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2006年8月14日

日本の「花の輸入商社」

 日本の「花の輸入商社」は大手総合商社の仕事というより花専門商社の仕事である。それは金額が大きくないことや例えばワックスフラワー1つにしても品種が10種類もあり、時代によって売れる品種が変わり、また一年のうちでも季節によって売れ筋の色が変わる。このようにプロ化しないと利益を上げることはむずかしい。さらに日本の国内生産は圧倒的な強さを誇るから、相場は相変わらず国内の生産動向によって変わってくる。ここを読みきれないと、なかなか商売を続けることがむずかしい。だから切花の輸入は専門商社の仕事となっている。
 花の輸入商社の会社運営の形は二つある。一つは、到着した荷を今一度国内選別を行い、ものによっては水揚げをして甦生させ、出荷する。そのような設備を自社内に用意した装置産業としての輸入商。もう一つは飛行機運賃が割高になったとしても、小箱で現地から出荷してもらい、国内選別をせずにそのまま出荷する商社。この方式をとっているところは、その地域トップの生産者と取引したり、生産グループを作ったりして小箱化現地厳選で仕入れコスト増、運賃コスト増を日本国内であまり手間隙かけずに相殺していこうとする。言うなればメーカー商社だ。前者は国内選別を自らするから、自らの会社がブランド化するように動く場合が多い。一方後者の場合は、原産地農園と輸入商社の名前を記し、この取組みの素晴らしさを一つのブランド名にして販売をすることが多い。
 今まで輸入の花はオセアニアのネイティブフラワーなどを除いて、国産の足らず目を埋めるために輸入されていた。量の充足の時代だったので「安全・安心」や「ブランド化」など考えなくてよかった。それが今、「信頼」や「ブランド」が大切になってきた。となると、どうするのか。輸入商の腕の見せどころである。
 一般にその国の輸入量が15%を越え、20%近辺になると大手の生産会社は、3年程前までは販売子会社を消費地等に作ったり、消費地の卸売市場に委託出荷をしたりしていた。2?3年前から今まで委託出荷を受けていたオランダやドイツ、フランスの市場はそれをやめ、餅屋は餅屋でアウトソージング、専門業者に任せていった。日本は輸入に際し、島国なので植物検疫や燻蒸処理だけでなく、税の問題や柔軟性、あるいは人件費問題などがある。今後輸入量は増えてくると予測されるが、明確な方針を持った専門商社の活躍が期待される。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年7月10日

筋が通って、キップがいい

 今日は7月盆の最大需要期だ。江戸時代、8割の面積に神社、仏閣、大名屋敷などがあったので、江戸時代一番多かった職人が植木屋だった。町人は2割の場所にひしめていて、長屋住まいをしていた。江戸時代はそのようだったが、明治になって東京を整備するため、たくさんのお寺や神社が東京都下に移住させられた。そんなわけで、千代田区や中央区などには大きかったり有名だったりするお寺や仏閣しか残っていないが、23区の端っこにはお寺が多くある。東京でも、戦前から続く有名な花店は、仏様の花を大切にしてきた花店が多い。

 今、文藝春秋で「私が愛する日本」を特集している。バブルの清算もあらかた済み、新しい日本を作ろうと前向きになった今、国際社会の中で日本はどうあるべきか、日本人はどのような心持ちでそれぞれの問題を対処しなければならないのか、国民一人一人がいやがおうでも考えざるを得ない時代となっている。
僕が市場の取引で感じるのは、産地では福岡のY、買参人では国分寺のGさんや御殿場のHさんのように、筋を通す人、キップのいい人が少なくなっているのが残念ということであろうか。しかし少なくなっただけで、いなくなったわけではない。だから、その人たちにスポットライトを当てて、流通の中での価値観や美意識はこういうものだということを語り継げばよい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年7月 3日

