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2012年6月 4日

やや消費意欲後退か

 暖地のトルコギキョウがピークを迎え始めている。もう20年以上前のことだが、菊には夏菊という品種群があって、静岡県は積算温度で咲く夏菊の大産地であった。イノベーションで秋菊を日の長さを調節することによって開花させ、一年中しっかりした菊が愛知県・福岡県から出回るようになると、夏菊の産地静岡県はトルコギキョウに品目を代え、トルコギキョウでは第1級の産地となった。時代と共に品目も産地も変わっていくが、トルコギキョウはバラ同様新品種が開発され続け、持ちも良いので大品目となっている。今日から第23週目、小売商は本格的に初夏の品揃えを始める。トルコギキョウは量的に出回っているので、需要にはドンピシャリである。

 母の日以降の相場水準は、3.11のあった昨年と同等か、それよりも少し安くなっている。その理由はGWから母の日絡みで花を沢山使ってもらい、まだ花や緑のある生活が各家庭にあるからである。そして、母の日以降に株価が極端に下がり、日経平均で8千5百円を割って裕福層と云われるご年配の株式を持っている人達は、花を定期的に買ってくださる消費者であるが、この方達の消費が鈍い。株価が花の消費の手応えに敏感に響くようになったと実感して6、7年経つ。今小売業大手は団塊の世代狙いで開店時間を早くしたり、旅行では色々リッチな企画をしているが、花は21世紀に入ってからずっとこの世代に使ってもらい、育ててもらってきた。そして近頃は、この団塊の世代は成熟した大人になるというよりも「いつまでも格好良く生きたい」という人達であることがわかってきた。アラフォーの人達が好きなバラやガーベラも団塊の世代向けに小売店が提案すると良く売れるようになってきた。「金時もち」でガーデニングもブランド苗が人気だ。

 ここのところの相場安は、暖かくなって荷が潤沢に出てくるようになってきたこと。そして、GWでお金を使ってしまって今財布の紐を締めている最中であること。さらに団塊の世代を中心に株安で何となく資産が目減りして消費意欲が低下していることに繋がっている。

 金融不安が実態経済に直結している。2016年までは景気はあまり良くないと予測する人が多い。その中で今は債券が買われているが、株が上がることによって消費マインドが変わってくる。淡い期待をよそに花き業界を運営する経営者は、2012年度も景気が悪いことを想定し、手を打って置く必要を5月締めてみて実感しているところである。

投稿者 磯村信夫 : 13:04

2012年5月28日

人の力に危機感あり

今朝入荷した中国雲南省のカーネーションの中に、オランダからのレインボーカーネーションを真似た一輪に5-6色、色の混じったカーネーションがあった。それを見て中国の生産者の勢いを感じた。日本のカーネーション生産者は、レインボーに7色の色を花に吸い上げさせる技術はオランダでパテントが付いていることを知っている。パテントが付いているからやろうとしないのか。或いはオランダでやっているのだから日本で出来ないはずがない、やってやろうとするそういう意欲がないのか。残念ながら小生は意欲がないと感じてしまうのだ。

ライトを当てると光るバラを静岡市農協バラ部会は作った。このパテントに抵触しない作り方で韓国のバラ組合も光るバラを作った。中国も韓国も良いとすれば、貪欲に真似たりちょっとした工夫を加えてパテントに抵触しないように作ってみたりする。これはハングリー精神と言えるものだろう。日本の花作りも創業者から二世そして三世となってきた。花作りだけでなく、花屋さんも卸売市場もそうだ。だんだんおとなしくなって来ているような気がしてしょうがない。

収益とは「人の力」×「場の力」であるが、同業者が集積しているところの場の力はたしかに日本の産地や市場や小売店にある。日本は平らな土地が少なく人が多い。そこで、業者間の激しい競争があり、「場の力」そして「人の力」となるわけだ。今まで花き業界はそうしてきたので、量の成長、質の成長で伸びて来た。しかし、今、成熟した。

