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2008年4月14日

21世紀の最初の30年で行うべきこと

ニュースを見ているとアメリカの事は良く分かるが、ヨーロッパの事があまり分からないのでNHKBSを見たり、BBC2を見ることがある。

21世紀に入り最初の10年の後半となって、日本が国際社会の中でやらなければならない事が明確になってきていると思う。花き産業の分野では、世界の花き業界と交流を深めて行くこと。特にアジア太平洋地域とは輸出入を経て、生産や消費の分野で共に国や国民の生活が豊かになる事を目指す。
また、国内においては日本がこれまで培ってきた農業を、国民の安寧秩序の為の食料としてだけでなく、国土保全やさらに文化的な側面から国民の理解を得て、応援・推進できるようにし、
補助金なしで育った日本の花き生産をさらに日本農業の中で重要な地位が占められるように育成する、この2つを同時に行うこと。

又、少子高齢化となっているので、国民の居住空間、生活空間を生活のしやすさだけでなく、景観からも捉え再開発を行い、花のある、たしなみをもった生活をしてもらえるよう官民を上げて事を行う。

これら3つのことを花き産業の分野では21世紀最初の30年、新しい大東亜共栄圏と緑豊かな美しい国 日本の再現に向けて花き業界挙げて努力する必要があると信じている。
これら3つの仕事を通じ、各事業の発展を期していくことが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年4月 7日

謙のみ福を受く

今日、現場で「なんで菊のところに作り榊が置いてあるのか」といつも中国産の作り榊の入っている箱に近づくと、ほとんど正方形に近い小さな箱に小菊が入っているではないか。赤・白・黄と三色そろえて出荷があった。中国からの作り榊は根っからの花の業者でない人が開発をし、需要を拡大していって、今では花き業界の輸入率では最も高くなっている。これからどのように中国の小菊生産が出てくるかわからないが、日本への出荷が始まったことは事実である。

土曜日、久しぶりにブルーミストの簔口社長と会い、話をする時間が持てた。今年を入れてあと3年で2010年はおしまい。それまでにもっと家庭用の花をたくさん届けたい、それが簔口社長の願いだ。大学を出て、自動車会社のセールスマンになり、何故この人がと思うくらい話し方は朴訥なのに、1位か2位を争う車のセールスマンになり、その後ブルーミストという花の小売会社を興す。そして現在15店舗。「さらにもっと一人一人に花を届けたい。お客様は花を欲しがっているのです」と簔口社長は熱く語る。創業以来毎年120%で伸びているこの力は何なのだろう。ブルーミストのスタート時からお付き合いいただいているが、半年振りに会ってこの謙虚さと初々しさには頭の下がる想いであった。「出店を重ねるにつけ人を集めるのが大変でしょう」と言うと、「うちは人に恵まれていてどうにかなっちゃうのです」と言う。オランダ屋の屋号で展開する独特の看板や店の雰囲気は改装費が捻出できずにほとんど手作りでやった。よく売るが儲けようと思わないから儲からない。創業5?6年まで出店経費がかさみ苦しかったが、どんなに苦しくても社員をオランダに連れて行き、レンタカーを借りて社長自ら運転し、オランダの花き業界を社員に見せてまわる。簔口社長は「今年の正月、市場で生産者の声が聞けました。ボードに張ってあった手紙を読んでも油高や経費高で生産の大変さが伝わってきました。今まで景気が悪くなっていましたから、お客様の負担を考え安く売ろうとしていました。それを今年の正月から、それではいけないと思ってやめました。昨年よりも高く買って高く売る。少しですが高くしたらお客さんが離れるかなと思いましたが、社員が荷主さんも大変なんです。うちも頑張りますから、ちょっと上げさせてもらいますと説明して売っています」と言う。

わが花き業界のアンカーとして、簔口さんのように思ってくれている小売店は多い。花き生産者はぜひとも安心して生産して欲しい。ただし、国内生産者の皆様方、言ってくれないとわからないことも多いのです。ぜひとも我々に教えてください。そしたらその声を小売店に届けます。それを小売店に消費者に届けてもらいましょう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年3月31日

