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2010年6月14日

仕事の見直し方

遅れていた高冷地の菊も、そしてハウスもののリンドウの出荷も始まっていよいよ夏本番を迎える準備が出来てきた。梅雨入りで需要が減ってきたから、出荷者の方々には需給バランス上ちょっとの間辛抱してもらわなければならない時期となっている。


先週新聞を見ていたら、日本の労働分配率は70%代と先進国の中で最も高いことになっていた。アメリカ同様日本は、世界の中で法人税率は一番高いので、儲けの中から諸外国と比べ一番多く社員に支払うことになっている。社員を大切にする日本の企業としてさもあらんと思うが、だったらもっと個人消費が活発でも良いはずだ。しかしデフレで、しかも貯蓄率も下がっている。また日本は労働生産性が全産業ベースでアメリカより3割低く、サービス業においては先進諸国の平均値より4割近く低い。生産性が低いから賃金の安い非正規雇用の人を雇う。それでどうにかデフレ下でも赤字にならないようにしている。日本では非正規雇用が働く人の1/3まで増えてしまって、しかも安く使われているのだから、消費が活発になるわけはない。しかも労働生産性もせいぜい横ばいだ。このような循環がサービス産業を中心に、特に21世紀になって日本にはあった。

オランダ人と話していると、「日本はいいね。パートやアルバイトの人たちにもう来なくていいと簡単に言えるのだから」と言われたことがある。フルタイムもパートタイムも働く者の賃金や権利はそんなに変わりないのがヨーロッパの労働条件だ。だから「生産性を上げて高所得を得よう」の合言葉でIT投資をし、確実に働くものも会社側も言ったことを実現してきた。失われた10年とこの21世紀に入ってからの10年の都合20年間、生鮮食料品花き流通の分野においても、目立った投資が少なかったので、今後海外との生産性の差をどうやって埋めるか早急に対策を練らなければならない。

何も変えずに「儲からなくなった」「厳しい」と言っているのだが、利益についてはこう見ると考えやすい。利益は結果だから、その原因は外的要因と内的要因からなる。外的要因は事業を取り巻く環境で、天候やらマクロ経済やらその時々の心理状態などがある。この外的要因が46%で、内的要因は54%である。54%の内的要因のうち、その業界が持つ成長性や規模などを想定する事業領域が16%。38%は自社の要因となる。外的要因を観察し、予測する。次に16%の生鮮食料品花き流通業界、卸売業界、花き業界といった事業領域の要因を見直し、取引先により喜ばれるような新たな価値を我々は創り出すことが出来るか考える。さらに38%の自社の努力でどのように新しい価値を生み出し、取引先に好んで使ってもらえるようにするかを考える。我々農業業界の一端を担う会社として、また国民の安寧秩序を担う会社としては、明確に外的要因と内的要因、そして事業領域と自社の強みを46:54(内16:38)でハーバードビジネスレビューが言うように分けて考えるのが実際を整理しやすい。利益を出しにくくなった特にリーマンショック以降、もう一度仕事を再定義し、新しい花き業界・卸売市場業界を作っていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年6月 7日

輝ける仕事

今朝の2時過ぎ、高速で起こった事故の関係で和歌山の荷の延着があった。せり前取引のシールを持って荷台に乗り込んでシールを貼っている。降ろしながら荷受係はせり用とせり前搬出用に仕分けする。遠隔地に向かう運転手さんは「いつもより2時間30分遅れてしまいました」と言い、大田花きの担当者は「安全運転で行ってください。お客様には連絡しておきますから」と言った。
近隣に花の共同荷受所が3つある(羽田日通、東京花き共同荷受、永井荷扱所)大田市場では、品揃えのため4つ目の調達場所として品物を揃えて出発していく。地方市場は良い品物を届けようと努力して地元の小売店さんに荷を揃えている。

私は週3回だが、午前2時か3時には会社に出て全体の荷を把握し、花のサプライチェーンをチェックしたり、社員の労をねぎらったりしている。社員も部署によって2交代、3交代でがんばっているから、特に夜間専門の社員や派遣社員の人たちとの挨拶は私の重要な仕事だ。