ソムリエ

 仲卸の店頭で買うフラワーデザインスクールの先生と話していたら、「蒸し暑くなって花が保たなくて困る」との声をもらった。
先生に「この頃大田の仲卸さんがバケツにつけて、立てて花を販売しているものも多いから、保たないとすれば、バケツの中にバクテリアが多くいて水が汚れているからではないでしょうか」と話すと、先生から「生徒さんが家にもって帰ってから保たないと言うのです。」「だとすると考えられる答えは二つあります。一つは、生徒さんが飾るのは常温のところだから、飾られる場所へ行くまで暑かったり涼しかったりといわゆるヒートショックで花が弱ってしまった。もちろんバクテリアの影響もあるかもしれませんが、まずはヒートショック。そして二つ目は、ここが肝心なのですが、プロの我々は、誰が作った・どこの産地か、ここにこだわります。それがさっと水揚げされていると見かけがよければ良いと思ってしまって、この銘柄産地を選ばなくても大丈夫ではないかと思って仕入れてしまうのです。仲卸さんの中にも、極端に銘柄にこだわる会社とこだわらない会社があります。こだわる会社のそのお客さんは、いわゆる有名な専門店で、日本中どの地方でもこだわりを持ったお花屋さんが消費を引っ張って行ってくれます。先生、産地や生産者名にこだわって仕入をしてくれていますか。」「そういえばここ2,3年でこだわりが少なくなっています。仲卸さんで水揚げされているものが多いから、見ればわかると自分の目を過信していたのです。きれいに咲くか咲かないか、花保ちが良いか悪いかは銘柄産地と品種を選んではじめて、中身の品質を推定できるというもの。私はちょっと自分の目を過信していたかもしれません。」

 2010年以降の小売店のブランド化を想像してみよう。専門店はその店の名前、そのものがブランドである。だから銘柄産地の花や職人の花を扱うが、前面に推しだすのは自分の店舗名だ。これをブランド化したところが勝つ。一方、ストアロイヤリティーが少ない量販店、カタログ販売、インターネットサイトでは、自社の格を上げたり、信用してもらったりするために銘柄産地の花を扱いたいと思うが、銘柄産地は量を多くは作っていないので、基本的に二番手、三番手の銘柄産地とお付き合いをする。もちろん四番手、五番手、それ以下のところも産地名や個人名を出し、安全や安心を前面に出し買ってもらおうとする。いずれも産地名や職人名を出して販売することになるが、専門店はソムリエでなければならない。仲卸、また卸はソムリエが社内にいないと仕事にならない。このソムリエこそ、生鮮食料品花きの私たちの業界では欠かせない存在なのだ。もちろんそれだけで商売が成り立つわけではないが、今その要素が花き業界で欠けている。どこの地域、いつ誰が作った。ここが大切で、花は作りものだから、もちろん枝物にしても、山切りできる人がしなければいけない。人がすべてなのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年6月26日

