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2015年12月14日

需要はある。足りないのは潜在成長率

 因果律が分かれば、解決に向け努力をすれば良い。
 例えば、先週の10、11日と季節外れの暖かさで、しかも強い雨だった。そうなると、店はきかないし、暖かさで前進している作柄から咲いていってしまう。本日月曜日は予定した大量入荷だったが、売れ行きは良くない。従って、まだクリスマスやお正月には早すぎるので、柔軟な値付けをしている限られた小売店に大量に売ってもらうしかないだろう。17日の木曜日から陽気が冷え込むというので、今日から三日間くらいはぱっとしない市況が続く。

 昨日、東京は松市だった。スーパーマーケットが生活者の花のお買い場になったので、スーパーは量も質も花売り場を充実させてきた。しかし、専門店の花の取扱いは6割以上あるので、相場のリーダーシップは専門店が決めて良さそうなものだが、筋ものと言われる若松や門松は、量販店が価格決定権を持ってきた。一方、華道やアレンジ等の基礎知識が必要な根引き松他は、専門店が価格のリーダーシップを相変わらず持っている。また、現在は、タワーマンションが示す通り、居住空間は縦長が主流だ。天井も高くなっているものの、決して横に広くなっているわけではない。そうなると、松を飾るといっても、まっすぐなものが邪魔にならない為に多く使われよう。

 トレンドは変わるが需要がしっかりしているといえども、松の生産は減ってきた。何故か?松の場合、需要はしっかり見えるのだが、年に一回のお正月用に合わせて畑から切り出し、選別し、市場へ出荷する等、11、12月は日頃の従業員にプラスして、一時的に沢山の人を集めて働いてもらわなければならない。この労働力確保に見通しが立たないのだ。トラックの運転手さんも同様で、運送の場合には常時仕事があるが、それとても人手不足である。この原因は、経済的に言えば、この仕事には潜在成長率アップが期待できない為だ。

 問題は、潜在成長率の低さだ。松だけではない。日本経済全体をとってみても、需要がないのではなく、少子高齢化による潜在成長率の低さによる不安が、設備投資や投資意欲の減退、後継者不足に繋がっているのだ。まずは、機械化やロボット化、一部専門分野の人の移民等により、生産性を上げる必要がある。人口が増えなくとも潜在成長率を向上させる。そうすると、期待される成長率が上がってくる。また、非定型的な仕事の分野でイノベーションが起こり、期待成長率が上昇してくると、この分野の仕事は機械に置き換えることが出来ないわけだから、賃金が上がってくる。こういう循環を作り出す。農業で言えば、オランダは農業以外の会社が農業に参入して成功したわけではない。農業者が事業家農家として、園芸農業を活性化させてきたのだ。EUが広がった分、人件費が安い人達に働きにきてもらったり、機械化したり、MPSの指導により最適な農薬やエネルギーでの生産を行うことによってトータルの生産コストを下げ、社会的にも評価される農業にしていく等、成長率を上げてきた。これを行えばよいのだ。

 需要がもし足りていないとすれば、増やせばよい。花の場合、男性が女性にプレゼントをするフラワーバレンタインでアピールし、男性が女性に花を贈るのはカッコいいようにしていく。また、いつのまにか造花に変わった観葉植物をもう一度、CO2の除去やリフレッシュな環境を売り物に、生きているものへと代えてもらうプロモーションして行けば良い。さらに、子どもたちと一緒に過ごす週末に、花のある生活を提案する。公園の散歩もいいだろうし、切花を卓上にそっと飾って、楽しい会話をしながら食事をするのもいいだろう。どの分野を増やしていくのかは、花の場合、努力目標は決まっている。このように、因果律や目標がはっきりしている中では、仕事の生産性アップによるペイラインの引き下げと潜在消費量の掘り起こしによって、その産業は活性化する。需要が足りないのではない。潜在成長性に疑問があるから尻込みしてしまう。この潜在成長性を確実に引き上げることが、今必要なことであろう。作業のICT化、後継者を含む優秀な人材のリクルートがその第一歩だ。

投稿者 磯村信夫 : 15:36

2015年11月30日

次は景気だ

 昨日の11月29日(日)、地元の入新井第一小学校の140周年記念同窓会に出席した。140年というと半端なようだが、大東亜戦争終結前の70年、戦後70年の記念すべき年だ。戦後、日本は自国を護る力を長い間アメリカに委ねてきた。日米同盟、日米安全保障条約があるにせよ、今年は日本が独立国家として主体的にアメリカと組む、という普通の国になってゆく第一歩を踏み出した。