ホンダのような会社にしたいと思って、30年間仕事に取り組んできた。優秀な社員が会社を担ってくれて社長自らが後継者を育てること。院政を敷かないこと。そして何よりも大切なのが社長自ら試運転し、社長が判断して車を販売する。それがホンダ流。私もそう思う。この暗黙のルールをどうしても大田花きに根付かせたい。自分の判断が曇るようなら社長を下りる。私もこうあるべきだと、物日の忙しいときなど夜っぴて荷受をしたり、荷物を分けたりする。小売の現場にお邪魔する。無論産地にうかがう。自分の見通しが間違えたら私は大田花きの社長でいることは会社に迷惑を掛けるだけでなく、トップ企業として花き業界に迷惑が掛かる。卸売のサービスだけでなく、毎日生み出す相場、価格に対しても私の責任だ。だから農業新聞をよく読む。そして入荷量も含め、実態をよく観察する。真実が見えなくなったら社長の辞め時だ。人の荷物を預かって販売させてもらっている。そうしたらその作る人の気持ちや1本1本、1鉢1鉢を販売する小売店の気持ちがわからなければ仲立ち業をする資格はない。その毎日毎日の言うなれば凡時にこそ仕事のすべてがあり、凡時に徹する勇気を持つことは森信三先生から教えていただいたことである。よくルーティンワークと言うが、それは本業のことである。核となるサービス、仕事のことである。それをルーティンワークと言う。日々の仕事を決して疎かにするな。これこそが我々が行なうべき仕事で、これを持って生命と差し替える価値のある仕事であることを認識すべきだ。それは生産者と小売店から学んだことである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月31日

30歳のスタート

先週、社団法人日本花き卸売市場協会の総会が愛媛県松山市であった。協会全体138社で2009年の取扱金額が4,000億円少しと、1998年からすると1,500億円あまり減った。3分の2近くになった最大の理由は単価の下落である。日本の経済問題と人口動態の問題から花の単価が下がった。今年もまだ物価は下がっている。1980年代の後半に始まったバブル経済のときですら、ニットなどの繊維産業は賃金の安い海外へ発注先を移し、空洞化した。チューリップやユリで有名な新潟の五泉や小出、そしてバラで有名な寒河江の地場産業はほとんど倒壊した。長く国内に踏みとどまっていた自動車産業も2015年までにかなり空洞化する予定となっている。外資の日本への投資は少なく、日本をウィンブルドン化するのは金融業ですら難しい。今年は40兆円の国債を出さざるを得ないが、これは消費税を15%以上にしたとき得られる金額であり、日本国民が消費税を先食いしている格好だ。生産者も消費者も小売店も高齢化してきており、それは花も同様だ。地方は昔からの農業・地場産業と工場、公共事業の三本柱で運営されていたが、この10年で公共事業が少なくなり、工場が海外に移転して、農業に期待が集まったが、米を始めとする農産物価格の下落で地方経済がうまく回っていかなくなった。とりわけ2003年、BRICsの言葉が生まれ、大国でも新たな経済力を身につけた新興国が経済発展とともに自信を付け、G7、G8ではなく、G20でないと世界経済の話し合いもできない状況になった。今また新たに*VISTAという言葉も生まれ、グローバリゼーションの中でさらに良くて安いものが産出され競争は激しくなった。日本は新しいものを作り上げていく研究開発力とそれを普及させていくことにポイントをおかないと生きていけない状況になっている。

*VISTA...ベトナム、インドネシア、サウスアフリカ、トルコ、アルゼンチンなどが新興国として注目を集めている。

新しいことを考え、積極果敢に行動していくためには意欲が欠かせない。パフォーマンスは「意欲×スキル」だから、日本のようにスキルはあっても意欲が減退している限り、パフォーマンスは上がらない。若いとスキルはまだだが意欲はある。しかし日本は人口動態から見ても分かるように若者の数は多くない。移民政策は取らない方針なので、壮年になっても熟年になっても意欲を失わないように心志を養っていかなければならない。花の法人需要は3年前の半分だ。結婚式も葬式も大きくないが自分らしいものにしたいと考える。この出費も1件当たりでは、21世紀になって半分だ。日本はすでにヨーロッパと同じ花の販売環境になっているということだ。だったら我々日本の花き業者も「良いもの安く」で勘定がきちんと合うようにしていく必要がある。日本国は面積も大きいし、人口も1億人以上と多い。しかもその人たちがスカンジナビアの人たちについで貧富の差が少ない。だから今まで内向きに考えていれば済んだ。しかし1990年代、冷戦が終わりグローバリゼーションと少子高齢化、そして借金財政という内部の問題が一挙に噴出し、新たな英知とリーダーを求めている。

