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2014年5月 5日

世間では倒産件数が少なくなってきたが・・

 5月11日(日)は母の日。和歌山県農殿(経済連に相当する)、JA紀州殿が中心に行っている「母の日参りキャンペーン」(亡くなったお母さんの為に母の日にお墓参りをする)でスターチスや菊の動きが良くなって来た。潜在需要を顕在化できつつあるのは有難い。

 さて、金融円滑化法の期限が2013年3月31日で切れて1年少々経つ。その間、大田市場の仲卸が破産申請をし、1件の地方卸売市場が同様に破産申請をした。それ以外にも、経営が大変という噂のあるところは少なくなく、20世紀と変わらない仕事のやり方をしているところは、花も当然のように篩に掛けられ落とされていく。
 東京の場合、中央卸売市場には仲卸がいて仲卸の競争力=卸の競争力であるが、卸は仲卸とどのような形で協業を図り、大田市場なら大田市場としての他市場に対する競争力をどう図っていくかを検討して行かなければならない。話は戻るが、資金繰りに悩んでいる花き業界人は多い。それは、91年バブル経済が崩壊した後も花き業界は順調に伸びていて、"八百屋さんのポケットの法則(※)"を守らずとも、どうにか仕事をやって来れたからだ。
 
 21世紀に入り、銀行の金利が0になるくらい各企業はお金を返済に回し、内部留保に努めてきたのだが、花き業界はピークが20世紀末だったので、まだまだ"八百屋さんのポケットの法則"を守らずとも事業運営が出来たのだ。
 資金繰りに困った小売店でこういう人もいる。市場で仕入れる場所が卸・仲卸と2つあるから、仕入代金を卸で溜めて取引ストップされた場合に仲卸で購入して卸に支払う。卸でまた溜めて仲卸で支払う。市場と市場との間で、行ったり来たりしながら溜め込む人もいる。いつの時代もこのような人はいるが、現代社会においてカードローンを組んだりする個人はいても、事業を営む者には現在ほとんど見られなくなった。経営者失格はほとんど退場させられたのである。しかし花き業界にはまだいたということである。

 出荷者と卸との取引は勿論のこと、卸と仲卸、仲卸と小売店、運送店との取引も同様である。取引先と決算書の交換による相互信頼の上に契約を結んで取引しよう。
 気配では、いま少し業界では倒産が増えそうである。

 (※)"八百屋さんのポケットの法則"
 なぜ八百屋さんの前掛けには2つのポケットが付いているのかという話。公私混合させない為、一つは売った代金で、預かり物の仕入れた代金で市場に払うお金を入れるポケット。
 もう一つは、アルバイト代や自分の給料、お店の家賃などに使えるお店のお金。しかし、まだ利益ではない。利益を含むお金を入れるポケット。売上げを二つに分けること。

投稿者 磯村信夫 : 12:15

2014年4月28日

農業改革を花のサイドから見る

 TPP交渉が暗礁に乗り上げ、継続案件にはなっているものの、日本とアメリカ双方の意見の隔たりは大きいものがある。日本の場合は、既に農産物の関税など、自民党が昨年の選挙で約束した線ギリギリまで譲歩しているが、アメリカ側はロビー活動が大変強く、現政権が一定の譲歩をし得る権限を有していないので、交渉は続けるが、今後もなかなか難しい問題となる。

 ヨーロッパでは、関税を上げ、一定水準上げたままにしておき、消費者に高いものを購入してもらい、生産者の所得を確保する政策から、関税を順次下げていき、消費者に良くて安いものを購入できるようにするが、生産者には所得補償をする方式を取っている。税金を払う国民と農業を行う生産者双方の気持ちとメリットを考慮する必要がある。

