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2013年2月18日

要らない人に購入してもらう

 来週25日の午後4時より、築地市場の講堂で「卸売市場流通ビジョンを考える会」が開催されます。講師は3名の方で東京農業大学の藤島教授には、卸売市場と食品卸の協業と、その時の卸売市場の役割についてお話をいただきます。

 また、アベノミクスを支える内閣府大臣政務官である平将明衆議院議員には、消費税軽減税率、外税方式などと大田市場の青果仲卸社長として実際に活躍していた経験を踏まえ、農業分野まで含めた生鮮食料品花き市場がどのように経済活性化に関わっていくかお話いただきます。
 3人目として衆議院財務金融委員長で自民党フラワー議連の副会長でいらっしゃる金田勝年衆議院議員より、財政の問題と低減税率のことをお話いただき、質疑応答をしたいと考えています。
 読者でご希望の方は、事務局の東京農業大学藤島教授の研究室にご連絡下さい。
(会費:一名様 3,000円)

 今週お話したいことは、大田花きでは"創って作って売る"をモットーに社業を前進させようとしていますが、あらゆることが飽きられない為にどうしたら良いかということをお話したいと思っております。
 情報化社会で、解説記事が大変多くあります。コメンテーターが何か言うとそれだけでわかったつもりになってしまいます。何か気になることがあると、コンピュータで調べる。情報化社会はわかったつもりになり、あらゆることに対して実際に取り組もうとせず、事や物もお金を払わずに、「払いたくない要らない。これは払っても興味があるからやりたい」など、自分の興味があること以外、無用なものになってしまっています。

 花の需要からこのことを見てみますと、人生の通過儀式として大切な結婚式やお葬式もそうなっていて、人として生まれたからには、当然執り行って然るべきなどと考える人は以前より減って来ていることに驚かされます。してもしなくても良い事に結婚式やお葬式がなってしまったとすると、絶えず提案したり又宣伝したりしないと、前年と同じような売上高を得ることは出来なくなっています。
 また、提案や宣伝をしたとしても本人の関心が薄ければ当然使うお金は少なくなります。
 
 日本では国内需要を当てにした産業は、新しい提案をし、絶えず消費者に知ってもらう努力をしない限り、市場規模は小さくなっていくのは当然のことと言えるでしょう。
 花き消費の潜在需要は、少子高齢化で胃袋が小さくなったり少なくなったりするのとは違い、人口が少なくなるが豊かな居住空間が増えるということですから、所得は別として潜在需要は高まっているはずです。私たちは、これを顕在化させる必要があるのです。

 もう一度、大田花きでは"創って作って売る"。新しい素材や新しい装飾の仕方、新しいB to Bのサービスなどを創造し、それを農家の方や専門家の方に作っていただき、我々が実行することによって社業を前進させる。ここに花き業界の各社は努力のポイントを置くべきではないでしょうか。
 "待ち"の姿勢ではなく、打って出てこそ潜在需要が顕在化してきます。
 皆さん「新しい」を開発競争してここから花き業界を再出発いたしましょう。

投稿者 磯村信夫 : 12:07

2013年2月11日

BCP(ビジネス・コンティニュイティ・プラン)(事業継続計画)

 生鮮食料品花きの中で、2005年を100とすると数量・金額共に最も落ち込んでいるのは、魚である。毎年築地の初市にマグロの相場が発表されて景気が良いように感じていらっしゃる方も多いと思うが、魚の消費は減少している。

 もう40年も行き付けの近所のお寿司屋さんがなくなって色々と新しいお店を開拓しているのだが、徒歩で行ける範囲では良いお店が見つからない。ネタはもちろんのこと、山葵の利かせ方やシャリの温かさなど、好みに合ったものを握ってもらえないとなるとやはり行き付けのお店を見つけなくてはと思う。消費者としてもオーバーに言うと、食べる楽しみがひとつなくなってしまってがっかりしているところだ。
 これがビジネスとなると、いつまでも今まで通りに花を出荷してくれたり購入してくれるか分からない。いつまでもお取引先が元気でやってくれるとは限らない。そういう時代になっているということだ。