 一つの国の有り様は一人の人間の有り様と同様だ。人間には、体力(健康・腕力)、経済力、人徳の三つの力が社会で生きていくには必要だが、国で言えば軍事力、経済力、文化・文明の力の三つが、国際社会で生きていくために必要なものである。日本の経済力が衰えて20年も経ってしまったので、軍事力や国防力に目鼻がつきつつある今、それに次いで経済力をつけることが望まれる。

 東京オリンピック後の2025年には、今と比べて北海道に住んでいる人口と同じ600万人が、日本からいなくなっていると予測される。しかも、50歳以上の人が過半数を超える。そして、足元では人工知能やICTをはじめ、第二期の産業革命が進行している。その中で、諸外国では既に行われているレベルの国防、グローバリゼーションに基づいた観光産業と、中小企業の産品の輸出戦略を行うことが必要だ。そして、東京オリンピックまでのこの五年間で、世界から見たユニークな日本「クールジャパン」戦略で遅れを取り戻したら、オリジナリティに基づいた「ホットジャパン」で国内外の人達を喜ばせる芽をつくっていかなければならない。花で言えば、トルコキキョウやヒマワリは「ホットジャパン」の一つのシンボルである。このように、大中小の規模を問わず、日本の産業が変わっていくことが必要だ。もちろん、花き業界も同様である。

 抽象的な話になってしまったので、もう一つ、大田花きが使っている商売上の指数を皆様方にお知らせし、共有して使っていくことで、生活者に花のある生活をもっとしてもらうよう、業界全体で努力していきたいと思う。その指数は、アメリカの経営コンサルタント会社であるベイン・アンド・カンパニーのものから一つ※。ベインの調査によれば、顧客接点ミスを犯した場合、顧客の31%は取引をやめ、62%は取引の縮小を検討すると回答したそうだ。もう一つ、週一回の大田花き顧客分析会議資料の反省画面に載っている、「去った顧客の原因」指数をお伝えしたい。それによると、去った顧客の内68%は「大切にされていない、感謝されない」と思い去って行った。14%が商品やサービスに対する不満の為、9%が価格や商品を比べて他社へ行き、5%が友人や親戚に勧められて他社へ、3%が引っ越しの為、他社で仕入れるようになった。そして、1%が死亡した為である。また、売り上げ増進のページには、「満足している顧客は他でも買う。非常に満足している顧客は他社では買わない。現在の顧客を上方のカテゴリーに2%移動させれば売り上げは10%増え、収益は50%増加する。」と記されている。後半の二つは、もう古いデータなので出所は何所だったか忘れたが、一つの目安として読者の皆さんと共有し、どうやって消費者にもっと花と緑を買って頂くか、という土俵で競争して業界を活性化させたい。


※日本経済新聞出版社 『企業価値4倍のマネジメント』より

投稿者 磯村信夫 : 16:57

2015年11月23日

第二の産業革命下での宅配騒ぎ

 先月下旬から11月20日までの単価水準を見ると、大震災のあった2011年と同様、過去五年間で最も低い単価推移となった。今年は秋が早く彼岸後の天候にも恵まれ、個人消費全般は上向きだった。花も、小売店は「ようやくトンネルを抜け出しつつある感じ。ロスが少なくなってきている」と言っていた。しかし、11月に入ると、週末の度に天候が悪く、現況は過去五年間で最低の単価推移だ。花は三気商売で、天気、景気、やる気で構成されている。天気は芳しくないが、花の景気は最悪期を脱していると判断している。従って、花が売れるか売れないかは努力ややる気の問題であるから、是非とも売っていって欲しい。

 11月22日「いい夫婦の日」の小売店舗の売れ具合はまだ分からないが、今朝もいよいよクリスマスの飾り付け商材を買いにきている人が多数来場していた。アメリカではThanksgiving Day(感謝祭)が終わってからクリスマスの飾り付けをして、1月半ばまでその飾りを楽しむ。一方、日本では、勤労感謝の日が終わった後、冬支度と共にクリスマスの飾り付けをする。そして、12月20日くらいから徐々に正月の装いに入っていく。クリスマスの飾りは25日で終わりの所が多い日本だから、商店やレストラン等、早めに飾り付けをしていきたい意向は分かるが、正統派は新嘗祭(勤労感謝の日)まで秋を楽しむムードだろう。

