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2014年2月17日
vol.103 JA宮崎経済連のスイートピー【後編】
ここからは、JAの取り組みについてレポートしていきます。
引き続き、宮崎経済連を代表してJAはまゆうさんに伺ってまいります。
★JAの取り組み
説明してくださったのは、営農指導担当の川崎敬樹さんと販売担当の發田(ほった)将太さん。
川崎さん 發田さん★キラーン! good smile!
「これがJAはまゆうさんの集荷場です。」
取材当日は出荷直後なのできれいに整理された状態ですが、出荷のピーク時にはこの集荷場が段ボールでいっぱいになるのだとか。品種ごとに置く場所が決められています。
では、JAはまゆうの一歩先を行く取り組みをご紹介いたしましょう。
① 組合員全員が全員の圃場を1軒1軒圃場巡回
JAはまゆうでは(JA尾鈴さんも同様です)、組合員全員、プラス経済連の方、農協普及や生産指導の方などみなさん一緒に、組合員の圃場を1軒1軒巡回します。それも毎シーズン全員の圃場を回るのです。
その際にハウスは清潔に保たれているか、温度や湿度管理は適切か、生産や鮮度管理はきちんと行われているか、どのような品種を生産しているのかなど、みんなの眼で確認し合うのです。
何か気付いたことがあれば仲間同士で注意し合います。
また、このように"ウチに人が来る!"と思えば、圃場もキレイにしておかなければなりません。
(あ、確かに我が身を振り返っても、お客様が来ると思うと、キレイに片付けますよねー。確かに!)
②出荷前検査 100%
任意検査ではなく、集荷所に持ち込まれた箱は全て品質チェックします。
このことも流通段階での事故率(出荷後のトラブル率、返品率)減少に大きく貢献しています。
箱を開けた時、どこを見るのでしょうか
品質・品位(花しみ、花傷みなどがないか、鮮度は十分か、JAの基準に敵った光る花であるか)
→「万が一問題があった場合は、そのまま生産者さんに持って帰ってもらいます!」
それから、箱の表示と中身が合っているかどうか、規格基準と品種を確認、
花が箱にしっかり結束されているかどうか(緩いと輸送中に傷ついちゃいますからねー)など。
② 水質(バクテリア)検査(月1回)
JAはまゆうでは、月に1回全戸を対象に、スイートピーを水揚げするバケツなどの容器に付着するバクテリア検査を行います。
生産者が使用する容器にバクテリアや細菌が増えると、スイートピーの鮮度が良くても水下がりを引き起こしたり、腐れやシミなどの原因になります。ですから、ブランド産地としては常に使用する容器を清潔に保たなければなりません。
検査員が生産者のところから検体を取り、2日間培養して結果を見ます。
このとき1,000個/ml程度であれば現状維持、10,000個/mlであれば、迅速な注意喚起を行います。飲料水の基準は100個/ml以内ですので、1,000個程度というのは、花に飲ませる水としてはすこぶる衛生的といえるでしょう。
これまた出荷後のトラブルが劇的に減少したといいます。これらの取り組みがブランド確立に功を奏していることは、宮崎経済連の出荷JAの中でも、最も出荷量の多いJAはまゆうが最も事故率が低いという実績が証明しています。
しかも、JAのスタッフが農家さんの選別場まで行って、容器のバクテリア検査までするところはなかなかありません。毎月、30軒ある全戸を対象にです。
宮崎経済連では、JAが単なる仲介組織ではなく、ブランド化のための良きアドバイザー、ビジネスパートナーとして、大きな力となっているのです。
③ 土壌診断
前編でも少し触れましたが、JAでは組合員全戸、全圃場で土壌診断を行い、スイートピーにとって適した土壌であるかどうかを診断します。
この時、圃場内の圃場内3-5か所の土を検体します。圃場は広いので、場所によっては診断結果も違ってしまいますので。
④ 効率的な出荷システムの構築
ワンダフルな音声感知システムの導入をご紹介いたします。
JAはまゆうでは、市場に出荷情報を送る際、これらの端末に言葉を認識させて送り状を作成します。
市場への送り状はパソコンで打ち込むわけでも、手書きでもありません。
この端末がPCと連動していて、完成するとプリンターから出荷情報が印刷されます。
その内容に間違いがないか確認し、間違いがあった場合にはPCで修正できるようになっています。
OH,なんと最新システム!
実際に發田さんにやっていただきました。
"出荷先"をタッチパネルで指定してから
「大田花き」と發田さんがいうと、端末の電子音が「・・・大田花き」とリピートしています!!
ヌォーーーー!ス、スゴイ (*゚ロ゚)ノ
發田さん「ファーストレディ」(品種名)
端末「ファーストレディ」
WOW! 正解◎!!