人の力は中国のカーネーション農家や韓国のバラ農家がそうである通り、創業者は強い。二世三世となると、日本の1980年代から1990年代初めのバブル景気を知っていたり、その頃に育ったものは柔になっている可能性がある。私が人の力としてリスクを感じているのは1960年代の後半から1970年代生まれで、家庭が急に裕福になって世の中を甘く見た人達が花き業界にも多くいる事実だ。育った環境、とりわけどういった家庭環境であったか、それによって花の小売店も卸売市場も現在の経営状況が違うように思えるのだ。その証左に花の仲卸が力を付けている理由は、ほとんど彼らは創業者であるからでベンチャースピリットに富んでいる。仲卸の人達は1960年代から1970年代生まれの社長がほとんどだが、時代に合わせて業容を変化させながら事業を拡大している。もし、開設者である地方自治体が卸のいない卸売市場を造っても良いとしたら、仲卸だけの卸売市場となってフランスのランジス市場のような新しい形になっていく卸売市場も日本に多く出来ると考える。2016年まで景気が良くならないと言われているので、再度1970年代生まれの経営者は特に心して経営に当たってもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 14:46

2012年5月21日

母の日も効果抜群、「試飾」

株式市況が9千円を割って大変なことになっている。実態経済の7、8ヶ月の先行指数だと言われているから下半期から良くなると思ったら、どうもそうではないらしい。どうすれば日本経済全体が良くなるのか、なかなか糸口が見つからないが、こういう世の中になっていると認識をして自分の商売を一生懸命やる以外に手はない。

業界により、クロックタイムは違うが、今の世の中はイノベーションが急速に個性を失いコモディティー化する世の中となっている。世界的な競争激化で液晶テレビを例に取れば、家電業界がどのくらいのスピードでイノベーションが値段しか差の付けようのないコモディティーの業界になっているかがわかるだろう。

大田花きのオフィスを見ると、つい3年前まではデルコンピュータばかりだったが、レノボ、LG、NEC、そして人によってはヒューレット・パッカードなどに代わっており、デルコンピュ-タの苦境が良くわかる。携帯電話業界もそうであろう。花き業界に目を転じると、黒物家電のIT家電よりずーとゆっくり時計が回っていることに気が付く。業界としては有難いが、進化を求める消費者は一緒だから、とにかく飽きられないようにしなければならない。

花き業界に5年ですっかりコモディティー化してしまう人気商品はない。その意味で商品価値が続くことになる。その分おっとりした人が多いのは花き業界の特徴だ。こう云うじれったさがある。花小売会社の蓑口社長がイノベーションした「試飾」は本人がもっと皆に使って欲しいと希望しているが、まだまだ少数で潮流までいっていない。そこで今回の母の日用にとその前に全店舗で「試飾」を大々的に行った結果を聞いているのでお知らせしたい。
「試飾」は、'試食'と同じように、店の前を通った人に花を一本でも渡し、「飾ってみて下さい、『試飾』です」と言って渡すのだ。日頃、花を買う習慣のない若い人やご年配の男性などとにかく普段花を買わない人に渡す。母の日だから若い人からお子さんに事前に渡した。そうしたらなんと店の売上げは昨年を50%以上も上回る店舗もあり、一昨年を上回る店が多かった。景気調査によると今年の内需関連の商売は前年比で上回っても、2010年比を上回らないところが多い。ところが、「試飾」は効果抜群、お店は絶好調。渡す人が信じて行えば必ずお客さんが増える。

今まで蓑口社長のお店は普段から花を買ってくれる高齢者のお客さんを大事にしていた。しかし、これは当然なこと。「お客さんを増やすこと。そうしなければ店は続かない」こう言うのだ。「試飾」をして売上げを伸ばそう。「試飾」をして新しいお客さんに来ていただこう。どうもお花屋さんは同業者が行っている成功例をウォッチして早速取り入れる努力をしないので困る。物の競争はグローバリゼーションでクロックタイムが速くなり、コモディティー化するので、宜しくないが普及も速い。製造業といっても農業の花は生き物でそう簡単には作れない。「試飾」イノベーションは発明者である蓑口社長が「真似して下さい、そうすればもっと売れるようになって荷主さんを儲けさせることが出来るようになる」と言ってくれている。必ず効果ある「試飾」、是非とも花を買いそうもない人、買ったことのない人に小売店は「試飾」を試してもらいたい。全国のお花屋さん、お願いします。

投稿者 磯村信夫 : 10:50

2012年5月 7日

小さなお店の時代

GWの後半は天候に恵まれず、関東地方では災害に遭われた方もいて、花の小売店も思った通りに売れず残念であった。しかしその中でも「レールサイド」の花店やホームセンターでは雨をそこそこ防げたので例年よりも良かった店、例年並みの店が多く健闘したと言えるだろう。