 卸売市場の大田花きからすると、今までは買参人が期日通りにお金を払ってくれるかどうかチェックをし、与信管理をしていれば良かった。確かにこれらは大切なことだが、もうそれで良いという時代は終わった。
 出荷者においても補助金で立てた温室の返済が終了し、それを機に温室を売り出している生産者がいる。今まで花の生産面積を拡大してきたが、今度は縮小し、ここ3年で生産面積が半分になってしまった産地もある。
「出荷したいのも山々ですが、運賃が高くなって・・・」
と、地元圏内や出荷しても一番近い三大都市圏の一つまでという産地が出てきて、量だけでなく品揃えに影響が出た産地もある。

 卸売会社の立場で言えば、取引先の経営方針・収支バランスなど、BCPに関わることをしっかりと考慮し、お互いに話し合っておく必要がある。赤字の会社は言語道断だが、黒字の会社でも状況の変化によってBCPを考えておく必要があるのだ。そうでないと年次計画が描けない。

 昨年の暮れ前、関西の花き市場が倒産した。今年に入ると首都圏の2社が自主廃業をした。卸売市場だから社会インフラなので影響が大きい。
 しかし、冒頭にお話した通り、たった1軒のお寿司屋さんでも少なからず市民に影響を与えるのだ。

 足元の2013年から消費税が上がる2014年、2015年まで統廃合が激しいと見る。
 花き業界で仕事をしていく上で、BCPについて再度考える必要がある。リーマンショック後、3.11でBCPが注目されたが、現在の花き業界においてBCPは今日的な問題であり、BCPでサプライチェーンを構築するお取引先を見つめ直し、消費者に期待される花のサプライチェーンを極めていく必要がある。
 種苗から生産、川中・川下流通、いずれも取引先を確認する時代になっているのである。

投稿者 磯村信夫 : 15:27

2013年2月 4日

ライブの大切さ

 昨日(2月3日(日))の道路情報では、千葉県の館山道がフラワーロードへの富浦の出口で渋滞していたという。千葉県の館山から鴨川にかけては、花の産地で露地のストック、金盞花などが有名だ。特産物のポピーもある。毎年ちょうど"関東東海 花の展覧会"開催の頃、いよいよ日も長くなってきて、花のシーズン突入となる。

 "関東東海 花の展覧会"は、花き業界では最も高品質な切花や鉢物が出品されるので、花き生産者や流通業者にとって必見の品評会である。一般の人たちは、2月下旬の雛祭りが近づく頃に需要が盛り上がっていくのだが、今年は12月1月と特に寒かったので春を待ち焦がれる気持ちが例年より強く、2月になると既に花の需要が出てきた。会場の池袋サンシャインは賑わったという。

 1月末売れ行きがあまり良くなかったのは、レジャーとバーゲンで出費がかさんで購買力が衰えていたことだ。昔と違い、ヒートテックやダウンなど女性の防寒対策グッズが豊富になり、寒さで外出したくないという理由も少なくなった。2月に入りバーゲンも終わり、気持ちの上で花に費やすお金の余裕が出てきたようだ。

 さて、大田花きでは在宅セリの比率が20%をコンスタントに超えるようになってきた。
 大田市場花き部の会議で仲卸の代表より
「市場へ足を運ばなくても花を購入できるのは、市場への来場者が少なくなってしまうので困る」
という意見があった。仲卸業者も各社が情報発信し、在宅でも仲卸の各店舗が見えるように仲卸組合でサイトを運用すると良いと思う。現に仲卸組合で案が出ているようだ。

 セリ前取引や在宅セリで困るのは、購入しようとする物の情報しか目に留まらないことだ。人はすべてのことが見えるわけではない。見ようとするものしか見えない。そうなると、その花を手にすることは出来ても、それ以外でもっと自分の顧客の嗜好に合わせた仕入れが出来ない。
 更に言うと、どのような花がどれだけ出荷されているかがわからない。絶えず、過去の経験から自分の嗜好に合った物しか扱わないとなると考え方や営業範囲が狭まり、いつの間にか自社の価値が下がっていってしまうのが常だ。