花の場合、進むべき道は明確に示されている。解決方針としてまずヨーロッパの卸売価格、小売価格に近づけるよう良いものを安く作り安く売り、主力を家庭用にしていくことだ。そのために種苗から生産・市場・小売まで、意欲を持って取り組んでいく。"No pain, No gain"「後楽園」の思想で意欲を持って日本の花き業界よ立ち上がれ。1980年に新しく戦後のスタートを切った花き業界は30歳になった。これから大人としての苦労をしながら、日本がこういうときだからこそ真価を示していく。我々がへこたれて花で人々を幸せにできるか!

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月24日

団塊の世代の牽引力に陰り

それだけ花が動いたということであろうか、母の日以降の花の荷動きが重い。子どもたちからプレゼントされた花をお母さんは大事に飾っているのだろう。今年はバラの切花も鉢物も母の日の需要期に出荷が間に合わなかった。そこで母の日の翌週からバラの単価は下がったわけだが、母の日でプレゼントされた花が家にあるという以外に、団塊の世代のトップを切る昭和20年生まれの人たちが65歳になって仕事を完全にリタイアし、家族によっては年金生活家族になり、支出を控える人が増えたのではないかと思われる。近頃のゴールデンウィークや母の日は第二の人生を前にした団塊の世代中心にお墓参りが活発で、90年代のように菊類が安くならず、むしろ堅調市況となっている。昭和20年生まれの団塊の世代のトップが65歳になり、仕事をリタイアし、生活スタイルが今までと変わった。もし団塊の世代が全員65歳以上になると、今でも全国の高齢者の中で三大都市圏在住者の占める割合が50%であるのに、その比率はさらに高くなっていく。貯蓄を取り崩して生活する高齢者が多いとなると一体だれに花を買ってもらえばいいのか、今から目標を定めていく必要がある。ではどういう切り口でマーケットを見たらよいのか。

花は女性が買うか買わないかを決めることが圧倒的に多いだろうから、女性の商品という切り口で見るのが良いだろう。女性は例えハウスワイフでも1人何役と忙しく活動する。忙しい女性を手助けする花を商品開発しなければならない。組み合わせを選ばなくてもいいような出来合いの花束やアレンジメント、買って帰ってそのまま飾れる花瓶付きや器付きの花束。一週間に1回や二週間に1回取り替えてもらえる活けこみサービス。事前に年間予約が出来る時間指定お届けサービス。商品にしてもサービスにしても、その女性の予算やライフスタイルに合わせた新しいサービスを開発しなければならない。ネットで受け付ける。ケータイで発注が出来るということも大切だ。年代のターゲットとしては、ここ5年で団塊の世代が老齢化した後はその頃ほとんどの女性は家族が許す限り働いているから、働く女性が花のある生活ができるよう、団塊ジュニアの家庭に花を買ってもらえるような商品や受発注システム、流通チャネルが必要となっている。

今は結婚式のとき、新婦の教養として生け花は○○流とお仲人が紹介した団塊の世代以上の人たちが花を買ってくれている。その団塊の世代が5年以内に所得が少なくなることを思うと、あせっても仕方ないが花き業界はこのままでいいはずがない。変化を求められているので少子高齢化とグローバリゼーションにあわせた対応を業界の各分野で的確にしていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月17日

打って出る

17日まで西武ドームで「第12回国際バラとガーデニングショウ」が開催されている。今年から日本ばら切花協会もこの会場で品評会を行い、バラのイベントとしてはまさに世界最大のバラ展となった。昨日は昼過ぎに西武ドームに行ったが、会場が押すな押すなの大盛況で、嬉しかった反面、もう少し空いているときに見に来ないとせっかくの苦心作が味わえないと反省した次第。賢い消費者になっているから、物販はサブプライムローン問題以前とは異なり、抱えきれないほど買っていくという人はほとんどいない。良いものを自分の家で楽しみたいと自分の分だけ買っているのが買い物行動であった。

