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2005年12月19日

2005年 磯村信夫の三大ニュース

53週目の今週はラスト2の誌面です。今年も重大なニュースがたくさんありましたが、私が思う三大ニュースを報告します。

1. 5月に新市場法が施行されました。1999年以前の卸売市場法が生鮮食料品花きの「取引所」としての法律でしたが、相対がセリ入札と同様の正式な取引として認められるようになった99年からは、生鮮食料品花きの「専門問屋」、或いは「専門商社」としての法律に移行してきているようです。
 日本の総合商社が小売業、加工食品卸へ出資し、系列色を強めている昨今、生鮮食料品花きも総合商社系列になっていくのか、或いは独立色を保って業務を行っていけるのかの分かれ道です。国産品と輸入品も卸売市場チャネルで取り扱うことが出来るのか、規制で守られている一方、縛られてもいる卸売会社が経営収支だけでなく、地域の社会インフラになりえるかどうかの瀬戸際での法改正でした。日本全国を見ると問屋化しつつある花き卸ですが、今度の法改正は個々の会社の実力を問われていて、競争の中に活路が見出されるとの判断は、他の規制緩和された業界を見ても自明の通りです。

2. 生産減が明確化しました。切花・鉢物とも生産は減少しています。昨年は台風で被害に遭ったから生産減になったと判断したが、今年は昨年よりも少ない。2002年ごろを生産のピークとし、高齢化で止めたり、新規に花を作ろうという人は少なくなってきています。一部消費は減退していますが、その目減りよりも生産減が先行し、中間流通では損益分岐点を割り込む出荷量になってきました。今後ともこの傾向は続く可能性が高い。

3. 1ヵ月も持つカーネーションの開発が3番目です。大変花保ちが良い品種が国で開発され、それを親に民間が育種していきます。これによってカーネーションが再度メインのクロップになっていきます。現在コロンビアに加え、中国のカーネーションもマーケットに出回っていますが、再度日本のオリジナルとして1ヵ月持つカーネーションを親に次々と新品種が出てきて欲しい。日本花き園芸発展のために、花保ちを最も大切なポイントとしながらもその親を外に出さないルールが大切です。

投稿者 磯村信夫 : 12:02

2005年12月 5日

今年の松・千両の産地概要

 日本中の花の卸売会社でも供給過剰になるに連れ、青果と同様にセリ前相対取引が増えてきて、直前の情報で取引することが多くなっている。その意味で、情報は産地から卸、卸から小売店へ、また売買情報は逆に産地へ瞬時に伝達される。相場情報、或いは損得に関わる情報だ。本来卸売会社は社会のインフラとしての仕事をしているわけだから、卸が得た産地情報は小売店を通じ、消費者に伝わっていなければならない。そうでないと次回も同じようにその消費者が花を買ってくれるとは限らないからだ。出来るだけ今年の作柄情報やどのように長持ちさせるかなど、小売店は商品情報を積極的に消費者に伝えて欲しい。

以上をお願いし、今年の筋物の松と千両の産地状況をお伝えしたい。
茨城産の松は、生産者Aさんの場合昨年に比べて4割少ない、Bさんは2割少ない。思ったより葉が黄色かったり、昨年の台風の影響で根が弱くなっていたり、小さいものが多く、本数ベースでは多く見積もっても前年比20%落ちる。そして肝心の箱数(束数)は入荷が3割程度少ない卸売会社も多いのではないかと思う。葉先がやや黄色いのは、千葉県沖を通過した2回の台風の塩害などによる。また、千両は日本全体を見ると昨年の台風の被害に遭った地域は今年の出荷物にも影響が出て、数量減で実付きも思ったほど良くない。一方、茨城県、千葉県産は実付きが良く、等階級が上がり本数ベースで上限は昨年並み、箱数では1ランクずつ上位等級にいくので、1割増の箱数となるのではないか。