發田さん「4P2L」(等階級)
端末「ヨンピーツーエル」
發田さん「1」(ケース数)
端末「イチ」
このように發田さんの声を正しく認識して、音声で確認して情報をPCに送っていきます。
どのような発音でもおよそ間違いなく認識してくれるのだとか。
それまでは一人が入力作業をしていたのですが、JAはまゆうは出荷量が多いので、時間もかかるし、時間制限がある中でやるので腱鞘炎(けんしょうえん)を引き起こしたり、必然的にミスも多くなったりするのです・・・(;´д`)トホホ
そこでこの音声認識システムを取り入れたことで、誰でも出荷報告書を作成できるようになり、且つ「時間短縮」と「誤情報の減少」が実現されました。
⑤ 個人面談の実施
生産者とJAの営農指導担当の川崎さん、販売の發田さんと県の技術員さんとの四者で、当期の収益性や生産について話し合いを行います。ポイントは、栽培品種が収益性が確保されているかどうか。必ず検証を行い、次年度の品種構成を話し合います。
このような形で一人ひとりの出荷実績をマトリックスに落として、来期に向けて品種検討をするのです。
生産販売への科学的なアプローチといえるでしょう。
⑥ ちょっとした工夫・・・
こちらは、JAはまゆう組合員おひとりずつのメールボックス。集荷所にあります。
皆様にお知らせしたいことでも掲示版に貼っただけでは伝わりきらないこともありますし、つい後回しにされてしまうでしょう。そこで、個人宛てのものは全てメールボックスに入れて伝達しています。
ウン探自身、このような個人あてメールボックスを見るのは初めてですが、もしかすると全国でも似たような工夫を実践していらっしゃるところがあるかもしれません。
「でもね、このメールボックスをきちんと見て帰ってくれる人は7割ですよ」
7割?
あとの3割は?
「見ないで帰ってしまうので、コレ、使います」
ところが、ここからがJAはまゆうの更なる工夫。
ん?(゚ー゚*?)
コレ、何だと思いますか?
救急車の赤いサイレンのようにピコピコと光るライト。
「その3割の人にメールボックスにお知らせが入っていることを知らせるサインです。
メールボックスに書類を入れたときは、このサイレンのスイッチをONにしておくと、3割の人もきちんと持って帰ってくれます。」
GOOD IDEA!!!!d(≧▽≦*)!!
個人のメールボックスに入れても尚、うっかり忘れてしまったり、"忙しいから後で~"になってしまい、その中を長い間ご覧にならない方はいらっしゃるものです。それを解決するためのアイディアなのです。
音は鳴りませんのでご安心ください。
「組織」でひとつのものを作るというのは大変。どうやって皆で共通認識を持つか、JAのみなさんの知恵の出しどころなのです。
「これらは全て、JA組織として"品質の平準化"を目指すために行っています。延いてはこれがブランド化になりますから。」
という宮崎経済連の村上さん。
JAはまゆうには約30名、尾鈴には約20名の組合員(スイートピー生産者)さんがいらっしゃいます。
どれだけ全員の腕が良いといえども、その差は必ず出てきます。
それをいかに平準化するか。
「宮崎のブランドとして売っている以上、足を引っ張っている人がいてはいけない。」
またこの問題解決するためにJAが存在するのです。JAの取り組み全てが、結果として組合員の平準化にも繋がっているのです。
JAはまゆうには、さらに注目ポイントがあります。
こちらは、JAはまゆうが全国に出荷している数量と単価の市場別リストです。
これを出荷日ごとに市況を一覧にしています。
ここからがスゴイところなのですが、ナント"全ての出荷市場と取引情報を情報共有している!"
つまり、今日A市場に何本出荷して、いくらで売れた!という全てのデータを全ての市場に報告しているのです!
「そうすれば、大田花きがその先の地方市場に販売する時の目安にもなるでしょ。
いくらでどのくらいスイートピーが出荷されているのか、中央市場も地方市場もこういう情報は必要だと思うんだよね」
それだけJAはまゆうがスイートピーの販売に対してイニシアティブを取っているということにほかなりません。
全国一の出荷本数を誇るJAはまゆうならではの取り組みです。
發田さんは、JAはまゆうの"ミスター指令塔"。
スマホとにらめっこして、何をしているのかと思いきや・・・
「出荷市場先のお天気をチェックしているんですよ」
例えば、今度の到着日に北海道の天気はどうなのか、極寒で雪が降るようであれば、商品が凍傷にならないよう段ボールの通気口をテープでふさぐように指示をします。逆に、雨が降るようで湿度の上昇が懸念されるような時は、テープ貼りを控えるように指示。
だからこそ「私が指令塔」と發田さんは責任を背負うのです。
「雪が降りそうな都市に、一定の量を出荷を出荷してしまうと相場が立たないし、雪や風、霧などは飛行機が飛ばない場合もあるよね。時々刻々と変化する天候と交通状況、あらゆる情報と向かいながら、素早い判断をしていく。やはりリスクをできるだけ回避するよう努力するのはJAの役割。」
南北に長い日本の、しかも真冬に日本全国に出荷する大きな産地さんならではの思いやりと工夫でしょう。
また、宮崎経済連では、管轄内のJAで起きた商品トラブル(主にシミや花萎れなど。「事故」と呼んでいます)は、全てのJAで共有するようにしています。
ひとつのJAで起きた事故は、些細なものでも全JAに通達し、宮崎経済連全体で再発防止に努めます。お互いのJAは決してライバルではなく、常に共同体なのです。
「事故があったら"宮崎のスイートピーはダメ"と言われてしまうことだってあるかもしれない。
ひとつのJAから出た事故は、宮崎県全体のブランドを失墜させかねない。
とにかく事故がないようにすることが大切」
という村上さん。
このようにして、宮崎県としてのブランド確立に努めていらっしゃるのです。
【それぞれJA名の由来】