バラ展だけではなく、東京では新宿高島屋で「マミフラワーデザイン展2010」が開催されている。今年は"クラシサク。"というテーマで、マミフラワーデザインスクールの主任教授の先生方の作品が出品されていた。こちらも混雑していて、気に入った作品を立ち止まってじっくり見るというわけにはいかなかったが、まさに見ごたえのある作品ばかりで、室内だというのに五月晴れで澄み切った空気の中を歩いているようなそんな印象を得て、足取りが軽くなった。レベルが高く新しさを発見できる花のイベントは多数の一般消費者をひきつけて止まない。今後とも大きな花のイベントは集客が得られるとの確信を持った次第である。


話は変わるが、新宿高島屋に来たからせっかくなので伊勢丹に立ち寄った。ファッションの伊勢丹は中国や韓国の人からも大変な人気を博しており、衣料品など彼らが買い物する場所としてよく知られている。大田花きの研修所が御殿場にあり、歩いて10分足らずのところにアウトレットモールがあるが、そこも中国や韓国の人たちが箱根に行った帰りに寄る場所だ。偽物の心配をしなくて良いし、本国で買うより安いからここで買うと言う。

韓国はグローバリゼーションとIT革命で、一歩抜きん出た存在になっている。アメリカやEUともFTAを結び、日本には輸出補助金をつけてバラやユリを輸出してきている。GDPの40%以上が輸出で、今後とも輸出で稼ぎ、農業は補助金政策を採っていく。アメリカと同様、世界で最も授業時間が長く、大学進学率も高い国で、スカンジナビア半島と同様、世界最高レベルの高学歴な人たちが働く国である。また中国は外資を受け入れ、国の安定は経済成長8%以上にあると行政府は考えているから、ますます経済成長に弾みがつく。中国は大きな国でアメリカと同様、所得格差が著しくなっているが、韓国はスカンジナビア諸国、日本やバルト海沿岸諸国の次に所得格差の少ない国である。しかし韓国とても21世紀になって所得格差が出てきている。

伊勢丹の話しに戻すと、女性のものは詳しくないので、男性のもので話すと、ディオールオムやドルチェ&ガッバーナなど最先端のブランドを彼らがチェックしているのを見る。アジアの中ではこの2国はグローバリゼーションに適応し、楽観的に考え、経済成長で抜きん出た存在になろうとしている。グローバル経済時代に適合した因果律で、今後しばらく躍進していくに違いないと彼らの買い物行動を見ながらそう予感した。日本はヨーロッパ諸国と同じように内向きなままで変革できなければアジアの中で取り残され、せっかく良いものをこんなにたくさん持っているのに、宝の持ち腐れで終えて衰退してしまう可能性すらあることを自覚する必要がある。これは縮小均衡になりかねない花き業界にも言えることである。MPSの資格を取る。採花日・仕入日を明示して販売する。花保ち保証をする。Walk the Talk. 有言実行。方向は示されている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月10日

消費者の母の日チャネル

昨日母の日で池上にある実家へ行った帰り、花屋さんが10軒ほどある池上通りを大森の自宅に向けて車で走っていた。午後3時頃、高校生でたぶん野球部だと思うが、坊主頭の少年がカーネーションの花束を聖火のように持って大森の方へ駆けて行った。地元に密着した花屋さんがそれぞれ忙しく、今朝仕入に来た人たちと挨拶をしても、忙しかったので疲れているだろうに声は弾んでいた。日本中の花売り場で、普段花にあまり興味がない青少年まで花を買ってくれるのは微笑ましい光景だし、今更のように日本はお母さんで持っていると思う次第である。

さて、今年の母の日はゴールデンウィークが終わってすぐということもあり、花を地方に発送する小売の役割で変化があった。その1として、事前に発送を頼む場合、消費者は最寄りのお花屋さんよりも駅中やネットで発注することが大変多くなっているということだ。街のお花屋さんは花キューピットの加盟店やフラワーシップの加盟店が多いはずなので、地元密着でここに頼んでくれれば良いのだが、自分の行動を知られたくないということか、面倒くさいのか駅の花屋さんやネット、有名花店で頼む。有名花店以外にも通販会社や宅配会社も母の日には花を扱うのでここに頼む。今年は事前発注で街の花店が受注する割合が減った。このことはゴールデンウィーク中の花の相場に大きく影響する。今年は天候不順で、国産は1、2割減であったので、相場は昨年よりも若干高かったが、この時期街の小売店は売れておらず、また発送の受注も少ないとあって、例年並の数量が出た場合には単価は下がっていただろう。

