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2012年12月10日

夏までの潮流 2012~

■ギリギリの加温でも母の日までに出荷
 4月から初夏にかけて表れた傾向で、今後とも続くものと思われる潮流を紹介したい。
原発停止で節電が叫ばれ電気料金が上がり、先進的なバラ農家はヒートポンプを入れても暖房経費削減に繋がったとは言い難い状況になってきた。
そうなると、3月中に出荷できないものは母の日目当てになってくる。とにかく暖かくなってから荷が潤沢なのだ。施設物も露地物もこの傾向は今後とも変わらないだろう。

■咲かせて出荷が国産
 切花は硬めに切って咲かせると、後処理をしっかりしていないと色呆けするし花が小さい。物によっては、咲かないで終わってしまう、咲かせた物を切って出荷する。
その方が綺麗な状況が長く、持ちも良いというようにバラ・カーネーションは変わってきた。輸入品との差別化だ。
球根切花は難しいかもしれないが、それ以外のものは硬すぎない切り前が評価されてきて、店頭でも「バラはある程度咲いていた方が良い」と消費者の中でも「咲いたものを買うこと」が浸透してきた。

■母の日は鉢物優位
 切花のカーネーションは母の日前、一年分の10%を売ってしまう。イギリスのバレンタインデーのバラのようだ。母の日は徐々に鉢物のウエイトが高まってきた。
団塊ジュニアが団塊世代の母親に贈る。団塊の世代がその母親に贈る。消費者の好みもそうだが、発送やラッピング、プレゼントとしてすごい数だ。
商品化する手間を考えれば鉢物が簡単だ。ラッピング、荷造りだけで良い。
新年度4月から母の日まではまさに花と新緑のシーズン、花の価値が高い時期だ。それが母の日の鉢で締めくくられる。そんな潮流になってきているのだ。
 
■母の日過ぎは夏まで輸入花が少し
 日本には花の大産地が6つある。輸送園芸地帯として、北から北海道、東北、九州沖縄。そして、地元の産地として一都六県関東地方、中京には中京地方、関西には関西地方がある。
高齢化と直売所が増えたことから、春と初夏、秋と初冬が産地である関東、中京、関西の市場出荷量が減っている。
この時期単価が下がるのだが、下がらないことも多くなって来た。高冷地の早出し物がとても必要になっている。単価が安定してきたのは、この時期母の日以降輸入品も盆まで少なくなるからである。

■無加温の時期、販売促進有効
 無加温の時期になると、天候によって一斉に出てきて、一気に終わるということがある。週で見ても月曜日に多く、需要が高まる週末は増えないから相場はやや上がる。
しかし、月曜日のたびに相場が潰れ、週末立て直したと思ったら、また月曜日にということが露地物の季節の良くないパターンだ。
月単位で見てもだいたいが生産はもう多くないのだから、出荷量が多くなると、その次が少ない。だから予測が可能で、多くなる時に販売促進を小売店に計画してもらえばいい。
そうすると、お値打ち品が割安で手に入るから消費者も喜ぶし、花を買う習慣化にも繋がる。
こうしてコミュニケーションが良くとれている産地は、出荷市場を通じて54週のうちの一つの週に多すぎる花を入れてもらって売り抜けている。
露地の時期は、よりコミュニケ-ションを密にとることが所得の向上につながる。

■試飾で売上増
 花小売会社の蓑口社長が発見し、皆さんに必ず売上が上がるからと実行を呼びかけている販促活動が、「試飾」で時々前年比30%以上増の売上になる。
普段あまり花を買いそうにない人たちに試飾をしてもらって試したところ、必ず前年よりも売上が上がるが、「お花を飾ってみてください」というと、怪訝そうな顔をする。
しかし、「試しに飾って見て下さい。試飾です。」というと笑顔で貰ってくれる。
その人たちが300円の花でも買いに来てくれるのだ。こうして花の良さを感じてもらい、店の売上に繋がっていく。
時期的に売れない時、相場が安い時は試飾を行って店の売上を伸ばそう。ただし、普段花を買わない人に渡すことが大事。

