした中京圏で10%なので、三大都市圏にいる人口が過半数になっている。特に東京都市圏は異常で、東京都市圏の次に人口が集積しているのがインドのデリー圏の2,200万人だから、日本の東京都市圏がいかに集中しているかがわかる。これでは日本が良くならないのだ。理想的にはドイツのようにもっとバランスよく、100万人以上の都市を作らせないようにする。そして地域に同じような産業を集積させ、例えば大田区や東大阪、日立市や豊田市、あるいはメガネフレームの福井の鯖江市のようにしていく必要がある。OECDの指標を見ても、幸せ度は所得にスライドするから、ここ20年、35,000ドル少し上のところから所得が伸びない日本と、40,000ドルを超えるシンガポールやアメリカと比べると、未来を語る語り口が当然に違う。日本は先進国の中で最も国際化が遅れており、しかも最も内需の比率が高い国である。その傾向は田中角栄内閣のときから如実に出ており、一世代(30年)ずっと内向きの政策ばかりをやってきた。ここに問題があろう。

イトーヨーカドーはスーパーマーケットの手法をクローガーから学び、電算システムやそれを活かしたロジスティックをウォールマートやセブンイレブンのサウスランド社、デニーズから学んでここまで発展してきた。大田花きも電算システムをアップル社やマイクロソフト社から学び、せりシステムや鮮度保持システムをオランダから学んで、生産性を誇れる花の卸売会社の一つとなったと思っている。決して内向きにならず、国内にいても新しいニーズを嗅ぎ付け、問題を解決し、労働生産性において国際標準を上回ろうとしてきた。現在、花き業界にある閉塞感は、小売の分野において利益を出しにくい制度となっていることにある。冠婚葬祭とも、紹介料他が3割以上となっている点、集客力のあるところのテナントに入ったとき売上高家賃が2割近くになっている点など、ここ20年、特にここ10年で花き業界から他業界へ流れるお金が多くなった。この商売の制度上の問題から小売は利益が少なく、それが結局生産者の利益の少なさへとなっている。これを解決するには、制度や販売の仕方などで、イノベーションをしなければならない。事実として短期の利益は社員教育や設備投資によって得られるが、長期の利益はイノベーションによってしか得られない。その業界の発展はやる気のある人が新たに生産や流通や小売に参入したのか、イノベーションを伴うどんな新しいビジネス展開があったのか、我々はもう一度生産の分野から販売の分野まで、新しいルール作り、新しいことをやらなければならない。海外の動向をつぶさにチェックしたり、取り入れるべきは取り入れたりして、新しいものをここで生み出してゆくのも、グローカルな業者として必要であろう。
1999年、アメリカでインターネット花屋を立ち上げ、1ドル=80円になおして10数年で現在500億円以上を売っているProflowers社長の親友エイビ・ウィンパレは、日本の花き業界があまりにもおとなしいのに近頃あきれている。3.11後、日本に住むことにしたドナルド・キーン氏も、日本に"立ち上がれ、勇気を出せ"と言っている。
「やってやろうじゃないか」辰年だ。竜が天に飛び立つように、まずはなんでもいいから新しいことを仕掛けていく。そういう一年にしていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年4月 4日

専門店と生産地を復活させる

昨日社員の結婚式があって出席したが、自粛の考え方もあろうが、何も華美な結婚式や披露宴をしているわけではなし、出席して本当に良かったと思った。改めて花の美しさに感動した。いつの間にか東日本大震災で私たちの気持ちもピンと張り詰めたものがあり、何か感覚が鋭くなっていて、花々はハッとする美しさで胸に焼き付いている。

さて、今期の日本の花き業界の目標の一つに、大震災で加速するに違いない花の小売専門店の減少に歯止めをかけること、花き生産の減少にストップをかけ花き生産農家の採算向上と後継者育成に力を入れることがある。阪神大震災の例では2年後、小資本の2割の小売店が復活しなかった。これを震災に遭われた東日本でいかに復活してもらい、今まで以上に活躍してもらうかである。花の小売専門店は地域文化の担い手としての役割がある。場合によっては料理よりも地域によって異なる場合があり、茨城県土浦近辺の例を出せば、結婚式のような七五三のお祝いと花飾りがある。このようなことは伝統的な花店しか出来ない。また花店は伝統を守るだけでなく、新しい花との生活の提案を行っており、日本の優秀な花き農家が時代に先駆けて提案する新しい花々を伝統の中にも取り入れて今を表現する。

花の小売店は専門店のほかにもあり、コンビニやカタログ販売、インターネット販売は花の買い物時間の節約の役割、スーパーの花は花代の節約の役割、ホームセンターの花はリビングから窓辺、玄関先から庭、それぞれに似合う花を販売する役割がある。花の専門店は八百屋さんや果物さんと違い、割烹やレストラン、食堂だ。品物を見極める目と腕が売り物で、だからどんなに小さくともやっていける。これが屋のついた商売でも花屋がどうしても市民社会に必要な訳で、職人もいれば芸術家もいる。この人たちを絶対に東日本大震災の後も復活させるのだ。産地も同様だ。福島県、茨城県、千葉県産は上質なものが多い。風評被害で野菜は半値以下になっているものも多いが、花については買参人はいたって冷静で、単価も他の県のものとほとんど変わりない。一部食品スーパーなど気にするところもあるが、セリ単価が他県産とほとんど変わらないところを見ても、全ての食品スーパーが買い控えているということはない。どのように販促していくかが今後のポイントとなるが、販促に注意したいのは輸出の時だ。輸出時に一言添えなければならないのではないかと考えている。
まず震災後1ヶ月で、日本中で何らかの震災の影響を受けているから、いくつかの仮説を立てて実行計画を立てる。ようやく普段の暮らしに戻りつつあり、いつの時点で旅行など市民のささやかな楽しみを追及しても後ろめたくないかの時期を探り、被災地を除き前年並みの花の消費水準と仮定したい。もし母の日以降も余暇、レジャーなどの支出を極端に控えるようであると、当然失業率が高まったり所得が下がったりしていくので、そのときには花の消費見込みの下方修正を余儀なくせざるを得ない。お金のことだけ言って恐縮だが、企業業績が急激に落ち込んでも給与が一定水準を保っている今のうちに、震災後一ヶ月経っても未だ復興に向けた活動すらできない多くの同胞がいることを片時も忘れることなく、しかし日本家族が普段の生活を送ってもらうことが必要である。国難であるから、7月のボーナスの金額に影響されるお中元は当然控えめとなるであろう。だがなんと言っても大切なのは、国難を思い、しかし慌てることなく一日一日充実した仕事生活と消費生活を送っていくことであろう。希望の朝を迎え、勤勉な昼を過ごし、感謝の夕べを迎える。そして自分の出来る限りの範囲で被災地の復興を手助けし、新しい日本の花き産業を作っていくことであろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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