昨日の日曜日、都内では午後ちょっと雨が降っただけだったので、個店と云われる独立小売店舗の花屋さんを見に行った。私自身が感じているのは、大店舗やチェーン展開している専門店から、時代は小さな独立店舗に向かっていると感じるのだ。ラーメン屋さんがそうである通り、小さければ小さい程、個性あるラーメン屋さんは人気だし、近所に酒ディスカウント店もあるが、良い日本酒を取り揃えていたり、ワインでもまだあまり知られていないスペインワインを中心に扱っている小さなワイン屋さんは繁盛していて、地元の小さな店の方が魅力的に映るのだ。大森という街はだいたいそうで飲食店でも地元の人がやっていたり、或いはよそから来た人も独立店舗でこだわって、しかもコミュニケーションをカウンターごしで御主人とはかれたり、仲居さんと馴染になって好きなビールの銘柄がスッと出てくる店が人気で、チェーン店は予算がある若い人しかいっていないように思う。

我々は消費者として価値を買うので、花を買う時にも花という素材を買うのではない。我が家の場合、朝顔を洗う時その日花を見て花が微笑んで挨拶してくれるので、その微笑を僕は花屋さんに買いに行く。妻は週に一回玄関の花を買っている。それは外から家に帰った時に、或いはお客様が来た時に玄関で最初に目にする花が自分や家族のモットーや雰囲気をかもし出す。そういう花や枝物を買って活けている。僕は消費者として、価値=質÷価格だと思う。だから季節の花やおまかせの花で気に入ったブーケを買っている。

昨日ウォーキングをしながら、10件以上の独立店舗を見たが、改めて花店の個性の出し方の難しさを感じた。ラーメン屋さんや酒屋さんに比べてその店が何をこだわっているのかが、パッと見てわかりにくい。もちろんセレクトショップが正解なのだが、花のようにこれだけ素晴らしい素材が多くあると、"こだわり"を伝えづらい。何かデザインに優れているだとかバラにこだわっている店だとか伝統的仏花や新しい仏花など仏様の花にこだわっている花屋さん等、それぞれ店構えと店員さんのコスチュームで少しは外から見て推測出来るのだが、美容室と同じくらい何にこだわっているのかわかりにくいような気がした。店構えや雰囲気、照明やレイアウトの仕方などそれぞれ自分が目指す、花のプロとしてのこだわり。花のどの分野で東京一を目指して頑張っている店が地元にあると知ってもらうのか、僕は楽観的だ。地元の人は絶対気になっている。価値=質÷価格で小さな店はスケールメリットが出せないから価格を下げてはならない。下げる代わりにおまけをつけるのが常套手段だ。昨日廻ったお花屋さんたちは今後とも頑張っていける店だと思う。後は街の花屋さんは、花を料理する小料理屋さんだ。どんな料理で街のお客さんを惹きつけるのか。そこから、現状からもう一歩進んで今の店にない何か一点でいいから一年中こだわったモノやサービスを売り物にする店を作ってもらいたい。そうでないと、魅力的なレールサイド専門店チェーンと量販店にある花売場に負けてしまうと、昨日感じた。時代は小さなお店の時代、もっと魅力が出せるのに、このままではもったいないのである。

投稿者 磯村信夫 : 16:32

2012年4月30日

新しいGWの過ごし方

昨日お台場へ行った。ダイバーシティーが出来たので、近所のビーナスフォートもお台場の海岸に面した商業施設も負けじとばかりに新しい展開を試みており、プールだったらまさに芋洗い状態、すごい人だった。

車のアクセスが良いのはご存知の通り、公共交通機関もゆりかもめだけでなく、JRからの乗り入れの鉄道で池袋まで約30分とお台場は恵まれている。車のナンバーを見ると県外からのお客さんも多く、外人では中国や韓国のお客さんも多かった。3.11があった一年前の閑散としていたお台場とは様変わりである。様変わりのついでにもう一つ言うと、東京は観光客を呼べる街になっている。東京から脱出する人も多くいるが、このGWに千葉、埼玉、東京、神奈川の東京圏に観光に来る人がとても多い。銀座・丸の内・赤坂・六本木などの都心部も大変な賑わいでお天気が良かったせいもあるだろうが、GWで花が売れないという状態ではなくなっている。GWの様変わりの状況は、結婚式をするようになったことでも、今までとは違うことがわかるだろう。ついこの間まではGW中に結婚式をした人は顰蹙を買っていた。それが今では、「せっかくの休みなのに」とは言わない。人が心底喜び合える仲間や親戚が集えるのは休日だ。だからGWで結婚するのは悪いことではないという時代になっているのだ。