■前向きが七夕人気
 お中元の時期だが、何よりも人気なのは七夕の笹だ。団塊ジュニアの子供たちが幼稚園で、そして自宅、商店街で自分の夢を短冊に書いて吊るす。随分と日本人は前向きになった。その証が良く売れて来た七夕の笹に良く表れている。

投稿者 磯村信夫 : 16:15

2012年12月 3日

今年の1月~3月から潮流化した傾向

 今年一年を振り返り、新しく生まれた傾向を数回に分けて語ってみたい。
2012年、冬の厳しさは久しぶりのもので温暖化が吹き飛んだような感じであった。油の高騰から生産量が少なく、今後を方向付けるトレンドがいくつも生まれた。

"鉢物は需要期集中型"
 12月に出し遅れた荷物はあったが、3月までの間、鉢物は作付けが少ない。今後フラワーバレンタインで鉢物もギフト用に開発していくが、何を開発するかバラの鉢が中心になると予想は出来るが外はわからない。切花のように何でも春の花というようにはいかない。
12月の後、3月まで出荷量が少ない時期となる。

"国産白菊少なく高騰"
 従来から中国でも神馬が作られていたが、それに加え韓国、マレーシア、ベトナムと安定して日本に出荷できる体制を取ろうとするきっかけとなってしまった。円はリーマンショックの前からすると、2割以上高くなったので海外の花生産者からすると、高齢化社会のトップランナーである日本へ向けてこれならいけると思わせた。国産の大産地は神馬より素晴らしい品種を日本のチームとして開発、生産していくべきだろう。

"油高から出荷も道州制の範囲"
 九州では、未だ消費量よりも生産量の方が多い。なので、九州圏外に出荷していかないと価値が下がってしまう。秋から冬にかけて日本中に荷を今まで出荷してきたが飛行機が小さくなり、大量に運べないだけでなく大型トラック中心の輸送となってきた。
 それ故、九州の生産地はまず福岡までというのは運賃を考えた時、常識的な出荷先。せいぜい中国地方までで、関西市場までとなると競争力が強くないと運賃が高くなって出荷が難しくなってしまう。
 売上高運賃比率20パーセント以下、これ以上の運賃では手取りが少なくなって、何のために花を作っているのかわからなくなってしまう。こうして花き生産の面積の減少が九州において加速化してきた。

"トラック輸送中心になって、出荷市場を絞り込んでいる"
 燃料費高で、生産者の冬場の出荷量も少ない。そうすると市場の数を絞り込んで積載効率良く、量をつけても価格変動が少ない市場に出荷せざるを得ない。花の生産地の農協にとって、また花の卸売市場にとって売上額は1・2月は損益分岐点に達しない。よって、12月の反省をしたり、3月の計画を立てたり、もちろん節分やフラワーバレンタインや桃の節句の需要も2月はある。しかし、出費を抑える月でもある。
今年の1・2月から大型産地の市場の絞込みが本格化した。

"輸入品増える"
 今年の3月は、本当に寒かったから国内生産が少なかった。例年並みに数量を確保して頑張ってくれたのが沖縄県だけであった。不足分は輸入品で補われた。輸入花がなければ、売るものがないという中堅市場もあった。
 菊・バラ・カーネーション・ラン・葉物の国際流通5大品目は卸売市場が専門輸入商社等を頼って一定割合販売するようになったというのが、今年の冬から確かな潮流となった。

"国産カーネーションの人気"
 カーネーションの3本に1本がコロンビアを始めとする輸入品であった。市場によっては、ほとんどが輸入物となり国産が朝ドラの影響もあり、人気が沸騰してきた。そうはいっても価格のイニシアティブが輸入に握られており、国産を的確に評価できる卸売市場は限られている。よって、国産カーネーションは市場間転送しても価値ある品目となってきた。