世界一を目指す

先週、日本フローラルマーケティング協会主催のMPSに関する講演会があり、本部のde Groot氏が来社され、世界の花き生産につき話し合う機会があった。
「伝統的な小売店が少なくなって、量販店の取扱が増えてきています。また生産地もオランダからアフリカなどに移行をし、その規模もどんどん大きくなっています。この傾向は、今後ますます加速化するのではないでしょうか。」「その通りだと思います。それが日本も含めて世界の花き流通のメインストリームだと思います。しかし日本は共同組合組織(農協)と仲間同士で作る任意組合の伝統があり、一人一人の面積は小さくとも、リーダーさえいれば心を一つに合わせて一定規模の面積を確保し、花の生産をしつづけてくれると思います。また、日本の農業は確かに65歳以上が約60%と将来に不安がありますが、株式会社も農業をできるという道を日本は切り開こうとしています。」
「ヨーロッパやアメリカのように大きな小売会社、生産会社というこのような構図だけでなく、一家庭の中での家計に占める花き消費のウェイトを反映した小規模でも成り立つ花き業界ができるのではないかと思います。」
「ただし今後とも活躍しつづけるには条件があります。かつて野球を例に出し、お話したことがあるように、野球は草野球、高校野球や都市対抗などのノンプロ野球があります。セ・リーグ、パ・リーグのプロ野球とノンプロ野球の違いは、プロは野球が職業で、お客様・ファンを喜ばせるために存在し、日本一を目指します。そして、大リーグがあって個人としてもチームとしても世界一を目指し、世界の野球ファンに感動を与えることを商売にしています。プロは誰よりもうまく野球をするために生活の全てを組み立てます。ちょうど私たち市場の人間が夜中や早朝、よい仕事をしようと休日でもコンディションを整えるようにです。その仕事で給料をもらっていると言うことは基本的にプロなのですから、私生活をどのように合目的に過ごすかこれも重要なことです。」
日本がASEANとEPAを結んだあとも、またASEAN+3で新しい東アジアの経済圏が確立したあとも、生産者が花で生活をしていくためには日本一を目指すだけでなく、世界一を目指す必要がある。一つの素晴らしい事例を取り上げよう。
ご本人たちは世界一を目指すなど大それたことは考えずに世界一の花作りをしている人たちである。その人たちとは千葉県 JAいすみの17名のSPストックを作っている岬の部会の方々だ。千葉県でもストックをはじめたのはむしろ最近で、ちょうど館山の世界的育種家黒川さんがSPストックを開発されたその時期にストックを作り始めた。だから基本に忠実、言われた通り生産するこの岬の方たちの評価たるや、大変高く、買い手同士でも岬のSPストックを買っている人は仲間から一目置かれている人たちである。このように日本にはすでに高い評価を受けている産地があり、なにも未来を憂慮することなぞ必要のない産地がたくさんあるのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年6月19日

父の日

 16日(金)に父の日に向けて黄色のバラだけでなく、ひまわりやガーベラなど黄色のものの市況が全般的に強かったので、今朝いくつかの業態の小売店の仕入責任者に、「土・日の父の日どうでしたか?」と尋ねてみた。昨日街を見る限りでは、クールビズ用のシャツやお父さんの好きそうな食べ物等、明らかに父の日用とわかる売れ方をしていて、父の日なのに何もしないという家はほとんどなかったのではないかとうれしく思った。花店もお父さんへのプレゼントのためか、父の日を花を買うきっかけにしているお母さんや娘さんがいるということかわからないが、花はまるっきり父の日に関係ないというわけではないようで、母の日と一緒に父の日の需要を取り込んでいった花き小売業界の成果がじわじわ効いてきているのかもしれない。
 さて、団塊ジュニアを中心に、お子さんがまだ小さいお父さんは土・日のどちらかは家族サービスの日にしているのだろう。この世代は学校を卒業し、働き始めて10年仕事がどんどん解り出し、今後の仕事人生でどの分野のプロになるかの分かれ道にある。20歳の後半から35歳までにかけて、それぞれのサラリーパーソン(組織人)は、何を目指すか決めておく必要がある。よく言われることだが、仕事上の自己目標を決めておかないと、仕事がだいたい解ってきた頃から社内政治や怠惰な生活に走ることがある。それが45歳まで続く。この間の10年間は、伸びる人とそれなりの人と分かれる時期だ。仕事をしはじめて20年後がもっとも脂ののった生産性のあがる時期だといわれており、その間に社内政治にうつつを抜かすようでは、その会社の生産性は高い意識には上がってこない。二人からが組織だが、組織の生産性を高めていくためには、理想に向けてお互いに協力し合い、切磋琢磨していく必要がある。それは夫婦であろうが、社内の一部署であろうが同じことだ。
 日本のお父さんたちで会社によって差がつきはじめているのは、この30歳代からのキャリアプランの持ち方や、研修制度の有無、あるいは会社の中でこのようなことを意識しているか、していないかである。あっという間に45歳になる。組織人からすれば折り返し地点だ。エキスパートで行くか、プロの経営者になるか等、日本のお父さんたちもプロフッショナルが求められている現代、家族に対する責任を昨日は噛み締めたことであろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年6月12日