GWの前半に結婚式が多いだけでなく後半の週末もしっかりあり、今日は白の洋花が不足気味でもあるので昨日の早いうちからセリ前取引は活発であった。
急に暑くなったから今日の入荷は多いが、20世紀だったらGWは花が売れないとお花屋さんは仕入れに来ないだろうに、今日はお花屋さん達の出だしが良い。GW中にこれだけの買参人がセリ前に集まっているなどと誰が想定しただろうか。GWの過ごし方がすっかり変わったと花の取引から見てとれるのである。

投稿者 磯村信夫 : 10:41

2012年4月16日

電力不足と油高

大飯原発稼動の問題から、電力不足と電力値上げに関して経営がおぼつかなくなる企業の記事が新聞各紙で取り上げられている。僕は大田区大森に住んでいるから町工場の人達の苦労をリーマンショック後、円高も合併せ嫌というほど見てきた。
そしてバラ切花協会の会員生産者の方々が夜間の割安電気を使用し、ヒートポンプを使って夏でもケニア・コロンビア・エクアドルに負けない品質のバラを作ろうとする意欲と技術に拍手を送ってきたが、このたびの値上げは夜間電力も昼間と同様の値段になるという。
夏場のバラも国産は素晴らしいが、夜間電力の値上げと共にストップしてしまうのを危惧している。
海外からは3.11後、日本国あげての節電の取組みを高く評価するとお褒めの言葉をいただいたが、原発停止後の電力不足を考えると、どのような形で激変緩和措置が行われ、又、将来は原発に頼らないでいけるかは日本のチャレンジで、そのことで日本は技術立国になってゆくことだろう。現在は激変緩和措置として安全性を確保した上、原発の早期一定稼動は必要だと、大田市場のまわりには冷蔵庫やら保冷物流施設がいくつもあってそこの間を歩いてくるたびにそう思う。
卸売市場も同様で今までは5年ごとの見直しであったが、この4月から毎年農林水産省は一定基準未満の中央卸売市場をチェックし、地方卸売市場にするとした。
地方市場になった公設地方市場は市や県が開設することになるが、市や県の経費は減るどころでなく、電力の値上げに対応しなければならないし、電力確保の為、電源の二層化などが必要となっている。

今、花や青果物の輸送は、ほとんどがトラック便となっている。かつてはジャンボジェットが飛んでいたから空港貨物で量を運べたし、運賃も安かった。それがエアラインの大競争時代になって飛行機は小さくなるし、さらにここに来てLCC(ローコストキャリア)が日本でも人気になってくるなど油代が高くなっているので、飛行機はさらに人専用のように小さくなってきている。こうなると荷を運ぶのは時間がかかっても定温管理が出来るトラック便となる。産地で余冷し、沖縄や北海道などは船を使うか、最寄の港からはトラック輸送、九州からはほとんど今トラック便になっている。そうなると市場では、定温管理が出来る定温庫や荷捌き場、場合によってはセリ室が必要で鮮度を保つには、市場での温度管理は欠かせない。
市場では閉鎖型とまではいかないが、定温管理をする売り場を持つことになる。また、持たないと生産者に出荷してもらえないので電力不足・電力代の値上げは経営を直撃する。余談だが、4月の上中旬になっても一輪菊の相場が堅調なのは、12月の「返し」の荷が出てこないからである。それは今年の冬が特別寒かったこともあるが、毎年4月になると陽気が良くなってお葬式も少なくなり、従って菊の需要は少なくなって4月の菊の相場は油代が出ないことがあった。だから、油が高いので暖房をしていない生産者が多く出荷量が少ない。産地にとっても、卸売市場にとっても、電気代の値上げと油代の高騰は経営を圧迫する。今後とも続くと思われるので、産地においては省エネ栽培方式や省エネ品種の作付け、卸売市場においてはスピーディーな仕分け作業と荷主相乗りによる効率的なトラック輸送を編み出してコストを更に下げなければならない。卸売市場全体では実質日本の中核市場となっている地方公設市場の前例にとらわれないマネジメントが期待されるのである。