JA尾鈴もJAはまゆうも、美しい穏やかで太平洋を臨む海岸沿いに位置しています。
JA尾鈴は、域内にある尾鈴山がその名の由来です。日本200名山に数えられる標高1,405m程の美しい山です。
一方、JAはまゆうは、宮崎県の最南端に位置する日南(にちなん)市と串間(くしま)市からなっています。
もうここまでくると、緯度としてはロサンゼルスよりもさらに南、スイートピーの原産地、地中海に浮かぶシチリアより南に位置しているのです。
1年間の平均気温も17度前後と、あったくわーい!v(≧∇≦)v のです。
ではどうして「はまゆう(浜木綿)」という名前なのでしょうか。あまり地名と関係ないように思えますが・・・
女優の浜木綿子(はま・ゆうこ)さんのファンがJAを築いた??(若い方、わからなくてスミマセン)
あー、惜しいな。
実は、JAはまゆうの名はハマユウの花に由来しているのです。この花はクリナムとも呼ばれます。
宮崎県の県花で、あちこちにその姿を見ることができます。開花期は6-9月、白くて華麗な花が咲き乱れます。
道路端の植え込みのみならず、このような潮風吹きすさぶ、ときには海水まで浴びてしまうであろう砂浜でさえも逞しく生きられるほど、生命力の強い植物です。そして、その花は美しい。
このハマユウの強さと美しさにあやかり「JAはまゆう」と名付けられました。
★育種について
以下は、JAはまゆうの育種家さんと宮崎県の育種について。スイートピーの育種も奥が深いんですよ。
まずは、JAはまゆうのオリジナル品種を育種される渡辺裕紀(わたなべ・ひろき)さん。
会社にお勤めされるご両親を持ちながら、そのお姿をご覧になっていて「自分には向かないな~」と思っていたそうです。そこで最初から起業するかベンチャー企業で働くかの選択肢かなと思っていたところに、"農業面白いな"と思い始め、農業人口は減っていくし、ちょうどいいかも・・・と就農の選択肢に辿り着いたといいます。
しかし、決して直感的に迷いなく始めたわけではなく、就農期の前後併せて10年くらい悩んでいたのだとか。
という渡辺さんの目に迷いはありません。
「そして食べられるようにその道を作る。死ぬまでスイートピーを作りますよ。」
生産で食べていくために育種が必要と力説する渡辺さん。穏やかな口調の中にも、ぶれない固い決心を感じます。
通常、個人育種家さんの場合、育種だけでは食べていけないと言われます。だからこそ、育種が好きな人でも生産を並行するパターンがほとんどです。この場合、育種を助けるための生産です。
しかし、渡辺さんは、息の長い生産を行うために育種を並行します。生産のための育種。
これが本来の姿なのかもしれません。
「気候は変わりますから、変わりゆく条件下で上手く生産できる品種が必要。
品種を変えないと、技術だけでは太刀打ちできない」
ひとつの方向性としては、「温暖化に合った品種を生み出すこと」。
問題は育種品目が"花き"であることです。
野菜だったら、その気候に合った品目をひとつ作ればいい。例えばピーマンであれば、生産条件に合う品種が1つあれば十分。
しかしスイートピーは花き。花きにはバリエーションが大切。スイートピーであれば色の数も揃えていかなければなりません。その条件に合った品種をいくつも作らないといけないのです。
つまり育種という仕事は未来を作るということなのです。
「育種には時間もかかるし、私が求めている究極の逸品を作るとしたら、あと50年くらいかかるんですよ(笑)。
あっちとこっちをかけて、そこで生まれた品種のあっちとこっちをまたかけて・・・」
ご、50年!!!Σ(゚口゚;
スイートピーは1年に1回しか咲かないから、日本で育種をする限りは50年かかるのだそうです。
渡辺さんには目指す姿がクリアに見えているのです。
生産性、作業効率性、ボリュームや花付きのバランスの良さなど。
私たちユーザーにとっては、一見違いが分からないこともあるかもしれません。
しかし、その品種は年々、一歩一歩進化し続けているのです。
育種というのは大変地道で気の長い仕事。
渡辺さん曰く、「1,000品種出た中でも、名前が付いてマーケットに出たものは6つ。」
商品化率0.6%・・・|;-_-| ....チーン
見た目だけでも生産効率だけでも商品にはなりえません。
渡辺さんの品種は「恋するシリーズ」といって、名前だけでも胸キュンな、センスの良いネーミングがなされています。「恋するソムリエ」「恋するマーメイド」など。「恋する」がついたら渡辺さんの品種ですので要チェックです。
ところでみなさん、染めではない自然のグリーンのスイートピーをご覧になったことはありますか?
実は渡辺さんは、難しいとされていたグリーンのスイートピーの育種に成功されたのです。
その名もナチュラルグリーン★(既に流通しています)
開くともっとグリーンが強くなります。香りもVERY GOOD!
育種を重ねていくと、更に色が濃くなる可能性があります。
ちなみに、渡辺さんが個人的に好みの品種はこちら。
濃いめのサーモンピンクの品種。ここまで濃いサーモンピンクのスイートピーは、まだマーケットにはないかな~。
品種固定中につき、名前はまだ思案中とのことですが「日の出」が有力。
う~ん、まさに宮崎の大地を染めるライジングサンのような美しい発色。あと2年ほどでマーケットに登場する予定です。みなさま、どうぞ楽しみにしていてください。
次に、宮崎県の育種について見てみましょう。
宮崎県の試験場は広大で、試験場として最新鋭の設備が整っています。
ここから生まれた宮崎県のスイートピーの育種数は品種登録数は、全国でも断トツナンバーワン!
宮崎県が輩出した人気品種は、式部、紅式部、美々(みみ:神武天皇が船出した美々津の港名にちなんで)など。
これらの品種育成をご担当されたのが、世界的なスイートピーの権威でもいらっしゃる中村薫(なかむら・かおる)さん@農学博士!