投稿者 磯村信夫 : 16:15

2012年11月26日

悩み多き人が活躍する花き業界にしよう

 時代は確実に変化するのである。先週の木曜日は11月22日"いい夫婦の日"であったが、三連休前にも関わらず、午後の結婚式が多かった。今まで少しは"いい夫婦の日"に披露宴を行う人がいたが、結婚コーディネーターを利用して結婚する人が増え、記念日が覚えやすい"いい夫婦の日"に披露宴を開催していた。

 先週は4日間も結婚式の多い日が続き、第3四半期一番の結婚式需要の高まりとなって洋花類は高騰した。結婚披露宴のパーティー会場では主に新婦の趣向に合わせた花が飾られ、流行の色使いだけでなく、時代を先取りした色使いや花の素材も使われるようになっているが、その需要に応えられる小売店や卸売市場(卸、仲卸)は然程多くない。生産者は先週の相場を見て、自分の出荷先市場が結婚式と関係があるかどうかを判断することが出来る。高くならないとすれば、宴会需要のある小売店が仕入先と選んでいない市場であるということだ。

 いよいよ暮れに突入するが、今年は度重なる台風で沖縄県の花の産地は甚大な損害が出たが良く立て直し、どうにか不足分を求めて東奔西走せずに済みそうである。この復旧措置は立派なことだ。

 また、松や千両は夏の異常干ばつと、9・10月の記録的な暖かさで出荷本数が前年並みには確保出来ない可能性がある。その上、外国人労働者が少なくなり、毎年お願いしている年配の人たちだけでは選別から出荷までの手仕事をこなしきれないでいる。こうなると結局出荷量は全体的に減るが、万遍なく少なくなるというのではなく、ある市場にはあって、ない市場には畑の作柄以上に少なくなってしまうということが起きる。それは今までの生産者様との取組み具合において、販売代金の払い方、販売するロット、上がる金額、運賃などの経費、その産地にとって利益が出たかの収支と今後どのようになるかの予測によって生産地は市場を絞ってきているからだ。

 3.11後、特にこの2012年、どこでも利益を出すことが難しくなり、今までの収支と今後期待出来る収支から取引先を変えてきている。結局は財務体質とそこで働く人の人材レベルが生産にしても流通にしても生鮮食料品・花き業界において生き残るかどうかの分かれ道となってきている。

 こういう詩がある。
「老いぬれば悲しみ多し 若ければ悩み多し 人の世はある」
この悩み多き若い人に活躍してもらう場が与えられ、生き甲斐を持って働いている組織体が生き残れるし、そういった悩み多き若き人たちの数が多い産業が伸びていくのである。

 高齢化社会にあって、悲しみ多しを理解し、分に則った仕事をすることも必要であるが、それだけでは変えられない。悩み多き人たちが活躍してこそ業界のブレイクスルーがある。

投稿者 磯村信夫 : 12:47

2012年11月19日

寒くなりましたが、"灰色カビ病"注意!

 昨日の日曜日、読み終えた本が田中修先生の「植物はすごい(中公新書)」その中に、桜の葉が落ち、水気を含んだ時に桜餅のあの葉の香りを出すというので、平和島界隈の桜の名所をジョギングした。平和の森公園に弓道場があるが、そこの裏手にある桜並木の所は土曜日の夕方、大嵐だったので葉が堆積し、まさに桜餅の香りが漂っていた。

 桜の葉は人間にとっては良い香りだが、虫などには嫌な臭いを出して寄せ付けず、自分自身は肥やしとなり、桜を長生きさせようとしている。まさしく世の中には無駄はないと思いながらジョギングを楽しんだ。

 今、大田花きではクレーム時の病虫害について調査機関へお願いし、特定化してもらっている。その調査結果を元にいつどこで発生したかが病原菌の大きさでわかるので、産地や輸送会社に連絡し病気の予防に努めたいと思っている。