桜と花店の価値

年度末の今日、東京地方では冷たい雨が降っている。桜が咲き出し、花のイベントもいくつも開催されている。急ぎ足でそのいくつかを覗くと、東京フォーラムの日本フラワーデザイン大賞は質が高く、時間がいくらあっても足りない。これだけ質の高いフラワーデザインのコンテストは他にない。全体を見てディテールを見る、また全体を見る。少なくても会場に来た人たちはそのように見るわけだから、どうしても渋滞する。この日本フラワーデザイン大賞でNFD花ファッション委員会の2008今年の春・夏の花の色、秋・冬の花の色を展示し、モチーフに基づいたデザインされた花を展示していた。NFDは開かれた花の団体として益々活動をエネルギッシュにしていくことだろう。

假屋崎省吾の世界展は日本橋三越本店の新館のギャラリーで開催されている。彼の作品は例えばカトレアの良さを引き出して、しかも何輪も使って一輪一輪の良さを引き出す。使っている花はもちろん市場に流通している花。それを一枝一輪すべて活かしながら自分の世界を表現している。いや、自分の世界ではなく、花の世界を表現し、それが假屋崎省吾の世界となっている。

さらにもう一つ。幕張メッセで日本フラワー&ガーデンショウが開催され、さすが花の国、千葉県の花や主催の家庭園芸普及協会会員が出展するスペースの質は高い。世界らん展と同じ流れの展示会で、最終日で雨が降るといわれていた日曜日の昼下がりだったせいか、人手のピークは過ぎていた。しかし展示されている花のレベルは大変高く、買いたくなるものばかりであった。

昨年と今年で違う点がある。それは例年だと2月、房総半島が露地のキンセンカやストック、菜の花などを見に来る人たちで賑わう頃、切花を買いはじめる人たちが多くなる。3月に入ってひな祭りが終わる頃、卒業式や彼岸があるのでもう一段切花需要が多くなり量的に売れはじまる。その頃に鉢物が売れはじめ、そして彼岸後苗物が売れはじまる。これが例年のパターンであるが、今年は桜が咲き始めて、切花も鉢物も店頭で本格的に売れはじめた。特に先週は良く売れて、どの花屋さんもてんてこ舞い。4月8日のお釈迦様の日まで忙しさが続いていくと思う。特に年度末に忙しいのは退職をしたり、人事異動があったりして花束需要が多いわけだが、団塊の世代が大量に定年退職というのはわかる。しかしそれだけでなく、今年に入り不振だった店売りまで好調だというのが今年の特徴だ。時代の心持ちというのは行動でわかる。よく言われるようにエモーションはモーションに出るのだ。だとすると、桜の咲いたこの時期にはじめて消費者の誰もが心を開き、暗いニュースが次々伝えられてもそれも受け止め、自分の来し方やこれから歩んでいく先を見つめながら生命感の躍動をキラキラ輝くように咲く花と同化し感じたいと思うのであろう。

ガソリン代が上がり、食費もかさむ。残った自由になるお金で花を買う。今、花を買いたいと思うその欲求をはっきり感じることが出来る。それにしても例年だと桜の美しさに負けて花店の存在価値がかすむのだが、今年は価値が高くなっているのがおもしろい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年3月24日

相場ばらつく?その影にやる気と仕組の問題あり

今年の春彼岸の相場展開を見ると、もう一度足下をしっかり見つめなおし、確実に仕事を行なっていかないと消費者が満足する品揃えができなくなる。これではいけないからもう一度やるべきことは何かを明確にしたいと思う。

いつも言っている通り、花は三気商売で、まず天気、ついで景気の影響で収入が大きく変わってくる。花の事業を発展させるにはやる気が必要で、むずかしい時代が続けば続くほど、収入に影響してくる。これが花は三気商売と言われる所以だ。

今年の2月は寒かったので開花が遅れた。3月17日月曜日は彼岸の入りで小売店は仕入の日ではなく、販売の日。店が忙しいのだ。その日に一番荷が多かった。これでは相場がたまらない。商人だから小売店は荷を前から揃えておくべきなのに、入りの日に荷が多いのでは価格は下がるに決まっている。だから価格は下がった。このような市場がこの3月中旬、日本中各所に見られた。