中国と日本の花き生産

 『ワイルドスワン』の著者ユン・チアンの『マオ?誰も知らなかった毛沢東』をようやく読み終えた。広義での団塊の世代の小生にとって、マルクスとエンゲルスの思想は青少年時代最も大きく影響を受けた思想の一つだ。現に何度もソ連や東ヨーロッパ、中国やベトナムに解放前に行っており、その分富がどこよりも格差なく分配されている日本の良さを改めて感じたりもした。
 文化大革命によって、中国の園芸文化の伝統は途切れたが、一部に伝統を受け継いだ人などが小平首席以降、植物園に復帰して、大変立派なボタンや菊やダリアを咲かせている。しかし全体としては現代中国の花き業界は、欧米を中心とした花き産業が導入された。現在新しい花き生産や流通については最も進んでいるオランダからの導入が盛んになった。これは中国があらゆる分野で世界の最も進んだ技術を導入移転して、世界の超大国になっていくことを希望しているからだ。洋才を取り込むのは中華思想と矛盾しない。
 今後の中国の花き産業はさまざまなことを学習しながら、輸出志向で好循環をさせていこうと考えている。日本より他に有利な輸出先があるわけではないので、植物特許などを遵奉しながら、業的拡大を図っていくつもりであろう。その仕向け先のマーケットは花束加工業者を通じた量販店での仏花となるであろう。だから今後国内の生産者はギフトマーケット、業務需要マーケットを狙い、自分の花を銘柄化していく必要がある。銘柄化していく中で当然高級仏花の素材として使われていくようになる。もう一段階、現在よりも上のランクを狙うことが価格を下げない努力となるのはなんとも皮肉で厳しい現実だが、しかし手を抜いたら産地にこだわる有力店が離れていく。産地にこだわりをもった有力店の需要を満たすことで国内産地は生きていく。
 フラワーデザイン教室の需要が昨年に比べ3割近く落ち込んでいる。もっと普通の値段でフラワーアレンジメント教室に通えるようになったのだ。アレンジメント教室の大衆化、そして一部トップデザイナーの教室の高級化、まさにどの産業も一緒だ。この二極化の現実から、国内でもしっかりお金の取れる産地はまさに、毎年進化しようと努力する産地に限られてきた。景気は確かに上向いてきた。だがどこの花を選ぶかの目はますます厳しくなっている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年5月29日

精神的晴耕雨読

 埼玉県比企郡からサンザシの切枝出荷が本格化してきた。サンザシはワーズワースの詩にあるように、まさにヨーロッパ人にとって、日本人の桜のような花だ。キリスト教が普及し、神々がアイルランドとスカンジナビアに追いやられたが、人々の心には畏敬の念が波打っており、それがサンザシの花に結びついている。クリスマスのときのヤドリギと同様、サンザシはヨーロッパのシンボリックな花で、本格的な春を告げる花だ。
 ここのところの荷物の少なさは、日照量不足と判断している人がほとんどだ。もちろんそうだが、構造的に国内生産が減ってきていることも解ってもらわなければならない。寂しい話しだが、小売店にも消費者にも解ってもらう必要がある。
 ここ10年で、年収600万円?800万円のかつての中産階級といわれたサラリーマンたちは稼ぎを下げ、600万円?300万円で約4割、300万円未満で約4割となった。だから生鮮食料品・花きは一段の価格安を望まれていると食品卸は言う。食品スーパーの売上げが振るわないのは日本の人口が少なくなりはじめたのと、食のライフスタイルが変わってきたのと、この2点を主な原因にあげている。もちろん内外価格差の問題もある。プロの業者はこう言っているが、近頃、新聞やテレビでは、農業に団塊の世代が参入してほしいと企業の農業参入事例を取り上げたり、家庭菜園を取り上げたりしている。企業の農業参入、植物工場化などの記事を読んで、確かにそういった需要はある。しかし本当に採算に合っているかそこが知りたい。プロの農家で、これだけご苦労が絶えないのだから、その収入は生活費をどのくらいカバーしているのか知りたい。
 しかし、いずれにしても生命・環境・心の安寧秩序等大切にせねばならぬことを考えると、教育に並んで農業と暮らしの話題がマスコミに登場する時代となった。一方に外観などの格好が、もう一方にお金もさることながらお金以外の価値観の記事の取り上げ方は自信を取り戻しつつある日本人の一面を覗き見ることができる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年5月22日