 産地状況はこのようになっているが、相場は売り価格から類推すると花だけで物価が決まっているわけではない。他の物財は新しい工夫をして前年並みの価格を維持しているわけだから、花の小売価格は上げられる状況にはない。そうなると小売店は少ない物は仕入量を減らす、質が良くて出回りの良い物を昨年より多く扱うといった流れに身を任せた商売をするだろう。松も千両も規格や荷姿、せりと予約相対などの取引手法は確実に変わってきている。このような消費地や流通の変化は、鹿島・銚子地域の生産者に数の調整を促すことになる。思ったよりも早く大手の松・千両生産者が新しい時代の産地商人化する可能性が高いと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 18:01

2005年11月21日

顧客サービス

物が溢れているから、情報発信しないと見てもらえないし、気にも留めてもらえない。ということで量販店での産地フェアや大田市場祭り(大田市場での開催ではなく、量販店などで行う「大田市場祭り」)と銘打って販売促進する。販売促進にすぐ結びつける方法と、カルチャー教室を開いてそれをきっかけに販売促進に繋げる方法とがある。「題名のない音楽会」に假屋崎省吾氏が出ていたのも後者だし、IFEXやガーデニングショウなどでの講演や実演も後者である。
この後者の動きを週末型の量販店であるホームセンターが行うようになってきている。相談コーナーを設けたり、講演会を行ったり、ホームセンターの元祖ホームデポの基本に沿った販売方式である。こういうところが規模の大きい小売店の強いところだ。街の専門店はというと、お客様を待っているだけでは仕方ない。ある専門店はダイレクトメールや手書きの新聞を作ったり、メルマガを送信したり、頻繁に店をご利用くださる200人以上の人たちに向けて定期的に情報発信をしている。1ヵ月に1回買いに来てくれる人は全部で500人くらいいるから、その人たちに新聞やメルマガなどを送れば更にお店が良くなる。
このネットワークこそ販売促進のためだけでなく、万が一のときの通信網になる。昨年の台風で出荷量が減少し、質の割に単価が高いのはどうしてなのかというお知らせだったり、今年のように10月から11月初旬は比較的温かく、アメリカのオレゴン州産のクリスマスツリーが病虫害により東京税関で通関できなかったことに対するお詫びなどにも役立つ。
小売りの業態によって効果的な通信網は違うので、自分に合ったコミュニケーション手段を選んでもらいたい。コミュニケーション力は入社試験でも最も重要な項目だが、それがあらゆる分野に渡っていき、今花き業界でも最も大切な能力となっている。繰り返すが,業態や規模によって効果的なコミュニケーション手段は異なっている。