 ここで触れておきたいのは、なぜアメリカがこのように日本から見ると硬直的になっているかである。イギリスでマグナ・カルタが行われ、人民主権の民主選挙で民意が政治に反映されるようになった。
 しかし、新しい問題が起きたり、状況が変わったりすると、国会で意見を述べることができるのは議員個人となる。それでは民意が必ずしも反映されるとは限らないと、民意を反映させるロビー活動を正式な手段として認めることをマグナ・カルタでうたっている。このようにして、ベトナム戦争でアメリカと共に戦った韓国は、戦後移民をアメリカ政府に認められ、カリフォルニア州など一部の場所に纏まって住んでいるが、そういった市などで韓国系アメリカ人によって、ロビー活動が行われ、日本人からすると反日的な像が建てられていることがある。  
 このように韓国や中国は、歴史問題をアメリカ国内のロビー活動で積極的にしかも巧妙に行っていることは、昨今の報道で読者の皆さんもご存じの通りである。アメリカの農業や自動車業界の強烈なロビー活動の中でのTPPの折衝であるが、花き卸売業者として現在起きている農業改革について述べると、もう既に福田赳夫元総理の時より輸入関税0の花きは、生産者の力は輸入品に負けないだけ大変強かった。今はエネルギーコストが上がって大変だが、まだ強い。

 しかし、花き業界全体のムードは、単価が下がったここ15年、内向き・下向き・後ろ向きになり、価格の下落率を少しでも少なくするために多品種、小ロット生産販売になって、生産サイドなら、売れ筋の品種や花に集中すべきであった。今から思うと、改善ではなく改悪の方向に来てしまったのは、結局、業者間で互いのせいにして、消費者に購入してもらう立場の者同士として連帯感が少なかったためである。
 それを通称「2014年フラワー振興法」を議員立法で国会に通していただき、改悪したり手つかずの問題事項を業界を挙げて国ベース、又は県ベースで改善していく。貿易収支が示す通り、今産油国にお金が回っている。国内で循環しないので、巡り巡ってというわけには行かない。そうなると、合理化しかない。暖房やヒートポンプをどのように使い、温度調節をするか。除湿をするか。
 運賃が高騰する中、どのように売上高運賃比率を下げ、手取りを多くするか。花き産地の中のハブ機能、積載効率の良い統一された段ボールや容器の使用など、思い切ってロジスティックまで管理して行かなければならない。

 農業改革において、花の生産流通が更に国内外の消費者に安定して購入してもらえるような生産・流通を各所に繋げて行く。急な変化を避けつつ、目に見える成果を出しながら一歩一歩上がって行く。それがTPPをきっかけに議論されている農業改革における花版の方向性である。

 大田花きで働いたのち、農家である実家へ戻り、現在スプレー菊を作っている生産者に、"企業が農業をやるよりも、農家が企業家精神を活かし農場を経営して行くことこそ、真の農業改革である"と伝え、まずは5000坪を目指して取り組むよう目標を共有している。確実に彼は実行してくれている。花の農業改革は地域のJAや普及所、卸売市場を友として確実に行われていく。

    投稿者 磯村信夫 : 16:44

    2014年4月21日

    ニューノーマル消費

     今日の日本経済新聞で、4月から消費税が8%に上がった後、今迄通りに支出する人は世論調査で全体の3分の2近くいることを知ってほっとしているが、花の商いは過去5年間の中で単価水準が下から数えた方が早いくらいのところで取引量・金額ともに低迷している。これからゴールデンウィーク、母の日とガーデニングやギフト用の花を中心に、活気を取り戻したいところだ。

     近年、燃費の良い車が多くなり、ガソリンを入れに行く回数が減ったが、先日ガソリンスタンドに行った際にスタンドの状況はどうか聞いてみると、確かに経営は大変そうだが、新たにレンタカー事業を行い健全経営しているという。ガソリンスタンドのレンタカー事業は、"ニューノーマル消費"に応えたものだ。

     ニューノーマル消費とは、2011年にニューヨークのウォール街で、マネー資本主義に対してデモがあったことを記憶されている方も多いと思うが、近年の環境変化は新たなお金に換えられない価値観や消費行動を生み出した。それは、2012年頃から特に目立つようになってきた。前年に日本は3.11があったのではっきりと分かる。持続可能なライフスタイルは、地方に新しい雇用を生み出している。勿論、観光業の復活も地方の求人においては大きな要因だが、地産地消的な動きは今日の日経新聞の有効求人倍率の記事にも表れている。日本の各地で頑張っているのだ。