6日の木曜日からカレンダー通りで学校や会社が始まり、そこから花キューピットなどの真価が出てきた。1日前でもこのタイミングでオーダーを受けて、新鮮な花がをお届けできるのが花キューピットやフラワーシップのビジネスモデルだ。言葉を添えて花を贈る。

その2として母の日の早割を行っている店が受注を伸ばした。航空券で当たり前になったサービスを専門店もスーパーマーケットなども積極的に行うところが増えてきた。早割だけでなく、配達日も早くさせてもらったり、母の日以降にさせてもらったりすれば仕事のピークを作ることなく確実によいサービスをすることが出来るので、そうやって値引きをしている店もあった。

今年の母の日は、店売りは地元のお花屋さん・花売場。発送の花は駅周辺やネットが多くなって、かつてはコンビニが一人気を吐いた時代があったが、ネットが強くなってきた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月 3日

わけ合えば余る

日本人が日頃良い行いをしてきたおかげで、ゴールデンウィークは今までとは打って変わって五月晴れの天気が続いている。花き業界は9日の母の日に向け、需要期の真っ最中。作柄は遅れているがお天道様が出て、出荷物は硬めながら小売店にたくさん売ってもらおうと生産者は休日返上でがんばっている。切花のカーネーションは国内産とコロンビア産が母の日向けのギフト、中国産は母の日にご仏壇やお墓にカーネーションを供える人もいて、仏花用に使われる。カーネーションは持ちがいいので、安心して小売店は販売しようとしている。しかし、カーネーションの性質からして、一時に一つの茎から2本、3本が一緒に咲くということはない。菊の切花はこれが出来るから需要量が何倍になっても供給が追いつくが、カーネーションの場合はお兄さん→お姉さん→僕→妹という順番で、時を置いて順番に開花する。もちろん需要期に合わせて作るのだが、1株から切れる本数は限りがあるので、国内カーネーションとコロンビアのカーネーション、また中国のカーネーションは補完関係にある。鉢物では母の日にはカーネーションの鉢とアジサイ、クレマチス、バラの鉢などが補完関係にある。これを競争関係と言わなかったのは、先日面談いただき、ご指導いただいた日本経営システムの方からの教えである。相田みつを氏の言葉に「うばい合えば足らぬ、わけ合えば余る」という言葉がある。母の日の需要に対し、お母さんを想う気持ちを、また大好きなお母さんの喜ぶ顔が見たいと花を贈るとき、その花が本当にもらったお母さんの気持ちや贈る人の気持ちを伝えているだろうか。いや、伝えているに違いない。

環境に適合したものが今年も人気を博す。その時「今年は○○がよく売れた」と言うが、結局は切磋琢磨し、素晴らしいライバル同志という補完関係が背景にあるのである。“One takes all”は実際の世の中ではあり得ないし、あってはならない。


第九次卸売市場基本方針が10月に出される予定だが、それに向け「卸売市場流通ビジョンを考える会」では多様な卸売市場のあり様を提案している。新幹線や飛行場でもハブ機能を元に拠点と地元で役割を分けている。何も拠点が偉く、地元が低い地位にあるのではない。役割が違うのだ。生産者と消費者を主役にこの2人が存分に活躍できる卸売市場のあり様をマーガレットホールの法則に基づき、産地、拠点、地元の3つの機能を追及した姿を提案した。青森市のスモールシティなど美しい日本を語る地方の素晴らしい取り組みがある。日本の素晴らしさは長所を生かし、困っている人を助け合って、生きがいのある生活を送ることだ。母の日の需要期に市場の取引状況を見ていると、私たち花き業界も確実にその方向に向かっていることをありがたく思う。

最後に切花のカーネーションを作っている生産者の皆さんへ。エチレンカットの前処理を十分にしてください。カーネーションはお母さんと同様、いつも元気で長生きする花だということを、消費者にもう一度認識してもらいましょう。そのためには新鮮なエチレンカット液と前処理時間に気をつけてください。品質クレームの半分はこの問題ですから。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年4月26日

保証と説明責任を生産者は行ってほしい

丸の内フラワーウィークスの市場協会青年部のせりは毎年熱気を帯びてきて、今年で3回目だが、年々楽しみにしてきてくれている人がいる。産地の協賛を得て展示やせりを行った。丸の内フラワーウィークスは成功裏に終わったが、今年は足利の藤のつぼみが硬くて展示を1週間延長し、今週末まで飾ることになった。