 ヘビ年ではないが、蛻変していくことが大切なのだ。まず、その為には質・量とも自身が大きく成長していかなければならない。21世紀になり、小売店が雇用者数を減らし、人件費を抑えて、事業経営をするようになったので、利便性を考え在宅セリを実行した。
 大きな小売店では、自分のコンピュータで購入することにより、自社の物流シールを発行出来るように店舗ごとの仕分けや顧客別の仕分けが自社に着いた時点で効率良く作業を行う為に在宅セリを考えた。

 しかしそれによって、現実のセリ、ライブの価値を下げるものでもない。実際の取引は現物取引。このライブを可能な限り体験し、セリ前ネット取引や在宅セリシステムを使い仕入れをすることが良い。ライブで初めて評価眼と相場観、そして知識が養われるのである。
 今後花き市場では在宅セリシステムを導入する市場が多くなると思うが、ライブの大切さを肝に銘じてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 16:59

2013年1月28日

「2012年問題」は杞憂であった

 高齢化社会と共に元気な60歳代が依然として第一線で働き、会社側も重要な仕事を任せるようになってきた。
 仕事には、成果目標があるからリーダーシップが必要となる。リーダーとは目標に向かって進み、結果に責任を取る人のことだ。そして、60歳代でのリーダーたちは多いのだ。

 あらゆる仕事の分野で産業界のみならず、芸術の分野においても60歳代の働きには目を見張る。時勢なのであろうか。
団塊の世代の大量の退職が始まる2012年を国力の衰えと見ていたが、彼らはリタイアして安穏な生活を送りたいというよりも、むしろ今後とも頑張っていきたいという人たちが思いの他多いし、元気なうちは年金に頼らずともやっていこうとする人たちの多さに驚く。

 私自身、平日に上越へスキーをしに行くと、多くの中高年層の人たちが颯爽とスキーをしているのに近頃驚く。今のバッジテストに受かるまではいかないが、かなり上手だ。そういう人たちが本当に目につくのだ。スキー場は再び賑わって来た。
 そしてもう一つ。お父さんが60歳を過ぎても頑張ってくれるので、お母さんも今までと変わらず花を購入する。
 思ったより所得は減っていないので、仏様の花だけではなく、歌と同様、お父さんたちが社会に出て昇格していった時に流行った花を思う。菊、カーネーション、バラ、フリージア、チューリップ、ユリ、シクラメン、アジサイ、桜草などである。
 この2つのことから、これからも確実に中高年向きの花は売れていくのがわかる。

 いつまでもジーンズが似合う大人でありたいと思っている団塊の世代の人たちは、今までと所得をあまり減らさずに活躍している。
 花の消費は皆が知っている花でも"本物追求型"だ。
 そして気分は団塊ジュニアの人たちの価値観に合わせている。なので、フラワーバレンタインも期待出来るのだ。
 さらに、その子供たちの世代の団塊ジュニアは結婚しても女性は働き、自由に使えるお金がある。消費の下地は十分だ。そうなると、花き業界は何を心配すれば良いのか。
 小売店のカテゴリーで言えば、専門店が気をはいて頑張って新しい花との生活の提案をしていき、消費を刺激してほしい。
既存の花き業界からすれば、もうこれ以上専門店の店舗数を減らさないことが必要だ。

 量販店での花の売上実績が確実に伸びている時代にあって、このような要求は専門店にとってきついかもしれないが、今が踏ん張り時なのである。高齢化による花の総金額のマイナスを覚悟する必要はもうない。