 ICT※を携帯まで含め誰もが利用するようになって、物流の大切さが、宅配業者の活躍と共に国民の共通認識となってきた。大田花きは新しい物流棟を建築中で、一年目の工事が終わろうとしている。12月の繁忙期には工事を中止し、1月からまた一年をかけて建設する予定だ。なにやら昨今、インターネット物販会社が、その日に受注した品物をその日のうちに届けるとか、はたまた、会員であれば1時間以内に届けるとか、大手アマゾンの仕掛けから宅配業者は大変なことになっているようだ。花の宅配便の場合、横に出来ないし、一つ一つ手渡しでないと傷んでしまうので、宅配業者にとっては扱うのは厄介な品物だろう。常温で済むものはまだいいとして、不在の時は生ものだから傷んでしまう。また、コンビニやマンションの宅配受取ロッカーには入らない大きさのものが多い。もう一度、JFTD等、花屋さんの間での宅配業務を見直して、花き業界をあげてこの物流業務の利便性と安全性を訴えていく必要がある。そこへ行くと、B to Bの弊社 大田花きが作っている物流棟は、売り手と買い手の出会いの場を提供する場所で、鮮度保持物流や、コンビニ業界であればそこへ卸す専門商社が行っている物流機能を担うとするものだ。

 オランダの市場のように、販売による手数料収入は20世紀の三分の一となっている日本の卸売会社が多い。オランダはその対策として、その国が近代国家としての証である「所有権」の概念から、1/3台車・バケツ貸賃、1/3市場の使用場所代等、1/3販売手数料の収入で埋めている。日本の花市場も、今までと同じことをやっていれば、赤字にならないのはまだマシで、青果卸にいたっては、大手の所でも赤字になっている所がある程だ。こういった業界の停滞状況の中では、意志決定をする際、どうしてもいつもと同じ、昨日の繰り返しになりやすい。だが、食っていけないのなら違うこともやらなければならない。もう一度、原理原則に則った商売に戻し、その上で仕事を再定義し変化させる。そういう問題意識を持ったワンマン型の経営者と35~45歳位の中堅社員が、その会社や業界を変えていかなければならない。

 イーコマース業者や宅配業者が、そして、諸条件から卸売市場も、消耗戦とも言える、利益を第一に考えない流通を行っているが、現在の日本においても「キャッシュアンドキャリー※」で売り上げを伸ばすアメリカのコストコやドイツのメトロは、売上高営業利益率を10%以上確保している。また、日本ではかつて、上野御徒町の「二木の菓子」は、お客さんが一定のロットのお菓子の代金を現金で支払い、自分で持って帰るキャッシュアンドキャリー形式を売り物にした。こうすれば、販売者はそんなに利を乗っけないでも販売できる。

 人手不足の折、ロボットの導入や自動化を行わない限り、今のイーコマース業者と宅配業者が利益をあげてゆく方法は、取扱数量を増やし、損益分岐点を上回るようシェアを獲得することである。シェアを高めて他を排除することで、今は我慢の時期でも、今後利幅を上げてゆくだろう。そうなると、将来、消費者はどこを通じて買うかと言う選択肢が狭まってくる。インターネット販売であれば、どんなに小さい店舗でも、ユニークな商品であれば、大手販売業者が放っておかない。花き業界の小売業者まで含めた我々物流業者も、そして、消費者も、オムニバスのチャネルの販売まで含め、産業革命に次いで、今起きている第二の産業革命の流通部門の実態を見て、冷静に判断をしなければならない。原則はキャッシュアンドキャリーが最も安いことを認識して、どういう物流を使い消費者に届けるか、自分で責任を持ち意思決定していかなければならない。


※ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術)
※キャッシュアンドキャリー:現金で商品を購入し、お客自身が商品を持ち帰る制度のこと。

投稿者 磯村信夫 : 15:52

2015年11月 9日

店員にその気にさせる突然の祭りとフェア

 8日の日曜日の雨は非常に残念だった。大安だからと一週間早く七五三をした家族もいるだろうし、私の場合だと、「大田臨海部まちづくり協議会」で、東京オリンピックに向けて、大田市場前に水上タクシーの船着き場を作ったり、場外店や水辺レストラン等を作る為のイベントを日曜日に計画していた。しかし、朝からの雨で9時に集まった朝礼は解散式となってしまった。こんな風に、昨日の雨に泣いた人が日本中でいたのではないだろうか。本日は暖かい。鍋物や漬物にしないので、近所では四つ切100円の白菜が売れ残っていた。ここのところの暖かさから花も誤算で、ストックやスナップ等、冬の商品が安値に泣いている。品物は良いのだから、こんな時にこそ小売店に頑張ってもらいたい。

