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2008年2月27日

Vol.50 神奈川県 チャコ農園×神奈川県農業技術センター

?チャコ農園 プロモーションビデオもあわせてご覧ください?

?春の香りをもとめて?

香りの王様はジャスミン、女王様はバラとも言われますが四季折々に咲く香りある花というのは本当にたくさんあります。初夏の梅雨空に香るクチナシ、真冬のヒヤシンスというように季節そのものを感じる香りとして、記憶に残っている花もあるんじゃないでしょうか。

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さて、今回のウンチク探検隊のテーマとなる花は春の香りをイメージさせる花、スイートピーです。
スイートピーといえば柔らかそうな花びらに甘い香りがピッタリで、英名も”Sweetpea=香りの良いエンドウマメ”といかにも名前どおり。

もっと大きな花を、豊富な色を…と目が肥えた欲張りな私たちの願いを叶えるべく今でも品種改良がさかんな春の一大品目ですが、実は見た目以上に香りの潜在価値を秘めている花なのです。

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甘く爽やかな香りは万人好みで、かつてはキャロンやゲランといった世界の有名香水メーカーからスイートピーをテーマにした香水が発表されました。

写真(左)はゲランの香水 「フォーリフローラ」

切花でも本当にさまざまな品種が出回っているスイートピーですが、実は神奈川県に香りを追求して開発されたという特別なスイートピーがあるらしいのです。そこで今回、そのスイートピーを開発した神奈川県農業技術センターの門をたたき、さらにそのスイートピーを実際に栽培・市場出荷しているというチャコ農園さんを訪ねることになりました。スイートピーの原点に立ち返るべくホンモノの香りを体感、そして香りにまつわる秘密も探っちゃいましょう!

?スイートピー発祥の地 神奈川県へ?

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今日の取材は香りのスイートピーがテーマとあって、ウンチク探検隊初登場、香りのスペシャリストこと蓬田先生にご一緒いただきました。
蓬田先生は、化粧品会社で香水や化粧品の原料になる”香料”を研究してきた香り専門の研究者です。現在はパフューマリーケミストとして活動されながら、私たちの香りの取り組みにも尽力して下さっています。
先生が発表したバラの香りのタイプ分類は、HP「香りの提案」でもおなじみ。まだ見ていないという方、こちらからどうぞ♪
香りをケミカルにとらえる先生の嗅覚が、スイートピーをズバリ解き明かしてくださることに期待して大船に乗った気持ちで行ってみましょう!


「ここ神奈川は、日本のスイートピー発祥の地だそうだね。」と蓬田先生。そう、茅ヶ崎市内でもかつてはたくさんのスイートピー農家さんがあったんです。今ではチャコ農園さんを含め数軒に減ってしまったそうですね。スイートピーの本格的な切花栽培は、大正時代に神奈川県横須賀市ではじまったそうです。


80年代のヒット曲、”赤いスイートピー”をきっかけに都会でスイートピーが売れ出したそうです。それはスイートピーの切花マーケット確立の瞬間でした。バブリーな当時、1本数百円したこともあるという、とっても高価な花だったそうですよ。おそるべし音楽の影響力!

?香りのスイートピーはここで生まれた!?

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ここは神奈川県農業技術センター、広大な敷地にこれまた大きな研究施設を構えていらっしゃいます。
壁面のいたるところにアールデコ調のデザインが施された立派なセンターと、彼方に望む大山(おおやま)のパノラマビューをしばし満喫。

センターのベテラン主任研究員 柳下さんが出迎えてくださいました。柳下さんはここで香りのスイートピーを開発されたご本人です。「今、ちょうど咲いてるから見に行きましょうか!」とフットワークも軽々。あわてて柳下さんを追いかけます。
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香りのスイートピー生みの親 柳下さん   バラを見つけて思わず足を止める蓬田先生

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「香りのスイートピーは2月?3月が開花ピークなんですよ。」と柳下さん。

センターでは主にスイートピーやバラ、シクラメンのオリジナル品種の育種に取り組んでいるそうです。バラは”湘南シリーズ”でおなじみですね。どんな育種テーマがあるんですか?という質問に
「スイートピーは、ちょっとクセのある個性派たちを作っています。
育種のポイントは・・・他県の品種にはないオリジナリティをどう出すか。
神奈川は”発祥の地”ですからね!(笑)」と柳下さんのユーモラスな言葉。

神奈川県ならではのオリジナリティ、香りのスイートピーもそのひとつなんですね。



?香りそのものが存在感!??