今、花市場ではせり取引よりもせり前取引が多くなっている。相対取引やインターネットを使った取引、そして買付などそれぞれの卸売会社は会社のポリシーに沿ってせり前取引、せり取引を行なっている。卸間の競争や仲卸と卸の競争が年々激化している。とある卸は他社に売り込まれる前に売り込めとばかり、全ての買い手にせり前にインターネット取引をしている会社もある。ここ大田花きでは取引所の運営を最も大切な業務だと考えているから、まず取引所の上場量を確保し、それ以外をせり前取引などで相対売りをする。この仕事はホールセールビジネスと言っても良い。場を通さない、世間一般で言う「市場外流通取引」だ。

新しい商業地が出来るなどして人の流れの変化とともに売り上げを落としている街の小売店は多い。商売がうまくいかないと自信を失う。生産地も同様だ。だから肝心のやる気が失せていくのだ。やる気が失せるとPDCAを回すことができなくなり、これが3月下旬の今の花き業界の現状だ。

やらなければならないのは自社が係わるサプライチェーンを取引先の小売店のお客様のバリューチェーンにすること。これが今花き業界が取り組むことだ。何も難しいことではない。原産地表示や誰が作ったというスーパーでは当たり前になっている写真や表示での販売、物日や人生の通過儀式に合わせた儀式の新しい花の提案など、やるべきことは具体的に挙がっている。未来を予測するために過去があるのであって、あるいは未来をより良く生きるために過去があるのであって、諦めるために過去があるわけではない。医者は原因ばかり根掘り葉掘り聞くだろうか。原因などは問わずまず治るためのベストに向かって処方し、処置をし、患者に養生を求める。何も花き業界は病気ではないが、前年を下回る取扱金額や利益だった場合、いかなる仕事も消費者、取引先に役立ててもらうためにあるのだから、それをカイゼンし、実行していくことが必要だ。生産者と消費者は油高、経費高でそれぞれ大変である。その中で花を楽しんでもらえるよう我々は段取りせねばならない。花のハイシーズン、いよいよ到来。こういうときこそ仕事にやりがいがあろうというものである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年3月17日

大規模栽培化するか?雲南の花き生産

中国の雲南省昆明には少数民族の生活を伝える観光スポットがあって、今でも続く伝統的な部族の生活を垣間見ることが出来る。雲南省の大理は世界遺産になっている街で、ペイ族が住んでいる。中国人なら知らない人はいないペイ族の有名なダンサーのヤン・リーピン(女性)は、雲南省、四川省、チベット自治区の各部族から踊りや歌の上手な人たちを見つけ出し、劇団シャングリラを作っている。その公演が渋谷文化村のオーチャードホールであり、見に行った。

ヤン・リーピンの個性的な舞踏に思わず魂を奪われてしまうほどであったが、各部族からなるダンサーたちの踊りにもそのレベルの高さに驚嘆した。教育には知育、徳育、体育、群育があるが、中国系の人は群育が日本に比べて不得意であった。それがシャングリラの踊りを見る限り、一糸乱れぬ、さりとて個性を出して良いところでは個性いっぱいに躍っていた。こんなとき国際競争力ということを思い浮かべる必要はないのだが、思わず日本は再度群育においてもやり直さなければないのではないかと考え込んでしまった。

雲南省は花の産地として、またASEANの中国の玄関口として発展する。雲南省昆明から縦横の東南アジアスーパーハイウェイが通る。ここで花の国オランダの大規模花き生産プロジェクトが動き始めた。いずれも30ヘクタールないし40ヘクタールが1生産ユニットである。河野メリクロンさんも40ヘクタールにするということから、雲南省は大規模栽培で大量生産、大量販売を狙う地域になろう。

香港や日本の中国野菜に対する残留農薬問題に対処するため、2007年12月中央政府の命令によるものでしょう、雲南省政府は、花の輸出についても輸出検疫が大変うるさくなった。輸出業者によると一定規模以上の農家から花を買う場合は衛生管理もしっかりしているので安全安心だが、質が良くても地元の農家(生産規模が小さい)のものはリスクが高い。というのも、日本も昔そうだったが、なんでも水路に捨ててしまうのだ。ゴミもだし、廃液も流してしまう。その水を畑に使うわけだから、品物は良さそうに見えても輸出品となると仕入できない。それが中国の冷凍餃子問題からかまたこの3月から輸出検疫はさらに厳しくなった。こうなると手当てできる農場は限られてしまう。