 この頃の小売店の実態はこうだ。1990年代は、安売りと言われようが、何と言っても量を売る花屋さんがいた。負けじとばかりにホームセンターでも量を売った。それが、21世紀になって、特にリーマンショック以降生産が減って、品揃え重視、量よりも質と言いながら、ロスを出さない少量の販売になってきた。何店舗も抱えている店では、店の販売責任者が仕入れ担当の人に発注する。従って、仕入れ人は受注したものしか買わないから、天気の具合で量的に出回る品物が極端に安くなってしまった。それでは困るので、卸はセリ前取引をしようとする。量を販売しようという意欲のある花店が本当に少なくなっている。要するに、「素敵な花屋さん」で、固定客に合わせる花屋さんが圧倒的に多くなってきてしまった。

 こうして、青果も魚も花も縮小均衡してきたわけだが、今注目されてきている花屋さんや魚屋さん、八百屋さん、あるいは、それらの生鮮品の売り場は、仕入れ人が各店舗の品揃えから販売総額まで考慮し仕入れた商品を、販売の責任者が何としても売らなければならないと創意工夫して売り切ってしまう、こういった店だ。消費者から"面白い店"、"楽しい店"、"覗いてみたい店"と言われている店である。量を売る店が無くなって、素敵だが、いつもお行儀良く販売するような店ばかりになった昨今、お客さんの主体が団塊ジュニアの世代になって、なおさら、荷は偏るが、どかーんと、それで勝負するような地元密着の店が人気になってきているのだ。

 具体的に言うと、本日9日の月曜日は暖かい。例年の気温に戻るとしても水曜日以降だ。花の場合、切花は2日ですっかり売ってしまう。鉢物なら3日~5日で売ってしまうのが理想だ。こんなに品目と品種が多い花を扱っているのだから、この位で売り切る気持ちがないと、次々と違った種類の花を売れないし、お客さんに持ちの良いモノを楽しんでもらえない。例えば、ストックだったら、店の販売担当は、この陽気でストックは売りたくない。12月から本格的に売っていきたい。こう思うだろう。これを、品質の良いモノが多くて安いから、仕入れ担当は大量に買う。それを売り切る為、お祝いカゴの注文が来たら急遽一足早いストックを入れる。葬儀の注文でも花祭壇にストック入れる。七五三の花にも、何でもストックを使用していく。ちょうど、魚のブリを沢山売らなくてはならないとなった時、刺身や照り焼きだけではなく、しゃぶしゃぶやブリ大根等、なんでもかんでもブリを使うのと同じように。さらに、店は突如ストック祭りやブリフェアなど、なんでもいいからイベントにして売り切ってしまう。こういう気概が、生鮮食料品花き産業の人たちには必要だ。天候により採れすぎたストックやブリ、白菜は必要量以外は捨ててしまう。などと言ったら、ストックやブリや白菜に申し訳ない。消費者に飾ってもらい、食べてもらう。その為に全力を尽くす。こういったことが必要だ。そして、PDCAサイクル※が必要なのは言うまでもない。しかし、売るに天候、作るに天候の生鮮食料品花き産業は、消費者が欲しない時でも欲するようにさせて売り切ることが必要なのだ。

 今、"売り切る"人たちが、そういう店が消費者にウケている。しかし、この「利益は薄いが量を売る」という人があまりにも少ない。是非とも、今申し上げた時代になっていることを、生鮮食料品花き業者は肝に銘じてほしい。そして、計画していない、急な○○祭り、○○フェア等、突如行う祭りやフェアであれば、社員も「売るしかない」とやる気になって、一生懸命売るだろう。こうしてもらいたいのである。


※PDCAサイクル:
  Plan(計画)・Do(実施、実行)、Check(点検、評価)、Act(処置・改善)を行い、業務改善を図る手法

投稿者 磯村信夫 : 15:43

2015年11月 2日

新需要創造には業界人の覚悟が必要

 ハロウィンが土曜日にあたった今年は、9月末からハロウィンムードが盛り上がりをみせていた。しかし終わってみると、期待が大きすぎたせいか、黄色やオレンジのハロウィンカラーの花、観賞用かぼちゃは120%弱の伸びに留まった。一方、仮装用の衣装は、渋谷や六本木の様子がTVでも報じられていたが、3割以上の伸びがあるのではないか。海外からもこの仮装イベントに参加する程であるから、おおよそこの数字に間違いはないだろう。