やっとお目にかかることが出来ました!香りを追求して開発されたフレグランススイートピーです。

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「スイートピンク」

濃厚なバラとヒヤシンス、ジャスミン、熟したブドウの香りをぎゅっと凝縮したフローラルノート。
まるで香水の香り。






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「スイートスノー」

おしろい粉のように甘くパウダリーな香りに、ヒヤシンスに似たグリーン感がすっきり。「スイートピンク」の香りがちょっと強すぎるかな、という方にはこちらがオススメです。

くるっと丸い花びらがスミレみたいで可愛いなぁ。




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どちらの花の大きさは直径4cmほど。小ぶりでも、しっかり4輪咲くそうです。「ハマエンドウに似てるって言われるのよ。」と柳下さん。

←こちらがハマエンドウの花。こつぶっこで可愛い!
それにしてもこの香りは?ちょっと近付いただけで漂ってきますよ、蓬田先生!
「これは・・・強いね、完成されているね?!」香りのスイートピーを前にすっかり研究者の横顔になっていらっしゃいます。

DSC04819.jpg「ブドウの香りに、バラの花に似たこっくりした甘さ、それからヒヤシンスの香りにそっくりなグリーン感がミックスされた香りだね。
ジャスミンに似た濃厚な香りもありそうだよ。」

う?ん・・・色々な香りが頭の中に浮かびますねぇ。確かに、それぞれの特徴を全部あわせるとスイートピーの香りになるかな?



「これならフレグランススイートピーと言う価値はありそうだよ、あとで分析結果を見てみよう。」と、どうやら蓬田先生も確信めいていらっしゃいます。
今回の取材をもとにしたスイートピーの香りの特集は、後日HPで取り上げる予定ですのでどうぞお楽しみに。


DSC04802.jpg「どちらも香りを分析してパフューマーからも評価をいただいて、発表したんですよ。」

すでにお墨付きの香りだったようです。
「日持ちは普通のスイートピーとほとんど変わりません。1本使うだけでも香水のような香りを楽しめるし、野草みたいなナチュラルな外見だって最近のスイートピーにはない味わいがあるでしょ?」と柳下さん。



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←ハウスで見つけた兄弟品種の「スイートパッション」。ちょっと作りづらいんだそうで、残念ながら商品化されませんでした。

それにしても、一体どうやってこの香りを作り出したんでしょうか。「これはスイートピーが昔から持っていた香りなんですよ。」と柳下さん。ああやっぱり香りの秘密は育種にあるんですね。



?花の香りは退化する!??



近年、花の香りはどんどん失われているのだそうです。

「品種改良を繰り返すほど、その花の原種がもともと持っていた香りが弱まったり、質が落ちてしまうものなんだ。スイートピーなんて本当に良い例だね。」と蓬田先生。

どうやら、人間の都合で品種改良を重ねるほど、花が美しくなることと引き換えに香りを失ってしまう
ということのようなのです。確かに、最近のスイートピーは香りがするものもあれば、ほとんどしないものもあったと思う。
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「そうです。ここにあるフレグランススイートピーは香りに優れる、原種に近い親を何代も交配して作られたんですよ。」とおっしゃる柳下さん。

花色の豊富さや見た目のキレイさだけが育種テーマになってきたスイートピーですが、香りそのものをテーマにした稀少なスイートピーがあったのですね。

それは新しい香りを作るというより、香りを取り戻す育種とも言えるような気がします。

神奈川県農業技術センターオリジナルの個性派スイートピーたち。試作中の品種もあります。

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白地にグレイがかった青のかすり模様。モダンな雰囲気です。

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白いスイートピーに紫のインクをぼかしたようなやわらかな色合い。


「スイートピー農家さんは県内に何軒かいらっしゃるけど、チャコちゃんはフレグランススイートピーを試験段階から栽培してくださっていたんですよ。今はフレグランスシリーズを市場に出荷している唯一の産地さん。私もしょっちゅう様子を見にお邪魔してますよ。」柳下さんにとってチャコ農園さんは育種時代からの大事なパートナーなのです。この後いよいよ、フレグランススイートピー栽培の現場、チャコ農園さんへ向かいます。

?Farm Chakoへようこそ!?

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チャコ農園を目指して神奈川県茅ヶ崎市内を車で走ること1時間。ドーンと立った、こちらのタンクが目印。分かりやすい!

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ようやくチャコ農園に到着!迎えてくださったのは川口さんご夫妻。チャコ農園の”チャコさん”は奥様、寿子さんのニックネームだということを私たちはこのとき初めて知りました。さすがチャコさん、個性が光ってます。

?ジャックと豆の木ハウス?