ASEAN諸国ではバラやユリ、トルコギキョウなどは雲南省のものがよいといわれている。輸出できるその絶対量が減ってきているのだ。今、質が均一化した大量生産の技術を持っているのはオランダ人しかいない。ブラジルではきめの細かい高品質のものを作っているサンパウロ周辺の日系人は、オランブラ地域のオランダ人の生産販売に押され気味だ。メルコスールでアルゼンチンのブエノスアイレスの日系花作りにもオランブラのオランダ人系生産者たちは多大な影響を与えている。
今、オランダの花き生産者たちは昆明で生産がはじまった2つの著名な花き生産会社の動向を見守っている。彼らが成功をすれば、大手何社かが追従するであろう。ケニアやエチオピアのように投資ファンドと組んで出てくるはずだ。

大田花きは昆明国際花市場(Kunming International Flower Auction)を立ち上げのときから支援している。システム、機材が当時のアルスメール花市場、オペレーションが大田花き。2社がアドバイスし、昆明国際花市場はよく改革に勤めた。今では年中無休で「鮮度の一番良いうちに」と夕方からセリが始まり、荷が多いときは明け方まで競る。大田花きの目的は中国国内の流通がスムーズに行くこと、そのためには産地市場として昆明国際花市場がきちんと機能するようにしなければならない。そのことによって相対の斗南市場と競合関係にありながら、地元の農家が潤うようにすること、これが2つ目の目的であった。現在のところ、残念ながら少なくても2番目の地元農民の所得増につながっていくことはうまくいっていない。今後花作りをどのように雲南省政府は指導していくのか、共同出荷の考え方を持たない圧倒的多数の零細の花作りは確実に喰えなくなって、数が減ってきている。その傾向に歯止めはかかっていない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年3月10日

2008年の花の供給事情

日本の農業は米、畜産、青果が三本柱である。2007年1月、ブッシュ大統領の一般教書演説でバイオエタノールについて言及し、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国等の新興国)の台頭と相まって、とうもろこし価格、小麦価格が高騰していった。そうなると日本の畜産業はたまらない。飼料の多くを輸入しているわけだから生産コストが高くなる。米については食糧庁がなくなり、価格支持政策ではなくマーケットメカニズムで価格が決定するようになったので、需要が下降気味だから当然単価も下降気味になる。石油についてはもう皆様もご存知の通りで、BRICsの台頭や中東情勢から供給においては不安定要素が付きまとう。ここではついつい忘れがちになる南米についてちょっと触れておこう。1994年クリントン大統領はNFTA(北アメリカ自由貿易協定)をさらに拡大し、中南米まで一つの経済圏になろうと提案した。しかしアメリカの意見を入れず、国境を接しているが長い間決して仲の良くなかったブラジルとアルゼンチンはウルグアイ、パラグアイと一緒に4ヶ国でメルコスールという南の自由貿易圏を作り、アメリカの政策に対峙した。このメルコスールはその後、近隣の諸国を巻き込みスール(南)が決してアメリカの言いなりにならず、独自色を出していくようになった。例えば南アメリカの諸国で協調して作ったテレスールや石油公社同士のスール一本化の話などがある。現在、中南米諸国でアメリカ親派の国が少なくなりつつあり、キューバの経済制裁など、ほとんど満場一致で反対をしている。その中でコロンビアは親米派だが、その中にも反対派が台頭してきている。そこで政情が不安定になって、一部カーネーションの出荷などにも影響が出ているわけだ。

横道にそれたが、南米の石油事情もこのようになっており、ロシアと同じ様にエネルギー資源を貧しさからの脱却の手段として使おうとする動きがあり、彼らは石油メジャーの言う通りにはもうならない。従来の読みが当てにならないことから石油価格は投資ファンドも動き、なかなか下がりえない。そうなると青果でも石油に頼るので、園芸作物においては利益確保が楽ではなくなってきている。しかし残留農薬問題や中国餃子の問題などが日本国民の一大関心事となっている現在、日本の農業を支える3つの中では青果が最も有望だと言える。