Ph.D.(ダクター)でございます。
親しみ溢れる優しい笑顔でポーズをとってくださっていますが、実は中村さんはこの業界の重鎮。・・・ふふふ、スゴイ人です。
大田花きのスイートピー品種総選挙でもナンバーワンになった紅式部の生みの親。
みなさん、スイートピーのことは世界中、誰であってもわからないことがあったら中村さんに聞け!というくらい、世界でもスイートピーの権威です。
県の試験場では生産効率の良いものやマーケットで人気のありそうなものを育種・開発して、宮崎の生産をバックアップしています。何しろ育種は時間とお金のかかる道のりの長い仕事。これを県が行って、宮崎ブランドのスイートピーを強くしていく役割を担っているのです。
宮崎県総合農業試験場の中岡直士(なかおか・なおし)さんにお話を伺いました。
あれれ~~~!!!???(゚ロ゚;)??ナ、ナカオカさんッ??
何が起こったのでしょう?お洗濯中?? どうしてこんなに洗濯ばさみが付いているのですか?
「優良株の選抜をしていたんだ。」
(脱ぐとき大変そーだな~・・・)
試験場では、9月10日の定植から、翌年6月の採種が終わるまで、スイートピーの株ごとに調査・管理を行っています。その時、どの株かわかるようにラベル(名札)を付ける必要があるのですが、そのラベルをスイートピーの蔓を誘引する洗濯バサミに付けています。
でもなぜ、中岡さんの服にたくさんの洗濯バサミが・・・?
「選抜する時に、生育の悪いものや、育種目標とは違う性質の株に付いていた洗濯バサミ(ラベル)はもう不要だから、それを外して手に持ち切れずに、ココに留めていたんだ(笑)。」
随分キレイに並べて留めてありますね。丹念で緻密な仕事が問われる試験場で働く中岡さんの丁寧で根気強い性格が、この洗濯バサミの列に表れているように思います。
それにしてもスイートピーのこの樹勢、育種や生産に携わる全ての人の手を煩わせるほどですが、一体どのような種から生まれてくるのでしょうか。相当大きかったりするのかな~??
全体が大きい割に、株元はこんな地味な感じなのですが。
ソラマメみたいな感じかと勝手な想像を巡らせるウン探・・・
そこで、洗濯バサミマンの(・・・あ、失礼。とても優秀な)中岡さんが見てくださいました。ウン探読者の皆さまだけにお披露目してしまいましょう!
こちらがスイートピーのタネです。ジャジャーン!
ちっちゃ!!(゚ロ゚;)エッ!?チッチャ!
こんなに小さいタネからあんなに大きな苗が生まれてくるとは、とても想像にも及びませんでした!
花き業界に長くいらしても、初めてご覧になる方もいらっしゃるのでは~??
発芽しかけた状態↓
更にウン探読者さんだけにコッソリ教えちゃいます。
このタネよくみると、このようにマーブル模様になっていますが、これは紫系のタネの証しなのです。
一方、こちらのタネはちょっと全体的に白く、一本線が入っている。この花は白系になります。花が純白の場合は、タネももっと白いのだとか。
決して、花が紫だからといってタネがマーブルになり、花が白いからといってタネも白っぽくなるとは限りません。ただ、タネがマーブルであるのは全て紫、白っぽいのは花も白なのです。
タネがマーブルであることは花が紫色であることの必要条件だということですね。白の場合も然り。
タネの殻はとても固いので、3日間水に浸けます。充分に吸水し、殻がふやけたら3日間芽出しを行います。種子冷蔵を行います。
芽が出やすいように濃硫酸に10秒浸ける方法もあります。すると表面の殻が薄くなって発芽しやすくなるんだそうで、これらは細菌感染予防の意味もあるのです。
収量があって品質の良いものが大前提ですが、そのほかに宮崎県のスイートピーの今後の育種の方向性の3本柱をダクター中村に伺いました。
① 花持ちの良いもの
② 日照が不足しているときに、落蕾しにくいもの
③ 生産者の省力化を実現できるもの・・・たとえば巻きヒゲのない品種とか
こちらが巻きひげのない品種。これがスタンダードになったら、生産者さんの労働時間は短縮できるだろーなー。
↑巻きヒゲがないでしょー♪
従来は色彩重視でしたが、多彩な花色に恵まれた現在では、上記の3つに重点を置きます。
宮崎県発の1本のスイートピーには、多くの方々が携わり、そのその方々の地道なご努力により、宮崎ブランドが支えられているのです。
宮崎のスイートピーの品種開発を担うキーパーソンのお二人。世界のスイートピーの品種を牽引しているといっても過言ではありません。
・・・あ、中岡さんの洗濯バサミがナイ。
いや~、宮崎は人材の宝庫ですねー!
★さて、ここで皆さんに良いスイートピーの見分け方を伝授しちゃいます!
次の3つを見てみてください。
① 茎が固くてしまっていること!
太くても、ぶよぶよちゃんはダメ×××!あー、ごめんなさーい!私自身も気をつけまーす!
② 花色と艶をチェック!
本来の色が出ているか。淡い色は淡い色としてしっかり発色しているか。
③ 花付きをチェック!
花付きが良いことはもちろんなのですが、更にバランス良く等間隔で付いていること。
花と花が離れすぎていてもNG。
★みやざき~いいトコ♪ 一度はおいで!