     園芸作物には、小売りの現場で(生産者のことや原産地がわかる)"顔の見える表記"がされており、安全安心だけでなく○○県の繋がりの消費で国産品を選んで購入する人が多い。これを花束やカット野菜などにもしっかりと表記してもらいたい。特に切り花バラに対しては、咲き切るかどうか品定めをしたいので、是非とも原産地表示をお願いしたい。ヨーロッパでは、カーボンフットプリントや、この花を買うと現地の子供たちの給食費として寄付されます等のフェアートレードのメッセージを添えている。別の角度からのニューノーマル消費だ。

     大田市場でも自動販売機の収入は場内花壇の植栽費として、使っていることを自販機に明示している。このような社会が良くなることを考えた投資・消費スタイルが、新しい良識ある消費スタイルとして、人々の中に定着してきている。私の住んでいる大森の町がそうだ。ご家族で頑張っている飲食店が仮に値段が少し高くても、応援したいと思ってそういうお店に行くことが多い。地元、家族の繋がり、地域がより良くなるように。
     そうなると、日本全国で江戸期の藩の時代に培われた伝統や花文化が継承出来たり、場合によっては復活できる可能性がある。農家と小売店が地元の市場と一緒になって、一緒に農業の6次産業化をしていくことになる。一方で、グローバルエコノミーの中で生きていく。効率性と利便性の追求だ。生産者の立場でも消費者の立場でも、である。
     
     そしてもう一方に、ニューノーマルの価値観で生産し、消費する。この2つの使い分けのポイントだが、幸せが一つの基準となるので、売上げやら利益では推し量れないものとなる。ただ、食べて行かなくてはならないので、収支合わせが大変だ。そこだけがポイントとなるのでしっかりと行っていくことが大切だ。
    仕事の立場にたった時、得意な手立てが2つのうちどちらかに偏ることはあるだろうが、大きな企業であろうがニューノーマル消費を思い、小さな企業であれば、長期的且つ効率的に生き残れる方法でニューノーマル消費に向けていくことが必要だ。

     世界の中でも地方の文化に独特のものがあるのが日本だ。外国の方が来ると日本各所の多様な文化に驚く。この多様な文化のそれぞれの発展の時が来ていると言って良い。よく生産者と話すと、農家が生きて行く上でそこまでお金はかからないという。すなわち、ニューノーマル消費を行っているのだ。もう一度、自分の地域の素晴らしさを再確認し、それを売り物に農業、仕事、ボランティアまで含め、働く場を地元地域の維持発展のために作ってもらいたい。これが、差別のない花から学んだことである。

    投稿者 磯村信夫 : 12:51

    2014年4月14日

    踏みとどまる専門店たち

     消費税率が上がって2週間が経過し、ようやく落ち着いてきた。3月末から4月に入り、消費税が上がっても、来店客数を落とさない為にも思い切って店の衣替えをした所が多かった。桜の開花も思いのほか早かったので、その動きを加速した。

     4月に入り、市場ではストックやスナップ、スイートピー等、例年であれば4月の中旬以降に展開されるような安値相場となり、生産者の方々は随分と面を食らっただろう。思い切った季節の先取りの為だ。あれから2週間、ようやく小売店も消費者も落ち着きを見せ、通常に戻ってきた。
     そんな中で花キューピット主催の「フラワードリーム2014」が東京ビッグサイトにて12日(土)~13日(日)開催された。こんなに足の便の良い都心に近いところで、花き業界の一社団法人が開催したわけだから、さすがJFTDというところである。内容も「新しい花との生活を提案する」専門店として、また「日本の花き文化を体現する」専門店として、まさに面目躍如であった。

     花でもボーダーレスとまでは行かないが、競争が激化している。全国のホームセンターは、卸と直接取引をしたり、卸プラス仲卸で取引をしている。又、スーパーマーケットの花の70%は仲卸が花束加工をし納品したり、直接インショップで小売店として入店したりしている。現在の仲卸は第1世代で小売店出身者が多い為、仲卸が一番小売の実態を知っていると思われる。