 より魅力的な新しい品種や新しいアレンジメント、或いは花持ちなどの付加価値サービスを通じて、消費拡大への反転を期する時となっているのだ。

投稿者 磯村信夫 : 16:01

2013年1月21日

花の単価下げ止まる、そしてこれから

 とある花のチェーン店のオーナーが、12月新政権が誕生し、株価が上がると荷動きが良くなって、「これからも株価に注目していないと花屋もだめですね」と言っていた。
 円も独歩高だったのが、購買力平価換算の91円の線に近づいてきて、新政権や日銀が的確に手を打ってくれれば、海外に工場を移したり人件費を下げることばかり考えなくても良さそうだ、と大田区の経営者も言っていたと銀行関係者が教えてくれた。日本経済は先行期待で陽が差して来た。
 
 もう5年程前になるが、オランダ系アメリカ人の友人、エイビ・ウィンパレが来日した時、
「何故今回のリーマン・ショックでもどこの国より日本の鉱工業生産が落ち込んで景気が悪くなっているのに日本政府はもっと手を打たないのか」
「日本人はバブル崩壊後、政府は的確な経済政策を打たず、失われた10年などと言っていた時に耐え忍んでいたが、今回は失われた20年と言って政府を許そうとしている。アメリカだったら大変なことだ。何故マスコミもそういう批判がないのだ」
と言っていた。
 エイビは、会社設立10年で300億円以上の売上高にした世界最大のインターネット花屋"Proflowers"の社長だ。以前はスーパーマーケット"Kroger"に花を卸していた人物だ。
 彼に言われたその時、私自身ある意味で政治に失望しており、自分たちの業界の力で何とかしなければならないと思っていたので、聞き流してしまっていた。

 91年ソ連邦崩壊後、経済力が軍事力に次ぐものとして、国力を測る上で、国際社会の中で大きな意味を持つようになった。
その中で日本は特に2007年以降、経済政策に失敗し日本人に自信を失わせてきた。
 現在、年間自殺者約3万人のうち、約1万人は経済的理由であるという。全てが日本の経済政策の問題でないにせよ、職がなくなったり給与所得者の所得は減ったりしてきたのだ。

 花の生産を
「齢をとったからもう出来ない」
「儲からないから辞める」
などで面積の縮小まで入れると、花き生産量は減少している。
 輸入品を含む花き市場の取扱高で、1990年に行われた大阪"国際花と緑の博覧会"以前の卸売市場取扱金額3,800億円まで落ち込んだ。特に2005年以降生産が減っているのに単価の下落が止まらず、また、温室園芸に欠かせない油代が高くなったことによる。
 昨年業界全体で、ようやく単価が下げ止まった感が共有出来た。これから単価はもう下がらず、反転していくだろう。
 そういった中で、2013年経済政策も適切に実行され、消費税が上がることによる一定期間の買い控えを経て、新しい国内の花き生産と花き流通の姿があらわれてくる。

 現在、花を軽減税率の適用品目にしてもらおうと運動している。中央卸売市場で取り扱われている、肉・魚・青果・花きの4品目を生活に欠かせない物として、ヨーロッパの主要国と同様にしてもらおうと思っている。
 軽減税率が適用されると得をするのは、消費者と生産者である。なので、消費と日本農業の活性化に効く軽減税率運動に花き業界あげて取り組んでいこうとしているところである。
読者の皆さん、一緒にやりましょう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年1月14日

自立した国民が支える花き生産と消費

 この頃、日本でも"男性不況"ということをいうようになった。
 工業製品のmade in U.S.A.がアメリカ経済の空洞化と共に少なくなってきて、働き口は三次産業になったと言われるようになった。日本でも公共事業の見直しやグローバリゼーションで求人はますますサービス産業が多くなり、女性が多分野で活躍するようになってきた。