では花はどうなのか。花作りの場合、生産者のマーケティング力と生産技術の力によってどこまで収益を伸ばせるか決まってくる。食べ物ならその価値は料理人の腕、次いで食材によって決まる。材料の、例えばじゃがいもは理想的な大きさがあろうが一定の範囲内であればどのみちカットしてしまうのだからあまり変わらない。しかし花の場合、一本や一鉢をカットして使うことはほとんどない。例外的にスプレータイプの花をばらして一輪ずつ使うということはあるが、基本一本は一本、一鉢は一鉢だ。そうなると商品歩留まり率が所得を決める。もちろん内的な生命力による花持ちだとか外観の色やそのつくり、仕立て方のセンスによって価値はだいぶ異なる。品目特性上このようになっているから、今年来年の国内の花き生産は野菜に比べ分が悪い。そうなると国内の生産は減ると見ている。減った分、輸入品に頼ることになる。今年はドル独歩安だから、ドル立ての国からの輸入はしやすくなる。しかし注意したいのはユーロ高は変わらないから、アフリカ諸国の花は昨年までと同様、または昨年以上に高いということだ。また南米からはコロンビア、エクアドルなど花の産出国はいずれも情勢が不安定だ。中国は残留農薬問題で昨年12月、生鮮食料品農産物の花においても、輸出の際の検疫を厳しくし、さらにここのところで厳しくするとしている。そうなると今後とも潤沢に入ってくるとは言いがたい。このような状況にあることを花き業界の人たちは理解をしておいてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年3月 3日

もっと高所から真実を見る必要性

 花き業界の随処で近視眼的な判断が目立つようになってきたので注意したいと思う。

 文学や哲学が好きな人はルサンチマンという言葉を思い浮かべてもらえばよい。市場経済が発展してくると最終消費者の暮らしやライフスタイルの発展を願い、モノやサービスを絶えず提供することが流通各段階の仕事となる。困ったことは消費者に選ばれなかった会社が、あるいは得意先に選ばれなかった会社が倒産していくことだ。これは弊害といえば弊害だが、民間努力やら経済政策で一定数量倒産の数を少なくさせることが出来る。自分が生活できているのは消費者からお金をいただいているという認識が規制業種だとなかなかない。いつも規制業種は同業者しかライバルとしてみていない。
例えば卸売市場業界は同業者とばかり比べている。小売においても同様だ。
花き業界全体は民営化しようとしている最中、またデフレで単価が落ちている最中、次のような構図で、今ある状況をとらえる人が多い。それは、近頃一所懸命やっているのだが売上が減っている。自分は悪いことは何もしていない。毎日黙々と仕事をしている。なのになぜか伸びている会社がある。伸びていたり売上を上げていたりする人はよいことをしていないに違いない。現にお客をとられた。だから強者は悪人で自分は善人だと言う。これがルサンチマンである。横を見て嫉妬し、同業者をおとしめているのだ。

 卸や仲卸は得意先を通じて消費者に価値ある、選んでもらえる商品を集荷・流通させたか、また再販業者である小売店に価値ある利便性の高いサービスを供給できたかによって、選ばれるか選ばれないかが決まってくる。そうすると選ばれなかったものこそもう一度、自分自身をチェックし、改善や革新を図るべきであろう。にもかかわらず、業績が芳しくなくなると、先ほどの構図で「こんなに一所懸命やっているのに善人の私が何故?」と外に原因を求めようとする。大切なのは花き生産流通、すなわち花き業界の中での自分の役割だ。花き業界のお客様は消費者しかいない。種苗から小売までは皆パートナーである。「群盲、象を撫でる」ようなことをしてはならない。サプライチェーンをイメージして行動するべきである。哲学では真理(実存)を認識の目標として、価値を行動の規範とする。ここから出発している。花き業界の誰もが群盲に我々一人一人がなっていることを認識し、そこから少しでも真理に近づこうとする意欲をもって日々の業務をこなしていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年2月25日

デッドライン(納期)は2015年

土・日と東日本は大荒れの天気だった。電車も止まり、雪の多い地域では飛行機も止まり、一般道でさえ止まった地域がある。肝心の土・日だったのに、春の花の需要期本格化は一週間順延され、3月1日(土)からとなる。それでも例年通り池上本門寺にある梅園は賑わい、大田市場の河津桜も咲き始めた。