バラ切花のシェアは20%になるだろう

 第8回国際バラとガーデニングショウが所沢のインボイスSEIBUドームで開催されている。3万人以上の人たちが毎日来場しており、昨日は日曜日だったので、夫婦連れも大変多かった。ガーデニングの設定にしても、バラそのもののコンテストや販売にしても、とにかく品位を感じさせる。今求められているのは品位なのだ。歩くのもままならないほどの混み具合だが、展示物も売店もそれぞれも品位を感じさせるのはバラの魅力であろうか。
 花き業界においてバラの重要性がますます高まってきており、特に切花の中では金額ベースで20%のシェアに近づいてゆくと思われる。それは、来場者の年代層を東京ドームの世界ラン展と比べてきても明らかに若いことから裏付けられる。結婚式でもバラが多用されているが、地域一番店を目指す専門店の差別化品目として、バラを取り上げてもらいたいものである。そうすればその専門店はすてきな花屋さんとして、何十年に渡って地域の繁盛店になっていくに違いない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年5月 8日

“Learn”

 マイケル・ポーターの「国の競争力」を読んでいて、つくづく教育の大切さを痛感した。もう3年以上も前になるが、インドネシアを訪れたとき公立の小学校で落第があるというのを知って驚いた。義務教育できちんとした学習をしていないと経済発展がおぼつかないためだという。国の競争力の中で貧しい国が中進国になることはいくつかのデータが示している。しかしこの中進国から先進国に浮上していくのがなかなか難しい。経済で言えば、イノベーションのような革新が必要なのだろう。その意味で、ノルウェーやフィンランド、スウェーデン、デンマークなど北欧の競争力は持続し、とても高い。
 パレートの第2法則の2:6:2法則「言われなくてもやる人が2、言われたことしかやらない人が6、言われたこともやらない人が2」に従うと、普通の6の人がイノベーションを起こし、言われなくてもやる2の人に入ろうとする。ここに国の競争力がジャンプする大切なポイントがある。
 私たち花の卸売業は2009年に委託品の販売手数料が自由化になり、今までと同じようにやっていたのではもうすでに単価が下がっていて利益が取れなくなってきているのに、もしこの上、粗利の下げにつながっていくとしたら、何も考えず今までどおりのやり方で一生懸命働いたとしても朗報が待っているわけではない。となると、“think”考えなければならない。考えて、こうありたいという自社のイメージをはっきり持って、そして今できていることでそこにつながる道を歩んでいくしかない。できないことを今さら取り立てても意味はない。できることで、できそうなことで将来自社が向上していく方法を探るほかない。
 先日ドラッカーの本を読んでいたら、ソクラテスがソフィストたちを痛烈に批判している個所があった。ソフィストは若者たちを“teach”教えたのである。それをソクラテスは不遜だと言うのだ。ソクラテスは唯一人に教えていいのは、自ら欲するものの学び方だけだという。自主的な学ぼうとする心を学ばせることが教師や先輩、上司の最も大切なことだというのである。
「啐啄同時(そったくどうじ)」ということがこの世にはある。よって学びの道には必ず師が必要だ。良き師に恵まれたとき、はじめてその人はその人のもてる力を発揮する。
 さて私たちは手数料の弾力化と新しいお役立ちの道を歩みはじめた。誰もどうしたらよいかを教えてくれない、自ら学び考える以外にないのだ。主体的に学ぶとき初めて個性化が出てくる。護送船団方式の卸売業界において、花も青果も魚も肉も卸売会社のその個性にあった付加価値がつくられていくのである。2006年現時点では、考え学び、力をためているときである。

投稿者 磯村信夫 : 17:57

2006年4月17日

『良くて安い』は国内で供給するか?