こちらが宮崎県庁。クラシカルな雰囲気のある建物です。
庭園はサボテンやアガベなどが植えてあり、まるで南国の植栽です。
県庁前の美しい並木道には美しい広葉樹林が立ち並んでいます。これは楠。
昔はこの木から採れる精油から樟脳(カンファー)を取り出し、外貨を稼いでいたそうです。その外貨で鉄砲を作り、明治維新を起こす資金にしていたのだとか。
楠から生まれた明治維新。スゴイ繋がりです。
良く見ると・・・・
うわーーーーー!スゴイ着生ラン!
どの木を見ても、ランがモッチャリ着生しています。
この辺りは海洋性気候。植物も良く育つんですね。
こちらは海岸をドライブしていると、必ず釘付けになる「鬼の洗濯板」。名前を聞いて納得、うまいネーミングです。
遥か悠久の昔から、創造にも及ばないような時間をかけて地殻変動と浸食によって出来あがりました。地質の歴史に比べれば、私たち人間の一生はなんと短いことかと、思いを馳せてしまいます。人生1回、ガンバロー!
青島。亜熱帯の植物で覆われた周囲1.5kmほどの海に浮かぶ島。
周りは鬼の洗濯板で囲まれています。鳥居が見えるように、島には青島神社があります。
こちらは洞窟の中にある「祇園神社」。
ほら穴より海に向って立ち、航海安全、商売繁盛、五穀豊穣などを祈ります。
スイートピーの花言葉は「門出」「旅立ち」。
是非これからの卒業シーズンに、宮崎のスイートピーをご利用の上、大切な方たちの門出を祝ってくださいませ。
♪心に春が来た日はぁ~ 赤いスイ~トピィ~♪(←聖子ちゃん風)
2014年2月16日
vol.103 JA宮崎経済連のスイートピー【前編】
2014年初の"うんちく事始め"は、「太陽と神話の国、宮崎!」からレポートしたいと思います!
さすが日照量が毎年全国屈指の宮崎県だけあり、ウン探も太陽と穏やかな風に迎えていただきました。
朝から晩までオーバーコート不要!あったか~いヽ(´▽`)/
ちょうどプロ野球のキャンプシーズンで賑わいを見せていましたが、このお天気の穏やかさ、美しい海の景色、宮崎のおいしい食材を思えば、キャンプ地になるのも納得です。なにしろ、宮崎牛といえば「和牛のオリンピック」とも言われる品評会を2連覇した一流ブランド。
こんな素晴らしいところで何の花を作っているのかって?
宮崎といえば、この花を忘れてはなりません。
そう、スイートピーです!
宮崎県下から出荷されるスイートピーは生産量全国ナンバーワン!
今回は、その多くを担う宮崎経済連のうち、JAはまゆうとJA尾鈴を訪問しました。
水先案内人はJA宮崎経済連の頼れる営業マン村上昇(むらかみ・のぼる)さんです。
村上さんが宮崎のスイートピーの魅力ついて余すところなくご案内くださいました。
が、なかなかその全てをご紹介しきれぬぁ~いので、今回は次のような項目にまとめてご紹介してまいりまーすv(≧∇≦)v チョット長いのですが、最後まで読んでくださいませませ~!
・生産(前編)
・鮮度管理(前編)
・JAの取り組み(後編)
・育種(後編)
・良いスイートピーの見分け方(後編)
・"宮崎よいとこ~" ちょっとだけ観光スポット(後編)
★生産
早速生産から。
圃場に近付くと、外までスイートピーの香りが漂ってきます。爽やかなシトラスの香りも混じり、まさに早春の香り!トレビア~ン(´▽`*)!
最初にご紹介させていただくのは、JA尾鈴の黒木正光(くろき・まさみつ)さん。スイートピーの生産一筋20年!
黒木さんの素敵な笑顔に見とれてしまいましたが、スイートピーに目をやったとたん・・・
コ、コ、コレはッ!
圃場に入った瞬間に思わず閉口。伸びて伸びて巻き付くスイートピーの蔓。
スイートピーはマメ科ですから、あっという間に茎がにょきにょき~っと伸びてしまうのです。
「ジャックと豆の木」の物語が生まれるのも、この性質を見れば頷けます。
その自由に伸びていく蔓が、一つ一つ丁寧に整然と留められています。
主茎を傷めないように洗濯バサミで留めていくのです。
「自分の身長より伸びると作業ができないでしょ。だからこうやって蔓を下げて洗濯バサミで留め直すんだ。
ひとつの苗は長いもので7メートルくらいまでになるよ。」
という黒木さん。
生長旺盛なスイートピーの苗。地上に出たばかりの茎はこんなに↑細いのに、伸び始めたらすごい勢い。
あっという間に伸びてしまう苗の生長点を、管理しやすい高さに下げて留め直すことを「吊る下げ」と言います。並行移動をしながら1回で60cmほど(その時の生長具合によっても異なります)下げていきます。このとき、葉は光合成を促すようできるだけ広げます。
デモンストレーションをしてくださったのは、JAはまゆうの花き部会長長鶴修司(ながつる・しゅうじ)さん。
↑葉を広げながら、ちょうど良い高さに合わせて、最後は洗濯バサミで留めて完了。
例えば黒木さんの圃場でいえば、ひとつの畝で700苗(片側350苗)、それを1苗ずつシーズン中に何度何度も吊る下げしていくのですから、それはそれは気の遠くなるような作業です。
※長鶴さんが腰に下げているのは、秘具"腰かけホイホイ"←ウン探が勝手に付けた名前
ポータブル式の自家製ゴミ箱です。口のワイヤーに竹を使い、肥料等のビニール袋を吊るし、それを腰に巻いて、作業中のごみ箱にするのです。
なぜ、吊る下げの作業中にこのようなゴミ箱が必要なのかって?