 自分の世界に引きこもり、人付き合いなどコミュニケーションを不得意とする青年は多い。困ったものだ。また、独身男性で所得の低い人が結婚しないでいる。これも社会問題だ。
 どのようにして日本男子がコミュニケーション能力と倫理性を身に付けていくか、ここに日本の活性化が懸かっているといっても過言ではない。
 悲観的な見方をすると、非正規雇用者率が上がる中、収入が十分でない独身男性にフラワーバレンタインといっても、花を買う筈はない。それでは元も子もないので、フラワーバレンタインはそこそこ稼ぐ若い人たちを相手にする。生活にゆとりがある格好良い独身男性や40代のお父さんがターゲットだ。その世代をターゲットにした広告だが、むしろ実際は、イタリアの大人の男性のように齢を取れば取るほど格好良くなる55歳以上の人たちがバレンタインデーに花を購入するのではないかと思う。
 それは何故か。
 一つには、金銭的な余裕があるから。
 二つ目にこの世代の方が主体性を持って生きているからで、お世話になっている人に花をプレゼントする確率が高いからだ。
"自立"とは、「他に依存していることを認識している」ことをいう。妻や秘書、或いは看護師さんには本当にお世話になっているのだ。

 更に主体性や自主性についていうと、積極的に他者に役立つことで、しかも自分のやりたいことを行うことを「主体性を持って生きていく」という。こういう人たちは"縁"を自分の力で良いものにして結果を生み出す人だ。
 自立を身に付けるには、現実をしっかり見つめる眼を持たなければならない。それを持つ為には、持ち前の素直さと道徳教育が必要なのである。

 花き業界がさらに良くなる為には心の糧としての農産物である"花"の生産から流通までを担当する我々が、主体的に消費拡大に向け、生産販売することが肝要だ。
 安倍首相が道徳教育を教育の重要課題として位置付けているが、花き業界にとっても大変好ましいことである。花の仕事は日本人の精神生活と深く結び付き広がっていく。

投稿者 磯村信夫 : 15:53

2013年1月 7日

国産花きは国際競争に勝つ品質を身に付ける

 あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。

 12月クリスマス前からバラを始め、団塊ジュニアの好む花が期待した程、相場が出ていない。その一因に、曜日の並びがある。3連休は2011年後半から起きているレジャーブームで若い人たちを中心に遊びに出てしまう。
特に今年の正月は今日の7日から仕事始めの会社も多く、花の需要がレジャーに取られた。中高年はそれなりに家にいて、静かな休日を過ごしていた。
12月下旬から絶対量が不足しているが、そうはいっても小売店にも予算があるから全面高にはならない。確実な中高年向きの花が相場を押し上げ、仕入れ金額がかなりいっぱいになってきたので、バラを始め洋花類は安いという結果が初市まで続いた。
しかし、この第2週は成人式の週で、いよいよそれぞれの生活が通常に戻る。よって今日から洋花類は挽回していく。
そして、この寒さで昨年同様、3月までは入荷量少なめで小じっかりした市況が続いていく。

 さて、年末の衆院選で自公の圧勝となり、安倍内閣によって日本の経済再生が第一の目標となってきた。
1995年が生産年齢人口のピークでそれ以降、日本のほとんど全ての業種は売上を落としている。
人口減少の日本はベースとして内需においては、マイナス2~5%のプレートの上にのっている。そもそも日本は輸出入におけるGDPのシェアはそれぞれ20%弱なので、圧倒的な内需主導型。
そして今後は国内需要が減っていくので、景気を良くするとすれば国際競争力をつけ海外から稼いでこなければならない。。
農業の分野においても同様だが、東京電力福島原子力発電所事故による汚染で、生鮮食料品の輸出は極端に減ってしまった。

 そして、2012年の6月、中国大使館の一等書記官がスパイ容疑で捕まった。
農林大臣、副大臣を中心に対中農産物輸出事業を促進させ、日本のTPP参加を阻止する工作に出た。その時も中国は日本からの農産物を輸入禁止にしていた。
中国でのフェアは日本のマスコミにも取り上げられた。
高品質の日本の米は、値段の違いを乗り越えて中国で売れるとしたものが、結局は国を挙げてのやらせで、その活動の一環であったことが分かり、私個人としては輸出の困難さを知った。
今後何を目標に生産地に良質の生鮮食料品花きを国内外の消費者向けに生産してもらうか。
所得が増えない日本においてデフレ圧力は強いが、内需しかないのであれば、このまま本当に高品質のままで良いのかを正月に考えた。