 この上半期の調査によると、市場クレームの病気の80%が灰色カビ病(ボトリチス)であった。品目でいうと、多い順にバラ・トルコギキョウ・カーネーション・リンドウ・ガーベラ・ヒペリカムである。なんとバラ・トルコギキョウだけで50%を占めている。灰色カビ病の発生し易い温度は、私たちの業界において使われるショーケース内の温度帯の8~15℃でも繁殖し、4~30℃までの間は繁殖が止むということがない温度だそうだ。これは大変なことであり、花き業界は灰色カビ病と一緒に作業をしているということである。

 生産者の温室、作業場やストッカー、農協の集出荷施設、輸送中のトラックの荷台、卸売市場、仲卸の店頭やストッカー、花束加工場、小売店の店頭やストッカー等、言い出したらキリがない。市場で灰色カビ病を見つけたら早速何かしらの策を考える必要がある。委託品なので実際は廃棄というわけにはいかないので、こういうリスクがありますというように、灰色カビ病の花を購入するお花屋さんにも知らせなければならない。

 今、花束加工業の活躍でスーパーマーケットで花を購入することが一般的になってきた。食品売り場で灰色カビ病が付いた花を売るわけにはいかないので、花束加工の段階で差し止めなければならない。

 寒くなってきたが油断せずに灰色カビ病のチェックをしていきたいと思う次第である。

投稿者 磯村信夫 : 12:05

2012年11月 5日

販促第一

 コートの季節になって来た。市場にも白ぬりが出るようになって、何か今年は秋が短く、秋物を売り損ねた気がする。季節の訪れが遅いと、今年の10月のように前年を下回ることが多い。景気の先行き見通しは明るくなさそうだが、花の場合には天気と景気をやる気の工夫で補えることも多く、プラス5%、マイナス5%の幅に収めようと小売店も市場も努力しているが、今年の10月は10%マイナスになったところが多かった。

 卸売市場では切花を中心にセリ前取引の比率が上がってきて、情報が大切になってきている。早い的確な産地からの送り状情報はどこの市場も欠かせない。これによって得意先のお客様に売り込める可能性があるからだ。買い手の小売店や仲卸はかつて自分はここからしか買わないと云う時代があったが、今は2社以上仕入先を使っているのが普通だ。なので、どこの売り手が高いか安いかは、市場や仲卸より買い手の方がよく知っている。

 そうなると、大切なのは仕入れ先のコストが安いかどうかである。すなわち品揃え、代替品があるかなどどこでも値段はそんなに変わらない為、必要な時にしっかりと品物が揃うか、走り物があるか、そこにしかないオリジナルな物があるか、余っている物を押し付けられないかなど、物流まで含めてトータルの仕入れコスト・パフォーマンスが決め手となるのである。

 20世紀と比べて一般的な花でも、その市場が得意とする花の取扱数量のシェアーが上がっている。それは日本中の買い手が仕入れソースを多元化した為であろう。「他にはなくて、ここの市場にはこんなにあるのか」ということが起こってくる。そうなると流通業者は、自分のところを選んでもらうには、商品開発に力を入れて行くことになる。それが卸・仲卸・小売店まで含め価格競争から脱する方法だ。

 しかし、その前に花は本当に十分だと云われるくらいレストランや家庭に飾られているだろうか。商品開発も大切だが、まずは販促活動であろう。そこで、フラワーバレンタインだけでなく、まず11月22日の"いい夫婦の日"を取り上げ、小売店の皆様に道行く消費者へアピールしてもらえるよう販促活動をしよう。

 "オランダ屋"様の試飾は、実際に好評である。売上増を見込んで、相場が下がる10日、20日近辺に試飾を行おう。新しいお客様、普段花を買わないお客様に花のファンになってもらえれば業界は発展する。消費地にいる者の責任として、まずは販促、次に商品開発、優先順位はこの順番だ。

投稿者 磯村信夫 : 12:06

2012年10月29日

くれない族

 好きな番組の一つに、NHKラジオ朝4時6分からの"明日へのことば"と日曜日のこれもNHKラジオFMの12時15分からのトーク番組がある。これを聴きながらウォーキングやジョギングをしたりしている。大変ためになるし面白いので機会があったら皆さんも是非一度聴いて下さい。