さっそく、ハウスにお邪魔しました。

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「ハウスに入るとフワッと香りを感じるね。」と蓬田先生。ガラスの天井からさんさんと降る日差しを受けて、光まぶしいスイートピーたちがいました。ガラス張りだと夜は冷え込まないですか?

「夜は4度をキープして温めています。基本的には凍らなければ大丈夫。」

意外にも4度まで大丈夫、という川口さんに続いて「スイートピーは省エネ植物なのよ。」と柳下さん。寒さには比較的強いと聞いてちょっと安心しました。

ハウスのスイートピーは整然と並んで、上から吊るしたフックに固定されています。

「スイートピーはジャックと豆の木だよ(笑)マメ科だから2?3日もあれば一節(10cm)ぐらいあっという間にツルが伸びる。」大変、あっという間じゃないですか!だけどハシゴにのぼって花を収穫するわけにもいかないですよね・・・

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茎はどんどん上に伸びます。茎の節々からも、つんつんした小さいツルが伸びてくる!

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ふと足元を見るとグルグルに巻いた緑のホース・・・?

「これが伸びたツル、こうやって巻いておくの。”巻き下げ”っていうんだよ。」と川口さん。

定期的こうやってツルを巻いて、採花しやすいように頭の高さを揃えておくんですね。

「これ巻くのムズカシイんですよ?!これも生産者さんの技術。」柳下さんもおっしゃいます。ツルの管理には色々なやり方があって、この「巻き下げ」や、地面につけて這わせる方法もあるそうです。

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写真:左は地面にツルを這わせていますね!写真:右は巻き下げ。

スイートピーはあの小さくて軽やかな花からは想像がつかないほど、手間ひまのかかる花なのです。花きの中では最も労働集約型品目で10アールあたりの投下労働時間はなんと4423時間ともいわれているそうです。仕事の細かさはピカイチ!

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スイートピー作りの一年は、夏の終わりにタネをまいて11月後半から花が咲き始め、翌6月にタネ採りをする。
「ずーっと忙しいです。」とおっしゃる川口さんご夫妻、おばあちゃんに本当に頭が下がります。

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蓬田先生、フレグランススイートピーの香りをもとめてハウスの奥地へ。






?スイートピーは太陽の子?

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チャコ農園さんの風景。タンクに描かれたミッキーの絵は、ご主人の弟さんが描いたものだとか!上手い!

「今年は年明けからお天気が悪かったから、だいぶ落蕾(らくらい)したんですよ。」
らくらい、というのは何ですか?

「花芽が育たずにポロポロ落ちてしまうの。ほら、これも・・・。」チャコさんの手の先にはスイートピーの小さなつぼみが。ふっくら色付いてもうすぐ咲きそうですが・・・。「こうなったら、もうこのまま落ちてしまうんですよ。」健康なつぼみと、落蕾するつぼみの見分け方はこうです。

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左のつぼみは健康なつぼみ。しずくのように下を向いていますね。右のように、ひょこっと起き上がったつぼみは要注意!こうなったら残念だけど落蕾してしまうそう。
スイートピーは太陽の光がないと花が咲きません。肥料より、温度より日光が大切だから”太陽の子”と呼ばれるんですね。

?オリジナル品種へのコダワリとは??

チャコ農園では12品種のスイートピーを作っていますが、そのうちフレグランススイートピーを含む7品種が神奈川県のオリジナル品種です。川口さん、やっぱりオリジナル品種にコダワリがあるのでしょうか?

「全国の産地からたくさんの出荷があるし花色のバリエーションも増えたましたよね。これだけ全国でたくさん似たような花色のスイートピーが作られている中で、個性を発揮するような品種を作らないと。」

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「そうなんです、だからフレグランススイートピーをやりたい!って言ったの。」と奥様のチャコさん。



神奈川県のオリジナル品種の良いところは、香りや花色にハッキリした個性があること。生産性第一の品種とくらべると個性派たちはちょっと気難しいところもあるそうで、けっして作りやすいとは言えないそう。それでもチャコ農園ではオリジナリティの高さを追求して作り続けています。

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2月下旬からピークを迎えるフレグランススイートピー。2色MIXで出荷中!

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おすすめの個性派オリジナル品種「リップルショコラ」「リップルピーチ」
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「サザンピーチ」

?チャコ農園の格言?


sweetpea-j.gifスイートピーの魅力、その原点は香りにあり!

sweetpea-j.gifスイートピー発祥の地 神奈川県オリジナル品種が目指すのは
        ナンバーワンじゃなくてオンリーワン!
sweetpea-j.gif神奈川は近い、だから鮮度良し、香りも良し!


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この箱が目印です!

(文責 三浦 彩)
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