日本の花き産業は、地域経済に支えられてこれまで発展してきた。日本の面積自体はカリフォルニア州と同じしかないが、47都道府県のうち、それぞれに知事がいて議会もある。道州制は少子高齢化でシンプルな行政システムに変更しようという考えだが、もう一つは経済力の大きさも兼ね備え、地方分権をしていく上でのくくりなおしと考えているのだ。これはあくまでも現時点でのGDPの話だが、北海道のGDPはデンマークより大きい。九州と四国のGDPは韓国よりも大きい。大阪のGDPはカナダより大きく、首都圏はフランスのGDPより大きいのだ。こうなっているわけだから、道州制に根ざした花き流通のこれからの発展の仕方を考えておく必要がある。日本中の卸と仲卸は今までの中央集権的に東京あるいは大阪から荷物を引くのではなく、まず道州制の地域の中でやっていこうとする気持ちが必要だ。

2006年の暦年で日本花き卸売市場協会の卸売会社の30%弱は経営が大変苦しかった。これではいけないと当事者たちは業態変革をしていった。格好よく言うと商社的な業務だが、むしろシンプルに問屋業務と言ってよいだろう。そうなると地域の仲卸だけでなく、中央の転送業務を中心とする仲卸と競合が激しくなり、仲卸の収益を圧迫し始めた。それが2007年暦年の状況だ。商売がうまく行っているかどうかは自助努力もさることながら、その地域がプラスの富を産んでいるかどうかにかかわっている。良い地域とは海外から集金する能力を備えたグローバル企業が活躍する地域のことである。それは主に中京圏と関東圏だ。また日本は現在、毎年1%ずつ生産年齢人口が少なくなっている。よって生産性を少なくても数%上げていかないと同じ生産能力を維持できない。だから富は減額されるが、それは花き産業のような国内相手の企業に言えることで、海外から富を集めることの出来る企業は別格だ。このような現状ではどのサービス業も自ら海外に出て行かないと成長は難しいと言われている。花の流通業者の話に戻って、では道州制の中で商売を完結できるかと言うと決してそうではない。すなわち地域だけで合併し、大きくなることによって会社数を少なくすればよいかと言うと決してそうではない。グローバリゼーションで国際競争に打って出る気概のある国内産地は野球なら大リーグの試合をやるスタジアムに荷を出す。よく知られた花を作る大産地の場合もあれば、いわゆるプレミアム商品を作る国内外の職人たちもそこに出荷をする。道州制をにらんでいくと、地域でまとまるが1、東京圏・大阪圏とつながりを強くつけまとまるが2、この二つを地域住民のため、花の卸や仲卸は行なっていく必要がある。グローバリゼーションとともに、流通業一般は縦の統合である垂直統合が多くなっているが、花の場合まずは水平統合だ。地域的に水平に統合し、そこの中でまとまって初めて、地域の卸や仲卸が力をつけ、主体性を持って大手企業とのサプライチェーンができるのである。この整理整頓を2015年までに目処をつけていくことが花き流通業界にとって好ましい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年2月18日

薬師の真言

瀬戸内寂聴さんの『秘花』という本を読んでいて、主人公の世阿弥が最晩年、佐渡に流刑され、長谷の観音様に続いて薬師如来様を拝んだ折、薬師の真言「おん、ころころ、せんだり、まとうぎ、そわか」と唱えるところを16日の土曜日の最後に読んで、スキーをしに外に出た。それから2時間して、素直に転んでおけばよいのに、リフトの下だったから他人の目を気にして格好つけて踏ん張ってしまったため、右足のふくらはぎに激痛が走った。右腕の上腕の筋肉を断裂したことがあるから、ひどい肉離れだとすぐ思ったが、なんと不謹慎というか、ありがたいというか、薬師の真言が思わず出てきて、「おん、ころころ、せんだり、まとうぎ、そわか」と言いながら、大丈夫な左足で時間をかけて下まで滑って降りてきた。世の中には偶然というものがあって、どうも年齢を重ねたせいか必然のような気がして、真言の「おん、ころころ、せんだり、まとうぎ、そわか」を唱えるたびに家内は笑い出す。