     先月の3月末に、2年前の2012年暦年の都内5つの中央卸売市場花き部の粗利幅について掲載記事を見たが、大田市場の仲卸はほとんど花束加工を行っていないので、5市場の中で利益幅が最も低かった。他市場の仲卸は、かなり川下に踏み込んだ仕事をしているようだ。こうなると、小売の分野で専門店とぶつかることになる。

     消費者にとって下記の4つの小売の業態が必要である。①新しい花との生活提案をしてくれる専門店。②買い物時間削減のインターネット花店やカタログ販売。③花の買い物コスト削減の量販店。④生活空間の各所に似合う花の調達場所としてのホームセンター。  
    花のことを良く知る仲卸が量販店に納品し、花を販売するようになると、勉強していない花店では専門店でのポジションを確保し続けることが出来なくなるということだ。

     今後、専門店としての勉強をどのようにして行くのか、価格競争でないところに土俵を求める動きがフラワードリームを見て、益々必要であると感じた次第である。花キューピットのメンバーは勉強の機会があるので、幸せだ。

    投稿者 磯村信夫 : 17:26

    2014年4月 7日

    難しくなった花の宅配便と花き輸送

     イーコマースが増えて、大型家電販売店やセブン&アイホールディングスなど、オムニチャネルに力を入れている。今後とも益々物流と電子決済の役割が重要になっていくことだろう。

     羽田から成田までの間に、ロジスティックセンターが多く建っているが、それ故、中で働く人を集めるのも大変で、コストが上がってきた。運転手も人手不足。
     花のように、横に倒せないものや規格外の大きさのものは、容積塞ぎで手間がかかる為、運んで貰えれば良い方で、運賃はこの夏前から更に高くなるのではないかと言われている。専用物流であればまだしも、一般貨物と混載する場合、横に倒したら水が出てくるなど、言語道断。バケツ輸送や段ボールの中に、トレイを置くだけで倒したら水が出るような輸送は、台車輸送をしない限り、専用輸送でも今後別運賃を払わなければ難しくなるのではないかと思われる。

     飛行機の場合、LCCが増えたり、燃費効率から機材が小さくなり、航空貨物の容量が減ってきたので、トラック輸送に頼らざるを得ない。トラック輸送で、飛行機より一日遅れで届けるにしてもチャーター便となってしまう。こうなると、満載ならともかく、少ない荷物は割高だ。
     
     かつては、国内で物を作って日本から輸出をしていた。グローカルの時代となり、そこの国で消費するものはそこの国で作ることが企業の正しい生き方となる。そうなると、地方の県庁所在地でも、大工場が少なくなって地域のGDPは減ってしまった。
     もう以前よりも高く買えなくなっているところに運賃の上昇が起こるとなると、個別の小売店や、仲卸が荷の集まる消費地から別々に買い付け集荷を起こすと言っても、その分の負担金を消費者に負って貰うわけにはいかない。なので、運賃の面から、地方は荷揃えをする為にもグループ化するか、合併をしなければならない。

     生産、出荷サイドの農協の広域合併は更に進んでいる。全農の財務体質与信の基準に合格する卸、仲卸や取引対象企業はそうは多くない。大型JAは出荷先を絞らざるを得ない。
     そして、運転手は少なくなり、運賃は上がっていく。温度設定が出来る車やパワーゲートが付いた車への買い替え要求など、鮮度保持、物流効率化に対する要望はますます高くなって、車代は上がっている。運送店として、確実に利益を確保する為には、復路にも荷が確保出来るところでなければ運べない。高速道路のETC特割も少なくなってきている。

     こういう状況下になると、ついこの間まで自由に宅配業者が使えて、時間指定やら集金もしてもらえた。個数が少ないのなら、規格を合わせてしっかり荷作りをすれば、日本中どこでも飛行機で送れた。今から考えると、日本の花の輸送はBtoBにしても、BtoCにしても、荷主にとって我儘のきいた理想的な配送システムであった。
     これが、ヨーロッパと同じようになってきた。花の場合には、立箱や規格外の大きさのものがあるとなると、これからどうすれば良いのか分からなくなる。