 第55回日経・経済図書文化賞を受章した小池和男氏の「高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた」と題する本を時間をかけ正月休みに読んだ。
小池先生は、国際競争力ある日本の工業製品が生まれたのはデミング賞などのQC(品質管理)活動は、戦後のことのように言われているが、事実は戦前の1920~1930年代で綿紡績業が世界一になってからである。
いくつもの指標を具体的に取り上げ、解説をしていらっしゃる。
日本が欧米に先駆けて、現場の生産従事者に定期昇給制を敷き、経営者は毎年生産効率が上がるよう期待し、実際よくその期待に答え、会社一丸となって「共働」して行った。


 私事で恐縮だが、大学の経済学部で学んだのが、マネジメント思想家クリス・アージリスの経営学であった。
フレデリック・テイラーを始め、いくつか科学的な管理方法はあるが、アージリスはまさにこの"共働をすべき"ということを自分の経営学の基礎とした。
教わったことは"人間をこう見て欲しい"ということであった。それを日本流の経営と言って、Japan as No.1から転落し、失われた10年、20年と言っているが、これは日本流でも何でもなく日本人が思う、共に仕事をする者同士の組織のあり方と役割を言っている。
我々日本人はこれで通す。私はこの思想で会社を運営していく。

 小池氏から教わったことを言うと、物を高級品と大衆品、或いは量産品に分けると、私たち日本人からすると量産品は人件費の安い途上国に任せれば良いと思ってしまうことが多い。
しかし、小池先生は大衆品・量産品は品質が高くなく、それを作る技術は低いと断定してしまうのは危ういと注意を投げかけている。作る上では、返って高級品より高度な技術を要することもあるのだ。
車を例にとって高級品のロールス・ロイスやフェラーリは少数の技能の高い労働者が一環して組み立てる。確かに多様な作業をこなす。
しかし、カローラのラインなどは一見したところ、単純な作業を繰り返しているようだが、もう少し良く見てみると、難易度はかなり高いものであることがわかる。
それは、1ラインにエンジンの大きさ、変速機など違った組み合わせの70種類ものカローラが流れてきて、それらを的確に無駄なく自分のパートを仕上げなければならないわけだ。
このようにして、故障の少ない、多種多様なカローラが同一ラインから作られていく。

 花でいうと、かなりシステム化されている電照菊でさえも同じ畑の中でも多種多様な成育状況があり、それに合わせて一つ一つ対処し的確に自分の荷として纏める。
また、共選共販の場合、それを持ち寄って共働する仲間と統一のブランドの商品として決められた規格別に揃ったものにする。
部会の中ではあたかも大農場のように、部会長が社長になって役職者だけでなく、生産者一人一人にそれぞれの役割があり、農協の検査担当者や販売担当者と共にブランドを固めていく。これが日本の量産の花の在りようだ。なので、共選共販は、一般的な個人出荷の一段上の難しさがあるが、そこの統一感は小池氏が指摘する「共働」にあり、精神は孟子の井田法の教えにある。
日本の花作りの場合、確かに1970~80年頃に国際競争力を付けてきたわけだが、その大元には量産していく中での物つくりの品質世界一を勝取った繊維工業があり、生花の共選共販には孟子の井田法がある。

 今後ますます国産の花の品質を高めていく為には、現場で働く我々が"技術研究と研修""品質への発言""働く者としての所得と福祉"、この3点を身に付けていかなければならない。
これは共働している川上・川中・川下の全ての花き業界の人たちの責務である。

投稿者 磯村信夫 : 16:16

2013年1月 3日

新年あけましておめでとうございます

 新年あけましておめでとうございます。

 今年は、消費税率アップを国会に通す時、民主自公合意されました低減税率の対象に花をヨーロッパ諸国と同様、生鮮食料品と同位置にしてもらうべく、全花協(※)の今期会長のもと、全員で運動をしていきたいと考えております。