ゴールデンウィーク中の花の需要は5月1日のスズランの日に始まる。フランスではスズランをプレゼントすると幸せになると言われ、メーデーの日にはたくさんのスズラン売りが街頭に立つ。スズランは今ようやく東京周辺で花をつけ始めたところなので、主産地の長野県や北海道のスズランは残念ながら二週間ほど遅れて出荷される。スズランの日が終わると端午の節句に向けて花ショウブと、お風呂や玄関口、あるいは屋根に飾られる香りの良い葉ショウブの需要期に突入する。これも発育が遅れており、期間中は例年の80%の出荷だ。それが終わると母の日でカーネーションの切花や鉢物、アジサイやクレマチスの鉢物など母の日は花のプレゼントの日となっている。それもカーネーションのように日光が大好きな植物は温室の中が暖かくても咲いてこないので、作付けの80%しか出荷できないと生産者は嘆いている。
これらの需要期の時に、生産者は送り状や箱にどのような前処理をしたか、いつ出荷したかなどをメッセージとして買い手に伝える必要がある。またバラなら開花保証、他の花なら1週間花保ちするなど、可能な限り花持ち保証のメッセージもほしいところだ。生産者は作るだけからメーカーとしての事務仕事をきちんとできるようにしてほしい。それが需要期で欠かせないこととなっている。今後ともカーボンフットプリントや栽培履歴など見える化が必要になっているので、事務量は増える。農協の花き部会やグループの出荷団体などで早く検討し、2010年は見える化のメッセージを市場を通じて小売店にパスしてほしい。小売店は責任を持って消費者に伝える。これは農水省花き振興室がこのたび発表した日本の花き産業の振興策によるものであるが、世界の大きなうねりになっていることでもある。

今までどちらかと言うと環境について協力的でなかったアメリカは、オバマ政権になってこれまでカリフォルニア州だけが取ってきた環境や緑に出してきた補助金を積極的に出してグリーンニューディールにふさわしい新しい方向に社会を引っ張っていっている。オバマ政権と言うと、何もシリコンバレーの後見人だけではない。“新しいこと”、“グローバル”この2つが中心になって世界でリーダーシップを握っている。情報産業だけでなく、これは農業花き産業においても同様であると思っていただきたい。オランダの陰に隠れてアメリカの花き産業からのメッセージがあまり日本に伝わってこないように思えるが、確実にリーダーシップを取ってきている。これは世界のうねりになっている。環境を改善し、住みよい社会を作っていく花の産業。そのためには見える化を行い、適切に産物が消費者に評価される仕組みを作ることが欠かせないのである。この需要期に忙しくても日本の花の作り手がやっておくべきことである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年4月19日

オランダから荷が来ない

復活祭の需要期が終わっていたので相場は落ち着いていたものの、話によるとアメリカの東海岸の入荷はオランダからの供給が途絶え、偏った荷姿となっているようだ。アメリカでは西海岸から東海岸へ飛行機で輸送する時間と、オランダからアメリカの東海岸へ出す時間とそんなに変わりない。アメリカの相場はボストンやフィラデルフィアのマーケットが建値を作る。この2つの都市は歴史ある町として、花の消費も活発で美意識も強く、素材にこだわるのも一つの特徴となっている。
日本でもアマリリスやヒヤシンスの切花など、オランダからの荷がないと困る品目がある。また国際分業しているので、ケニアやエチオピアのバラ生産会社はヨーロッパに向けて出荷できないので困っていると言う。アメリカに卸売市場があれば出荷先を変えることもできようが、アメリカは契約取引のマーケットや問屋がまとまってその地域にあるというだけだから、アフリカの生産会社は出荷できず花を捨てざるを得ないと嘆いている。
インドのバラ生産会社はヨーロッパ向けだけではなく、日本の輸入商社と取引があるから、ヨーロッパ向けのものを可能な限り多く日本で捌いてもらうよう話しをする。バラは5本に1本か4本に1本は海外から輸入されたバラで、国産と海外産地のものとの棲み分けが進みつつある。困ったときはお互い様なので、このままヨーロッパの空港の閉鎖が続くのであればインドのバラをどのように販売促進していくか、打ち合わせをしていく必要がある。