 新しい需要を作りあげようと、農水省の国産花きイノベーション推進事業の予算を頂いて、各団体が取り組んでいる。先月末も、経過報告や課題討議の会議が行われた。例えば、東京都花き振興協議会では、日本の伝統的な花飾りを羽田国際線ターミナルで展示したり、テーブルデコレーションフェアでホームユースとしての花の楽しみ方を提案、さらに、治療に役立つ花きの効用のセミナーを開いたり、花育の実証結果を報告している。また、とある団体では、オリンピックのビクトリーブーケに向けて、安定的な花のサプライチェーンをどう構築するかを議論したり、夏の暑い時期で海に面した地域なので、植栽をするにはどの花のどんな品種が良いのかコンテストをしたり、「フラワービズ,フラワーフライデー」、あるいは「ウィークエンドフワラー」のプロモーションの具体化について検討をしたりしている。いずれもかけ声倒れに終わらないよう、種苗から生産、卸売と仲卸、小売の各団体のリーダーたちが率先して実行に移し、業界全体を巻き込んでいかなければ、消費者まで巻き込むことは出来ない。せっかくこのように外に向かって活動を始めたわけだから、この活動を本物にしていくことを決心するところから始め、消費の拡大を期することが必要だ。少子高齢化の日本において消費が減らない可能性があるのは「花き」だ。農業の中でさらに重要な位置づけとなる「花き」を、我々は消費サイドから支えなければならない。

 話は変わるが、先週末、オランダ花市場・フローラホランドの2020年までのプログラムに則り、「World Flower Exchange」の催しが中国で行われた。BtoCのアリババグループや、BtoBが中心であるテンセント等、中国の優良イーコマース大企業と接触し、来年からオランダ花市場の花でイーコマーストライアルを始めるという。このようにグローバリゼーションは進んでおり、オランダは隣国ドイツと同様、中国を大切なマーケットだと考えている。日本の花き業界よりも中国に対して構えるところがない。オランダは中国マーケットに対して政治力を持って上からいくが、日本は民民の関係で下から行く。明らかに取り組み方が異なってきたということであろう。

投稿者 磯村信夫 : 15:43

2015年10月19日

消費拡大活動の事例

 10月はいけばなの展示会がデパートであったり、花の見本市やフラワーショー、ガーデニングショーが中下旬にあったり、月末はハロウィンとイベントが目白押しである。東京で盛り上がっているハロウィンは月初めにカボチャの飾り付けをし、月の半ば頃から小さなカボチャを器にしてアレンジした花が店頭に飾られる。昨年、花き振興法が成立し、現在約3,700億円の卸ベースでの花きの取扱いを、5年後の2020年、東京オリンピックの時には5,000億円に増やそうと目標を立てた。国の予算もついて、いよいよどうすれば掛け声倒れにならないか、少しずつプランを立てて実行に移している。

 先週末、小生が参加している花育活動の「ワンコインクラブ」が、平成27年度太田市青少年健全育成功労者に表彰されたので、群馬県太田市で開催された表彰式に参加してきた。花育は日本中で行われるようになって、商売の面からで恐縮だが、将来のお客様を育成しつつある。「ワンコインクラブ」は国の支援とは別の花育で、有志が毎月500円を拠出して集めたお金を使って小学校で花の教室を開いている。また、群馬県太田市は海外からの移住者が多く、クラスに何人かは外国の生徒がいる。「ワンコインクラブ」は、基本路線として外国人の生徒さんがいる小学校で花育をしている。子供たちに花の水揚げの仕方や飾り方を教え、花きを通じて感受性豊かにのびのび育ってもらう。優しい気持ちになるだけでなく、花が枯れていく姿を見て、生き物の尊さ学んでいく。「多様性を認め合う明るい未来の創出」を目的としている会だ。