     まずは、独自の物流網を持っているところが力を持つ。花のプレゼントならJFTDであろう。2014年度はまったく違うことを前提に、花き業界各自の物流網をもう一度考えておく必要がある。
     我々花き業界はBtoBとして、産地のハブ・農協の配送センター、消費地のハブ・卸売市場のインフラを今後とも発展させて行く。

    投稿者 磯村信夫 : 16:15

    2014年3月31日

    新年度の目標は生産性・マーケティング・コミュニケーションの三つ

     昨日の日曜日はすごい雨風だった。市場にある常緑樹も冬の葉から春の葉に変わる時期、沢山の冬の葉が隅に積もっている。雨風のせいもあるが、暖かくなって荷が増え、到着が遅くて困る。花き業界はすっかり人手を減らし、損益分岐点を下げたので、少し荷が多くなると流通の各段階で手に負えなくなって結局仕事が遅れてしまう。これでは良くないので、もう一度雇用について考える時期に入っている。

     昨年と今年で明らかに違うのは、団塊の世代でリタイア組が増えたこと。代わって1970年代生まれが社会の中核になって、昇格を含め異動が多く、また個人の生活でも彼らの消費感覚が出てきて、お別れ会や昇進会のお祝いの席で花束や胡蝶蘭のギフト、桜の時期に仲間で花見はするが、家族連れで散歩しながらの花見と洒落て家庭用に花を購入する等、変化がはっきり見えてきている。

     さて、先週の3月26日(水)のことだが、安倍総理がハーグ近くに位置するウェストランドのパプリカ生産者の元へ訪問された。30年前、生産性は日本とオランダではあまり変わりなかったが、日本は91年のバブル崩壊後、設備の更新すらおぼつかない状態となっている生産者も多い。オランダは腰高のフェンロー型温室で栽培環境を整え、栽培技術も改善に改善を重ねて、収穫量において日本の3倍の生産性を誇るようになっていった。総理が見学されたこのパプリカ生産システムは規模を縮小して、石巻に導入されると聞いている。
     
     「学ぶ」とは「真似る」ことなので、今後の日本の施設園芸の手本として、オランダの施設園芸を導入する意味は大きい。日本の特性で、キメの細かいところまで見る精緻さ、そして文化に見える優雅さ、それはスポーツでもフィギュアスケートや体操に良く表れている。勿論青果と花にもだ。
     
     しかし、農産物を輸出するようになって、当たり前のように大きな壁にぶつかっているのが価格の問題である。どのような形で生産性を上げて、輸出先の消費者にコストパフォーマンスを感じてもらうか。価格の高さは本当に大きな壁である。日本は移民は行わないから生産性を上げるしかない。農業分野において生鮮食料品花きはこれを正面から取り組んでいかなければならない。
     
     この3月期を見ても、仏花需要はピークを過ぎ、減少して来ていることがわかる。一方、季節の花や洋花類は需要に手ごたえを感じる。団塊ジュニアの人たちが経済を担っていることが多く、コストパフォーマンスとコミュニケーションに敏感である。そうなると、業界として、更にマーケティングして花を流通させることと、一般消費者に対する情報発信が欠かせなくなってきたということだ。これらを新年度のやるべきことにしたいと思う。

    投稿者 磯村信夫 : 14:54

    2014年3月24日

    便利だが三現主義に反する在宅セリ

     3月は異動の時期で、ご挨拶に来ていただく方も多い。そんな時、私の父を知る方から、「歳を取ってきてお父さんに似てきましたね」と言われることがある。そういう目で、同業者の役員を見ると、どこかしら皆先代社長のお父さんと似てきている。
     人は生まれて乳幼児の時から母親の真似をして経験をし、育っていく。幼児期からそれ以後も父親よりも母親と一緒にいることが多いと思うが、男は歳を取るとなぜか父親に似てくるのは不思議なことだ。きっと仕草も生き方も真似をしているのだろう。これは、社風にも表れる。私がこんなに市場の仕事が好きなのは、父親譲りなのではないかと思う。