 私は本や他の番組でも学んだので、ノートルダム清心学園理事長の渡辺先生のお話の中に出てくる"くれない族"のことは、ベストセラーの著者でもあるのでお聴きになったことのある人も多いかもしれない。"くれない族"とは「認めてくれない」「~してくれない」という風に思ってしまう人のことで、私たち誰にでもそんな気持ちがある。

 急に「うつ」の話になるが、私自身の経験ではうつ病を克服し、以前よりもさらに良い仕事をしている人はいずれも"くれない族"を脱した人であることが分った。能力がある筈なのに、もったいない。何年もまだ"うつ状態"のままの人は、相変わらずどこか自分を被害者の立場に置きながら相手を責めているのではないか、そのこと自体が物事をあるままに受け取れない我欲のなせる業であるということを気付かないのではないかと思う。

 腹を立てることは自分が一番偉いと思っている傲慢な結果であるし、周りから嘱望されているのにうつが治らず狭い範囲でしか働けない人には、その人の具合を看ながらだが、「そうじゃない。くれない族にならないようお互いに気を付けよう」と云いたい。現実を受け入れ、その場で精一杯生きていくことの難しさは一定の年月を生きてきた者として理解できるが、自然の花とそれとは違って人間の都合で作られた栽培の花、いずれも文句も云わずに素晴らしい花を咲かせようと生きている。その花を見ていれば、花の教えである他を批判しない、あるがままを受け入れ、その中で精一杯生きていくことが学べるのではないかと思う。花作りの名人は棟方志功のようにその花の持っている能力を十二分に開花させるお手伝いとするのだ。

 花き業界で遇されていないと思っている人は花を見て、自分が"くれない族"になっていないかチェックしてみよう。社会からも花からも教わることは山とある。

投稿者 磯村信夫 : 17:14

2012年10月22日

素材の旨味が日本文化の特徴

 昨日の21日、大田市場祭りがあった。花は文化そのもので、華道池坊流の組織は神社仏閣の建築業の金剛組に次いで現存する二番目に古い組織体であることでもわかる通り、今に生きており、世界のフラワーデザインにも強い影響を与え続けている。

 食においてはゲルマンの民やアングロサクソンの人たちのように身体を健康に保つ為のものとしている国がある一方、中国・トルコ・イタリア・フランスのように食を文化として捉えている国がある。日本食は素材そのものの持ち味を活かし料理する。素材に過度の手を加えていないように見えて適確に手を加えるその手法は現代フランス料理のみならず、中華料理、近頃はベトナム料理にも強い影響を与えている。素材を活かした装飾と食の文化、これを支えるのが我々卸売市場である。

 全国花卸協会(仲卸)は目利き会を開催し、「情報取引が多くなっている中で我々仲卸が真の目利きが出来なければならない。そうでないと、規模は小さいが本物を作りこなす生産者の品物を適切に評価出来ない」と勉強会を開き後継者の育成に力を入れている。我々卸売会社もセリ前相対の比率が大きくなり、実際に品物を触る機会がめっきり少なくなった。産地においても共選・共販が多くなると農協担当者が実際に畑に行ったり集荷場で品物を触ったりする機会が少なくなる。それでは良くない。農協の担当者も本物を見極めることが出来る人であって欲しい。

 そんな危機感から大田花きでは3年前、研修所をもう一つ作り農業実習を行っている。新聞で見るとモスバーガーやワタミ他、美味しい野菜を積極的に食べてもらおうとしている外食産業の人たちも農業実習していると云う。農業実習はとば口だが、日本の食文化・花卉装飾文化をさらに前進させる為に我々市場人は目利きを発展させなければならない。

 そう思って昨日の市場まつりを見ると、卸と仲卸が用立てしたが、花では切花・鉢物とも良い品物を即売出来たと思う。鉢物は全て国産であったが、育種は外国の種苗であるものが半分あった。切花では外国産のものが1/3。球根・切花のように外国の球根を使ったもの、或いは種苗の発案が外国産であるものが1/3あった。