 さて、18日の日曜日、花キューピット神奈川支部協賛の「かながわ花フェスタ21"フラワーデザインコンテスト クイーンズカップ"」がみなとみらいのクイーンズスクエアで開催された。横浜はご存じのとおり、独自の文化が根付いている。赤レンガのようにノスタルジックなものや、国際的に開かれ洗練された文化。また、港町の野毛地域に象徴されるような、デカダンス的な美しさが価値観の街。入江一つ一つで習慣が異なる漁師町の文化。もちろん、鎌倉等いくつもの街が神奈川県にはあるが、いずれも東京とは違ったものだ。それを体現したものが神奈川の花屋さんである。クイーンズカップの今年のチャンピオンは、神奈川のお花屋さんの作品で、何が神奈川的な、横浜的なものかは分からないが、アウトドアウェアのパタゴニアが神奈川に日本支社をおくように、ちょうど湘南がワークライフバランスのとれた人々の生活のシンボルであるように。そういったイメージに相応しい、素直に楽しく、美しい喜びを伝える作品であった。花キューピットの会員の方も、日本フラワーデザイナー協会の会員の方も、なにか住宅続きで、どこまでが東京でどこまでが神奈川か分からないし、職場と住居が神奈川・東京と交錯している人も多いに違いないが、しかし、つっぱった中にも人心地がついていて、そんなに構えない、地に足がついたゆとりがある。こんな神奈川の文化を反映させる作品が多かった。このコンテストは、多数の方に見て頂き、2020年の目標5,000億円に向けて、専門店がなすべき方向性、そして、その役割を語ってくれていたと思う。

 表彰式に参加して、大変すばらしい時間を過ごさせてもらったと思って帰宅の途に就いた。生産者も、自分の作った花を上手に使ってくれて本望であったろう。

投稿者 磯村信夫 : 14:47

2015年10月 5日

花市場は売上でなく利益重視で臨むこと

 3日の土曜日、近所の小学校で秋の運動会が開催されていた。入賞者にはどんな花がプレゼントされているのだろうかと覗いてみたが、運動会だから入賞者に花が渡される筈がない。オリンピックの花・ビクトリーブーケに気持ちが行っているものだから、ついつい花の事を思い浮かべてしまう。オリンピックの花については現在、検討会を開いている。夏の暑い時期でも、日本らしい花、東北の2011年3月11日の復興を物語る花を使って、ビクトリーブーケが出来ないものか検討中だ。

 上半期が終わり、いよいよ下半期。今年度も残りあと半年となった。上半期の大きな特徴として、全国の市場の相場が揃ってきたことが挙げられる。因果律は需要よりも供給が少なくなって、産地は大手市場に荷を絞り込み、中小市場はそこから品揃えの為に荷を買って再販する。そういう流れが明確になってきたからだ。菊類等の仏事の物日に必要な花の産地は、二十世紀型の出荷体系で、全国津々浦々の卸売市場にも出荷をしてくれている。しかし、最近では出荷会議で何十社も集まるようなそれらの大産地でも、市場を絞り込む動きが明確になってきている。大産地も荷が少なくなって、配荷作業コストと価格リスクの問題から、産地は「欲しいのなら注文で。価格はこれこれです」となって、卸は値決め見込み発注をしなければならなくなって来た。また前回見込み発注したが上手く売れず損したので、だったら直接産地にオーダーするとイイトコドリできないから、中核卸から仲卸と同じように必要なものだけ取って販売しようと言うことになった。このように花の卸売会社は、買取り販売をせざるを得なくなって来ている。

 2010年以降、供給が過少になったが需要が振るわず、利幅が少なくなり、仲卸や問屋などの営業悪化が目立った。2013年以降、輸入品まで含めさらに供給が少なくなってくると、卸売会社の営業悪化も目立ってきた。青果市場の場合、経営の仕方によって大手でも営業赤字の市場が続出しているが、その手前まで日本の花市場も来ているのである。花き卸売市場が、青果市場の後を確実に追っていることが明白になった2015年、上半期であった。

投稿者 磯村信夫 : 16:02

2015年9月14日

各自、組織体としての経営理念を持って「組む」

 先週、第37週の集中豪雨で、北関東・東北の花の産地は少なからず被害を受けた。量的には心配していなかった今期のお彼岸だが、これで一気に荷が不足することとなった。また、ニュースでは栃木県の苺「とちおとめ」の苗に被害が出た為、クリスマスの苺が心配されていると報道していた。品目により、花も同様の心配がある。それにしても、地球温暖化による従来の常識では測れない天候異変の中で、どのように花き生産者を勇気づけたら良いか、また、農業を辞める人もいる中、生産を維持してもらうだけではなく、頑張って生産規模を拡大してもらうにはどうすれば良いのか。思わず悩んでしまう先週の天候であった。