投稿者 磯村信夫 : 16:11

2005年11月14日

値段が下がっても大丈夫な取組みを

 先々週、ドイツとオランダを見ていてグローバリゼーションの中、花の価格は日本でも下がっていかざるを得ないと覚悟した。島国だから輸送コストはかかるものの、今の切花鉢物の単価で留まっているはずはないと確信したのだ。
その理由を2つ挙げるとすれば、日本・北アメリカ・ヨーロッパの国々の人たちを合わせると8億人近くいて、その人たちは経済的にも花を楽しむだけの余裕がある。また、これらの国々と同じ生活レベルとしている人たちのうち英語とインターネットを操る人たちが7億人いて、合わせると地球上で15億人の人たちが同じような価値観で生活している。だから今後とも相対的に農産物価格が高い日本に農産物を輸出しようとする力が働く。2つ目は国内事情だ。中流意識がなくなり自分らしさを求めようとする中で自己実現を目指すのであればいいが、気に入らないことはやりたくない、自分に合っていないからやらないなど、努力することに重きを置かない社会になりつつある。グローバリゼーションは競争社会だから働かざる者食うべからずであるにも関わらず、今の日本の社会はフリーターやニートが示す通りである。
上流が15%、中が45%、下が40%の社会となってきた。そうなると良い物は物語性を付けてブランド化し、売り抜くことができるがこのマーケットは大きくない。花の出荷者は日本だけではなく海外にもあり、上流の15%に好まれない花は価格が下がっていく。こう考えているのだ。
現在の日本の花き業界では、売れ筋が分からなくて結局多様化しすぎてしまい、手間ばかりかかっている。
品種数が多すぎるから、まず効率化を目指し死に筋をカットしよう。そうでないと生産するにも農協の選別所も卸売市場で売るのも大変で、小売店にしても覚えきれないほど品種がある。品目も絞れるものは絞ろう。国内では一番物流効率の良い箱の規格を決めよう。4トントラックや大型車、エアカーゴコンテナの内寸に合わせた最も効率的な統一箱を日本でも作ろう。産地は取引業者ごとに営業コスト、分荷コスト、ロジスティックコストなどを含め、一つ一つの取引コストを明確に計算しよう。ABC分析(Activity Based Costing)で行うのがよいだろう。運賃はプール計算などで丼勘定などしてはいないか、卸売会社は産地と買参人ごとに一つ一つの取引コストや収益バランスを計り、より効率的に取引できているかをチェックしよう。このように個別具体的に収益チェックをしていくことにより新たな事業や利益機会を検討することができる。また、取引する者同士(種苗・産地・輸送業者・卸・仲卸・小売店)がそれぞれ取引条件を提示し、それに基づいて合理的な取引ができていく。日本はWTOやFTAで農業が一つの問題となり、結局主導権を握れないどころか、隅に追いやられる始末である。食管法をなくし、所得保証に踏み込んだ日本の農政はもう農業問題で貿易交渉が暗礁に乗り上げるという恥ずかしいことはやめなければならない。花・青果・魚・肉の価格を見ても分かる通り素材価格は下がっていく。これを前提に考え、収益が出せるしくみを各業界、各社が責任を持って作っていかなければならない。それが今年の価格安の示唆である。

投稿者 磯村信夫 : 17:39

2005年11月 7日

オランダのホーティフェア速報

先週はオランダのホーティフェアに行っていました。ドイツから入り、オランダに行ったのですが、ドイツでは南米の花の浸透度をチェックしてきました。
ルフトハンザ航空は、移民の関係で南米に強く、コロンビアのカーネーションやエクアドルのバラは思いの外ドイツの花き業界にしっかりと根を下ろしていました。オランダのホーティフェアでも、オランダの農家の移住でつながりがより深くなったブラジルからや、アフリカ諸国、東欧などの国々から大変素晴らしい花が出展されていました。

これらの花を見る一つの予備知識として、次のようなことが言われています。
1960年代後半から日米欧で価値観が似てきました。特に1980年代の冷戦中だった頃、その価値観はG7が示す通り、かなり似通ったものになっていました。冷戦が終わり、インターネットが普及して10年が経過した2005年の今日、日米欧の約8億人もの同じような価値観を持った人たちに加え、英語を話しGoogleを使い、Windowsで仕事をしている人たちが7億人ほどいて、ほぼ同じような価値観を持つようになっています。少し古いがまだ使える下水や環境保全のための静脈系中古機械など、日本からの輸出先は中古車同様、多岐にわたります。それはネパールのカトマンズのように光化学スモッグで眼を病んでいる人たちが多い所でも、環境対策をしていこうとする意欲が高くなっていることを意味します。
8億プラス7億でおよそ地球上の15億の人たちが同じような価値観を持っていることは大変大きなことです。この知識を前提にホーティフェアを見れば、世界中の花が似通ってきていることがわかります。オランダのように花き業界をリードしようとしている国は、トレンドに敏感で新商品の開発に意欲的です。トレンドは世界で競争しあっています。パンチの効いた大きい花があれば、造花に負けないように生花や生きている切り葉には色を塗ったり、金粉を振りかけたり、はたまたろうで固めたり、色を吸わせたりなど、あえて自然さを否定しているところが面白い点でもあります。三叉に代表されるような晒し物は、色をたくさん用意し、選んでもらえるようすることです。そこが時代を映し出した新商品で、日本ももちろんこうなっているのです。ですからイタリアの衣料品会社のベネトンが白いポロシャツを輸入して、売れ具合に応じて日本で色付けをするという考え方に、白バラや晒した物なども適応して然るべき時代となっているのです。