それは、もうひとつ大変な作業が伴うからなのです。
吊る下げをしながら、マメ科の植物特有の先端にある「巻きひげ」と節ごとに出てくる脇芽を摘み取っていくのです。
巻きひげを取り除かないと、商品に巻き付いたり、ネットに巻き付いて吊る下げをスムーズに行うことができません。早い段階で取り除いておかないと、後でもっと厄介なことになってしまいます。
また、巻きひげだけでなく脇芽も取り除いていきます。養分が分散し、開花枝に十分なパワーを集めることができないからです。
このように、スイートピーの場合生産者さんの手を煩わせる三本柱は、
① 巻きひげ取り
② 脇芽かき
③ 吊る下げ
何より負担な作業なのです(-。ー;)
宮崎県総合農業試験場(後述)に伺ったところ、10a当たりの労働時間は、一般的にバラが1,608時間、カーネーションが1,367時間であるのに対し、スイートピーはなんと・・・
どのくらいと思いますか????ウーン「(゚ペ)
4,423時間(!!!)という調査結果があるのです。
もうまるで比較にならないほどの労働時間。うりゃーーーーーーッ!!(゜ロ゜;)!!
この労働時間の削減が、今後の課題にもなっています。
【生産に重要な4大要素】
スイートピーの生産上の困った性質が分かったところで、生産に必要な4大要素をまとめます。
① 湿度のコントロール
スイートピーといえばなんといってもこれをコントロールしなければ始まりません。湿度は万病の元!とにかく換気をして湿度が上がらないように配慮します。
上からはファンを回し・・・
横からはビニールハウスの側面を空けて通気を良くし・・・
下には湿気を吸収するよう稲藁を敷いて・・・
湿度が下がるように工夫しています。
2日間曇ると、ツボミが落ちて商品にならないと言われるほどスイートピーは太陽が好き
「だってアタクシの祖先はシチリア生まれですもの!オホホ」というスイートピーの声が聞こえてきそうです。
ところがいくら太陽大好きとはいえ、好きなのは紫外線、つまり光の方で、赤外線(熱)は強すぎるとNG。強すぎる赤外線では花弁が焼けてしまうので、遮光をする生産者さんが多いんですよ。
③ 水
樹勢を見ながら。軟弱なときは控え目に。気温によって1-10日おきに灌水。
このようなチューブにて。
④ 肥料
これが液肥のチューブ。頭の上を通っています。灌水時に水と一緒に供給されます。
⑤ 土
宮崎の火山灰土と腐植土からできた黒ぼく土壌(黒くてぼくぼくとした感触から黒ぼく土と呼ばれる!)との混合。有機物の含有量が多く、植物に適した団粒構造(うんちく探検隊vol.100JAみなみ信州のダリアを参照)をしているので、農産物の栽培には最適。
しかし最終的には、組合員全戸、全圃場で土壌診断を行い、スイートピーにとって適した土壌であるかどうかを診断します。
しかも!1か所だけ取らずに土壌診断、しかも圃場内3-5か所の土を検体するのです。圃場は広いので、場所によっては診断結果も違ってしまいますので。
【収穫のタイミング】
収穫のタイミングにもコツがあります。
下から数えて、1輪、2輪、3輪目までが完全に開花していること、また4輪目が完全に開いていなくても上を向いていること。これが絶対条件。
4輪目が下を向いているうちは切ってはいけぬぁ~いのです!
4輪目はまだ若く、人間でいうところの乳幼児のようなもの。
切ってしまうと自分で水を吸い上げることができず、輸送途中に萎れてしまいます。上を向いて自立した成人になるまで待ってから切るのです・・・と説明してくださった黒木さんの奥様の江身子さん。
もう一人生産者さんをご紹介いたします。JA尾鈴の細野啓志郎(ほその・けいし)さん。
う~ん、俳優の大沢たかおさん(マイナス20歳)と向井理さんを混ぜたような凛々しいお顔立ち。
JA尾鈴が誇る宮崎のディカプリオ!
細野さんは養豚関係の会社にお勤めだったのですが、2年前に正式にお父上のお仕事を継ぐべく就農されました。
きっかけは一時的にお父上が体調を崩されてお手伝いを始めたことでしたが、
魅力は、農業はやればやっただけのリターンがあること。
「元々絵を描いたり、ものづくり好きだし、人生一度だし、面白いことやりたいなと思って。」
物作りの才があるんですね。
「この仕事をしていると、人のネットワークがどんどん増える。増えれば増えるほど、情報も増えて、知識も身に付く。そしたら個人的に成長できるかなと思って。自分で先頭に立ってやらないと何も始まらない。
頑張っても頑張らなくても同じようにお給料がもらえてしまうのは僕としては納得がいかないんだ。
だから自分で成果出して、見返りをいただいて、また次に向けて頑張る。こういう仕組みが僕の性に合っているのかな。」
完全成果主義の農業に引かれてご実家を継ぐ決心をした宮崎の大沢たかおさん、いえ、細野啓志郎さんは責任感が強く気概のある将来有望な若者!
その細野さんの圃場では、選りすぐりの精鋭さん達が選別と出荷の作業をしていました。
「ウチには、もう責任感があって仕事ができる人しかいません」
と細野さんをして言わしめるほど、自慢の働き者さんたちです。
ところで・・・
う~ん、実はウン探、長い間スイートピーの"あの50本束"をとても不思議に思っていました。
どうして、こんなにも全て表を向けて50本キレイに束ねられるのか。
読者の皆さまはご存知でした??