 グローバリゼーションは花の場合、当然のこととして日常の取引の中に存在している。それ故、国産の切花・鉢物類であっても海外の育種動向・生産動向を見極めておく必要がある。鮮度を加味した素材そのものの価値は国産に勝るものはない。しかし、その価値の差は輸送手段の発達やケミカルコントロールによって少なくなってきている。よって、大田花きは5年前時間が経つと飛んでしまう香りを国産の花の勝負どころの一つとして提案したのであるが、香りは重要な一つと云うよりも付随の価値に今のところ留まっている。

 素材そのものを活かしきる技、お花屋さん・華道家・アレンジャー、そして料理人の技と我々プロの市場人の評価眼、これが今後とも日本の装飾・食文化を支えてゆくのである。成田屋(市川家)の歌舞伎十八番助六の紫の鉢巻きは今でも築地の旦那衆、仲卸組合が届けている。このことこそ市場の目利きの役割を象徴するものである。

 さあ、農業実習をして生きたものに触れ、良いものを味わい、実際に市場で品物に手を触れ、目利きの役割を果たして行こう。品物のプロだけでなく、市場人は相場のプロでなくてはならないこともお忘れなく。

投稿者 磯村信夫 : 11:25

2012年10月15日

小さな会社もまずミーティング

 昨日の14日まで丸の内の仲通りでガーデンコンテストとIMFの総会に合わせてイルミネーションが施されていた。東京駅の新装開店と云おうか復興工事が終わり、10月に入ってこの2週間新しい装いの銀座・有楽町・丸の内を楽しんでもらった。国内外の人達は、日本の良さ、東京の素晴らしさ、そして可能性を再確認したことだろう。

 花き市場協会では青年部が6日(土)と10日(水)「丸の内花市場」を行い、花き流通における卸売市場の存在をPRし、セリでは双方向性のやり取りの楽しさを感じてもらいバラとユリ中心に抱えきれない程の花を買ってもらった。

 IMFの諮問機関である委員会のステイトメントは、世界経済は下振れリスクがあること。また、アラブ地域や日中間の領土問題などで不確実性が高まっていること。これを特に先進国の英智協調で再度安定した経済成長へ乗せていくことを期待し、共同声明とした。確かに世界中の株式の出来高は少なくなり、債券が買われていることを考えると先行きの経済見通しは明るくはないと見るべきだろう。

 大田市場の最寄の駅である流通センターからモノレールに乗って浜松町へ行く時、領土問題から乗客で韓国、中国の人達がめっきり少なくなっていることがわかる。また、東京の花の関係者の会議は秋葉原で行うが、電気街でも中国の人達が減ってもう一度秋葉原の店は日本人相手にメイド喫茶のビラを撒いたり、店舗を変えて飲食店になったりとにかく日本人向けの商売に既に変えて行っている。

 花も暦年で云えばまだプラスでいる所もあるが、4月~10月だと前年よりマイナスの所がほとんどと云える状況になっている。これは花き卸売市場の現状だが、この景気の悪さと止まらないデフレ現象をどうするかというものである。こういう時こそ経営力の差が出る。経営力の最たるものはもちろん経営者の力によるが、良き従業員がミーティングをしベクトルを合わせてPDCA(※)をしているかに尽きる。経営の良くない所は朝礼くらいは行っているが何をどう取り組むかなど、Pもなければ業務のブレイクダウンの話合いのDもない。

 社員教育まで含め、まずミーティングを行って良い会社になって、そして外部要因である景気や天気を跳ね除けたい。景気が悪くなると組織の大小を問わず、例え家族経営であっても話合いをして行動しているかという良い経営のところが伸びてゆく。伸びないまでも落ちが少ない。小さな会社もまずミーティング。これを今週は提唱したい。

(※)PDCA・・・Plan(計画)Do(実施・実行)Check(点検・評価)Act(処置・改善)