 また、切花で最大品目であります菊の消費拡大をはかっていきます。具体的には用途にあった色割合い、品種、長さまで含めた草姿形状、単価や納期を明確にし、無駄のない納期を守った生産をしていただくことにより、安心して物日や仕事花にもっと使っていただけるよう新しい取組みを花市場協会あげて行ってまいります。

 花は長い間、補助金の対象にならなかった為、生産から流通まで負けん気の強い人たちの集まりという産業の特徴がありました。それが、豊かさと伴に少なくなったのをもう一度元気と負けん気を復活させます。

 以上を新年に申し上げ、今年の第一回"社長のコラム"といたします。


(※)全花協(全国花き振興協議会)・・日本花き生産協会、日本花き卸売市場協会、日本生花商協会、日本生花通信配達協会、日本インドア・グリーン協会、全国花卸協会の6団体。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2012年12月24日

第4弾 今年の潮流

 今年の12月までの潮流と1年を振り返った時に言い残したことをお話してみたい。


"球根切花・鉢物少ない"
 今年は11月の上旬まで、記録的な暖かさであった。あまりにも球根切花・鉢物は少ないので、荷が遅れていると思っていたらそうでもない。球根は高いからこれに投資する人たちが少なくなっているのだ。
国内の球根産地は高齢化で生産が少なくなっているし、オランダ始め、海外の球根生産もリーマンショック以来の低調市況で生産意欲は減退しているので、球根の品質も今ひとつだ。
ラナンキュラス、ダリアを除き、他の球根切花・鉢物は少なくなってきた。この傾向はしばし続く。
しかし、自信のある産地は逆張りでしっかりと生産していこうとしている。


"松・千両屋は更に"
 鹿島から波崎にかけての松。銚子から波崎にかけての千両。年末の大市の為に日本中の市場が鹿島と波崎を訪れる。
松も千両も生産者の人数からしたらピーク時の3分の1。
安定出荷できる人のみが残った。
面積でも松はピーク時の3割以上も少ない。千両は波崎で移植する意欲のある千両農家は別だが、ほとんどの千両農家は疫病が出て箱数も今までの半分。
原因がわからず先の見通しが立たないと途方に暮れている。
今まで中小市場にも出荷していた昭和と違い、今は中堅以上の市場と取り組んでいる生産者がほとんどで、生産量は限定されている。
産地では早急に病気対策の手を打って欲しい。


"若き後継者がいて優秀な所が業績を上げている"
 生産者・卸売会社・仲卸会社・小売商の実際に花で生活している会社を見ていると、まず2通りに分けられる。
それは、後継者がいないところといるところだ。そして、次にその後継者が良いか甘いかだ。
後継者のいるところは、社会の進歩についていこうとそれなりの投資をしている。
いないところは、小売商であれば堅実に生花店を営んでいて、榊や仏花などお店に来てくれるお客様に良い花を届けようと努力しているが、自分の代で終わりなので自分を中心に考えがちだ。
 そして後継者がいるところも仕事にやりがいを感じ、小売商であればフラワーアレンジメントや生け花、寄植えの技術もさることながらマネジメントが出来るレベルまで来ているかどうか、育った時期が花き業界の調子が良すぎた時期だったので、両親から甘く育てられたかで、その農園や卸売会社や仲卸会社や小売店の優劣が明らかに決められている。
 家族で農場やフローリストを運営しているところもそこの社長は朝礼をしたり課題解決の為にミーティングを行ったりしているだろうか。
社会からの欲求に合わせて自分が進化できるだけの投資を行っているだろうか。
 広義の団塊ジュニア世代の1965年から1975年くらいに生まれた若い経営者候補のレベルによって花き業界の組織の優劣がはっきりしてきた。