束ねている間にクルクルと回ってしまったりしないのか、回ってしまうのを防ぐために、思わず手元できつく締めすぎて、茎が傷んだりしないのか・・・もしそのようなことから無縁であれほどまで華麗に束ねることができるのだとしたら、まさにこれは神業では?
この神業がどのように行われているのか、だいぶ考え続けて夜も眠れないことがありました。(←ホント率60%)
そしてついに、宮崎を訪れたこの日、ウン探を不眠にまで追い込んだその謎が解明される時が来たのです!
皆さま、こちらをご覧ください!
「たばね板ぁ~!」(ドラえもん風に)
・・・と呼ばれます。
ぬぁんと、このような治具(※)を使って束ねていたのです。
※治具(じぐ)とは、商品の加工や組み立ての際に方法を誘導するための器具の総称です。もともとは英単語のjig(ジグ=装置)からきたものでこれに漢字を当てられました。ウン探では以前コチョウランの三洋ハートエコロジー様が活用されていました。
竹製の治具で、ダムのような壁は丸くカーブし、26個の切りこみが入っています。
その切りこみに、このようにスイートピーの花を下に向けてスッスと1本ずつ置いていくと、自然に美しい扇形のスイートピーの束が出来上がるのです。
そか、最初から下を向けておけば、花の重さでクルンと回る心配もないということですね。
美しい扇ができたところで、定規を当てて優しく裏返します。
すると・・・・ほら!美しい花が見事に全てこちらを向いて微笑んでいるではありませんか~!!
まるで、アイドル全盛期のまばゆい笑顔の松田聖子ちゃんに見つめられているかのよう★キラキラ
コチラが照れてしまいます。これを2回行い50本にして出荷箱に入れます。
このようにすると全て花が表面に向きますので、花シミやトラブルがあった場合にも瞬時に見つけることができるのです。
こうしてできた束の端を、今度はこちらの治具でトントンと軽き、束の足元を揃えます。
だからスイートピーの足元はまるで包丁でバツンと切り落としたかのようにキレイに揃っていたのですね。
まさに"神は細部に宿る!"
こちらの治具の名前、通称"トントン"♪(ドラえもん風)
そのままやないかーいッ!
と突っ込みそうになりますが、これがみなさまの共通語。このような治具を使うからこそ、誰がやっても同じようにキレイに束ねることができるのです。
使用する治具は異なっても、このクオリティが宮崎のスタンダード。
★鮮度・品質管理
鮮度と品質管理については、スイートピーの生産を始めて13年、JAはまゆうの長鶴修司さんにお伺いいたしましょう。
またまたご登場いただきます!
実は長鶴さん、就農される前は大変ユニークなお仕事をしていました。
「神戸の会社で航空機の設計をしていたんだよ。救難飛行艇ね」
キュ、救難飛行艇!?
邦人にピンチが訪れると、あの自衛隊が乗ってスーパーマンのように現れるアレ?
「そうだよ。US1という機種でね、その設計部門にいたんだ」→ご興味のある方はウィキペディア等で調べてくださいまし。
あんりまあ、これまた超一流のすごい企業にお勤めだったのですね。
それをお辞めになって心機一転スイートピーの生産とは、仕事の性質も異なるでしょうに、ストレスにはなりませんでしたか?
「花の生産は上から管理されずに自分の信念を貫いて、好きなようにやれる。自分の考え通りにやれるから面白いよ。窮屈さがないよね。
失敗したら自分に跳ね返ってくるだけ。良いことも返ってくるからやりがいがある。
僕に言わせてみれば、思うようにやれるから楽しくて、楽な仕事だよ。
土日休みが保証されていたサラリーマン時代と違って休みはないけど、全然苦にならないよ。
その点、サラリーマンは厳しい!」
すごい!
まるであらゆる枷から解き放たれた自由な精神を語る長鶴さんは心身にオーラがみなぎります。農業を心から楽しんでいらっしゃることが言葉の節々からよく伝わってきます。
その長鶴さんの選花場です。
農業とは全く異なる分野で大活躍されていた長鶴さんですが、飛行機の設計とで共通している部分などありますか。
仕事は全てそうかもしれないけど、私は前職でそういう習慣が身に付いたと思う。
"こうしたらここに電気が流れて、こうやったら大丈夫かな~"みたいなの思考錯誤とか探究心、例えば農業でいけば施肥するときもそれと同じで、"今は窒素分をもう少しやった方がいいかな~"とか"ちょっと葉が小さいからこうしてみよう"とか、ちょっとしたことよ」
考えるトレーニングを積まれてきた長鶴さんは、言われたままを行うのではなく、常に考えながら自分の理論に置き変えて実践していきます。そして、13年もの思考錯誤によって蓄積された小さな気付きと大きな差。
JAはまゆうを牽引する頼もしい部会長です。
その長鶴さんが取り組まれる品質管理について。
「なにより花しみやボト(※)を出さないためには、とにもかくにも湿度を上げないことが重要」
と力説します。
※ボト=ボトリチスの略。灰色かび病のことで、この細菌が付着するとシミや腐れの原因になります。厄介なことにどの花にも付着する可能性があります。
そのためには・・・
【その①】除湿対策
このダクトはボイラーで温風を送るためのものですが、
このダクトからボト菌を殺す微生物農薬の粉を噴射するのです。
このダクト、良く見ると側面に小さな穴が空いていて、ボイラーのスイッチを入れるとここから粉が噴射するようになっています。
通称ボトキラー★ ψ(`∇´*)キラーン
※「ボトキラー」とは商品名です。
こちらのボタンひとつでボトキラーを噴射できます。
微生物農薬は、ハウス内で風にのって全体に行きわたります。
人体の腸の中に、善玉菌と悪玉菌がいると言われるように、微生物には善玉君と悪玉君がいます。ハウス内で善玉君を撒いて、ボトという悪玉君をやっつけるという手法なのです。
夕方に微生物農薬を散布して、翌朝収穫する前にもう一度送風し、湿度を下げる。すると、除湿効果が大きく、ボト対策ができるというわけです。
湿度の低い中で育ったスイートピーは、出荷後も病気に強いのです。
【その②】STS処理
※STS剤とは?