話題をもう一つ。東京地方も40年ぶりの遅い雪で、一都六県でも成りものに大きな被害が出ている。先日も水戸に行った折、梅が結実していないのを見て残念に思ったが、今ちょうど桃や梨の花の時期になっているから、今年の秋だけではなく来年までもこの天候不順は我々に大きな影響を与えそうだ。もうすぐ母の日で寒さと日射量不足からカーネーションの切花や鉢物、バラあるいはアジサイなど遅れが目立つ。年度末にバラの切花価格が高騰したが、その後一週間余り経って遅れていたものが出荷されて価格は急落した。需要期が終わって出荷されては誰も得をしないが、今年の母の日はこのまま行くと供給量が切花・鉢物とも前年を下回る。どこまで硬い切前で出荷できるか、プレゼントだから見栄えが必要だが、今年はやや硬い切前で出荷せざるを得ないので、切前について小売店と打ち合わせて、需要期中に量を確保する算段をしなければならない。景気は緩やかだが最悪期を脱しつつあり、自然災害を極力業者間の友好関係で解決し、乗り切っていきたいと考えている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年4月12日

一つの花き業界の未来

株価が上がってきた。実体経済を7?8ヶ月先取りすると言うから、本年度の下半期は楽しみだが、経済実態からすると上がりすぎているように思う。鉱工業指数を見ると、アメリカ、ヨーロッパ、日本ではいずれも2000年から2003年レベルで、ピークと比較するとアメリカでマイナス10%、ヨーロッパと日本ではマイナス15%以上となっている。花は個人消費関連であるが、社団法人日本花き卸売市場協会の調査によると2007年度比で取扱金額がマイナス10%であるものの、実感からすると2008年度、2009年度でそれぞれマイナス10%のエスカレーターに乗っている感じであった。本年はというと確かに昨年暮れから、切花はデフレを脱却しつつあるように思うが、鉢物は依然厳しい。全体からするとマイナス5%のエスカレーターに業界全体が乗っているような感じがする。

近頃売れ方を見ていても、安くて良い花が売れる、あるいは安くて良い花を売っている店が繁盛する傾向は基調であるが、高級品でも昔に比べ少し安くなっているブランドの花店も売上が戻ってきた。結婚式も葬式も店売りも二極化しているが、そのメリハリが出てきたことは大変喜ばしい。

昨日も消費動向の実態を見に、御殿場のアウトレットに行ったが、日経新聞が報じるように中高年は消費意欲が旺盛で、30歳以下の若い人たちはその割りではなく、ファストファッションに流れているようだ。花もファストファッション的にラッピングを取ると寂しくなるような花も、手頃な小売価格であれば若い人を中心によく売れている。年配者はそういう店では買わず、本店格の地域一番店で素材がしっかりした価値ある花を買う。このようにメリハリがついてきたわけだ。

定点観測をして買い物動向を見ると、確かに二極化したメリハリの利いた消費となってきていることが分かる。この先日本人はドイツ人のようになるであろうか。花だけでなく、あらゆる消費についてドイツ人は賢い消費者である。率直に言ってケチだ。だから好不況にあまり左右されない消費金額になる。オランダからの花の輸出はイギリスや南ヨーロッパなどが2007年度まで良かったわけだが、2008年からドイツが久しぶりにNO.1に戻った。それはドイツ人のドイツ人たるところだ。日本がこのようになるのかと言うと、一部に江戸時代を恋しがっている学者や評論家がいるが、今はそうならない。もっとアメリカ的で、ややもすると少し浪費気味だ。しかしもったいない精神もある。このバランスの取れた落ち着きどころに、どのように消費生活を持っていくかは、広く国内の所得政策や税制をも考え合わせて議論すべき時期に来ている。プラグマティックに言って、幸せとは欲望分のお金ではかることができる。所得政策や税制まで行くと、中期計画にならざるを得ない。短期計画では花き業界も他産業と同様にガラパゴス化を払拭することだ。海外に出て行って、その国の国内消費を喚起させ、ビジネスすることである。花き業界にとってはそうなると当然、この東アジアの台湾や韓国、中国、香港に進出することになる。そして一番の中心地はASEANの花文化の中心地であるタイだろう。日系企業も多く、お互いに国民同士も認め合い、良い関係の国だ。その国で政治的混乱が続いており、その中で日本人ジャーナリストが死亡した。日本の花き業界の積極的な投資とタイの政治的な落ち着きが、結局東アジア、東南アジアの安定と日本の花き業界の富をもたらすと考えるのは私一人ではあるまい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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