投稿者 磯村信夫 : 18:41

2005年10月31日

家賃も経営力で差

10月は散々だった。4週続けて週末は土日のどちらかが傘マーク。独立店舗の売上は前年の3割減のところが多い。そこへ行くとドーム型の花店である駅中やショッピングセンター内、量販店のテナント、量販店そのものは前年をクリアしたところも多いが、一般に1割減といったところ。花の流通商売は本当に三気商売。天気・元気・景気の順で売上が左右される。
こんな状況の中でも店頭売りで気を吐いている会社は何十人の従業員の会社から、2,3人規模の会社まで様々あれど、?経営理念 ?経営ビジョンが徹底していて、これに添って商売が行われている。また、?金銭管理、数値管理がかなり厳しくなされている。これらが共通している。これは小売りでも仲卸、卸、運送会社、或いは生産グループでも言えることで、組織活動として当たり前のことを当たり前に行っていながら、絶えずチャレンジし続けることで前進しているのだろう。

こういう小売りの会社のテナント家賃を見ていると、駅や量販店から売上の15%未満の率で契約している。これは大きい。20%以上だと店頭売りの場合、どうしても競争力が保てない。また、葬儀用の花や仏花を納める場合でも、35%以上ではお客様に喜んでもらえない。
結婚式では、5割近い率の所もあるが、結婚式コーディネーター会社が業界に参入し、競争が激化していて、花を無視するなら徹底して無視、こだわる人は徹底してこだわるので、これも35%がお客様に負担をおかけしない上限であろう。

競争力のある店は益々有利な条件で出店しているところ見ると、経営力の差が富の差となって表れているのがよくわかる。

投稿者 磯村信夫 : 07:17

2005年10月24日

地元での存在感

昨日の朝、東京からこの秋初めて雪をかぶった富士山を見ることができた。季節が一ヶ月ほど遅れているような気もするが、遅れに遅れた運動会を開催した幼稚園などは、良い天気でよかったことだろう。
今年のエネルギー事情から、中国からの神馬の出荷量が大幅に減っていると聞く。昨年は台風で花の値段が高騰したから、この10月11月は昨年の半値である。昨年の高騰により地域によっては作付けも多く、半値以下の所もあると聞く。そのような中でも油高だから国内はもとより、世界中の生産者がこの冬どうしようか頭を抱えている。アジアだけを見ると、日本を除く東南アジアで稼ぎ出すGDPの総和は、日本単独のGDPの半分以下というのが現在の力である。原油は国際商品でどこの国でも同じ価格であるから、現在発展中の東南アジアのこれらの国々にとっては日本よりも痛手であることは言うまでもない。だから上海まで含めた中国の東側でキクの生産を止めたいというところが多く、生産が本当に少なくなっているのだろう。

JFMA(日本フラワーマーケティング協会)のセミナーで、東京近郊の私鉄の3つの駅で専門店のお花屋さん5軒が組んで新しいショップ展開を試みることをお話したことがある。真中の駅を中心に、両隣1駅ずつ、計3駅周辺の花店で同じ屋号、凡そ同じイメージを持つ店作りをして、新しい住民や若い人たちを新たなお客さんとして取り込もうという試みである。このボランタリーチェーンのトップになってもらったお店のOさんが積極的に動いてくれ、3店から同意書をもらったものの、隣の駅に2店舗持つ会社がどうしても同意してくれなかった。昭和40年代に始めたこの会社は、今の社長とご子息を含め3代で運営に当たっている。資産家でもある。最も影響力のあるその店が乗ってくれなかったので、結局このボランタリーはできず終いであった。まだそれほど困っていないからとリーダーのOさんは言うが、大切なのは意識改革だろうと思う。21世紀になって、まず意識を21世紀のものにしておかなければならない。それは入りやすい店、センスや鮮度、安全・安心などの保証、すなわちブランド化などが花店にも必要になっている。どこにでもありそうな花店というのは記憶に残らない花店であり、記憶に残る花店にしなければならない。
私が尊敬する小売店の一つである戸塚の或る花屋さんは、戸塚という所で圧倒的な店舗展開をして、地元とともに生きようとしている。店舗展開をするとなると、人通りの多いターミナル駅を思い浮かべるが、それも一つ。もう一つはこのように地元に密着して当てにされる花屋さんになることである。