     鮮度が失われやすい花のスピーディーでフェアな物流、商流、資金の流れ、情報の流れを考えると、卸売市場システムは、経済学的に最も有効な手法だと考えているが、何よりも花を通じて生産者や仲卸・小売店と接するのが私は好きなのだ。おそらく、今花の仕事をしている人は、華道家にしてもお花屋さんにしても生産者にしても、今自分のやっている仕事が天職のように思っているのではないかと思う。
     その中で、在宅セリを考えた。それは、普通の小売店なら百ケースも購入しない。数十ケースで十分だ。市場に来て始めからセリに参加すると、2時間半以上セリ場にいることになる。確かにセリ場では、自分では普段購入しないものも上場されているので、実物を見て勉強することが必要だ。
     
     
     しかし、忙しいときは配達などで仕入れの時間は勿体ない。だとすれば、在宅セリのシステムでは、セットしたパソコンが自分の必要としている花の5つ程前にチャイムやメールでそろそろ上場されることを教えてくれる。その時にパソコンの前に座れば良い。それ以外の時は、他の仕事が出来る。また、手の空いたときに荷物を取りに来れば良い。このようにすることがリストラでスリム化した小売店にとって欠かせない。これが導入したきっかけだ。来なくても購入できることは、私は困った時の在宅セリ頼みで良いと思う。

     しかし、利は元にあり。仕入れは小売店にとって、とても大切なことだ。そうなると、自分の買わない物も上場されるセリは勿論のこと、仲卸が何を扱っているのかどうか見ておくことは欠かせない。なので、市場に来なくてはならない。
    有名なフラワーデザイナーはセリで購入しなくとも、一週間に一回は必ず市場に来ている。技術が売り物のデザイナーとしても市場に来ることが欠かせない。「仕入れは必要悪」と言わんばかりに市場に来なくなることは、時代に遅れることになる。

     花に接する。同業者に接する。市場の人間や生産者に接する。そうしてこそ、消費者に支持される繁盛店になれるし、生産者は市場に来て、ライバルの荷を見て、仲卸や小売店と接する。そうして初めて良き花作りになれるのである。市場というのは、そういった場で、花好きだけではなく、人好きが集まる場所でも現物、現場、現実の三現主義の場である。

    投稿者 磯村信夫 : 11:31

    2014年3月17日

    『花き振興法』に合わせ振興するには

     20世紀の間、花き業界は成長過程にあったから、団塊ジュニアの世代を中心に順調に良い人材が集まっていた。21世紀に入ると、花き業界も地域間格差が出てきて、新入社員の定期採用をする企業の数は減った。
     安倍政権になってインフレターゲットを設定し、他の先進国と同様に経済成長を行おうとしているが、経済界においては、日本の企業として最後の再生の時だと言わんばかりに俄然と再構築を行い、この3月期には企業の生き方に方針が立って、政府に呼応して久しぶりのベースアップやら賃上げが行われている。
     花き業界が従来のままだとすると他の業界と賃金格差、人材格差が出てきてしまうことが有り得る。それでは花き業界は置いてきぼりを食ってしまう。各事業体は苦しいかもしれないが、労働分配率を上げて、働く人の不満を少なくしてもらいたい。
     
     日本は今後とも貿易赤字は続くが、国際収支は黒字になるという。工業・金融業では、明らかに海外投資型になっている。優秀な人たちが日本にいて、(必ずしも日本人とは限らないが)新しいモノや今迄の産業でも切り口を変えて、新しい角度から事業を行っていくことになる。
     安倍政権の第3、第4の経済成長分野は、いずれも政府が深く関わっている分野だけに、面映ゆい程結果が出ていない。それらの分野は環境エネルギーや医療介護、アンチエイジング、そして農業の分野等だが、これらはいずれも構造改革が必要な分野で、成功するにはストーリー性のある戦略が必要である。