 冬は、スキー場の天気が良いときにはスキーに、昨日のように雨のときは妻と朝からお台場のスポーツクラブに行く。それが日曜日の午前中の過ごし方だ。
 7時30分にスポーツクラブにいたが、トレーナーは「今日はゆりかもめが動かないから、宿泊の人で朝から盛況です。」と苦笑いしていた。確かに2日間も止まっていたなら、身動きできず、まずスポーツをというところだろう。
 一汗流して、16日の日曜日の目的、JR中央線で立川駅から歩いて行ける国営昭和記念公園(故昭和天皇のご遺徳を偲び作られた公園)の立川駅口にある花みどり文化センターに行った。ここで第1回切花・鉢物等部門のジャパンフラワーセレクションが行なわれている。初回だということで、出品数は100点あまりと少なかったが、NFDの協賛もあって、「こう飾ったらこんなに素晴らしい」をその場で体感でき、質の高い展示会であった。昭和記念公園を時折降る小雨の中散歩したのもよかったが、この展示会は確かに見に行く価値がある。
 会場の中でバラの新品種に目をみはった。東京都花き市場組合の樋口理事長が14日の金曜日に「磯村さん、バラの品種は素晴らしいですよ」とおっしゃっていたが、日本も菊類を除くとバラがますますシェアを拡大するのではないかと予感した。それを見終わったあと、八王子と並ぶ多摩地域の拠点都市である立川の駅周辺を探索した。
 とある百貨店の社長さんによると百貨店という業態が成り立ちえるのは、札幌・仙台・東京・名古屋・京都・大阪・広島・福岡の8つの都市で、京都は横浜と同じく百貨店の適地として入れてもよいし入れなくてもよい都市だそうだ。これはあくまでも百貨店と言う業態が活躍しつづけられるかという視点で都市を見た見方だが、花市場でも70億円以上の取扱額がある都市と合致しているので、一つのしっかりした地域経済と文化を持っているところと言えるだろう。
 さて、百貨店の話になったついでに、立川の伊勢丹と高島屋、またJRのルミネを見ると百貨店という業態がここでも機能しているのがわかる。
 男性のワイシャツで言えば、世界的なシャツメーカーのブランド品は1枚5万円以上する。さすがにこれは立川にはない。衣料品の世界ブランドのワイシャツは2万円台、それよりちょっと落ちたブランド品が1万円台。デパートで売る一般的なワイシャツは8000円台が主だったところだ。そしてルミネのようなところでは1万5000円から5000円が多い価格帯。そしてユニクロなどでは3000円台。このようにワイシャツはなっている。お仕立て券付で2万円ちょっとが一般的になっているのは、それなりの生活様式をする名士の人たちが日本にはまあまあいるとうことだ。
 花屋さんでも名の通ったレベルの高いお花屋さんたちがここ立川でも消費者の支持を受けている。立川は良いものが売れるのだ。
 花やみどりの本物というものはしょっちゅう見ている身のまわりの自然にあるので、花や緑の品質を誰でもよく知っている。そうなると、良くて値頃なものはどんなものか?ブランド好きな人は「価値あり、高いけれどこれは価値あります」という花束や一流花店で花を購入する。しかし、デパートが存在できない都市で、ここ15年間花の価格帯が下がったところの花店や花市場はどうすれば良いだろう。現に、この国で年収600万円未満の人が80%以上いるのだから、よくて安いものを花も供給しなければ花の需要は減退してしまう。高級品はジャパンフラワーセレクションのように、素材もよく新商品で消費を刺激する。しかしこれはM字消費の高額所得向けだ。中流が下流化し、一家600万円以下で生活をする。その人たちに向けての花は国内で本当に作れるのか。展示会を見たのち、立川の街を見て、つくづくそう思った。たぶん専門店や百貨店で売る花に国産は絞り込むべきではないのではなかろうか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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