"プロ野球リーグから、プロサッカーJリーグを目指す花き流通"
 楽天と日本ハム、ソフトバンク以外はプロ野球ではいずれも昭和の3大都市圏が本拠地となっている。
しかし、それでは文化の申し子、花の消費は上手くいかない。
やはりJリーグと同様、地元の応援を得て地元に根を張った花き流通を行えるようにして地域文化の消費に答えるのである。
 Jリーグ同様、日本海側で気を吐いている新潟は地元中央市場が地元の人たちの声援を受けて、荷姿で足りない物は他からも手当てをするのがJリーグ精神に則り非常に良い花き流通の仕事をしている。
たしかに1部リーグ、2部リーグ等産地から日本の花市場を見ると二層化、三層化しているかもしれない。しかし、ファンや観客である消費者、小売からすると、全て自分のところは1部リーグである。
そういう気持ちが日本中の地方中核市場・中堅市場にありありと欲が見えてきた。
是非とも産地には応援を頼みたい。


 本年もご愛読いただき誠にありがとうございました。
花き業界も「人」の問題になっています。リーマンショック前と同様、JFTD(日本生花通信配達協会)と冠婚葬祭を行っている花き事業会社、そして専門店チェーン会社、更に花束加工業者の皆様が仕事品質向上に向け、激しい競争をしながら業界を引っ張っていってもらいたいと希望します。

それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい。

投稿者 磯村信夫 : 15:23

2012年12月17日

第3弾 本年明らかになった潮流で、今後も続くと思われるもの

"7月盆は普通の仏花がじわじわと広がる"
 三大都市圏は集団就職世代と、長男は田舎に残っているが、次男三男が住んでいる。高齢化は大都市の方が激しいのだ。
 首都圏の団塊の世代で早いところでは親が亡くなり、お盆をし始めている。7月は夏休み前の普段月。迎え火や送り火、自宅にお坊さんに来てもらいお経をあげてもらうことはしていないが、日頃よりもお盆を意識して花とお供え物をする。そういったことが、団塊の世代のトップが65歳以上になって目に見える潮流になってきている。高冷地からは早出しのハウスリンドウや露地物のリンドウの出荷が始まってきて、少し贅沢な仏様の花として7月盆によく売れている。

"8月盆は国民的行事"
 相続が発生する平均的年齢は67歳と言われている。団塊の世代を中心に親がまだ元気なうちにとお盆に故郷へ帰るのは国民的行事にもなっている。
 故郷へ帰りご仏壇に手を合わせる。地域によってはお墓参りをする。そういったお盆休みを過ごし、それに合わせた花の需要はピークを迎えていると思われる。
しかしその後、都会に出てきた次男、三男が67歳を過ぎる頃になると、両親がいなくなった田舎の姉さんに迷惑をかけるからと盆に帰らなくなる。現在既に両親を亡くしている団塊世代の地方出身者夫婦の行動をみていると旅行などをして過ごす人たちが多いことに気づく。まずは2015年に向けて8月盆の花の需要は高まっていく。

"夏露地物、東北に期待"
 園芸先進地である長野県では、露地栽培がめっきり少なくなって施設栽培中心となっている。しかし、ハウスものだけでは物日の需要量に対応出来ない。菊・小菊など花持ちが良い夏場の花を露地栽培で量的にも生産していこうとする東北各県へ日本中の花市場は期待している。
 例えば、生産量が増えてきた秋田県への関西市場からのラブコールは年々大きくなるばかりである。出荷量が毎年少なくなってきている花き業界では露地物を頑張って作っていこうする東北各県の産地への期待が大きい。

"リタイアー組、花き栽培を始める"
 北関東や愛知県周辺の県では、60歳定年後、65歳までの再雇用を希望せず、アスターや小菊など花き栽培に携わる人たちが目立つ。意欲的な農協では花き係が普及センターの県職員と一緒になり、第二の人生の仕事として花き栽培を奨励している。今までサラリーマンだった人たちが花き部会へ入り、部会や農協の組織そのものも活性化してきたと嬉しい声を聞く事が多くなってきた。ご本人たちへ伺うと、やりがいがあり、面白くてやめられないという。小菊、アスター、ケイトウ、草花など、量的に販売できる物を多く生産している。

投稿者 磯村信夫 : 15:50

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