投稿者 磯村信夫 : 22:21

2005年10月10日

量販店の仏花は使える

関東地方だけあいにくこの三連休で雨降りが続いている。昨日今日と運動会のところも多いだろうから、きっと団塊ジュニアのお子さん達は、幼稚園の運動会ができず、おじいちゃんおばあちゃんも含め、皆が残念がっているに違いない。このおじいちゃんおばあちゃんを含めて皆で行動することは、デパートなどで買い物をしていても本当によく分かる。

今は家族間で花を贈る機会はあまりないかもしれないが、誕生日には花が添えられていることが大変多い。それは団塊ジュニアの世代が誕生会で花を持っていった習慣があるからで、かく言う小生の孫も誕生日のときに花を贈ったので、8月の家内の誕生日にはその子がバラ一本誕生日にプレゼントしてくれた。

 たぶん女系化していて、娘夫婦が家の側に住むとなっているから、ここをきちっと専門店のお花屋さん達は開拓していってほしい。

さて先週の金曜日、小生の私塾ナルシス会にて都営新宿線江戸川篠崎の会員の店舗競争力を実測するフィールドワークを行った。お花屋さんというのはおかしいもので、ライバルの生花店・園芸店のことはよく知っているが、スーパーマーケットやホームセンター、そしてインターネットの花屋さんのことをあまりよく知らない。ディスカッションしているうちに分かったのだが、駅に隣接しているスーパーマーケット「ライフ」の花が確実に地元のニーズに合ってきている。そしてその分会員の売上が鈍化したことが数字でわかってきた。

特に今年の彼岸のようにお中日前から日曜日にかけて天気が悪いと、「花はついでに買われる」の法則のとおり、生鮮食料品や日配品を買うついでに花を買うとなってしまう。わざわざ花だけ買いに商店街に来てくれない。そしてそのスーパーマーケット「ライフ」の花が、特に仏花は見劣りのしないレベルになってくると、「1日・15日の仏花もここで十分だわ。」となってくる。こうなると物日には仏事の物日が多いのだから、専門店は売れる物日が限られてくる。対策は、結局、昔と同様に御用聞きをして配達もするお取引先の家庭の御用達になる。こうならなくては売上を増進させることが難しくなっている現実がある。

花束加工業者の作る花が良くなっているのは、またスーパーやホームセンターの花が良くなっているのは、21世紀初頭花屋さんが家族だけで経営しようとリストラをした、花の経験があるパート・アルバイトの人達がここに移動したからだ。地元で移動をしたなら需要もわかるし場合によっては消費者と顔つなぎもできている可能性がある。このような現況は日本中で展開されており、集客力の点から、専門店は自分のところが劣るとして、トータルの競争力を考えなければならない。せっかく良い花を揃えても、通りから見ているだけで楽しいわ。と思ってくれる消費者はあまり多くない。店に入ると何か買わなくちゃいけないようなそんな店構えの店がまだまだ多い。商店街の中にあって、「通りすがりの人達が“わーきれい”と見てくれるだけでいいんです。」とオープンカフェならぬオープン花店を目指しているあるお花屋さんは、毎年10%増の売上を作っている。ポイントは、花屋さんにとって仏花のライバルは量販店になったということ。専門店はまだまだ量販店より品揃えは豊富なのだから、できるだけオープンな店造りをすること。この二点が今繁盛店になるために認識すべき重要なポイントである。