 悩んでいても仕方がない。解決策の一つ目として、取引ではなく「取り組む」ことが挙げられる。国産であれば、国内生産者、卸売市場(卸・仲卸)、小売業者のサプライチェーン、また、輸入品であれば、海外生産者、輸入商社、卸売市場、小売業者のサプライチェーン。これら全体を考え、消費者に向け、特定のサプライチェーンごとに種類、質、量、納期を定め、役割上のリスクと難易度に応じた価格設定、取り分を決める。一緒に取り組んで、花き業界を、花き流通業界をどのように発展させていくか。消費者にサービスを提供していけるか。「取引先」ではなく「取組先」として捉えて、一緒に花き業界を盛り上げて、生産流通をしていくことが必要である。

 二つ目に、「取り組む」相手を見極めることだ。気が合う者同士で仕事を組めれば良いが、中にはぴったりと気が合うとは言えない時もある。その時でも、組む相手は目指すものが同じ人が良い。農協も市場も、かつての商店街、日本中にある"何とか銀座"のように、一つの組織体が自分自身で考えた経営理念、それに基づく経営目標を持っているとは言い難い。何かみな似たような会社で、また、実現すべき目指す姿を持ってこなかった。合併と言っても、積極的にチームを組む、或いは、理念は同じだが、機能を補完し合うというような合併が進んでこなかった。私立の組織なら合併できたが、自分たちはあたかも国公立の組織体のように、何も考えず、目指さず、漫然と毎日同じように仕事をしてきた感がある。これでは、人口減少社会の中にあって、心底がっちり組むのは難しい。系統組織にしても、卸売市場にしても、はっきりと自社の理念を打ち出し、仕事をする。そして、合併やサプライチェーン上取り組む相手をきちんと探すことが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 14:55

2015年9月 7日

人口減、少子化を前提に卸売市場の統合を考える

 9月の需要期であるお彼岸や敬老の日、お月見などの物日については、首都圏では荷はしっかりあり、8月盆で消費者の期待に応えられなかった分、早めに生産状況を消費者に伝え、安心して花を楽しんでもらえるようにしたい。農産物全般に言えることだが、第二四半期から価格もしっかりしてきて、サブプライムローン、リーマンショック、そして、3.11以降、低調に推移していた生鮮食料品花き市況も、ようやく堅調になってきた。

 花き産業では、国内生産減を海外の生産物で輸入商社を通じて補給してもらうという構図が崩れ、絶対量不足が誰の目にも明らかになってきた。国産では、特に鉢物類と露地の切花においてそれは大きい。出荷者は卸売会社を絞ることで物流コストを軽減、また、出荷先に定価で買い取ってもらうことで所得を上げようとしている。しかし、買取り取引の場合にはリスクがあることを考えておこう。世界には、日本やオランダのような卸売市場がない国が殆どだから、基本的に契約や買取りである。生産者は気ままに作るというわけにはいかない。買い手と運命共同体になるよう、買い手の意向を反映させなければならないし、次の作付けで契約が出来ない場合がある。こういうリスクを抱えながらやるのが契約取引だ。よって、ヨーロッパでは、卸売市場が介在した方が良いと生鮮食料品花きの分野においては考えられている。必ずしもセリ市場でなくて良いが、行政府のチェックの下、透明感のある取引を、生産者・消費者の為に行っているのである。現在、出荷量不足の生鮮食料品花きで、買取りこそ生産者の手取りを増やす方策として、その方向性を産地が探ろうとしている気持ちは分かるが、この比率を高め過ぎると、長期的にみて必ずしも生産者や消費者の為にはならない。

 では、長期的に見て、日本の生鮮食料品花き市場はどのように合併をしていけば良いか、という論拠についてお話したい。中国の一人っ子政策ではないが、日本でも国の政策により、現在三つの人口のピークがある。戦中の「生めよ増やせよ」の世代、戦後の団塊の世代、そして、その子どもたちである。女性がお子さんを生む年齢は、一般的には25歳~39歳までが多いので、その年代をとると、2010年~2040年までの30年で、子供を産む女性の年齢の人口が今より37.1%少なくなる。さらに、2010年~2060年では、55.1%少なくなる。国の政策で人口をいじると、5、60年は不自然な動きをするが、日本は今後50年、少し不自然な動きのまま人口が減ってゆくものと思われる。若い人達がその分少なくなるので、首都圏も当然、今ある「地方で育てて頂いた若い人たちを東京に送り出してくれる」といった余裕はなくなってゆく。どこの地方でも、地域での有効求人倍率は当然に高くなり、人口減にはなるが、地方都市も十二分に若い人が活躍している筈である。グローカルで地域は絶対に消滅しない。そうなると、地域の文化である食や花飾り等、独特のものを調達してプロ向けに販売する卸売市場が合併して残っていないといけない。