     農業分野の一つ「花き」をとってみても、今後の活性化の為、どう花き振興法を生かせるか考えたシナリオ作りが必要だ。種苗から生産、小売等の各団体がそれぞれ再起を期して頑張るといっても、バラバラでは今までとあまり変わらず、せいぜい横ばいか、場合によっては縮小するかもしれない。となると、文化から商売までの花きに携わるものの、どのようにストーリー性を持って発展させるか、再度戦略を立てなければならない。

     大田花きでは"創って作って売る"で種苗、生産から仲卸、小売店までをパートナーとして、チームを組んでいるが、これだけでは少し足りないような気がする。
    教育(すなわち花育)が重要なのはわかるが、もう一度今の戦略を練る為に都市緑化や公園緑化だけではなく、庭やオフィス内の緑化などを目指して既存の業界団体を網羅する一つの大きな持ち株会社、ホールディングスのような団体が必要で、そこの一段上の協会がストーリー性をもった戦略を立ててそれぞれの団体におろすことが大切ではないかと思われる。次に構想を練る時、少なくともこのようなスケール感でシナリオを考える必要がある。

     農業分野では政府の方針があるが、それは主に大規模化と輸出面に関することが多い。花の場合には、基本的には民間活力、我々が共に意見を出し合って、花と緑を沢山使って貰えるようにすべきである。それは花は心の生鮮品だからだ。その為には、全国花き振興協議会プラス、花き文化の伝承組織等が全て入るホールディングス的な組織が必要だと思うが、如何だろうか。

    投稿者 磯村信夫 : 12:34

    2014年3月10日

    復興援助 沖縄に続けて

     昨日9日、朝のNHKラジオの時事問題の番組で、2回目の大雪で多くの農業用ハウスが倒壊し、野菜の生産が出来なくなっている。早急に対応策を行わなければ、農家の平均年齢は65歳なので、これを機に農業をやめてしまう人が出る。なので、政府や自治体は対策を急ぎ、もう一度農業をしてもらえるよう消費者からもお願いしたい旨の放送があった。

     野菜農家を中心に話が進んでいたが、花き農家も同様で後継者のいないところはやめざるを得ないとしている農家が、大田花きの取引先だけでも何人もいる。支援策は出揃った。
     気持ちの切り替えが出来た元気な生産者は、古いハウスが倒壊したので、これを機に新しく大きな強いハウスを作るという。是非とも生産者の皆さんに前向きに捉えてもらいたい。

     明日で3.11(東日本大震災)から3年の歳月が経ち、そしていよいよ卒業式やお彼岸など、色々な花の需要がピークを迎える。2011年の3.11を含め、過去3年間、花き生産者は1勝2敗、従来の3月相場であったのは2012年の3月だけであった。過去3年間のうち、2回も3月利益がなかったわけだから、暖房費がかかる3月に出荷するのは永年作型の産地か、消費者やお花屋さんのことを強く思っている産地か、一部の需要増をターゲットに絞った産地である。それでも3月は需要期の為、従来通りの産地の顔が出揃うが、いずれも2桁マイナスの出荷予定だ。

     しかし、沖縄県だけは「太陽の花」「JAおきなわ」の2大産地は安定した生産量である。それはなぜか。この2団体が今年の雪害と同じ大打撃を台風やら相場やらで受けた時、このままではいけないと農家が立ち上がれるように「ヒト・モノ・カネ」で支援したからだ。その後、行政も上乗せしてくれて、生産者は以前と変わらぬ生産力を保持するだけではなく、台風にも負けない防風ネット栽培をして、以前よりも一歩も二歩も前進した。こういった沖縄の花き生産業界が取り組んだ努力が安定供給に繋がっているわけだ。このお蔭により日本中の花き市場、仲卸、小売業者は消費者に仏花を安定供給できる。このことを幸せに感じてやって行かなければならない。