花の品質保持剤のひとつで、チオ硝酸銀錯塩(Silver Thisulfate)のことをいいます。
特に老化ホルモンの一種であるエチレンに対して感受性の強いスイートピーやカーネーション、デルフィニウムなどに使用すると、非常に高い延命効果を期待できます。現在では生産者が出荷前にSTS剤の入った水を飲ませるのが一般的。(STS処理をしないと、そのクオリティは市場では全く競争力がありません。)
STS処理中も、スイートピーが湿度で蒸れないように、容器にはしっかり穴をあけて通気を良くしています。いつでも湿度に当たらないよう警戒、警戒!
STS剤はどういうものかというと、↓こういうもの。希釈して使います。
1980年代に実用化されて以来、宮崎県や大分県、和歌山県など、大消費地東京からの遠隔地からの出荷が可能になり、スイートピーの大産地誕生に繋がりました。
宮崎経済連の生産者さんももちろん全てSTS処理を行います。そして出荷箱には既にこのマークがプリントされています。「前処理済」=STS処理をしました、の意味です。
STS剤は何回も使う"使い回し"が問題視されていますが、宮崎経済連の産地では使用は1回のみと徹底されています。
【その③】衛生管理
ん?
なぜ、日本一有名な台所用の漂白剤がこのようなところにあるのでしょう・・・?長鶴さん?
「殺菌用だよ。
STS処理が終わったら、容器を軟らかいスポンジ洗浄して、毎回漂白剤で殺菌するんだ。」
もうここまで徹底すれば死角はありません。出荷後も品質にも問題が起こることもなく、宮崎経済連の鮮度管理モデルが功を奏しています。
その長鶴さんが作られるのが紅式部。
宮崎県の育種品種なのですが、1月に大田花きで行われたスイートピー総選挙で紅式部が1位に輝きました。
何と鮮やかなのでしょう。しかも長鶴さんの紅式部は大輪です!
こちらは、"染色中~!"のスイートピー。
桜貝のような薄いピンクのファーストレディに、オレンジを染色しています。
ファーストレディ↓
こちらが完成品。なんともやわらかな春カラーが生み出されます。しかも、染めたことが分からないような自然な発色が魅力です。
この染めのスキルにもノウハウがあるんですよ。
ちなみに、この染め粉は食品にも使われるものなので、作業する人にも楽しむ私たちにも無害です!ご安心ください。
長鶴さんが最も好きな品種はJAはまゆうの看板品種、ファーストレディ。
「色も柔らかいしね♪」
ファーストレディを有名人に喩えると、長鶴さん的にはどなたですか?
「やっぱ、"壇れい"さんかな」 ニコッ^^!
長鶴さんご自身は、元宝塚で女優として活躍されている壇れいさんのファンなんだそうです。
一方、紅式部を有名人に喩えると・・・?
「紅式部ね~、そらやっぱ"壇密"さんでしょ!」ウフッ♥
んま~!!!また色っぽいところをご指名されました!
「壇」さん繋がりです。お二人ともスイートピーのようなふんわりとした色気がありますね。
「言葉の使い方も丁寧でやわらかいから、何となくそんな感じがするな」
はい、見習いますm(_ _)m byウン探
農業は楽しい!という長鶴さん。
「大変だなと思ったことなんて、一度もない。管理されてないからネ!アハハハハ!
大変なことは、大変になる前に解決すればいい。台風だけはなんともならんけどね。
課題は若い人たちにもっとこの楽しさを知ってもらうことだけど、そのためにはまず私たちがその楽しさを伝えないといけないと思っているんだ。」
10年後の宮崎のスイートピー、あるいは花生産をどのように築いていきたいと思いますかと伺うと、長鶴さんは即答されました。
「若い人たちに楽しいと思ってもらえる農業にしたい。若い人たち自身が儲かって利益を得てもらう。
そのためには、一緒にやっているお父さんと息子は財布を分ける。
圃場を分けて、それぞれに成果主義でやること。それぞれに得た利益を報酬とすること。
いい花を作れば、息子にもお金が入ってくる。努力が報われればその方が楽しいし、若い人たちにもやる気が出てくる。これが農業は面白いと思ってもらう方法だと思うな。」
長鶴さんは赤いキャップがトレードマーク。カッコいいでしょ♪
「広島カープが好きだから❤
これは本当のカープのキャップじゃないけど、とにかく赤くなくちゃいかん^^
遠くからでもワタシってすぐわかるでしょ。
カープのキャンプが(宮崎で)すぐ始まるから、近いうちに本物を買いに行くのさ~!」
カープへの思いも仕事の励みにも転換している長鶴さん。
俳優の火野正平さんチック(プラス、間寛平チャンも20%くらい)な長鶴さんに良くお似合いです♪