投稿者 磯村信夫 : 16:31

2012年4月 9日

もうこれ以上国内花き生産を減らさない

景気は一進一退のようである。1万円を超えた株価は、戻り9千円台で推移している。欧州経済が良くないので、欧州を第1位の輸出先としている中国の外需は減少気味で、中国の内需は住宅の高騰などで金融の引き締めが効いているので失速気味だ。主だったところのシンクタンクの今期の経済見通しを見ると、日本は復興景気があり2.5、アメリカは2.0、欧州はプラマイ0からマイナスとの見通しが多く、年後半からは中国が再び8%台に浮上し、景気をひっぱっていくことが予想されており、現状一進一退だが日本は恵まれていると言って良いだろう。日本の景気は相対的には悪くないが、足元の諸物価を見てみると資材や石油が高騰しているにも関わらず、あらゆるものが低価格になっている。売れないのでデフレは止まっていない。

花でも例えば卒業式の花、年度末に契約が更新されるレストランの生け込みの花代、そして会社のギフトの胡蝶蘭も低価格化が一段と進んだ。前年比100の受発注件数だとすると一割安の90%はまだ良い方で、交渉の末85%以上の金額を確保するといった風だ。すなわち、法人は渋い。また、花では結婚式・葬儀の経費需要は渋い。このような状況では国内の花の生産を増やしていくというようなことが難しい状況だ。それぞれの花の産地の作付け見通しと出荷予想を聞くと、2011年度対比、すなわち震災があった昨年の対比で90%台が多い。これではしんどい。それは同じ園芸作物を作るのであれば野菜の方が利益率が良いと生産者は思っており、現実に2010年の農業センサスでは立証されていた。
 
現在花き生産が増えている所は野菜の産地ではなく果物の産地が増えており、トータルで各卸売会社は前年比並みを国産で確保しようと努力している。しかし、それが出来ないのでコンスタントに入荷する輸入の花に不足分を頼っているのが現状である。まだ詳しい調査結果は出ていないが、先週の台風並みの通称「爆弾低気圧」で多くの被害が出た。また雪が多く、いつまでも寒いので8月のお盆の荷物をもう心配している人もいる。卸売会社は生産者の不安を取り除き、ともに花き生産を行っているくらいの意気込みで、連絡を密に取りながら産地生産活動に勤しんでもらい再生産価格を得られるよう、今まで以上のコミュニケーションを取って行きたい。

日本の花きは海外からどのような評価を受けているかというと、これはほんの一例だが、2011年外務省が行った対日世論調査によるとオーストリアにおいては、日本へ旅行へ出かけて行って、一番見たいのが、神社・仏閣81%、盆栽38%、相撲・武道28%、生け花26%、すなわち日本の文化に関心があるのである。海外から教えてもらい、再認識するとたしかに日本の花はすごい。今は花き業界の辛抱の時だとしても、後10年もしないうちに日本人の胃袋は小さくなり少なくなる。よって食品の需要は減る。しかし、花需要は減少しない。農業者にとって花を作って農業の経営を行っていくことは正しい選択と言えるだろう。ただし花の生産は技術がいる。野菜は、例えばキャベツは頭のてっぺんからつま先までキャベツだが、花は首から上の花に特に魅力があり、茎・葉など全身の姿が揃って価値が出る。切花はこれで1セットである。鉢物はもっと切花より全身美を競うもので作りは難しい。切花でもカットしたもので、もしつま先だけを見せたらこれはゴミだと思われてしまう。だから、花は下級品が野菜の下級品に比べて安くなってしまうのでやる気のある人、生産技術が集積している産地に頑張ってもらい、我々花き業界は支援して、その地域の人の輪を徐々に広げてもらう。そうして国内花き生産の減少に歯止めをかけ、将来のプラスへと転じていく年にしたいと思っている。もうこれ以上、単価の下落も生産消費減もさせない年度としたい。

投稿者 磯村信夫 : 17:20

2012年4月 2日

花は生・配・販同盟が正解

東京ではようやく桜が咲き始めた。そうは言ってもまだまだ寒く、朝晩はコートが手放せない。今週は例年よりも寒いというので、冬物の花と春物の花が重なって出荷される週となってゆく。小売店は家庭需要と冠婚葬祭需要を当て込んだ販売をしなければならないので、卸売価格は2010年比で単価は若干安めに推移する予定である。
 