投稿者 磯村信夫 : 10:22

2005年9月19日

若い世代に花き業界を託す

 日本は農産物に補助金を付けているのだが、戦略を明確にしてそれに則った助成をするならまだしも、相変わらず一定の条件さえ満たせば助成金を出すのではそれは前世紀のやり方だ。現在、インドまでのアジア圏で輸出補助金を付けているのは台湾、中国の雲南省政府、インドである。他は例えば韓国やマレーシアなど運賃の助成をしたことがあったが、現在はしていない。日本で問題になるのは運賃だ。だいたいがスポット輸出なのでIATAの基準からしてどうしても割高になる。昨年の11月、ASEAN首脳会議が日本で開催された。日本はアジアの一員として生きようとしているのだから、外交上は上手く進んでいないものの、農産物の輸出と言えばアジア圏で一定のところというのが基本になろう。もう少し広げてAPEC諸国ということであろう。日本はどうも外交の基本戦略が見えないが、農産物の輸出も政府の方針に合わせて補助金を付けるのであれば付けることが必要だ。

 さて、弊社の例で恐縮だが、花き業界には大きく分けて二種類の人間がいる。一つは花き産業で働こうと花き産業を意識して働いている人たち。1990年以降に入社したり、他業界から転入した人が多いであろう。もう一つはそれを意識せず、花の生産や花市場、あるいは仲卸、そして花屋さんに入って働いている人たちである。何となく花業界に入った人は、他の産業との比較や他の経済界のことなどをわかろうとしないし、わかっていない。もちろん以前から花き産業に入り井の中の蛙ではいけないと、社会の中の一つの経済活動が花き産業だと意識している人はいるが、本当に少ない。現在社内でめきめき頭角を現している人たちは、自分が働いている花き業界という一業界は生鮮食料品花き業界であり、嗜好品の業界であり、天候に左右されるが商品回転率と限界利益を追求する業界だということを彼らは知っている。もちろん為替にも敏感で、一般常識は一般企業のサラリーマン並には備えている。こうした若い人たちが新しい日本を作ってきている。これは花き業界も同じである。

 輸出補助金の話に戻ると、基本戦略を練るのは1970年代生まれの人がやるべき時代になっている。それは役所も花き業界も同じだ。時代がそのように動いている。

投稿者 磯村信夫 : 17:59

2005年9月12日

十条の花屋さん

 選挙が終わった。自民党が圧勝したのには様々な理由があろうが、大事なことを一つに絞って集中して行ったことによるところが大きいと思う。スーパーストアダイエーも青果の品質にこだわり、店を立て直そうとしている。特に所帯の大きい組織では、大切なことに集中し一つ一つ成し遂げていくことが必要である。

 さて、8月の末に十条という街に行って花屋さんを見てきた。十条という所は埼京線で赤羽から池袋方面に向かって一つ目の駅である。歩いて1時間で回れる範囲に10軒の花屋さんがある。こんなに花屋さんが密集しているのは東横線の学芸大学駅近辺―ここには15軒ほどある―に次いで多分都内で2番目ではないか。

十条は下町で仏花が良く売れる。まだ暑いから殆どキクを中心とした品揃えであったが、どうもターゲット顧客を年代層の高いところに置いている。私が見て、この雰囲気だったら花を買いたいなというお店は1軒しかなかった。でも、残りの9軒は営業している。いずれも冠婚葬祭の花をやっていないとしたら、年間3千万円売れるかなという店が殆どである。やはり平均して1日10万円、年間3,500万円は売上が欲しい。そうでないと時代や変化に合わせてお店を変えていくことができない。花屋さんは八百屋さんや果物屋さんと違って、素材販売をしているわけではない。技術を加味して小料理屋や出来合いのおかずを売っている花のお店だ。だから残っていけるわけだが、洋服屋がそうであるとおり、個人経営が残れるところは少ない。再度経営の見直しが必要だと思う。大変失礼だが、十条の花屋さんたちの約半分が10年以内になくなる可能性が高い。それは倒産ではなく後継ぎがいないため、高齢になって辞めていくからだ。近所にスーパーができて、花売り場が設置されるとその流れは加速する。個人の花屋さんは自分の料理人としての腕前を磨き、特徴を出して売れる店作りを是非お願いしたい。

投稿者 磯村信夫 : 18:02

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