 旧江戸時代の藩で一つの市場があるのか、あるいは、県で一つの市場があるのか。または、道州制にした際に、その地域で一つにするのか。どのような形にするにせよ、地域文化を継承し、地域のアイデンティティに即した花きや生鮮食料品を創って作って売る。その拠点の市場が必要となる。今後10年、2025年まで、東京オリンピック後の本格的な人口減と、少子化の未来を踏まえ、良い地域合併、良い大手市場との連携、花き市場と生鮮食料品市場との合併等、形態はいくつもある。大切なのは、収支が合う事、地域の文化、立地条件に根差していることである。

投稿者 磯村信夫 : 16:34

2015年8月31日

人口減少の中での花の消費

 病気で三ヶ月ほど休ませて頂きました。その間、弊社 大田花き取締役の皆さん方にコラムを担当してもらいました。読者の方々も、様々な角度から卸売市場業界や花き業界への問題点あるいは提言をうかがい知ることが出来たと思います。
 
 私は、三ヶ月ほどの時間を、特に手術が終わって退院し、自宅で過ごした時間を、それなりに有効に使えました。今まで色々な角度から物事を見ようとしてきましたが、かなり視野が狭かったと今では思っています。

 例えば、自宅療養をしている間にこんなことに気が付きました。日本の失われた二十年の間に、新幹線でフランスやドイツに圧倒的な遅れを取っているという事です。両国とも、二十万人以上の人口の都市で、新幹線網が敷かれていない都市は一つか二つにすぎません。さらに、高速道路網に関して日本はもっと著しい遅れがあります。労働生産性の低さの要因の一つに、先進国の中で最も遅れてしまった日本の高速道路網があるということは考えてもみませんでした。また、移民の問題一つとってみても、国際競争力には様々な要因があるでしょうが、ドイツはアメリカに次いで世界第二位の移民受け入れ国になっている。今、ヨーロッパ大陸では難民問題がありますが、ドイツはいち早くその枠を八十万人と設定し、かつてトルコからの移民政策に失敗したことを反省して、新しい移民政策では新たに国籍を得た人たちに、新しいドイツ国民として教育をきちんと施している。これはほんの一例ですが、今まで私が持っていた古い知識などを刷新し、あらたな見方がこの療養中に出来るようになったと感じています。

 今、日本の人口は確実に減っていますので、市町村合併や農協合併、そして、卸売市場でも合併することで、数を減らしてその組織体の収支バランスを保つようにしようとしています。花き業界においても、葬儀は増えるがその分規模が小さくなるし、結婚式に関しては若い人が少なくなるから減っていく。この中で花き産業の生産性を上げていくには、他の物材よりも花のある生活が素晴らしいと思わせることを絶えずし続けなければなりません。すなわち、増えない可処分所得の中でもっと花を買ってもらうようにするには、新商品(品種・色・飾り方)を出して、花のある生活を一週間保証する。鉢物であれば一ヶ月保証する。あるいは、メンテナンスサービスも含めて販売していく必要があるでしょう。物の販売ではなくサービス、それも期間サービスを買ってもらうのです。

 今まで、日本の人口動態を団塊世代・団塊ジュニアで捉えていた花き業界の見方から、戦中・戦後・団塊ジュニアの三つの山で捉えながら、その中でマーケティングをしていく必要が消費者減少の花き業界マーケティングには必要です。一つの解は、花や緑を売るのではなくて、「花と緑のある生活」を売る。レストランの生け込みであれば、一週間に一度のメンテナンスサービスが必ず含まれるように、「サービスを売る」ということです。もう一つは、時代を先回りした"New"を創るということ。そして、それらが出来る人材を花き業界が教育・養成するということ。ここにかかっていると思います。

 日本の競争力と言っていいか分かりませんが、他の民族に比べて日本人が秀でている点は、嘘をつかない、真正面から物事を捉えて誠実に処していく、ということです。併せて、長くそのことをつきつめて努力を積み重ねる。こういった先人たちの伝統に則って仕事をしていけば、必ず未来は開けると思っています。
では、惰性で仕事をせず、誠実に仕事をしてまいりましょう。

投稿者 磯村信夫 : 15:34

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