新年度を迎え、鉄道で云えば駅の役目をする花き市場の存在意義について認識を新たにしたい。かつて、商社の無用論が言われたが、今も卸売市場無用論を時々見る。卸売市場の存在の根拠は、マーガレットホールの法則(取引減少の法則、在庫適正化の法則と場の集積の力と情報の力によって根拠付けられる。)だが、卸売市場はまさに生・配・販同盟なのである。

ここではちょっと消費者から支持を受けている小売の繁盛店がどのように仕事を行っているか見てみよう。まず専門店だが、セレクトショップ化した花店が成長している。月替わり、週替わりで品揃えを変えたり、カリスマ店長と言える人が目利きで品揃えをしてお客様に共感を与え購入してもらう。量販店の花売場も売れてしまったら品物を補充したり、或いは店舗間の移動によって売場がいつも新しくなっている。そう云った少量多品種の品揃えのお店が人気だ。中には大量多品種という量販店もあるが、それは売る力があるからで多品種がミソのところだ。このように花売場を支える多品種、また代替品がきちっと揃う卸の存在が花市場の存在意義である。もちろん仕事だから「質・価格・納期」の3つが重要であることは言うまでもないが、小売店がお客様に満足してもらうには市場がかかせない。しかも出来るだけ仕入れに時間を費やすことなく地元に花市場があることが望ましい。鉄道網のように花き流通はなっている。新幹線が通って欲しいと願っているところも通ったら通ったで、買い物は大都市に行ってしまうし宿泊客もいなくなったと嘆くこともある。しかし、地元を大切にする気持ちは消費者も小売店も生産者も変わりはない。だから品揃えで足りない花があるのなら、中核的な市場からそれだけ分けてもらい、小売店がお客様にとって魅力あるものにしていく必要が市場にはある。全国の花市場は日本中どこで花店を開業したいと言っても、素早く開店出来るだけの品揃えを地元市場は提供する。

サプライチェーンプラス市場間ネットワークで2012年度は、花の過不足を極力吸収し、全国民に花のある生活を楽しんでもらえるようにする。それが全国130もの花の花き卸売市場の共通の役目であり願いである。

投稿者 磯村信夫 : 17:06

2012年3月26日

新しい花、ラナンキュラスに暗雲が・・

本日の入荷はお天気も良かったので、彼岸期は間に合わなかった花が出荷されて5万ケース以上の豊作型の荷姿になっている。しかし、まだまだ肌寒い日が続くので、チューリップやスイートピー、キンギョソウなどの春の花の商品価値が充分にある。これで単価は2割安で2010年並の卸価格になっていくだろうから、小売店は量を売ってほしい。
 
今日はトレンドにのっているラナンキュラスについて改善点を申し述べたい。支出が増えているものはいずれも新しい物事に対してであり、皆が知っていて代わり映えしないものの支出は減少する。花き業界ではグリーンカーテンは有望だ。そして、球根切花のラナンキュラスは種苗家の草野さんが市場や生産者と一緒になって新しいものを次々に商品化してきている。「一本棒で花が大きい」が、トレンドだからこの形にラナンキュラスをしたてているフラワースピリット(生産者の組織で現在株式会社となっている)の品物は牡丹や芍薬と競い合える花の大きさである。「トレンドを先取り出来なければ終わる」というように、ラナンキュラスはトレンドにのった新しさから脚光を浴びていた。しかし今年は様子が少し違う。売れるものと売れないものがはっきりしだしたのだ。ラナンキュラスが好きな人、品種名を覚えていられる人は品種指定をしているが、あまりにも多い品種で名前もアルファベットが頭についたり、さまざまな名前なので購入する側が覚えられない。特に大田花きは中核市場として仲卸や地方市場などが利用する卸売会社なので、彼ら大手の担当者の方から「この間購入したラナンキュラスですが、黄色のこういう花の大きさの品種は何という名前ですか。」「セリにしてもセリ前取引にしても名前が覚えられない。」「お客様から名前で発注してもらわないと違うものを届けてしまってクレームになったりすることがあります。」「名前がわからないからいくつか購入して店頭に並べると真っ先に売れるものと残ってしまうものが出てくる。忙しいからそういうことを2回も繰り返すとどうしてもラナンキュラスは後になってしまう。」ということであった。ラナンキュラスの場合、種苗会社が新品種を開発し品種特性や咲き方、花持ち、そしてカタログなどの情報を添えて新品種が世に出回っているわけではない。ラナンキュラスの名前が覚えられないと言っている人達は「まだダリアの方がお客様との受発注で間違いはない」と言っている。