それだけ湯沢ではまさに深々と積もる雪が先週は続いていた。関東地方ではようやく土・日が晴天となって、季節柄春の草花が売れ始まってきた。そうは言っても、暖冬だった昨年に比べると人気のチェーン店や量販店で95%くらいだから、一般的にはそれよりも少し落ちるであろう。また日本海側や東北、北海道は今年は寒さが厳しいから店頭需要が1割ほど少ないという。今日も静岡県下の優良花の産地の連合会が消費宣伝でお越しになり、大田市場の買参人に「今年は油が高いこととことの外の寒さで、ようやく量がここに来てまとまってきました」と今後が期待できる旨セリ場で御挨拶いただいたが、前年に比べて出荷量で2月は?10?15%、消費も5?10%ほど少ない状況が今週一杯続きそうだ。そんなことから大田花きはJASDAQへ第3四半期の財務・業績の概要の提出と同時に「通期業績予想」も見直し、目標対比を99.3%、取扱高を293億円とさせていただいた。生産者と販売小売店のご苦労に報いるためにも、消費者の要望する時期に流通させることが出来るように今後とも生産者と取り組んでいきたい。

『秘花』の中で、「おん、ころころ、せんだり、まとうぎ、そわか」と繰り返し、薬師の真言を唱えた世阿弥は、人が耐えうるだけの労苦しか仏様は我々に与えないと確信するようになり、気が晴れていく様を語っている。様々な業界があるが、我々の業界は人に喜びを与え、喜びを感じてもらえる業界であることをつくづく感謝したいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2008年2月11日

じわじわ浸透 バレンタインデーのバラ ?原産地表示?

時代が流れていると実感するのは、予期せぬことが起こっていることを発見したときだ。ヨーロッパではバレンタインデーというとバラの需要が高まり、卸売価格では日頃の価格の3?5倍になる。少し前の日本での母の日のカーネーションのようだ。日本では母の日にはカーネーションの年間消費量の約1割が消費される。カーネーションの鉢に至ってはほぼ100%母の日で消費されている。これと同じ様にヨーロッパ、北アメリカではバレンタインデーにはたった一日のために年間のバラの1割近くが消費される。予期せぬこととは、大田のセリ場を見るとバレンタインデーで赤や茶系のバラや他の花を贈る、できれば真っ赤なバラを贈ったり、販促用や室内に飾ったりする需要がかなりしっかり湧き上がっていることだ。花はホワイトデーに賭けていたが、どうもそうばかりではないらしい。

冬のバラの生産は今年のように寒いと本当に大変だ。しかし日本のバラ生産者は日本ばら切花協会が絶えず前向きに新しい事象を追いかけ会員に連絡をしているから、ヒートポンプの普及は本当に早く、今後もさらに暖房費削減だけでなく、熱い夏にもクーラーで品質を上げる努力が実りそうだ。日本ばら切花協会を手本に、日本花き生産協会の中でもヒートポンプやラジアントなどの加温設備の検討、省エネ対策など他品目の分野でも早めに取り組んで欲しい。というのも、今年の冬は太平洋側でも日射量が少なく低温で推移しており、温室の設定温度がどうしても低くなりがちだ。場外の問屋の方からだが、「菊の葉っぱがもたないのは温室の温度設定が低いのではないか。花が小さいのは温度が十分足りていないのではないか。」との指摘を受けた。1日と15日で仏花としての菊は必需品だ。その国産の一輪菊の商品性が劣るとなると、そのことはライバルである台湾や中国、マレーシアを利することにならないか。今、農林水産省の花き産業振興室や日本花き卸売市場協会で、小売の店頭で産地表示をしてもらおうという運動をし始めたところだ。原産地をきちんと明示し、良いものは良い、悪いものは悪いと消費者に納得してもらいながら花を流通させる。このことが今花の流通業者にとって重要な新しい仕事である。グローバリゼーションの中、それぞれのシッパーごとのブランドや現地農園のブランドで海外産は評価される時代になっている。国内生産者の皆さんは海外の産地をよき仲間でありライバルであるとしっかり認識し、バレンタインデーのバラの高値ではないが、消費者が日本の誰よりも国際化していることを知って欲しい。フェアーに海外の産地とも競争するのだ。どちらが日本の消費者の満足を勝ち取ることが出来るかの競争である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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