投稿者 磯村信夫 : 13:01

2012年10月 8日

卸売市場システムを転位させる

 2004年の市場法の改定により、自己の計算による買付けが中央卸売市場の卸売会社に許されてから、もう少しで10年経とうとしている。力の弱い卸売会社は「買付けだったら出荷します」と云われて買い付けて販売したところ、売上高営業利益率は1000分の3になってしまったのが、青果中央市場の卸売会社である。

 ただ単に買付けをしたというよりも買付けをした場合出荷奨励金が出ないから、産地から指値で委託出荷が行われ、指値で売れないから結局残品相対の形を取り差額を卸や仲卸が補填した形になって卸の利益率は今しがたお話したようになり、また仲卸も3分の1が赤字になってしまっている。

 花の卸売会社はこの轍を踏みたくないので、どのようにすれば産地と協業の形を作れるかを模索してきた。最終商品に近いところまで考えて生産流通させる今、農水省が補助金を出してでも推奨している第6次、生・配(卸)・販同盟の型となった。リスクを一方的に産地に取って貰うという形をとらない花き業界を今後とも進めて行く必要がある。運命共同体のサプライチェーンを作るのは市場流通の基本であり、日本以外で市場流通が主流のオランダも日本の農産物の第6次産業と同じ形をとっている。

 大田花きはこのように卸売市場流通は農業と花き消費の発展の為に欠かせないものと考えているので、中国雲南省昆明市にある"昆明国際花市場"をオランダの現フローラホランド、当時のアルスメール花市場と一緒に立ち上げた。セリ機やコンピュータなどの機材をアルスメール花市場が出した。またその前年に職員を研修させた。大田花きは中国の実用に合わせた運用の企画からオペレーションを教え指導するというものだ。市場の業務は上手く行くようになったが、大田花きが考える生産地の発展に結びついていないのが残念だった。

 問屋制度だと手数料がいくらで売られているかわからないので、手数料率が決まってよりオープンになっている取引所の卸売市場が必要だ。市場そのものがオランダのように生産者の組合が運用しているのであれば別だが、そうでない別の組織となると、日本の2分の1しか耕作面積のない中国の農家は、一軒一軒ではあまりにも非力だ。小さな農家の為に一箇所に荷物を集めて選別をし、まとめて出荷する農協の花き部会・組織が必要だ。"One for all、all for one"の精神に基付いた農協の存在がどうしても必要なのだ。しかし残念ながら、昆明地域では出来ずに農家から荷を買って市場に出荷する産地商人が多くなってしまった。今でも昆明花市場は立派に機能しているが、小さな生産者の所得向上ややる気の向上に直接役立っているとは日本人の私の目からは云えないのである。

 日本は卸売市場が機能しているので、生鮮食料品花きでは大手のスーパーマーケットもG7の日本以外の国のように寡占化が進んでおらず、中小のスパーや専門店では夫婦で営んでいる花店も十二分に競争し生き残ってゆける。消費者はその分選んで買える訳だ。このシステムをアジアにと思い、ASEANの花の中心はタイだから、タイと生産地にも恵まれ人口も多いベトナムに市場システムを使ってもらいたいと大田花きは考えている。

 しかし現実はそんなに簡単ではない。既に花の分野では、多数の問屋が存在し、彼らと競合して市場システムを根付かせなければならない。その為には台湾や韓国と同様、政府が後押しして行かなければならない。卸売市場は、市場システムだけ作っても駄目で大規模農業会社プラス小農家で構成される協同組合の生産部会がどうしても必要なのである。
イギリスの植民地であったところは、"One for all、all for one"の考え方があるので、FAOやJICA共々その国の主要な方々にご理解いただき、日本のような素晴らしい市場制度が日本から移植され社会インフラになる可能性がある。又、オランダの花市場がオランダ系のブラジル人生産者の為に花市場を作り、今では1億4,800万ユーロの取扱い金額を誇るオランブラ花市場(協同組合方式)のようにするかである。