     我々は、実質的に恵まれていたり、良いサービスを受けてもすぐ当たり前だと思ってしまう。このような傲慢さが現代人にあるように感じる。
     ドフトエフスキーの「人間が不幸なのは自分が本当に幸福であることを知らないからである。ただそれだけの理由によるのだ。」という言葉がある。
     今年のように寒く、燃料代が上がっていて、生産者は3年間の間に2回も痛い目にあっている。3月向けの作付けを減らしても当然なのに、荷物をコンスタントに出荷してくれている。それを取り扱わせてもらっているだけで幸せである。3月の全体量からしたら、今年は昨年よりもやはり5%以上は少ない。沖縄が頑張ってくれていても、全体数量を埋め合わせるというわけには行かないのだ。こう思うのが普通だ。

     ある物は欲しくなくて、ない物は欲しくなる。こういう癖を人は持っているのは分かるが、プロは努力に報いる。ある物を上手に使い、消費者に価値を認めてもらう。これがプロの仕事だ。4月以降、暖かくなってビニールハウスの中は一足早く初夏の陽気にもなる。その時、有り余るものを一生懸命売る努力をしよう。それを生産者のペイライン以上に持って行き、スムーズな流れを作るのがプロの流通業者の役目である。

    投稿者 磯村信夫 : 16:04

    2014年3月 3日

    卸売市場に要望される仕事

     2月の最終日、築地市場からの移転が決まり、土壌汚染処置も済んだ豊洲新市場で、鍬入れ式が行われた。青果市場と水産市場が移転し、卸売市場に隣接して賑わいゾーンも建設される。
     水産においては、世界最大の卸売市場の移転とあって、今後の発展が期待されるところである。水産の卸売場の設計は分からないが、青果については鮮度保持が出来る密閉型の市場となっており、場内に仲卸や買参人が使う小分け作業所やカット野菜の調整所などがある。
     農政ジャーナリストの小暮先生の言葉を借りると、卸売市場の役割が量と質の調整、産地にとっての生産・販売コストの削減と流通加工、更に安定したサプライチェーン作りと販売事業の人材育成等のニーズを満たすことの出来る卸売市場になって来ているのが分かる。2月28日のこの日、「市場流通ビジョンを考える会」(東京農業大学 藤島教授主幹)の研究会が開催されたが、農政ジャーナリストの小暮先生と卸売市場政策研究所代表の細川先生から、生き残る卸売市場を教えていただいた。
     
     鮮度保持物流、ピッキングと付加価値加工、仲卸と仲良くし、産地・販売のお互いの得意分野で協業する必要性、新しい食味や花飾りに必要な野菜・果物・花の開発と物流、これらが社会から求められる卸売市場の役目である。これら以外に小生が考えるのは、産地の連作による忌地現象を少なくする為、青果市場と花き市場が共に組み、その産地の輪作体系の中に野菜と花を入れてもらうこと。
     また、産地フェアーを一緒に行い、そのスーパーマーケットで、その産地の特産物である青果と花と一緒にプロモーション販売すること。卸・仲卸とも青果市場と協業して行くことは、中央市場や公設総合市場の役目だと考えている。これらを仕事のネタとして行っていくことが欠かせないと思う。
     
     また、よく直売、直売と言うが、直接産地が販売することはそんなに簡単なことではない。営業マンも足りない。なので、卸売市場(卸・仲卸)が直売の代理人として産地の販売をする必要があるのだ。
     現在、花の取り分はこのようになっている。平均値にて小売価格に対し、小売りの取り分はロスやリベートもあるので、60パーセント。卸・仲卸で小売価格に対し5パーセントの取り分。35パーセントが生産者の取り分となっている。生産者にとって卸売市場に販売代理をさせるとコスト削減できる。そして、卸売市場は更に仕事を深め、小売店がロスやらリベートを必要としない売れる花を消費者に供給すれば、小売りの必要経費も少なくて済むので、結果として生産者の取り分は増えてくる。これは、大田花きが最もやりたいことだ。皆がハッピーになる儲かるやり方だと思う。マーケッターとしての卸売市場は新商品開発にしのぎを削って産地に提案していく必要がある。これも卸売市場の大切な役目だ。

    投稿者 磯村信夫 : 16:26

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