ネーミングやカタログは情報化社会にあって大切なことになっている。ラナンキュラスはこのことが原因で実際の荷動きに影響が出ているのだ。全国のラナンキュラスの生産地は品種の写真を撮って出荷先の市場との情報取引に役立ててもらいたい。そして是非とも自分のところで作っている品種を展示しカタログを作成するなど情報武装を急いで欲しい。株式会社サカタのタネがラナンキュラスを独占販売していたときはマーケティング活動がしっかりしていた。民間育種家と流通業者で新品種を商品化することがこれからあるだろう。その時に覚えやすいネーミングと品種カタログを必ず作成するというマーケティング活動が不可欠となる。このことを肝に銘じておいてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 16:16

2012年3月19日

3月の花良く売れています

3月に入り、少子高齢化と所得減でどこまで売れるか心配した花き需要であったが、「案ずるより産むが易し」で、店頭で花が良く動いている。3.11後の絆消費とメリハリ消費に支えられて、母の日まで商品としての花きは他の物材と比べて価値が高く、大筋としてしっかりとした需要が見込めるであろう。

'彼岸の入り前、心配した仏花需要'
「無縁社会」とか「孤独死」だとか言われている通り、約5千万世帯のうち、半分が一人世帯、二人世帯であり、全体の30%が単身世帯になっている。単身世帯そのものは、ヨーロッパでも30~40%くらいだから、消費面においてはそうは心配していないが日本は中高年男性と高齢男女の単身世帯の比率が急速に増えたので、それが「無縁社会」や「孤独死」の社会問題を引き起こしている。このように、サザエさんの家族やドラえもんの家族に見られる家族間の「縁」やら「絆の大切さ」を3.11で思い起こしたのだが、家族そのものが壊れているので20世紀のようにお墓参りで使われる花への数を同じように見るわけにはいかない。だから、彼岸の入り前にも沖縄県で例年通り菊を作っていてくれていたから仏花素材は極端には困らなかったものの、千葉のキンセンカ、ストックは例年の半分だった。お墓参りの花の数が出るのならもっと相場は高くなっただろうに、21世紀になり家族が壊れてそう期待出来る数は見込めなくなっている。お花屋さんや花加工業者はそう見ている。

'卒業式の花の予算が横ばいからやや下げ'
1990年代と2000年代生まれの子供たちが卒業している。そこでご両親はダブルインカムの人もいれば、奥さんがハウスワイフの人もいる。ただ我々がいつも頭の中に入れておかなければならないことは、日本の給与所得者の平均給与は1997年が最も高かったことだ。その年467万円である。国税庁発表の2009年の給与所得者の平均給与はリーマンショックでボーナスが下落したり出なかったりしたこともあり406万円、年間で61万円も少なくなっている。もう少し詳しく見ると、300万円以下の人数が2009年は2000年に比べて25%増え、中産階級と呼ばれる500~1000万円の人数が22%減ったということだ。
 野田総理が就任のとき、健全な中産階級を増やすと言ったのは、まさにこういうことだ。こうなると夫婦で働いて、まず600万円の一世帯割り収入を目指すということになる。800万円を次にどのように目指すかということになろう。800万円の年収になると、お洒落を楽しめるようになるし、コンサートや旅行に行ったり、花のある生活をしたり出来るようになってくる。それにはいかにして安心して子供を育てられるよう保育所と会社の中で既婚者を受け入れる体制を作るかが急務である。子供の数が少なくなっただけなら中国の一人っ子政策の子供達のように、おじいさん、おばあさんも近くに住んでいる人が多いことだから、卒業式や謝恩会の花がもっと使われてもいい筈だが、しかし、実際は単身世帯が増えているのと世帯所得が落ちているので、花の値段について厳しい予算提示をしてきている。

'しかし結果良し'
たしかに所得は厳しい面もあるが、団塊ジュニア以上の個人需要はしっかりしている。それは、前前回でも書いたとおり殆どの花売場で時代にあった品揃えがされており、時代にあったお洒落な取り合わせの仏花、ミニブーケ、アレンジが提案されているからだ。1990年代生まれ、1980年代生まれの人達が中心となって花店を切り回している。この人達の花の価値、提案作業は消費者に受け入れられている。今後とも、若い人達のパワーに期待をする花き業界である。

投稿者 磯村信夫 : 16:48

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