 最後に日本の市場システムの発展型として当面の問題を解決しなければならない。目前の問題として、日本の卸売市場の利益率の少なさは困ったものである。これでは時代に合わせ、変わっていく為の設備投資資金が生み出せない。まずは、合併やグループ化で数の調整を行い、利益を出していくべきである。日本では加工食品卸で売上高営業利益率を1%確保しているが、このくらいないと生産者や取引先の業者に役立つ提案が出来ない。時代に合わせて変化出来ない。日本では次なる発展の為にグループ化・合併・買収(M&A)をする時期となっている。

投稿者 磯村信夫 : 12:54

2012年9月24日

2012年彼岸

 23日(日)の関東地方のまとまった雨は残念だった。東京周辺は若い人たちが多く、選挙で云えば浮動票が獲得出来るエリアでお彼岸というと入りも明けもない。お中日近辺の休日がお彼岸でお天気が良ければお墓参りに行くし悪ければ行かない。22日(土)まで売れ行きは良かったが昨日はさっぱり売れず、今日の取引は苦労している。

 団塊ジュニアが花の消費の傾向を決めたり、需給バランスの強弱を決めたりするようになって数年が経つ。地方では道州制にしたその中心の都市に団塊ジュニアが集積し同じような傾向を示している。北海道なら札幌、東北なら仙台という風にである。特に首都圏の場合、世界で最も人口が密集しており3700万人(※)もの人たちがいて、その花の傾向を団塊ジュニアが決めているのだから天気だとか、気分だとかそういったものが需要に反映して花の相場を決めてゆく。

 秋の彼岸は上半期の末で決算前。会社の中で重要な役割を果たしているアラフォーの人たちはこの時期、泊りがけで行楽に出かけるわけにはいかない。今年は領土問題があり、欧州経済も減退してきて経営計画の見直しも迫られている。そんな中での秋の彼岸・春の彼岸も年度末なのでそれぞれ忙しい。したがって、かなりの数の人が東京にいる。浮き浮き気分ではなく、じっくりこの半年と将来を見つめて生活するのが秋の彼岸期・春の彼岸期である。こういう状況の人が少なからずいるからお墓参りはお中日の天気によって1割以上需要が異なるのである。彼岸需要はこういう傾向であることを産地も小売店も考えつつ経営計画を立ててもらいたい。

 さて、この9月の彼岸でクローズアップされた2つのことを連絡し、それぞれ改善を求めたい。一つはコロンビアのカーネーションの品質が安定せずクレームが出た。輸入商社の皆さんは、再度取引先の納品のチェックとロジスティックのチェックをお願いしたい。母の日から何度かコロンビア産の品質に痛い目にあった買い手から、国産のカーネーションの要望が強くなってきている。国内生産者はこれをチャンスと捉え、選別により注意を払い可能な限り生産拡大をお願いしたい。ナデシコジャパンではないが、国内生産者にフォローの風が吹いている。もう一つは今年の彼岸期は暑かったが、東京では保冷施設をもたない花店が主流になっているので常温で花持ちの良い花を育種したり、産地で咲かせて出荷させることによってかえって消費者小売店での花持ちを良くしたりするなど、常温での花持ちの良くなる工夫をお願いしたい。静岡県花き試験場では、ガーベラの花持ち試験を行った。暑い時期ガーベラは品種により花持ちが全く違う。暑さの中でも品質が落ちず花持ちの良い品種があったり、茎を切らずに株からすっと抜くことによって花持ちを良くしたりすることが出来る。常温でも持ちの良いものを求める傾向が大変強くなっている。以上2点が今年の秋の彼岸期で起きた新しい風である。

※都市圏の人口
1位 東京 3700万人 
2位(インドネシア)ジャカルタ 2700万人
3位 (インド)デリー 2200万人  

東京がオリンピックの開催の候補地として名乗りを上げているが、それは一定の地域にあらゆるものが高密度で集積していて、秩序ある生活が営まれている為である。「復興」を一つの目玉としているが世界人口の半分以上が都市部に集中する21世紀にあって、東京は世界の都市インフラと生活の一つの手本となっていくことだろう。(磯村の見解)

投稿者 磯村信夫 : 12:09

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